日本ラブコメ大賞2021:Ⅲ 清潔ではない世界

第10位:黒ギャルちゃんはキミだけを見てる跳馬遊鹿メディアックス:MDコミックスNEO

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 というわけで日本ラブコメ大賞成年編となるが、成年編と銘打ったところで評価軸は変わらない。あくまでラブコメとして優れているか否かで評価する。つまり「地味で平凡で冴えない、何の取り柄もない男」と、「美人でスタイルが良くて(胸がでかくて)性格もいい女」をぶつける事の内容を評価するわけだが、一方で成年漫画であるから性交渉が必要となり、性交渉という剥き出しの本音が露わになる場面でいかに女(ヒロイン)側が男(主人公)側にその愛を表現できるかが焦点となる。エロいか否か、自慰に使えるか否かは重要ではない。

 というわけで本作だが、登場するヒロイン達は全員が褐色肌の黒ギャル、且つほとんどが男性経験ありと思われるヤリマン(ラブコメの論理としては主人公以外の男性経験が一人でもあればヤリマンとなる)達であり、対する主人公達はウブで交際経験ゼロかほとんどないような「地味で平凡で冴えない、何の取り柄もない男」であっった。本来ならばそのような非対称ではラブコメへと流れる事は難しいが、ヒロイン達は全員が惚れっぽく、主人公が初心な反応(「主人公が寂しそうな顔でお店に来たから、一緒にクリスマスイブ過ごそうって思って」「主人公の真面目な顔、本当に好き」)や少しの優しさ(「主人公の指触りってすごく…優しくて気持ちいい」「一生懸命でウブで、でも気遣いができて」)を見せただけで瞬く間に好きになり、或いは身体を開いて快楽を求めるのであった。それこそがヤリマンのヤリマンたるゆえんであるが、性交渉の経過と共にヒロイン達は快楽の虜となり、同時にヤリマンの黒ギャルのヒロイン達はその快楽の源たる主人公に夢中になるのであり、性交渉が終われば「すごく気持ちよかった、あたし達身体の相性バッチリだから、恋人同士になろう、それでもっといっぱいセックスしよう」とヒロイン側から提案し結果的に主人公は恋人を獲得するのであった。

 また以前に作者の別の作品(2019・3位「黒ギャルちゃんはキミだけが好き」)で述べた、ヒロイン達の豊満で巨乳、瘦せ型ではないがスタイルが良く、特に乳房と乳輪のバランスが神々しいまでのセンスを放つ圧倒的な画力は今回も健在で、その神々しい「乳房」が醸し出す原初的な母性本能に主人公のみならずヒロインさえも興奮し、快楽のるつぼが形成され、それを堪能するのが「地味、平凡、冴えない、ウブ、童貞、真面目」な主人公(=読者)なのだから、読者は快楽と癒しを同時に体験でき、またヒロインがただのギャルだというのに女神のような錯覚を感じ、自らの幸運に感謝し、生きていてよかった事を痛感しよう。もちろんヒロインが「主人公以外に男性経験がある」事は本作の唯一にして最大の欠点ではあるが、その欠点を「ギャルなのに女神のように主人公を包みこむ」事によって帳消しにしているので、本作を成年版ラブコメとして認定しよう。

 ちなみに作者の「アイマス及川雫」の同人誌もかなりいいですよ(こちらはヤリマンではない)。作者の描く巨乳(爆乳)にはなぜか気品がある。

   

第9位:深窓の華娵/箕山ジーオーティー:GOT COMICS

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 なるほど「深窓」か。いい言葉だ。また本作のヒロイン達にお似合いの言葉である。もちろんエロ漫画である以上、本来の意味での「深窓」なヒロインは登場しないが、ヒロイン達にはどことなく「深窓」で「清楚」な雰囲気が備わっている。では「清楚」とは何か。それは性にまみれていない事であって、エロ漫画のヒロインである以上はたとえ処女であっても性の毒々しい雰囲気が自然とまとわりついてくるものだが、本作のヒロイン達は見事にそのような雰囲気を排している。或いは処女ではなくそれなりの男性経験があるヒロインであっても、彼女らにはエロ漫画が持つ「毒」或いは「刺激」が感じられない。そのようなヒロイン達が主人公に身体を開くのであるからエロ漫画としてはちぐはぐな印象も与える。しかし日本ラブコメ大賞的には問題ない。

 本短編集ではヒロイン達の魅力を清楚さ、或いは純粋さで表現しようとしている。という事はそのようなヒロインが主人公と性交渉を行ったとしてもエロ漫画的な盛り上がりには欠けようが、その事も十分自覚して描写されており、性交渉シーンには草木や花を摘んでいるような健全さがある。それによって本来は後ろめたい行為であるはずの性交渉から後ろめたさが消され、お互いの想いを存分にお互いの身体にぶつける行為は二人にとって必要な行為に変換され、やがて快楽がやってくるという回りくどいものとなっているが、それを回りくどいと意識させないテクニックもある。本作は非常に新鮮なエロ漫画と言ってよく、しかしその描写ゆえにヒロイン側がやや消極的で主人公からの押しの一手を「待っている」ところが物足りなくもある。

 ラブコメとは女(ヒロイン)側から男(=主人公=読者)側に直接・間接的に好意や愛を表明する事がスタートであり、エロ漫画であればより積極的にならなければならない。しかし「深窓」「清楚」をベースとする本短編集のヒロイン達は主人公(=読者)の事を好んでいる、気になってはいるのに足踏みしているのであり、きっかけを与える作戦を練る事もなく待っている。という事はストーリー展開上、主人公が積極的に出ざるを得ず(「君を受け入れたのだって同情でしたわけじゃないんだぞ」「僕が好きなのは…姉さんだよ!」「好きな子泣かせるなんて最低だよな」)、それはラブコメ的にはマイナスとなるが、それらの主人公の行動に対して清楚ヒロイン達は性交渉へと飛び込み、その愛らしさもまた格別のものがある。そして清楚で純粋なヒロインによる性交渉は嘘偽りがなく、快楽の表明も嘘偽りない事が主人公(=読者)側にも伝わり、読者は永遠の愛を手に入れた事を確信するのであった。

 もちろん短編集であるから玉石混交、積極的なヒロインが主人公をリードしつつ(「待ちきれなくて来ちゃいました」「まだ帰りたくないです」)誘惑しながらも(「男の人ってこういう事すると喜ぶって」「彼女の前であんな表情してほしくないです、もっと私の事を見て」)火がついた主人公に身体を任せ快楽を奉仕するパーフェクトな短編もあるが、総合的には9位が妥当であろう。しかし本作は終始、美しいエロ漫画であり、いいラブコメである。こういう作品によって日本ラブコメ大賞の奥行きがまた広がっていくのである。

   

第8位:揺らせ美巨乳!働くJカップ/英丸エンジェル出版:エンジェルコミックス

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 とは言え難しい事は考えずに愉快・痛快な性笑譚を読みたい。性笑譚であるから「地味で平凡で冴えない男」が実は強大にして凶暴な性器を持ち、精力は絶倫、そんな武器を持っているのだから使わない手はないと美女・美少女・美熟女を次々と手籠めにして、篭絡された女達は快楽の虜となり「地味で平凡で冴えない男」である主人公にどこまでもついていく…という展開がよろしいだろう。いわゆるハーレム漫画もそれと似たようなものであるが、「ハーレム」という言葉が持つ煌びやかば後宮的なものではなく、もっと昭和劇画の匂いがする泥臭いやつが読みたい…という事で本作の出番となって、転職活動中の主人公(30歳~35歳?)は母親の入院を機に故郷へと戻り、母親がやっていた駄菓子屋を一時的に任されたはいいが母親は商店街の会長も兼務しており、その商店街にある喫茶店、八百屋、洋菓子屋、和菓子屋、散髪屋、スナック、を経営しているのは熟女ばかり、さあ酒池肉林…とはならず「態度と乳だけはでかい」熟女ヒロイン達は面倒ごとを全て主人公に押し付け、これでは性笑譚にならないと思うところだがさにあらず、導入部でこのように「熟女ヒロイン達にやりこめられる主人公(=読者)」を描く事で次の展開が待っているのであって、そのように理不尽に自分を追い詰めるのならばこちらもとことんやってやるとまずは喫茶店のヒロイン(「何で俺が喫茶店の店番しなきゃいけないんだ!?」「あーもううるさい!会長なんだから当たり前でしょ!」)を強引に押し倒し、田舎町の寂れた商店街で当然そっち方面はご無沙汰のヒロインは久しぶりの性交渉に雄叫びを上げあっという間に主人公の虜になるのであり、要領を得た主人公は次々に他のヒロイン達とも(強引に)関係を作り、それでも各ヒロイン達は訴えるどころか主人公にぞっこんになるのであった。

 性笑譚或いはラブコメにも言える事だが、ヒロイン側が主人公にぞっこん、或いは惚れる事の理由は何でもいいのであって、本作のように「なぜだがわからないが性的関係を持った結果、ヒロインは主人公に惚れてしまった」でもいいのである。むしろ無理に正当な理由を作ろうとすれば「困っている時に助けてくれたから」「身体を張って助けてくれたから」「正義感によって助けてくれたから」等の、非現実的な、まるで親近感を感じない振る舞いとなって読者は主人公に感情移入できない。一般ラブコメでもそうだが成年ラブコメにおいて「主人公=読者」の構図が成立しないのは致命的である。

 そんなわけで寂れた商店街でくすぶっていた熟女ヒロイン達は主人公及び主人公との性交渉によって若さと華やかさを取り戻し、仕事や人間関係がうまくいく事で主人公に感謝し、最終的にはハーレムを形成、ヒロイン達は皆主人公の子供を身ごもるという大団円を迎え、自らのイチモツで女と人生を開拓していくという懐かしき昭和劇画的な作品になるのであった。読んで大満足、寝る前に本書を読めばぐっすり眠れる事は世界のラブコメ王たる俺が保証しよう。良かった良かった。「ゆうり(洋菓子屋)、いくみ(八百屋)、なほ(?)、めいか(銭湯)、ひばり(スナックのママ)、なつき(散髪屋)、みひろ(喫茶店)、ひなこ(和菓子屋)、みんな愛してるぞ!」

   

第7位:砂糖菓子より甘いことこしの文苑堂:BAVEL COMICS

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 この歴史ある日本ラブコメ大賞は完全な実力主義であり、作者が男か女かは関係ない。「ラブコメか否か、またそのラブコメはいかに優れているか」だけで勝負し評価するのであり、むしろ「エロか否か」では評価しないのだから、エロか否かでは圧倒的に男が有利だがラブコメか否かでは女にも存分にチャンスはあろう。日本はいまだに男性優位いや今は女性優位だ…で世の中はかまびすしいが、世界のラブコメ王は20年以上前からこの考えを貫いておるのだよ。

 というわけで本作であるが、「砂糖菓子より甘い」、女の愛の甘ったるい部分を、性交渉を描かなければならないエロ漫画において披露し、男作者には逆立ちしても出せない甘ったるい雰囲気が女作者によって醸し出されている事が最大の特色である。ヒロイン達は主人公(=読者)に対して積極的に恋や愛を表明し、身体全体を使って甘え、時には他の女性に嫉妬し、主人公(=読者)に抱かれる事で快楽を主張し更に主人公(=読者)に抱きつくのであり、主人公(=読者)は癒され、躊躇なく精を放つ事ができよう。男作者が「好きな男に抱かれている」ヒロインを描くとどうしてもそのヒロインには「快楽の虜」「性奴隷」的な面が強調されてしまうが、女作者の場合はヒロインが幸せを感じている事のみが強調され、淫靡さではなく可愛さが増し、主人公(=読者)はそんなヒロインを手に入れた事を実感し幸せになるのである。

 では本作はパーフェクトで1位かと言えば難しいところで、ラブコメはあくまで男(=主人公)が「地味で平凡で冴えない男」であることが必要であり、本作の主人公達にはその前提が描かれていない、或いは気にせずにストーリーを始めてしまっているのであった。これが女作者の限界で、男作者であれば「地味、平凡、冴えない、取り柄がない、ブサイク、ひきこもり」な自分(=主人公)が「美人で胸がでかくて性格もいいヒロイン」と性交渉するという前提を踏まえたうえで性交渉シーンへと入るが、本短編群にはそれがないのである。結果的に読者はこの主人公と自分を同一化していいものだろうかという戸惑いを感じる事になる。一度「こいつ(主人公)は地味、平凡、冴えない、取り柄がない、ブサイク、ひきこもりのどれか」と確認できれば、読者は主人公がいかに強引にヒロインを組み敷こうとしても納得できるが、本作の場合それがない。またこれも女作者の限界であるが、主人公達には清潔感が漂ってしまっている。ヒロインが性交渉する相手に清潔感がないのはかわいそう、という判断が働いてしまうわけだが、それでは読者はやはり一歩引いてしまう。性交渉とは本質的にドロドロとした、清潔とは別次元の話なのであり、その清潔ではない世界に「美人で胸がでかくて性格もいいヒロイン」が降りてくる事が成年版ラブコメなのである。

 とは言え、本作は素晴らしい。特にヒロインのセリフが自然に女っぽいところが素晴らしい。

「お兄ちゃんはあたしのものって、みんなに言うの我慢してるんだから」

「絶対に、主人公君不安にさせたりしないよ、他の人なんて好きになれない、主人公君の事しか考えられないもん」

「好きなだけ突いていいから、おっぱいもおまんこも私の心も全部、あなたのものだから」

    

第6位:蕩けるカラダは乙女色常磐緑ジーオーティー:GOT COMICS

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 エロ漫画だからと言って最初から最後まで性交渉描写で埋め尽くさなければならないわけではない。いやエロ漫画である以上はそれでもいいかもしれないが、成年版ラブコメにおいては

①性交渉に至る経過、いかにして「地味で平凡で冴えない主人公」が「美人で巨乳なヒロイン」と性交渉できるようになったか

②性交渉

③性交渉後もヒロインは主人公にぞっこんで、主人公はめでたく恋人(妻)を得る事ができた

 の段階を踏まなければならない。そして①と③がしっかりと描写されていれば②は自然と盛り上がるのであり、これらを把握しないエロ漫画はいかに刺激的なエロ描写があったとしても日本ラブコメ大賞に値しない…などと当たり前の事を言っているのは本作がこの①~③を律儀に守っているからで、一見するといかにも男好きのする蕩けた顔のヒロイン、痩せ型でありながら巨乳のバランスが美しい画力が特徴的な本作だが、実際には手堅く作られている事に本当の特徴がある。

 そこで①だが、導入部の性交渉が始まる前からヒロインは主人公を気になっている、好きになっている事が表情やしぐさから既に主人公(=読者)にはわかるどころか、その想いは今にも溢れ出そうなほどであり、しかもヒロインが主人公を「溢れ出そうなほど好き」な事に理由はない。なぜなら理由に言及しようとすればその分②及び③に割く時間がなくなるからであり、そもそも主人公は「地味で平凡で冴えない」のだから、無理に理由を作ろうとすれば主人公の「地味で平凡で冴えない」という性格設定がおかしくなり、話の流れはめちゃくちゃになる事を制作側はよくわかっているのである。なぜかはわからないがヒロインは主人公(=読者)が好きなのであり、次に積極的な行動に出る(「目が覚める前に襲っちゃえ」「先生の事、意識するようになっちゃいました」)事で②へと至り、主人公(=読者)は戸惑いながらもヒロインに応え、応える事でヒロインは歓喜と快楽を表明し、最後の③でもう主人公(=読者)と離れられない、主人公の虜となった事を宣言する(「朝から元気いっぱいですね」「超特別な動画を毎日送ってあげる、主人公君限定よ」)のであった。

 またストーリー展開にスピード感があり、そのスピードの中でやや強引に性交渉へと流れるものの、一方でヒロインが行きずりで性交渉するような弱い女、或いは淫乱で男なら誰でもいいから性交渉をするような女ではない事も確保している。そのようにしてとにかく性交渉が終わり、二人はねんごろな関係になった、お互いの身体も最高に共鳴したのだから今後も末永く一緒になっていくだろう事をヒロイン自身が肯定し、また他の女に目移りしないよう牽制すらする(「また私の前であんな顔したら、嫌でもセックスしてもらいますからね」「主人公は…あたしの水着姿だけ見たらいいんだよ」)のであり、地味で平凡で冴えない主人公(=読者)はコストゼロでヒロインを手中におさめた事を実感できよう。成年ラブコメのお手本のようなよくできた短編集であり、もちろん短編集であるから玉石混交、やや外れた短編もあり順位としては6位となったが、感心するぐらいよくできた、いい意味で参考書的・教科書的な成年ラブコメであった。

    

第5位:僕だけの淫母たちgonzaクロエ出版:真激COMICS

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 さてここからしばらくはハーレムが続く事になる。とは言え本作は母子ハーレム且つハーレム展開より「母・息子」という近親相姦に重きを置き、それぞれの母ヒロイン(姉、義母、実母)が考え得る限りの淫猥さを提供して主人公を独占しようとして結果的にハーレムに落ち着く事に特色がある。

 この日本ラブコメ大賞で何度も言ってきた事だが、ラブコメと近親相姦は相性がいい。「美人で巨乳で性格もいい女(=ヒロイン)」が「地味で平凡で何の取り柄もない男(=主人公=読者)」に喜んで抱かれると「なぜこんな美人で巨乳な女がこんな主人公に惚れるのか」という反発が生まれてしまうが、その回答として「ヒロインと主人公は家族(妹、姉、母)であり、その家族愛が異性愛へと変化してしまった」という理由が最も安上がりである。とは言え「兄・妹」だと健全で微笑ましい印象となり、また兄妹であれば兄→妹となって兄(=男=主人公=読者)側が積極的に立ち回らなければならないリスクもある(もちろん積極的な妹・消極的な兄、による優れた成年ラブコメも多くある)。では「姉・弟」はと言えば、姉という存在は年齢が近いのに弟(=男=主人公=読者)の上に立つ存在であり弟にとっては煙たくもあり、また弟は本能的に姉には逆らえないのだから(兄→妹と同じ構図)、女(姉)上位となってしまうため「兄・妹」よりも使いづらい。そのため「母・息子」が最も安上がりという事になる。母には母性本能という絶対的なものが備わっており、息子のために必ず積極的に動き、またどんなに息子が変態的な性的要求をしようが包み込んでくれる事が息子(=主人公=読者)にはわかっているのだから、「地味で平凡で何の取り柄もない」息子(=主人公=読者)であっても躊躇する事なく精を放つ事ができよう。

 そこで本作であるが、母親代わりの姉(姉ママ)と義理の母(義理ママ)が登場し、魅力的な義理の母に顔を赤らめる主人公に危機感を抱いた姉ママが攻勢を仕掛ける事からストーリーが始まる。先程説明したように「姉・弟」の組み合わせには問題があるが、この姉ママは歳が近いながらも母親代わりを務める事によって母性本能を確保しており、一方でまだうら若き乙女であるから(女子高生?女子大生?OL?)主人公を我が物にしようと「女丸出しの奴に惚れちゃ駄目よ」「これからはムラムラしたら言いなよ、いつでも面倒見てあげるから」と嫉妬の刃を向けるのであり、ついには義理ママに「これまでもこれからも、私が母親、私だけのものよ」「私たちは愛し合ってるの!口出しすんな!」「私だけ見てよ!これからも独占させてよ」として宣戦布告し、それによって刺激を受けた義理ママもまた対抗して主人公を振り向かせようとその身体全部を使って奉仕し主人公を我が物にしようと画策するのであった。

 それらの展開はジェットコースターのような激しいものだが、息子(弟)というだけで惜しみなく愛を与えようとするヒロイン達の姿は主人公(=読者)にとって女神、しかも快楽を与える淫乱な女神であり、読者は癒しと興奮に包まれよう。更にそこへ実の母(実ママ)がやってきて一時的に主人公を避難させそこでもまた性交渉が発生するわけだが、このあたりはやや中だるみでありマイナス点であった。しかし結局は3人のママヒロインと主人公はハーレムエンドを迎えるのであり(月・火は姉ママ、水・木は義理ママ、金・土は実ママ、日曜は3人×息子)、それまでに各ママヒロインを掘り下げて書いた上での合意によるハーレムであるからママヒロイン達はハーレムプレイの中でも互いを主張しようと譲らず(「私にだけしてないプレイがあるなんて許さないから!」)、その姿を目の当たりにした主人公は自分がここまでヒロインを狂わせている事を認識し、タガを外してあらゆるものを放出する事ができよう。やはり成年ラブコメにおいて「母・息子」は特別な位置を占めており、成年ラブコメになくてはならないものなのである。

     

第4位:催眠アプリ~平凡社畜がハーレムを手に入れるまで~/はざくらさつき文苑堂:BAVEL COMICS

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 いくらラブコメならそれだけでよいとは言え、画力はあった方がよい。エロ漫画で性交渉がメインだから胸や尻や性器の描写に注力すればいいというものではない。本作では登場人物達の全体の姿や肩幅が明らかにおかしいところが時々見受けられ、読んでいて若干もたついてしまった。しかしまあ、気になるほどではないので不問にしようというわけで本作であるが、タイトルにあるように「ハーレム」であり、長編ハーレムものに挑むならばヒロイン達それぞれを魅力的に描かなければならず、主人公とヒロインの関係性も構築しなければならない。そして主人公は「地味で平凡で冴えない」のであり、そんな主人公(=読者)が次々と女と関係を持ち、その状況を主人公もヒロイン達も肯定しつつ事件を起こし、大団円へと回収しなければならないという難しさが長編ハーレムにはある。短編ならば「地味で平凡な主人公(=読者)」が美女ハーレムを築く事ができた、という衝撃のままフェードアウトする事で容易になるが、長編はまさに作者の腕の見せ所となる。

 とは言え「平凡社畜」と主人公を設定した時点でラブコメ的に合格点なのだが、突然手に入れた正体不明の催眠アプリを使って主人公は偶然出会った女子高生(ヒロイン1)と快楽の限りを尽くす事に成功し、それではこれから手当たり次第に女とヤりまくるかと言えばさにあらず、近所に住む憧れのヒロイン2(すごく年上で子持ちだが美人、実はヒロイン1の母)に催眠アプリを使って「俺と夫婦になって下さい」とせっかくのアプリを終了させようとするのであった。まあそれならそれでよい、社畜の童貞だった自分(=主人公=読者)が母娘ハーレムを築き、幸せな人生を送れるのだ…となるはずが上司(ヒロイン3)のあまりの粗暴ぶりに我慢できず催眠アプリを使って性交渉となり屈服させ、いかん自分にはもう大切な母娘ハーレムがあるではないか…とヒロイン1の高校の学園祭に遊びに行き、調子に乗って校内でヒロイン1と性交渉に励んでいたところヒロイン1の友達(ヒロイン4)に見つかってこれはいかんと催眠アプリを使って性交渉に持っていってその場をしのぎ、しのいだはずがヒロイン4の妹(ヒロイン5)に遭遇してこれまた催眠アプリによる性交渉で何とか…のはずがヒロイン5の叔母であり保健の先生であるヒロイン6に見つかって学校に戻って、ヒロイン6を催眠アプリを使って性交渉した上で気絶させ、ようやく終わったかと思えば次にヒロイン7(双子)が…という具合にとにかく終わりのないハーレムがひたすら続くのであり、さすが社畜、終わりのない仕事にひたすら追いかけられるように終わりのないセックスゲームが続くのかと半ば感心しつつ半ば呆れつつ読んでいると今度は自分が催眠アプリにかかってしまい常にムラムラして仕事に集中できないと大ピンチに陥り、しかしヒロイン3及び催眠アプリの秘密を暴くと共に大団円を迎えるのであった。いやはやジェットコースターを上回る急展開ぶりに目を白黒させながら読み進めてしまうが、一方で主人公・ヒロイン1・ヒロイン2をストーリーの軸にする事で当初主人公が望んでいた母娘ハーレムを確保し、ラストで主人公がヒロイン2と結婚しヒロイン1も愛しながらもその他のヒロイン3~6とも性交渉に励む事で、数々のピンチを切り抜けた上でハーレムを手にした事の達成感と勝利の美酒に酔いしれるのであった。「女は全部、俺の嫁(メス犬)!」となったのであり、素晴らしいハーレムラブコメである。

    

第3位:初恋のヒトたくわんクロエ出版:真激COMICS

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 それにしてもラブコメとは希望であり救いであり癒しでなければならない。そして成年版ラブコメとなればもう一つ、読者の性欲処理が必要となる。真面目に考えて我々(読者)は結婚どころか彼女もできず、しかし聖人ではないので性欲というものを処理しなければならない。そのためにいわゆる風俗というものが存在するわけだが、風俗とは大金を払って性的サービスを買うものであり、サービスしてくれる女性はもちろん自分に惚れているわけではなく、また1~2時間でそのサービスの時間も終わってしまう(更に金を出せば時間延長はできるが、そういう問題ではない)ものである。そうすると「性欲処理」とは一体何なのか。性欲処理とは「大金を払ってわずかな性的時間を体験する、しかもそれほど美人でもなければスタイルがいいわけでもない女と」であるか。そうではない、それはもはや苦行であって、「美人でスタイルもいい女(できれば複数)」と、「金を払う事なく、その女の意思によって」、たっぷりの時間を用いてお互いが快楽の世界に浸かる事こそ性欲処理であり、それは2次元でのみ成立するのである。

 なぜそんな事を言い出したかといえば本作を読んだからであって、表題作の冴えない中年主人公(35歳くらい)はいわゆる「援助交際」を利用して女子高生との性的時間を買い、その女子高生が初恋の女性と瓜二つである事に歓喜し、しかもその援助交際女子高生と主人公は気が合うどころか身体の相性も合って貪りあい、更にその女子高生は主人公の初恋の女性の娘である事が判明し(高校卒業した後に出会った彼氏と結婚して娘を出産、しかし娘が生まれてすぐ離婚)、主人公はその初恋の女性つまり女子高生の母と再会を懐かしむはずがいつの間にか関係を持って(女子高生の母の初恋も実は主人公だった)、ついには結婚する…という急転直下の展開となり、しかしヒロイン2人の描写自体がマイルドなので読者はごく自然に作品の流れに乗る事ができ、いつの間にか「美人でスタイルもいいヒロイン達(妻と義娘)」と「金を払う事なく、そのヒロイン達(妻と義娘)の意思によって」、たっぷりの時間を使ってお互いが快楽の世界に浸かる事になるのであった。

 性欲処理とはまさにこういう事を言うのであって、更に物語が進めば女の喜びを知った妻ヒロインと義娘ヒロインは主人公の精を求め次第にエスカレートし、女の意地とプライドを賭けて主人公を我が物にしようと快楽の虜となり(「持ち時間3分の射精バトル!パイズリ・フェラで決着がつかなければ勝負は最終戦(セックス)に持ち越される!」)、主人公(=読者)は名実ともに性欲処理に励む事ができ、また義娘と関係を持つ事の罪悪感と、それをまるで気にせず義父主人公への愛を主張し身体をぶつける義娘ヒロインの一途さによって、主人公(=読者)は自分がこの上ない幸運に恵まれた幸せを嚙みしめる事ができ、それがまた快楽の導火線となるのであった。

 そして最後は妻、義娘、妻の子供、義娘の子供が「4人揃って初恋の人が主人公(=読者)だなんて、血は争えないわね」という大団円で幕を閉じるのである。素晴らしい。聖人ではない我々には性欲処理が必要なのであり、性欲処理によって希望を見出し、救われ、癒される事こそ成年版ラブコメの姿である。

 しかしせっかくならこの4人+主人公のハーレムプレイも見てみたい。作者なら可能であろう。

   

第2位:甘色バニラ/はるきち文苑堂:BAVEL COMICS

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 さて日本ラブコメ大賞も終わりに近づいてきたのでここでもう一度「男にとって都合のいい女(=ヒロイン)」とは何か、を繰り返しになるが考えたい。本作はそれを考える格好の作品だからで、結論から言うと本作のヒロイン達は「男にとって都合のいい」要件をほぼ完全に備えている。

 まず当たり前だがヒロインは主人公(=読者)に対して積極的に恋愛感情を表明しならなければならない。そしてエロ漫画であるからヒロインはエロくなければならないが、エロ及び性的全般を強調し過ぎると「別に主人公(=読者)が相手ではなくても男であれば誰でもいいのではないか、ただ淫乱なだけではないか」という疑念が生まれよう。そのためヒロインはあくまで主人公(=読者)に対してだけエロい、主人公(=読者)を思うと自然にエロ及び性的魅力が発現してしまうのであって、ヒロインをヒロインたらしめているのは主人公(=読者)なのだ…という構図を確保し、そんな事ができる主人公は美形でもスポーツマンでも金持ちでもない「地味で平凡で冴えない男(=読者)」であるという落差がラブコメとなるのである。

 つまりヒロインは主人公(=読者)が望めばいくらでもエロくなり、またいくらでも清純になる事が求められるのであり、そのようにして本作のヒロイン達は、

①露出の多い水着によって主人公をアオ姦に誘う(「私はアオ姦好きの変態さんになっちゃった」)

②ドM風に誘う(「もっとひどいおしおきして」「全部飲んだわ、ご主人様」)

③エロい水着のモデルを申し出て主人公を誘惑する(「ヒ、ヒロインは、主人公の事が好きで、大好きで、でもその気持ちをうまく伝える事ができなくて、エッチなアプローチをしてしまう」「君と繋がりたい、君と一つになりたい」)

④バニーガールの衣装を見せつける(「ずいぶん威勢がいいチンポじゃねえか」)

⑤教師(=主人公)を小悪魔風に誘惑する(「卒業まではキスだけなんでしょ?あたしが自分で触るだけだし」「先生があたしを見てるとドキドキする、ううん…ムラムラする、頭の中エッチな事でいっぱいになる」)

⑥オフ会で出会って主人公とホテルに入って性交渉に持ちこむ(「がっかりなんかしないよ、三年ずっとゲームで一緒に過ごして…ずっと逢いたかった」「次の三年も…その次の三年も、ずっとずっと一緒にいようね」)

 等の積極的な行動に出ながらも、性交渉前には「ただ一人のあなた(=主人公)に抱かれたいから誘惑する」事を説明し、性交渉後も「あなた(=主人公)と性交渉ができて本当に良かった」事をはっきりと伝えるのであった。まさに「男にとって都合のいい」要件をほぼ完全に備えているのであり、このようなヒロインであればこそ主人公(=読者)は存分に精を放つ事ができ、刹那的な快楽ではない愛情が自分を包んでいる事を知って限界の更に限界まで性交渉に励む事ができよう。

 というわけで本作は1位になっても不思議ではなかったが、やはりエロ漫画の宿命、短編集であるからやや外れた短編もあり、惜しくも2位となった。しかし素晴らしい。

    

第1位:おいでよ!くのいちの里 極~風魔くの一総登場の巻~公儀あんみつ・一煉托生同人誌

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 この日本ラブコメ大賞は書籍に与えられるものだが、それは正規の書籍でなくても同人誌でもよい。同人誌として発売され好評を得た作品が書籍化される事も最近は珍しくなくなったのであり、書籍化を待つまでもなく同人誌の状態で世界のラブコメ王が発掘する事もある。ラブコメのためならあらゆる努力を惜しまないのだというわけで本作もまたハーレムものであるが、その他のハーレム作品から頭一つ抜けて1位となった。

 ハーレムとは2人以上のヒロインが登場し、主人公(=読者)と性交渉を行い、その状況を肯定するものである。つまり「正ヒロイン」「副ヒロイン(いない場合もある)」「その他のヒロイン」が存在し、その複数のヒロインが主人公に好意・恋・愛を表明し、しかし主人公の身体は一つであり、他のヒロインに取られる、或いは主人公が誰か一人を選択する事によって自分が選択されない可能性があるくらいなら多少の嫉妬は我慢した方が主人公との性交渉の恩恵に預かれる、とヒロイン達が判断する事がハーレムである。女に本能的に備わっている「嫉妬」を我慢してでも主人公に抱かれたいというヒロインの苦渋の決断と、そんな主人公は「地味で平凡で冴えない」ただの男である、という事実が主人公(=読者)を無敵にさせ、快楽を何倍にも膨れ上がらせるのである。

 翻って本作であるが、主人公(ごく普通のサラリーマン)は父親(故人)が住んでいた人里離れた山奥を訪れ、祖父から「この集落は忍びの者が住む集落」「お前の父は忍びの者の長であった」「お前はこの集落の女(全員がくノ一)と子作りに励み、跡継ぎを作ってくれ、それは忍びの者の長の血を継ぐお前しかおらんのじゃ」と性交渉に励む事になるのであった。それでは主人公は当て馬か、依頼を片付けるように性交渉に励まなければならないのかと訝しむところだがそこで正ヒロインから「若様(=主人公)のお話も幼い頃よりずっと…」「わたくし実は…まだ殿方を知らぬ身体でございまして…」「若様にお目見えするのをずっと心待ちにしておりました!」と真剣な告白を受け、一方でくノ一であるから「あらゆる手段で標的を骨抜きにする」身体とテクニックによって主人公を快楽に導くのであった。

 しかし主人公には「この集落の女と子作りに励むべし」との大命題があり、正ヒロインと静かに愛を育むわけにはいかない。その他のヒロインつまりくノ一達の極上の身体とテクニックに溺れ、次第に正ヒロインは激しく嫉妬し出すが、正ヒロインもまた集落の一員であるから自分以外の女たちが主人公(=読者)と性交渉する事を止める事はできない。とは言え悲しい女の性で正ヒロインは真剣に主人公を独占しようと思い始め、主人公もまた正ヒロイン以外の女達との性交渉に励みながら正ヒロインが気になり、その2人の関係に気づいたその他のヒロイン達も主人公を正ヒロインから離そうと画策するのであり(「いつもあの子ばっかりずるいわ、あたしの事も見て」)、「複数のヒロイン達に囲まれる」ハーレムでありながらヒロインと主人公の関係に焦点が当たり、しかし主人公はハーレムの渦中にいる…という事で快楽の味はどこまでも濃くなるのであった。

 そして自らを「主人公(=読者)の正妻候補」と鼓舞するヒロインはついに禁を破り、ヒロインの強い想いと覚悟を前に主人公も決断するのであるが、そこはラブコメであるから最後はめでたしめでたしの大団円、正ヒロインも副ヒロインも妊娠してハッピーエンド…となったものの正ヒロインに子供が生まれ子育てに手がかかる間に他の女達との子作りに励む主人公に正ヒロインは「いいえ!まだでございます」「本日、若様は一人につき三度は子種を注いでおりました」「私もまだまだ女にございます、あなた様のおちんぽを本当に満足させられるのはこの伊夜だけ、またあたしをお孕ませくださいませ!」と嫉妬しつつ現状を認めつつ主人公(=読者)を求め続けるのであり、主人公(=読者)はハーレムの王の余裕で応えるのであった。素晴らしい、これこそ成年版ラブコメとしてのハーレムの到達点であり、今後数年は本作を覆る作品が出る事はないであろう。