Newsweek日本版 2010年5月26日号[阪急コミュニケーションズ]


 「世界で今、何が起きているか」「日本はいかに世界から遅れているか」「日本ではわからない世界の常識」等、等、等を知る必要はない。そんなものは政治家や官僚や商社マンや銀行マンや世界で活躍するビジネスマンやお偉いジャーナリスト等、等、等が知ればいい話で、俺のような田舎者の糞阿呆が無理して知る必要はない。俺が「Newsweekを読んだ」などと言ったら彼らは「エロ漫画ばっかり読んでる奴が何を勘違いしているんだ」と言って俺に唾を吐きつけるだろう。しかしながら図書館の雑誌リサイクルコーナーにあったのだ、読んでみたら平易な文章で読みやすかったのだ、そして何より読んでみたかったのだ。「Newsweek」だぞ、「週刊文春」や「週刊ポスト」ではないのだ、政治家を感情的に罵倒し下らないテレビタレントのスキャンダルに血道を上げ厚化粧女の醜いヌードを載せて満足しているような雑誌とはレベルが違うのだ。読みたいではないか。
 娯楽週刊誌はともかくジャーナリズム週刊誌には現在起こっている現象を過去の流れを整理しながら検証し未来に何が起こりそうかをその時点で最も合理的に予測することが求められるのであって、悪役を叩き潰すことに終始したり複雑怪奇な現実から目をつぶって建前ばかり並べるのは紙の無駄使いでしかないことを俺は本誌を読んで再認識した。わずか78ページしかないのにこの充実ぶりはどうだ。アメリカ、ヨーロッパ、アジア、中東で何が起こっているのか(起きつつあるのか)を客観的に、平易に、情熱的に、ユーモアも忘れずに伝えようとしているのがひしひしと感じられる。日本の週刊誌の「社会問題から女のヌードまで」を網羅する文化もいいが、こういうシンプルなジャーナリズム週刊誌もいいものだ。
   
バチカンで初の株価指数「ストックス・ヨーロッパ・クリスチャン・インデックス」が誕生。キリスト教の価値観に会う事業を運営する欧州553社で構成。ポルノ、ギャンブル、武器、煙草、避妊に関わる企業は除外されているが、石油関連企業は除外されていない(銘柄選定委員「環境問題は選定条件にならない」)。
・6月11日に始まるサッカー・ワールドカップの開催国・南アフリカでは、ホテルやレストラン等と共に売春産業も着々と準備を進めている。南ア当局は、40万人ものサッカーファン(ほとんどが男)の「需要」に応えるために世界中の売春婦約4万人が入国すると予測。そのため南ア当局は国内に無料のコンドーム自動販売機を整備し、それでもイギリス政府にコンドームの提供を要請。なお南アフリカでは成人の5人に1人がHIVに感染していると言われている。
・イギリスでキャメロン内閣が成立。13年ぶりの保守党政権、70年ぶりの連立政権で、サッチャー路線でもブレア路線でもない新たな英国を築けるかは未知数。首相・キャメロン(保守党)も副首相・クレッグ(自民党)も共に43歳でエリート且つ好感が持てる人物だが、それぞれ党内の反対派を抑えるかが最大の見所。
・「ロシアは頭で勝負したい」。プーチン王朝のロシアは石油や天然ガスの輸出に依存し大国化したが、科学・技術大国だった過去の栄光は完全に消え去った。科学分野への投資はソ連時代から激減し、優秀なエリート知識人たちはロシアから流出。世界大学ランキング上位にロシアの大学は1校も入っておらず、この10年にノーベル賞を受賞したロシア人は3人だけ(アメリカは67人)。メドページェフ大統領はかつての科学・技術大国の輝きを取り戻すため懸命だが、そのためには研究者と研究結果を腐敗した官僚機構から守らなければならず、現実は厳しい(「賢いロシアに軍配が上がるよう、今は祈るのみだ」)。
・「次のフロンティア市場はイラク?」。将来、イラク原油天然ガスの輸出国としてトップ3の一角を占める公算は大きい。原油生産のコストの低さでも優位に立つのは確実、メキシコ湾では70ドルかかる原油1バレル当たりの開発費用はイラクではわずか3ドル。イラクが世界最大の産油国となり次のサウジアラビアになると言っても過言ではない。
アフガニスタンの反政府闘争の担い手であるタリバン兵の「若返り」が進行している。旧世代のタリバン兵が殺され、捕虜になり、負傷したりして姿を消すなか、兵士の平均年齢は下がっている。兵士の約80%が10代後半から20代前半の若者、司令官の半数が30歳以下。若い彼らは衝動的で、タリバン指導部への敬意も薄く、傲慢で過激。腐敗した政府と20歳のタリバン兵によってアフガニスタン市民は苦しんでいる。