8 東京湾上陸作戦

「何ということだっ」
「何ですか」
秋葉原だっ」
「…」
秋葉原の大型古本屋と言えば何だっ」
古本市場まんだらけでしょう。自分で言ってたじゃないですか」
「それが違うのだっ。秋葉原のあのビルの5Fと6Fにあるのは確かにまんだらけだが、俺は先日行って驚いた。実にエロ同人誌とエロ漫画しかないのだ。ああ何ということだ。俺は大学時代の思い出の地である大阪は梅田の阪急東通り商店街のまんだらけを想像し胸躍らせていたのだ。そうだガロや70年代の少年マガジンニュータイプのバックナンバーなどの、まさに痒いところに手が届くような雑誌群から同人誌、DVD、そして大量の漫画本小説本攻略本が売っていたあのまんだらけ梅田店とは雲泥の差なのだあの秋葉原店は。何が秋葉原だこの野郎。大体俺は機械音痴なのだ。あのようなパソコン部品の露店があったところで何の快楽も感じぬ。どうだわかったかこの野郎め」
「…」
「おお、あなたは確か『土曜日の女』」
    

もんもんグラフティー/まつもとえいじ[集英社:少年ジャンプコミックス

(電子空間を1時間近く駆け回ったが画像なし。誰かプリーズ)
 さて本書は「大型古本屋で105円で売られるような大量の本のなかの一部であり多くの人から『面白くない』『保管するに値しない』と免罪符をつきつけられた作品なのであるからして入手困難な」(2月28日参照。おお。まだ大学生の時だ)本の一つである。にもかかわらず面白いのである。ああそうか俺が面白いと感じるような本だから古本屋に売られてしまうのか。大体俺の言う「面白い」とは要するに俺と作者の作品展開における思考嗜好志向が似ていて俺の望むように作品内のストーリーが展開しているようなものをいうのであって、結局ラブコメなら何でもいいのである。絵が下手でも予定調和的でもエロでも構わんのである。であるからして本書もそうなのである。主人公の幼馴染のガールフレンドの前世である女任侠がふとしたことから甦ってガールフレンドの身体を乗っ取ったものだからさあ大変。さらには主人公の前世もその女任侠の片思いの相手であり当然女任侠は主人公の貞操を奪おうとするのである。例の「積極的な女と消極的な青年」という図式である。ヤクザの女というのはある意味積極的過ぎてアレだが、コメディであり絵柄も丸っこい感じなのでそんなに戸惑うことはない。何より終わりの方の、女任侠が賭け事をやっていると勘違いして主人公が注意して、「ああ違ったか。それならいいんだ」「そっちは良くてもこっちは納まんねえな」「な、何だよ」「とりあえずチュー1回」というシーンは圧巻である。これぞラブコメの醍醐味。え。「圧巻」の使い方を間違えていると。わははは。ところでこのシーン、実は小学生の時も見覚えがあるんだな。それこそ小学生の時に女の方から「チューしろよ」などという漫画を読んだときの衝撃は今でも強く覚えている。その衝撃が現在に至るのかもしれず、そうすると本書は俺の人生を大きく変えた本の一つなのかもしれぬ。
   

SF名物/鶴田謙二講談社:モーニングKCDX]


 よくわからんが本書を読む限り著者と筆者(俺のことね)の感性というか好きどころというか読書快楽ポイントというか、とにかく気持ちいいと感じるツボが同じなのではないかと思うのである。それはどういう事かと説明するのは大変難しいが、要するに本書の各短編に登場する女性(主人公と対になる)達が俺の考えるラブコメ作品において最適とされる立ち振る舞いをしているという事なのである。理想の女性とまではいかないが、俺の感覚からして非常に好感が持てるのである。即ちそれぞれの女性陣は仕事やその他の諸行動が「良くできる」能力を持ちながら常に一歩引いて自分より仕事や諸行動において「劣った」主人公の男をサポートしているような印象を受けるのである。ん。それは結局「都合のいい女」ということか。すいません。すいません。は。いやいやいいのだ気にしてはいかん。ここは俺の考えを述べる場所ではないか。そんなことにまで気を遣っていてはまた胃腸炎になるぞ。そうだ俺に都合のいい女で何が悪いのだ。欲望に素直になれ。というわけで圧巻なのは本書の最初の短編であって、主人公である役に立たない無能駄目社員(おお。俺のことか)になぜか女の軍事要員がつくのであるがそれはなぜかというとその無能駄目社員がなぜか地球防衛軍の重要人物だからなのである(実はその無能駄目社員の所属する会社というのは仮の姿であって、真の姿は「地球防衛軍」なのだ。うわあ)。もう何度も言っているがそれでも言いたいから言うが、こういう「地球防衛軍」みたいな巨大組織に「無能駄目社員が必要とされる」という展開はいいものだ。夢があるではないか。いかにも仕事ができて東大を卒業していて二枚目で社交的で女たらしでという奴が主人公の、その何が面白いか阿呆め。大馬鹿者め。かかってきやがれ。この。いや、最近カウンター日数が減る一方なのに固定読者が増えているのでちゃんと言っておいた方がいいと思うのでして。それはともかく監視という名目で無能駄目社員(しつこいな)についていた女軍事要員がなぜか本気で無能駄目社員(しつこいって)に惚れてしまうのであり、ああ何といい話だ。しかもその女要員たるや「あなたが楽しければそれでいいの」とか「夢中になってる時のあなたってとても素敵よ」などと言ってくれるのである。こんな女は二次元にしかおらんのだろうなあ。しかし女の方から「結婚して」と言われるのはいいがその後に「できちゃったの、あなたの赤ちゃん」と言われるのはかなり怖いかもしれぬ。ちなみにその後の会話は「何ちゃって。一度言ってみたかったの。念願達成」である。これもなかなかいいっすね。
 そんなわけで時間がないので今週はこのへんで。次週は休みます。再来週に逢いましょう。ああいつからこの日記は週記になったのだ。それはそうとmiki1004さんサンキュー。で、何をすればいいんでしょう。