貧窮問答4 鎮魂歌編

「みなさんこんばんは。世界が呼ぶ夢が呼ぶ湖が呼ぶ、なにわの帰国子女こと『土曜日の女』です。お元気ですか。今日もここから、関西一の鬼畜男を血祭りにしてやろうと思います。どうぞ最後までお付き合いくださいませ」
「…」
「シャレにならないくらいの荒らし嵐の中にあってひたすら正気に返らず、うつらうつらを繰り返しては実にくだらない夢の内容をノートに書き悦に入るという退廃人生まっしぐら、親は見捨てた友は最初からおらぬどうせこの世だけが真実だ。負け犬の涙だけが暖かいおお木枯らしの時の時」
「…」
「ダバダバダバダバ〜ダバダバダバダバ〜」
「…」
「ではラブコメは捨てたのですね」
「いや」
「その決心に敬意を表します」
「捨てとらんっちゅうに」
「ダバダバダバダバ〜」
「うるさいっ」
「どうしたんですか。そんなにブサイクな顔して」
「…」
「あっ。先週よりもっとブサイクに」
「帰れもう」
「まあまあ。いいじゃないですか」
「いいのかよ」
「それはもちろん。まさかあんなに荒らし嵐が来るとは」
「…」
「いやあ、それにしても裏から指示した甲斐がありました、ではなくて、まったく災難でしたね。本当に」
「…まあ荒らし嵐も災難だったが、よく考えればあんたと毎週会わなきゃいかんというのが一番の災難だな」
「というわけでですね」
「えっ。無視かよ」
「よろしいですか。まず、なぜあんなに荒らし嵐があなたを襲ったと思いますか」
「まあ、いつもは2分以内に消されるのにその日に限って消されなかったからでしょう」
「え。いつもは2分以内に消すんですか」
「まあね、コメントが記載されると即時俺のところにメールが来るようになってますので、もう早ければ1分ぐらいで消すことはできます」
「何て早い。もう少し遅いぐらいがちょうどいいのでは」
「…」
「今、下ネタを考えましたね。そうですね」
「いやあんたが勝手に言っとるんだ」
「嘘です嘘。いやらしい目で私を見たじゃないですか。何とまあ汚らわしい。セクハラオヤジ」
「誰がオヤジだっ。俺はまだ22だ」
「ええっ」
「…」
「私の友達はメールで、『タモリじゃなくてマリモ、じゃなくてtarimoさんは文章や文体から察するに30歳ぐらいですよね』と言ってきましたよ(作者註:実話です)」
「…」
「つまり顔だけじゃなく文章も老けてるということですね。こりゃおかしいですねあははははははははは」
「帰る」
「ああいやストップ」
「何がストップだ」
「とにかくですね、せっかく日記も再開したことですし、ここは一つ建設的な交渉といこうではありませんか」
「だからその交渉というのは何なんだ」
「は。何なんだとはまた何ですか」
「だからね、どうして毎週毎週お前と話さなきゃならんのかさっぱりわからんのだよ。しかも土曜日という一番テンションが上がる日にだ、どうして暖房もストーブもない部屋でこんな日記を書かないといけないんだ。この日記を書く時間のせいで三宮に遊びに行く時間が減ったんだぞ(作者註:実話です)」
「そうですね。私もお金を払ってでもあなたとは話したくない」
「人の話を聞いとるのかっ」
「おおむね聞いてません」
「何だそれはっ」
「ダバダバダバダバ〜」
「だから何の歌だそれは」
「はい最初の問題です」
「…」
「あなたは、集団強盗の経験がありますね」
「え。誰が」
「ああいやちょっと間違えました。おほほほほほ」
「…あんまりタイムリーなのは好きじゃないんだがな。半年ぐらい経ったらネタの意味わからんし」
「えー、気を取り直して。あなたは確か月曜日にこう言いましたね。『エロゲーをやったらもう現実の女なんかどうでもよくなる』と」
「まあ、そのような意味のことは言いましたかね」
「どういう意味でしょう。詳しい説明を是非聞きたいのですが」
「睨まなくても」
「睨んでなんかいません」
「そうですか。ええとですね、まあこの、二次元の女性というのは所詮はその、絵ですから、まあ完璧に綺麗といいますか、可愛いわけですね。で、エロゲーともなるとこう、そこに肉感的な官能を感じてしまうわけでして、そうなるともう、実写のアダルトビデオなどどうでもいいといいますか」
「…それで?」
「いやまあ、そんな感じです」
「つまり現実の女性はあまりに醜いと言いたいのですか」
「いえそうではなくて、その、完璧という点から見れば、あの、やはり二次元の方が」
「何ですか、現実の女性にはどこか欠点があるというのですか。体型や話しかたやテクニックだけでなく顔までも完全であれというのですか」
「いえまさか。そんな。ただ、その」
「その、何です」
「まあやはり、現実の女性より二次元の方が、何かと楽でして」
「どういう点で楽なのです」
「それはもう、うるさくないですし、ちょっかいかけられませんし、怒りませんし」
「…」
「ええと、ですからその、大変恥ずかしい物言いなのですが、今のところは俺のこの、ええと、ある種の欲望処理のためのですね、まあ役に立つというか、最短的にして最も効果的というか」
「…なるほど。よくわかりました。つまりあなたは変態なのですね」
「いやそれはこの日記を読んでる人みんなわかっていると思うんですが。大体いまさら変態と言われても。さんざん俺は変態だって言ってますが」
「では私は『土曜日のスーパーウーマン』、tarimoさんは『土曜日の変態』としましょう」
「意味がわからん」
「はい静かに」
「…」
「次ですが、この『土曜日の変態』、じゃなくこの『二人の女に囲まれるというのはラブコメの条件の一つだ』と言うのは何ですか。詳しい説明を是非聞きたいのですが」
「睨まなくても」
「睨んでません」
「ええと、まあこれはね、その、まさしく男のロマンというやつでして」
「二人の女に囲まれるのが男のロマンなのですか」
「いや別に二人じゃなくても、三人でも四人でもいいのですが」
「ちょっと待ってください。あなたは確か和姦主義者でしたね」
「はい。どうして女は『和姦』だと平気で言えるんだ。この前なんかメールにデカデカと『和姦』て書いてあったぞ(作者註:実話です)。俺なんかどんなに恥ずかしいか(作者註:実際のところ恥ずかしいです)。」
「とにかくですね、和姦主義者であると同時に、あなたは一夫多妻主義者でもあるわけですか」
「ええと、まあそうなりますかね。何せラブコメに男一人・女複数は基本ですから」
「ああっ」
「え」
「おお神よ神よ神さんよ。この罪深き変態は一夫多妻を宣言しました。何ということでしょう。早漏のくせに」
「いやちょっと待てっ。誰が早漏だ」
「もう交渉は決裂です。こっちから決裂してやります。はい指令書です」
「お。出た出た」
「何を喜んでいるんです。今回はちゃんと私の本名で発令しています。三日後、あなたに対する掃討作戦が開始されます」
「…」
「そうです。今回はあなたに三日間の猶予を与えます。その間に考えて私たちに降伏するのならよし、どこか遠くへ逃げるのもまたよし。私たちは必ずあなたを探し出すでしょう」
「えーと」
「ちょうどこの日記を荒らした嵐部隊、つまりホモレズ部隊並びに鬼畜凌辱師団そして反秋葉原軍反オタク軍が一斉にあなたに襲いかかるでしょう」
「あのね、これは」
「もうあなたは私に泣きながら懇願するしかないのです。許してくれ私が悪かったのですすべて私の責任ですああマリア様と言えば私だって許してあげましょう」
「あの」
「ただし靴をなめてもらうぐらいは」
「ちょっと」
「何ですか」
「あの、その掃討作戦開始日というのは、三年後ですか」
「あらもう気が動転しましたか。三日後ですよ。三年後じゃなくて三日後」
「いやあ、だって」
「…」
「『タモリではなくマリモでもなくtarimo掃討作戦開始日』が」
「…が、何です」
「『2月29日』になってますが、今年は29日はないですよ」