車社会の憂鬱

 ある人が言いました。「このような猥褻なポルノ画像を放っておけばきっと犯罪に走る人が出るでしょう。ここはやはり、全面的に禁止すべきです」。
 そこで俺が言いました。「このような危ない機械もとい車を放っておけばきっと犯罪に利用する人が出るでしょう。ここはやはり、全面的に禁止すべきです」。
 さて皆さん俺が何を言いたいかおわかりになりましたか。よく言われる「TVゲーム→子供に悪影響→犯罪化」「エロ・ロリコン→子供に悪影響→犯罪化」という論理思考についてです。俺はこの考えを正しいとも間違いとも思いません。それは各人が判断すべきでしょうが、ただしこの論理展開でいきますと「車→子供に悪影響→犯罪化」という図式もまた成立することになります。なぜなら車というのはその気になれば人をいとも簡単に傷つけるもしくは殺すことができるというTVゲーム的なものだからです。よく「ゲームにおいて、いとも簡単に生死を表現することによって子供の生命への危機感が薄れた」といいますが、それならば車を通じていとも簡単に人の命が失われることによって、そしてその事を少なからぬ子供たちが知っていることによってもまた、子供の生命への危機感が薄れているという論法も可能になります。ゲーム機も車も大人社会の資本主義的経済体制の産物であり、ましてやSONYもTOYOTAも小中学校の教科書に載るほどの日本経済の重鎮です。ではその日本を代表する会社が何をしているかというとかたや暴力的な映像を扱ったゲームを子供たちに与え、かたやいとも簡単に人を殺すことができる大型殺人運転機械を大人たちに与えているのです。どうです。危険ではないですか。もうこのようなものは禁止しましょう。そうしましょう。
 よく「戦争反対」と叫ぶ人の姿を見ます。なるほど。戦争反対。それはもちろん戦争はやめておいた方がいいでしょう。なぜなら全く無辜の市民を殺害する危険があるからです。ふむ。彼らはいわゆるヒューマニストです。彼らが自分たちのことをそう言うのですからとにかくそう呼びましょう。そこで俺が彼らヒューマニストに尋ねます。「では、車に轢かれて死んだり車の事故がもとで半身不随になった人たちはどう思う」と。ヒューマニストは答えます。「それは気の毒なことですねえ」。再び俺が問います。「では、世界中から車をなくす運動をしようではないか」。ヒューマニストは黙ってしまいます。
 たとえば軍隊にしたところで、必ず市民もしくは他国の武官や軍人を殺すわけではありません。不測の事態にあって人を殺すかもしれない、ということに過ぎません。しかしたとえ不測の事態であっても人を殺すのは悪いことだしそのような機関を国家権力が持つことは悪いことだということでヒューマニストたちは声をあげるのでしょう。であるならば、同じく必ずしも人を殺すわけではないがしかし今日も日本のどこかで必ず人を殺しているであろう車をなくそうと思うこともまた当然であると言わなければならないでしょう。自衛隊はまだ一人も人を殺していませんが、車はいったい何十万人の人を殺したのですか。どうです。俺の論理に何かおかしいところはありますか。「そんなこと言ったって、車がなかったら生活していけないよ」と人は言いますが、しかし俺は純論理的に物事を考えて言っているだけです。大体刑法には殺人罪や窃盗罪と並んで業務上過失致死傷罪の項目があるではありませんか。つまり車によって行われた事故は犯罪なのです。ではその犯罪のもととなる「車」をなくそうと考えるのもまた必然なはずです。
 俺は皮肉を言いたいわけではありません。PTAを馬鹿にするわけでもなく、近代文明を否定するわけでもありません。しかし車が毎日多くの不幸を呼んでいることは事実なのです。そしてにもかかわらず我々人類は車という「危険なもの」に頼らなければ生きていけないのです。この姿を誰も正視しようとはせず、むしろ注意深くその事について考えることを避けてきた人々や社会を前にして俺は憤りを覚えます。ですが憤りを覚えたところで全くどうにもならないのです。これこそが真実です。そのような真実から目を背け、ただいたずらに表面だけのヒューマニズムを唱える者のその多さ。どう思いますか。
 軍隊も車も、あるいはポルノもTVゲームも人間の生活や欲望に深く密着したものであり、それらを否定することは不可能でしょう。それは経済的にも社会的にも我々の文明が生み出したものだからです。車を否定するということはそれを生んだ文明を否定することになり、そんなことは無意味です。ですがそれによって失ったものがあることもまた事実なのです。つまり俺は、経済や産業や文明の功罪の有無を問いたいのです。それらを冷静に議論しなければまたしても表面だけのヒューマニズムが台頭し人々はそれに酔い、ついには衆愚政治となって多大な害を我々に及ぼすことになるでしょう。今日問題となっている憲法改正問題、京都議定書問題、そして表現の自由に関する問題等を見ていて、俺は強くそう思うのです。
  
業務連絡。衝撃というかああやっちまったというか昨日23時59分で公開を終了したあの「パフパフ絵」はどうだったかな諸君。え。なに最高だったと。いやあそうかい。はははははは。え。何のことかわからん僕私俺が見たときは既に公開時間を過ぎてたから是非一度見てみたいと。よろしい今すぐメールで送ってあげよう。ただし著作権その他は向こうの会社にあるってことで一つうまく世を渡ろうじゃないか。ところで別に俺はおっぱい星人ではないよ。いやそれはまあ確かに好きだがね。おっぱい。