陰気な微笑2005

 だからこそ最近思うのは「楽しんだ者が勝つのだ」ということであって、緊張し周りに気を遣い胃腸炎になってしまっては何の意味もないのである。仕事にしろ私生活にしろもっと楽しまなければならんのである。即ち責任重大な仕事を任されたとしても「ここは俺の腕の見せ所だ」とか「いい経験ができるぞ」とか「仕事を果たしてこそ立派な社会人になれるぞ」とか「おいおいなかなか面白い展開になってきたじゃないか」とか思うようになればいいのである。ああ嫌だ。こんな前向きな奴になんぞなりたくない。いつまでも陰湿にジメジメとしたぬるま湯に暮らしたいのだそれの何が悪いのだこらぁっ。
 と言いつつも仕事に行くのである。だって金がないからね。金が。しょうがないじゃないか。金があれば誰が仕事なんぞやるものか。しかしおかしいなあ。計画では4月1日から3ヶ月経った6月30日で研修員期間終了と同時にクビになるはずだったんだが、気が付けば本採用になっていた。というわけで俺はもうこの帝都東京で自分だけの楽しみを見つけることにしたのである。なぜ自分だけの楽しみなのかと言えば俺を100%満足させるような楽しみは俺にしか確立できないからである。俺のこの陰湿で自己顕示欲が強くてそのくせ面倒くさいことが嫌いで短気で根性がなくて集中力がなくて他人にはつい愛想笑いをしてしまう気弱さと意思の弱さを持つとにかくこの俺の複雑怪奇な精神を理解できるのは俺だけであるからである。ましてやラブコメが好きで派閥抗争政局が大好きだという人間はいかに電子空間広しと言えどもそうはおらんぞ。どうだこの野郎最近何だってあんなに迷惑メールが多いのだ。
 具体的に言うと入社15年目の上司や入社14年目のお局(36歳の地獄のような厚化粧)がその知識と経験を総動員して入社4ヶ月目の俺にプレッシャーをかけてくるその状況すら楽しむのだ。おおそれは無理だ。更にはある財閥系商社の奴らと飲まなければならなくなりあの苦い苦いビールを口にしなければならないことすら楽しむのだ。ああ絶対に無理だ。では何なら可能か。自転車で本屋その他を駆け回ることだ。おおこれこそまさに俺にぴったりだ。そういうわけで俺は永田町神保町秋葉原を駆け回るのである。
 弱者には弱者の旨味というものがある。弱者にしか味わえない愉しみというものも存在するのだ。このような匿名の公開日記に陰湿な愚痴を書き続けるのも弱者ならではストレス解消であり、自転車で永田町をグルリと一周するのも平凡な名も無き一青年だからこそできることなのだ。秋葉原で挙動不審な立ち振る舞いをするのも、わけのわからぬ社内派閥抗争を高見の見物気分で味わうことも若くて金も権力もない今だからこそできることなのである。そしてそう思うことができてしまえば勝ちなのである。あれ。えらく前向きじゃないか。
 しかし誓って言うが、俺は一人暮らしがしたいとか東京で暮らしたいとか思ったことが全くないのだ。別に東京に行かずとも神戸や梅田や大型古本屋があればいいはずだったのだ。しかし俺は東京都民の世帯主となり、同期の実家から通っている奴らは事あるごとに「一人暮らしって憧れるなあ」と言うのである。ああこれが皮肉というのだなあ。大体一人暮らしというが洗濯・食事・部屋の掃除・役所銀行手続き等を平日の朝から夜まで働いている身分でどうやってしろというのだ。なるほどだからこそ主婦というものが存在するのか。俺にはわからぬことが多すぎる。
 というわけで今週(いつから週記になったのだ)もこの上なく収拾がつかないまま終わるのである。まあいい。俺は東京都民なのだ。大都会の片隅で陰湿で排他的な趣味(ラブコメ、政局観戦、貯金)を貪るのだ。この俺の自己中心的で偏見にまみれた世界の中では、世界第二の都市TOKYOすら俺の意図通りに切り取れるのだ。というわけで次回をお楽しみに。ついにアレをやります。ぐふふふふふふふふふふ。