と学会年鑑KIMIDORI/と学会[楽工社]・と学会誌21[※同人誌]

と学会年鑑KIMIDORI

と学会年鑑KIMIDORI


 本書は日本トンデモ大賞2009が行われた豊島区公会堂の物販コーナーで買ったものである。我が国では狂気で彩られた陰謀論やダジャレとしか思えない言語研究、更には「適当の適当のそのまた適当」とでも言うべきコンビニコミック(コンビニで売られている、ペーパーバックの紙質が悪い本)が何ということもなく本屋等で売られており大変平和であるが、そのような明らかにトンデモな本ではなくともなぜか部分的にトンデモだったり本人は真面目にやろうとしているのに事情を知らない人から見たら思わずつっこんでしまうような本もたくさんあるのであって、それらを持ち寄っては笑ってこの世知辛い世の中を乗り切りましょうという意気込みが感じられ非常に好感が持てよう。
 ちなみに俺も政治学関係の本をとにかく読みまくっていた時期に何度かこういうトンデモ本に出会ったことがあります。公職選挙法の解説本のはずが途中から「改悪を許すな」という感情的な政府・自民党批判になってきて、「自民党は金権腐敗」「政・官・業のトライアングル」といった見慣れた文章が続いたあとに何の脈絡もなく「自民党の目標は軍国主義復活である!」と結論づけて終わっていました。あれは何だったのでしょう。
 というわけで面白いところを抜粋して今日はさようなら。
    
岩波文庫「懺悔録」。江戸時代のキリシタン宗徒たちの告解録であるが、信徒の懺悔には「姦淫するなかれ」に背いたものがあって、その内容は当時のセックス事情を教えてくれる。女性の懺悔。「身をかき探り、あの方に指をさし入れ、男と寝ておるふりを致いて、四・五・六度その淫楽を遂げ果たすように身を動き起しまらした」要するに自慰に耽っているらしい。「味方から(自分から)、臀よりすれば身持ち(妊娠)になろう気遣いがないと勧めて、若道(男色)のようにそれと度々寝まらしてござる」妊娠するのがいやならアナルでしてと女の方から言うのである。当時はアナルセックスが流行していたと岩波文庫が教えてくれるわけだ。
  
自民党を離党して何かと話題の政治家・与謝野馨の弟が書いた本。日本語のルーツはラテン語であり、その語源関係を延々と述べる。ラテン語で「ペッコー(罪を犯す、間違いをする、限度を超える)」が日本語で謝罪の意を表す「ペコペコ」になった、或いは「限度を超える」→「限度を超えた空腹」→「ペコペコ」となった。ラテン語で「エーヤクロル(外に向かって投げる、荷物をおろす)」は、外に向かって投げる・荷物をおろす→エーヤクロル→エンヤコリャー。ラテン語の「デュオ(数字の2)」「クィンクェ(数字の5)」「プニュス(拳)」が合わさって、デュオ・クィンクェ・プニュス→ジュオ・クェンケ・プニュ→ジュン・クェン・プォヌ→ジャン・ケン・ポン…。
   
・「オール日本スーパーマーケット協会」によるスーパーマーケット経営の本。なぜかスーパーマーケットを全編「SM」と略している。「大競争時代のSMの成長戦略」「SMの業態特性と品揃え戦略」「業態間競争時代のSMの競争戦略」「SMはセルフサービスからはじまった」。絶対わざとやっとるな。
  
メンタルクリニックの院長を務める精神科医の本。「EB」という、自分にとって理想的なキャラクターを作ってそれと会話することで心が落ち着くのでそれをやれと書いているらしい。具体的にはこんなやり取り(早い話が脳内彼女で、俺は既に実践済)。
あなた「よお、アリア」
EB「あっ、○○さま。どうしたのですか」
「いや、ただ単に話したくて」
「そうですか。呼んでくださって、本当に嬉しいです。ありがとうございます」
  
・「まもなく世界は五次元へ移行します」という、題名がもうイッてしまっている本。気に入ったのは「憲法9条は、天照大神が降ろした日本人と世界のためのスピリチュアル・メッセージ」「誇りある国民として二度と立ち上がれないように、日本は占領政策で徹底的に痛めつけられてしまいました。占領軍が作成した日本国憲法には、それが色濃く残っています。しかし、真実というのは複雑です、憲法第9条項だけは、天照大神昭和天皇に入って、マッカーサーにそのように言わせたのです。『もう戦争を放棄して、聖なる国として立ち上がりたい』と」。
   
・1949年、日本人としてはじめてノーベル賞を受賞した湯川秀樹が受賞奉告として伊勢神宮に参拝。神主は祝詞を読んで神にその事を説明しなければならないが、物理学の話を神様にするわけであるからすごい事になる。「風の音の遠く遥けき世にしありては、朝日夕陽をそれぞれに、天照る神とも月読の命とも尊称へ或は又、霹靂とどろく響きをば、雷神・鳴神と畏み怖れ、或は又、山川野原に鳥獣、見る目聞く耳悉く映る奇すしき像をば、皆神なりと仰ぎしも、春秋めぐる三千年、二十世紀の現代は、即ち科学の力もて、有とあらゆる物質を、発生・破壊・変換に置くは容易きのみならず、物の価を次々と分析しては、諸々の分子・原子に原子核、回る電子に至る迄、見極め検し解明と共に、天の戸渡る彼方より、尽くる事無く満み溢れ、降り注ぐなる帯電の、粒子は茲にエネルギー、宇宙船とぞ名付けつつ」
   
・特許の申請は誰でもできるが、特許とは何の関係もない記述をえんえんと書いてはせっせと特許申請をしている人がいる。もちろん全てインターネット等で閲覧できる。本当の狂気とはこういう事を言うのだなと納得させられる。「私などは電磁波に当てられ過ぎるので、祖父母も父母も私も揃って上顎の歯を全滅させられてしまっている。通常の電磁波環境のみであれば、カルシウムの摂取に気を付ければ凌げるのであるが、牛乳に何かよくわからない仕掛けをして、飲むと一度に頭の中に発酵してしまうようにして、飲ませないようにもっていき、その間に歯の歯根への栄養を供給に断たせ、歯根を殺してしまい、一度に歯抜けにもって行かれる。また、体内のカルシウムを消耗する酸の添加物を家にまで侵入させて食べ物に忍ばせる。なんとも凶悪な国会議員たちであり、こう言う犯罪を警官を抱きこんで、幾ら告訴しても、犯罪放置どころか電磁波で私の行動上の位置を知りうるので、隣近所を買収しては、易々と犯行させる」
   
・昭和14年の、小学生を対象にした「からだの本」。いわゆる学研ものであるが、人間の心臓の動きを確かめるため、先生や生徒がいる中で11歳の女の子を脱がせてしまう。「私の胸を出すのですか」「さうです。一寸胸を開いて、私共に見せて下さい。ほら、小さい左のお乳の下をよく見てごらんなさい。ピクピク動いているでせう」
  
・外国人による日本語教科書。「言ってはいけない英語」の日本語版で、こんな日本語を使ってはいけないという実例を出しているが、その例文が何ともまあ面白い。
「部長のでぶでぶした娘は呼ばないでおこう。彼女の尻に会う椅子はないからな」
「彼女のおっぱいには強くて黒い毛が生えているって」
「その男は出歯亀だと判ったら妹は絶交した」
裕次郎は毎日てをこまねいて淫らな妄想に耽っているようだが、何も実行しないから別に風紀を乱しません」
「同級生の和田は婆転がし専門の詐欺師だ」
「この粗大ゴミはまだ寝ているの。早く起きなさい、ここは養老院じゃありません」
「何故そのだらしのないあばずれを雇ったんだ」