図書館雑誌 2013年9月号〜12月号[日本図書館協会]


 さて2014年度の年会費も払ったのでいよいよ日本図書館協会の会員として何かしなければならない気がしてきた。とは言っても司書の道をあきらめてもう10年以上が経つのに何ができるのだ、まあそれなりの社会人になったのだから寄附を多めにするぐらいが関の山か。しかし現在の、広く国民に図書館の素晴らしさをアピールするでもなければ行政や政治に働きかけて図書館界の地位向上に努力する事もない無能な(と言っていいだろう)圧力団体に金を与えてもなあ、せいぜい「奇特な人もいるもんですね」で終わってしまうのは目に見えているので手元にある「図書館雑誌」を読んで感想を書いて様子見という事にしよう。
<2013年9月号>
・特集は「大学図書館2013」。大学図書館を「学生の主体的な学びと授業外学習の質の向上」の場とする、「入ってみたくなる図書館」「心地よく滞在する事のできる時間」を演出する、読書術レッスンを行う、等の試みが紹介され、大学図書館が積極的に大学と学生と関わろうとしているのは読み取れたが、いずれも「こういう取り組みをしています」とは言うが「大学内外でこういう評価をされています」「大学内でも評判が良く、来年度予算は倍増となりました」とまでは書いていなかったので、大学において図書館が盤石の地位を築くにはまだまだという事なのだろう。
・「栄養士」と「司書」の資格の比較。栄養士資格は「専門学校・短大において一定の単位を取得した者に対して卒業時に得られる」という、司書と似た資格であるが、それでは専門的な職業とするには不十分であるとして栄養士の上に更に専門的な「管理栄養士」を創設して国家試験化を目指そうとする日本栄養士協会・厚生省側と、栄養士の養成に携わる専門学校・短大等による全国栄養士養成施設協会の対立は行政や国会議員を巻き込んだかなり政治的な戦いとなったが、最終的には全面国家試験化となった。一方で司書資格の方は今でも専門的な職業としては不十分でありながら(そもそも社会的に認知されていない)内向きの議論しかない、栄養士関係者が行政や国会議員を巻き込んだ政治的な手法を見習えという、極めて当たり前な話。これを読んだ図書館関係者の感想が聞きたい。
<2013年10月号>
・11月開催の「第99回全国図書館大会」について。「レファレンス機能の強化、学校や行政への支援、ビジネス支援、子育て支援等、地域の課題の解決を図る『知の拠点』となる図書館を目指して、具体的に取り組んでいかなければなりません」。頼むよ本当に、頑張ってくれよ。
・第12分科会は「非正規職員の現在」。「市区町村立図書館では非正規率が70%に達し、都道府県立図書館が50%以上、大学図書館が60%以上、学校図書館でも65%以上。正規職員が1人もいない図書館すら数多く出現しています」。頼むよ本当に、何とかしてくれよ。
・「れふぁれんす三題噺」より。60代くらいの男女二人が「離婚の本はありませんか」と尋ねてこられて案内し、しばらくすると「婚約指輪は給料の3カ月分でなければならないのか知りたい」とのお尋ね。「実は、息子の嫁から、もらった婚約指輪が給料の3カ月分に満たなかった事がわかったので離婚したいと言われている。そんな事で離婚できるのか調べています」。
・図書館は、利用者の知りたい事を解決できてこそ、利用者満足を得られ市民に必要とされる存在になる。医療・健康情報について、「医療相談」は範囲外で、司書が診断や判断はできないにしても、医療・健康情報のレファレンスをもう一歩進めることが、図書館が市民から信頼され、必要とされる近道ではないか。
<2013年11月号>
・特集は「今、求められる学校図書館職員像」。しかし「学校図書館職員」というのがイマイチわからんのだよなあ…と思いながら読んでいると学校図書館職員達の座談会で「1997年の法改正で、実行不可能な司書教諭像が打ち出された」「司書教諭が何をする人なのかは今も確立していません」「97年以降、教員に学校図書館を作る事が抜け落ち、図書館を作るのは司書、使う人は司書教諭という図式が出来上がってしまった」「教育委員会の方も、学校図書館に対して何のイメージもないのです」との事なので俺だけがわかっていないわけではないのだねと妙に安心した。
<2013年12月号>
・韓国図書館大会に日本図書館協会も参加。日本側の「東日本大震災と図書館」報告には、日本の事情に関心を寄せる約15名の韓国図書館員が参加した。いや…15名だけなのか…しかも「約」ってわざわざつけるって事はもっと少なかったんでは…。
・特集は「公共図書館電子書籍の今」。「何度目かの電子書籍元年を迎え」、「出版デジタル機構」「電子出版製作・流通協議会」「株式会社日本電子図書館サービス」等が設立されて電子書籍の攻勢が目立つが、書籍全体に対する電子書籍の割合は約8%に留まり、著作権について著作権者と出版者の意向は一致しておらず、コンテンツの出版から流通・利用に至るまでの環境(プラットフォーム)構築も未だ特定のプラットフォームが主流として定まっていないので図書館としては動きにくいのが現状。
・米国ではオーバードライブ社の電子書籍プラットフォームが米国図書館の9割以上を占めている。2011年末にアマゾン社のKindleがオーバードライブの読書端末として利用できるようになってから、Kindleをもらったお父さん達が図書館の電子書籍に飛びついた、と言われる。ところがこれまで電子書籍を提供してきた米国大手出版社は「Kindleへの電子書籍貸出が、図書館システムを通る必要がなく、直接アマゾンサイトにアクセスして行う事ができる」事から、アマゾン社を警戒しオーバードライブ社への契約を終了、一時は米国6大出版社のうち電子書籍を提供するのは2社のみとなった。
・そこで米国図書館協会は会長名で出版社に対する公開書簡を発表し、話し合いの場を用意。出版社側もこれに応え、一定の利用制限を設定したり電子書籍価格を通常書籍価格より高くする事で落としどころを見つけオーバードライブ社との契約を再開する事となった。米国図書館協会が調停に乗り出すところが図書館先進国・アメリカらしいなあと感心。
・「協会通信」より。定款の変更案及び関連規程について一部修正すべきとの指摘が内閣府よりあった。定款については内閣府の事前相談で内容的な確認はしていたが、内閣府の定款担当者が交代したため、その当時と判断が若干変わっていると思われる。「内閣の定款担当者」?