イラスト事典 生殖・交尾大全/中川士郎・アニマル探偵団[同文書院]

 いやはや。読み終わった時のこの感じを何と言ったらいいか。衝撃? 打ちのめされた? 世界が変わった? 目から鱗が落ちた? 生きるのが嫌になった? …強いて言うなら「人間をやめたくなった」が一番近いか。なぜなら本書を読んで様々な動物達の生殖・交尾行動を知ったからで、連綿と続いてきた「種」を保存するため・子孫を残すために、快楽を排除した生殖・交尾行動を行う動物達に比べ、我々人間はやれセックスの相性だセックスレスだ、イケメンだブサイクだ、金があるだないだと騒ぎ立てたあげくに子供を作らずに死んでいく者もかなりの数になるわけで(俺もその一人だ)、どうして人間の一定数は生殖・交尾ができずに死んでいくのだろうか…と非常に憂鬱になったのであった。

 とは言えもちろん動物達も手当たり次第にオスとメスが生殖・交尾をするわけではなく競争があるわけだが(競争がない場合もあるが)、その競争に何の迷いもなく、動物達は持てる力の全てを費やしオスはオス同士の闘争を乗り越えてメスを捕まえる、メスはオスを誘惑する(皮膚がツヤツヤになる、放尿する、等)、つまり強い者が生殖・交尾に到達できるのであって、世の中は生存競争・優勝劣敗なのである。そうだ強い者は生殖・交尾に到達できる、そうでない者は到達できない。人間も同じだ。容姿が魅力的、社会的に有利(金持ち)、セックスが上手、等といった武器があれば生殖・交尾に成功するのだ。そうかそうか、人間をやっているとそういう当たり前の事を忘れてしまうなあ。では俺も…金持ち云々は無理だが容姿を魅力的にするために何かしてみようか(整形?)、或いはセックスが上手になるために何かしてみようか(ペニス巨大化?)。

 まあ…こういう本を読んで一喜一憂しておこう。

      

[コウモリ]

 オスのペニスには、特殊な筋肉がついていて、ペニス自体が前後に動き、腰を振る必要がない。

 但し、目が見えないせいか、時にはメスの膣ではなく、肛門に挿入してしまうオスも。

 また、メスは膣の中に精子の貯蔵庫を持っていて、交尾を済ませたメスはその中で精子をゼリー状に固めて、冬眠に入り、春になって冬眠から目覚めたメスは排卵し、ゼリー状に固められた精子が活動を始めて受精となる。

     

マガモ

 メスは追いかけてくるオスの中から1羽のオスを選び、しばらく2羽は寄り添って生活する。

 マガモはオスの数が多いため、他のオスとツガイを形成しているメスを見つけたオス達は強制交尾を試みる。しかしレイプされているメスをオスは黙視しているだけ。

 オス達が去った後、夫(?)のオスもそのメスと交尾する。鳥類の交尾は、後から交尾した時の精子の方が、先に入っている精子よりも受精する確率が高いからである。

     

[ソードテール]

 ソードテールのオスには、生まれつきのオスと、メスから性転換したオスがいる。

 後天的なオスは、先天的なオスに比べて体が大きくふっくらとしており、尾びれの剣も短いため、すぐにわかる。

 この魚は成長も早いので、自分が産んだ娘と、オスに性転換した元母親が交尾する事も珍しくはない。