第20位:ツンマゾ! ツンなお嬢様は、実はM/葉原鉄[フランス書院:フランス書院美少女文庫えすかれ]
- 作者: 葉原鉄
- 出版社/メーカー: フランス書院
- 発売日: 2009/04/20
- メディア: 文庫
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そうなるとツンデレというものがいかにラブコメというより日本文化にとって似合わぬものかがよくわかる。幼児なら「本当は好きなのについ反対のことを言ってしまう」というのもわかるが、高校生にもなってそんなことをされてはたまらない。何となく察してくれというのならともかく、反対のことを言われてはどうしようもないではないか。それも照れ隠しで言っているならまだ妥協の余地があろうが、「私はツンデレだからそのあたりを考慮して当然だろう」と言われてどうしろというのか。
しかしながらいつも言っているように大半のオタクはマゾなので(というより世の中全体が『女はドSでなければならない、男はドMでなければならない』となっているのだが、その点については日を改めて)そのような情緒障害とでも言うべき精神病な女キャラクターが大量生産されているのであり、もちろん俺は相手にしないが、本作は「ツンでマゾ」ということなので物珍しさもあって買ったのである。余談だがフランス書院美少女文庫は今年これ一冊しか買っておらず、来年は積極的に買っていきたいと思います。
そして本作を読んでみての感想は「これは忍耐の物語である」ということであった。主人公はヒロインに対してファーストキスよりもSMプレイを強要され、高圧的に主従関係(主人公がSでヒロインがM)を強要されるのであり(「距離が縮まったとか対等になれたとか思わないでよね、あんたはただのご主人様で、あたしはただの奴隷」)、ややSっ気はあるもののこんな関係はおかしいと思う主人公は落胆し(「結局はただのセフレ止まりなんだな」)、まさに忍耐の物語であった。後半に入ってよしこうなったら徹底的にSMプレイに興じてやると主人公はありとあらゆる調教を投入(詳細は省くが、「泣くまでメチャクチャに、泣いてもグチャグチャにしてやりたいなあ」)、あげくの果てには「お前が一番嫌がるプレイをしてやる。その名もラブラブ・カップル・プレイだ」となってヒロインの心をつかむ(?)のであるが、こうなってくるともうメタSMの世界であった。本作を読んで、やはり俺には普通の和姦もので十分だと思った次第です。色んな分野に触れて勉強するのはいいことだが、基本を忘れてはいかんよ。
第19位:愛がいっぱい エロはおっぱい/アスヒロ[コアマガジン:メガストアコミックス]
愛がいっぱい エロはおっぱい (メガストアコミックスシリーズ No. 248)
- 作者: アスヒロ
- 出版社/メーカー: コアマガジン
- 発売日: 2010/02/19
- メディア: コミック
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翻って本作はというと「性交渉前→性交渉→性交渉後」の一連の進行が少しぎこちないように見受けられる。何やかんやと性交渉前に主人公とヒロインには一騒動起こるが、所詮それは性交渉を引き立てるための付け足しに過ぎなくなっていて、その代わり性交渉時の描写において成年版ラブコメの基本である「主人公とヒロインの愛情の対話としての性交渉」はしっかりと確保できているが、どこか物足りない、というよりは食おうと思ってもそれほど食えず、19位となりました。こんな感じで一般ラブコメよりは簡潔に評価していきます。
第18位:なかだしHAPPYEND主義/LapisLazuli[マックス:ポプリコミックス]
- 作者: Lapis Lazuli
- 出版社/メーカー: マックス
- 発売日: 2010/07/22
- メディア: コミック
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第17位:母子、濡れた一夜[一水社:いずみコミックス]
- 作者: PURUpyon西東
- 出版社/メーカー: 一水社
- 発売日: 2009/11/25
- メディア: コミック
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近親相姦とはラブコメの最後の砦である。「何でこんな美人がこんな平凡で普通な主人公を好きになるんだよ」と言われた時に「いや、このカップルは実は兄妹(姉弟)で許されざる関係なのさ」と言えば誰も反論しない。許されざる関係云々はともかく、長年一緒に暮らした家族であれば当然慕っているのであり、それが悪魔の所業で恋愛感情に転換してしまうことも想像上ではありえよう。しかし兄妹や姉弟の家族愛はそれほど絶対的ではなく、そこで「母・息子」となるのである。これにはもう誰も近寄れない。母性本能は人類が授かった宿命だからである。
もちろん母子相姦と聞いただけで普通の人間は本能的に嫌悪を感じるが(キチガイを自認する俺も少し躊躇する)、そこは漫画であるから見目麗しくまるで20〜30代のような母親を登場させることによって現実感を麻痺させ、しかし「母」なる無条件の無償の愛に包まれることで未知なる快楽を得るのである。ラブコメとしてもこの、主人公側は何もしなくていいという「無条件の無償の愛」という人類最大の都合の良いものを無視するわけにはいかない。本作もまた立派なラブコメなのである。
第16位:どっちもLOVE!?/木谷椎[一水社:いずみコミックス]
- 作者: 木谷椎
- 出版社/メーカー: 一水社
- 発売日: 2010/04/27
- メディア: コミック
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本作の表題作の場合主人公の相手となるのは妹と同級生(近所の幼馴染)であり、妹については先ほどの近親相姦の論理である程度は説明を省略できるが、それでも「ルール無用のLOVEバトル」と言いながら本当にそれぞれのキャラクターを描き切るには無理があるから結局ヒロイン2人が共同作業的に主人公と性交渉を持つところで落ち着いて物足りなくもある。別にそれが悪いわけではないが、そうなるとラブコメの見せ場の一つでもある「男をめぐって左右で女2人が対峙している」感じをあまり意識できないのが物足りんのであり、まあ平均的な作品ということですかな。むしろ読後の印象は表題作以外の短編の方が強烈で、作者の描く絵は線が細いというよりも薄く、その結果キャラクターの存在感があまりないが、それが性交渉を行うことによって「劣情」を読者に意識させ、それでいて和姦なのだから興奮を誘おう。特にこの母子相姦ものは素晴らしいが、まあそれは別の話ですな。
今度「日本ラブコメ大賞特別編・エロ漫画興奮セレクション」でもやろうかな。
第15位:ラブ・ハン〜告白は射精中〜/マイノリティ[コアマガジン:メガストアコミックス]
ラブ ハン (メガストアコミックスシリーズ No. 155)
- 作者: マイノリティ
- 出版社/メーカー: コアマガジン
- 発売日: 2008/02/19
- メディア: コミック
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俺は「処女厨」ではないので処女じゃないといかんというわけではないが、しかしヒロインが主人公(つまり読者)以外の男と肌を合わせては気分が悪い。その気分の悪さを彼氏がいる女を略奪することによってより興奮に転化させるというのも手法としてはありえようが、そのような高等テクニックはラブコメの文法にはない。ラブコメにおいては「平凡で地味で冴えなくて目立たない青年」が美人で可愛いヒロインを射止めることによって「イケメンでスポーツができる野郎に勝った」という優越感に浸ることが基本であって、実際に目の前に彼氏がいてその彼氏からヒロインを略奪して後ろめたさを感じず(「後ろめたさ」が快楽の導火線になることもあるかもしれんが、ややこしいのでここでは考えない)快楽として楽しむのは大変な困難である。ところが本作ではその困難さをヒロインたちの「マゾっぷり」で解決しているところが豪快というか、思わず目を奪われる。各短編全てに共通しているのは彼氏がいるヒロインはなぜか主人公と性的関係を持ち、その主人公にヤられるうちにヒロインは自分の本性である「マゾ」的快楽に目覚め、その快楽を目覚めさせてくれた主人公に乗りかえる、という展開である。
「マゾ」と言っても色々あるが、本作では「身も心も平凡で地味な主人公に捧げる」という極めてラブコメ的なものであり、そのようにヒロインをマゾに開発した優越感(イケメンでスポーツマンな彼氏ではなく自分が開発した)によって略奪の後ろめたさを帳消して「寝取った」ことの快楽がムクムクと勃起してくるという寸法である。が、やはり俺の趣味ではないしラブコメ的にも評価のしようがないので「寝取り」ではなくあくまでヒロインの「マゾっ子」ぶりを評価してこの順位となりました。
しかし最後の腹ポテプレイ短編はちょっとなあ…。
第14位:恋愛スタンピート!/Dr.P[富士美出版:富士美コミックス]
- 作者: Dr.P
- 出版社/メーカー: 富士美出版
- 発売日: 2010/09/25
- メディア: コミック
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しかしながら本作は決して出来の悪いものでもない。実際「中性的」や「童顔」をあまり強調しない短編の完成度はかなりのものがあるが、総合的な評価をするとこの順位に甘んじてもらうのが妥当であろう。うまいこといかんなあ。
第13位:しすた〜ずえっち/アーセナル[富士美出版:富士美コミックス]
- 作者: アーセナル
- 出版社/メーカー: 富士美出版
- 発売日: 2010/11/25
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本作は一応「姉妹系」ということだが、姉妹と性交渉を持つことによる淫猥さもなく(例えばこの姉妹をクラスメイトにしても全く違和感はないだろう)、各短編とも次々と各ヒロインが主人公に襲い掛かるが、その流れも淡白である。よくある成年漫画のシナリオをとりあえずやってみたような印象で、作者の個々の技法が申し分ない(というより無駄がない)から余計残念である。
俺は大量生産される成年漫画に「今までとは違った、奇抜で独創性のある」ストーリーを求めているのではない(そんなことは無理だ)。しかし何もしないでいいというわけでもなく、だから俺は繰り返し「平凡で普通な青年を主人公とすること」を唱え、少なからぬ成年漫画家たちも俺ほどの狂気染みた執着はないにしろ「平凡で普通な青年を主人公とすること」によって差別化を図ろうと日夜工夫をこらしているはずである。だがこの作者の場合その器用さによって表面上は完璧に仕上げてしまえるのでそこに込めるべき熱意がなくても問題がないことになってしまっている印象を拭いきれなかった。精神論は好きではないが、しかしテクニックが精神を超えるかというとそうではないので申し訳ないが俺は本作についてこのように書かざるを得ない。もし条件が整えば本作は1位となっていたはずである。
第12位:パイ×クラ/工藤洋[ティーアイネット:MUJIN COMICS]
- 作者: 工藤洋
- 出版社/メーカー: ティーアイネット
- 発売日: 2009/11/13
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ラブコメとしては最初に掲載されている「平凡で地味な主人公(フリーターで基本ひきこもりで今年30歳になる駄目なおっさん)」がどこかのグラビアアイドルとヤることができるというそれだけで満点であるが、本作では身体で愛し合うのであるから非常に荒々しく生々しく、また言葉が通用しないから真剣勝負となる。そして真剣勝負でありながら男(主人公)側が勝つことはエロ漫画である以上当然であり、それにややマゾっぽく性欲旺盛なヒロインたちの魅力も重なって非常に快楽的な作品世界を堪能できるのである。シナリオのないシナリオをもとに戦うプロレスのようだ。また自慰の道具としても大変お世話になりました。
第11位:なりきりツンドレイ/どわるこふ[キルタイムコミュニケーション:アンリアルコミックス]
- 作者: どわるこふ
- 出版社/メーカー: キルタイムコミュニケーション
- 発売日: 2010/11/26
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しつこいようだが男が女を支配すると言ってもその「男」を平凡で地味で冴えない男に限定するところにラブコメの特異性がある。本作は「奴隷(それも性奴隷)」であることを全面に出すことによって優位さを強烈に意識させ、20位の作品の場合なぜか「ツン」と「奴隷」を並列に扱おうとしていたが、本作の場合題名こそ「ツンドレイ」であるが「ツン」状態の女が男に優位に立とうとする描写はほとんどないので問題はない。そして奴隷にさせることで性交渉をより淫猥にさせ、それが男(主人公)の立場を有利にさせることでラブコメとしてもおいしくなっている。これこそが「エロ(和姦)とラブコメの共同作業」が成立した稀有な例である。しかし「女=ドS」「男=ドM」という風潮が我々のみならず一般にも広まってしまったことで逆に反発が起こって最近「M女」ものが増えてきたのは大変いい事だ。
第10位:いちゃ×2 らぶ×2 コスプレ乙女/肉そうきゅー。[マックス:ポプリコミックス]
- 作者: 肉そうきゅー。
- 出版社/メーカー: マックス
- 発売日: 2010/06/24
- メディア: コミック
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そして最近は和姦系の成年漫画が多くなってきたとは言え(それは俺のおかげだと思うんですがどうですか)「いちゃいちゃ・らぶらぶ」なものと言えばポプリクラブの右に出る者はいないが、本作はなるほど題名の通り「いちゃいちゃ・らぶらぶ」について他の成年漫画とは一線を画していると言えよう。もちろん「いちゃいちゃ・らぶらぶ」を強調すると本来の成年漫画の仕事である「刺激的」なものが引っ込むが、では「刺激的」に描くことに集中すれば刺激度は伸びていくかというとそうでもない。ある一定のレベルを超えればあとはただ惰性的に進むだけであって、それならば作者のように、ベテラン成年漫画家に比べればやや劣る作画能力であっても性交渉描写を「いちゃいちゃ・らぶらぶ」という雰囲気でまとめ上げている作品の方がラブコメとして生産的なのである。つまり今回の順位は「いちゃいちゃ・らぶらぶ」を選択したことによるものであって作者の実力とは言い難いが、せっかく「ポプリクラブ」という素晴らしい舞台があるのだから是非とも「いちゃいちゃ・らぶらぶ」を極めて頂きたい。コスプレについてはまあどうでもいいが、この「お兄様らぶらぶメイド妹」は良いですなあ。
第9位:俺専彼女/小暮マリコ[ティーアイネット:MUJIN COMICS]
- 作者: 小暮マリコ
- 出版社/メーカー: ティーアイネット
- 発売日: 2010/03/05
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「ヒロインが主人公に自分自身を差し出す」ことで成年漫画として成立させ、あるいはラブコメ的に最大限魅力的にするための巨乳であり可愛い子ちゃんなのである。服の上からもそのボリュームがわかる巨乳であってもそれが「主人公に差し出す」わけではないのであればただの脂肪の塊でしかない。その点、本作においては積極的消極的を問わずヒロインが自分の身体を差し出すどころかまるで主人公のためにその存在を許されているかのような異様な雰囲気に包まれながらもそれをラブラブな和姦ものとして読者に提示して、「心地よい違和感」とでも言うべき強烈な読後感を発生させている。またこの「俺専彼女」という題名もいい。まさに本作は「俺(=主人公=読者)」と俺専用の彼女たちの物語である。
第8位:ぱいぱいん/さいだ一明[エンジェル出版:エンジェルコミックス]
- 作者: さいだ一明
- 出版社/メーカー: エンジェル出版
- 発売日: 2010/07/17
- メディア: コミック
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恐らく年季の入ったエロ漫画読者の方なら俺が本作のキャラクターの特徴を「もう目つきからしていやらしい」と言っても賛同してくれるものと思う。この目は複数の男に犯されながら喜んでいるというキチガイとそう変わらない目である(ただしエロ漫画の論理で考えれば「複数の男に犯されながら喜んでいる」=「キチガイ」ではない)。それを和姦という世界で包んでその破壊的なエネルギーをプラスの方向に持っていくことに成功している、というのが俺が言いたいことに最も近い表現であるが、とにかく破壊的な淫猥さが主人公だけに向けられた時のパワーは計り知れない。ラブコメにおいて「ヒロインが主人公に過大なまでの愛を捧げる」というとお決まりのヤンデレものとなってしまうが、本作の場合終始「淫猥さ」による愛で乗り切っているところにその迫力があろう。よく「アヘ顔にしておけば何でもいやらしくなる」というが、やはりそれはテクニックだけの話で、本当のいやらしさとは本作のようにもっと根源的な淫猥さから発せられるのである。
第7位:バナナミルクセーキへようこそ/成田香車[若生出版:WAKOH COMICS]
- 作者: 成田香車
- 出版社/メーカー: 若生出版
- 発売日: 2010/03/31
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ストーリー自体は表題作だと冴えない童貞の浪人生が親戚の家(喫茶店を経営)に下宿してその家に下宿させてもらう代わりに喫茶店を手伝いその家の母や娘とヤッて…というどこにでもあるものであって、主人公は何一つ能動的に動くことはなくこの女たちと性交渉に及ぶという珍しくもないありきたりなものである。女四人の痴話喧嘩とハーレム展開も平凡である(えらい贅沢なことを言うとるが)が、そこに「身体と身体のぶつかり合い」の迫力がプラスされることで和姦さ、そしてラブコメさを強調することに成功している。またそこはかとなく淫猥さ(複数の男に犯されて喜ぶような淫猥さであるが、もちろん本作にそのような描写はない)も漂わせ、それによってどこか違和感も感じさせているので読後感は非常に複雑なものとなっているが、そこに俺は成年漫画の根本を見る。例えラブコメという枠内であっても和姦を採用していても、所詮「性交渉」とはタブーなのであり、それを軽く楽しみながらもその「タブー」は突如としてやってきて我々はハッとさせられるのである。本作はそこまで考えさせてくれる稀有な作品でもあった。
第6位:あまみドコロ/睦茸[コアマガジン:メガストアコミックス]
あまみドコロ (メガストアコミックスシリーズ No. 262)
- 作者: 睦茸
- 出版社/メーカー: コアマガジン
- 発売日: 2010/05/25
- メディア: コミック
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「甘さ」がなぜ「おっぱい」と結びつくのかというと母性の象徴(赤ん坊は誰しも母の乳を吸う)であるおっぱいには母が子に乳を与えるような甘美な世界を引き立てるものがあるからである。とにかく本作の「おっぱい」はいわゆる扇情的な、成年漫画の文脈にある「おっぱい」ではない。いや「エロ」すらも包み込んでしまう甘さの象徴としての「おっぱい」であって、そのため本作はエロよりも母性的なもの、母を前にした子のように「主人公側は何もせずヒロインに恋愛事をリードしてもらう」というラブコメにつながるのである。とにかくここまで乳を強調されるとおっぱいおっぱい言うても全然恥ずかしくならんな。それよりも「ちゅーしながら洗う」だの「ちゃんと前からいっぱいいっぱいキスしながらぎゅってだっこしながらしろ」などと言われる方が恥ずかしい。
第5位:ヴァージンルーム/八十八良[ワニマガジン社:WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL]
ヴァージンルーム (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)
- 作者: 八十八良
- 出版社/メーカー: ワニマガジン社
- 発売日: 2009/12/22
- メディア: コミック
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しかしながらエロ漫画の宿命か、本作は玉石混合の短編を集めた作品集でありたとえ作者が優れた手腕を持っていてもやはり良いものと悪いものが同列で扱われて作者の優れた能力が分散されてこの順位となった。もし作者が長編ものに挑戦すれば1位は大いにありえただろう。惜しいことだ。
第4位:誘惑という名の愛/ゆうきともか[富士美出版:富士美コミックス]
- 作者: ゆうきともか
- 出版社/メーカー: 富士美出版
- 発売日: 2009/06/25
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刺激的で煽動的であればあるほど良い成年漫画において作者の描く淡白な絵は異端である。いや「淡白」というよりも男と女が出会って性交渉へと至るまでの余計な雑音を全て捨てている「潔さ」と言うべきであって、雑音を消し去り、ヒロインたちのモノローグをさりげなく挿入し、そのモノローグが結局は普通の男(主人公)に対する愛の告白であったりそこから一歩進んで誘惑しようとする企みであったりするので非常にラブコメ的で快楽的にできている。ヒロインの内面に踏み込み、しかしその踏み込みを余計な雑音なしにあくまで性交渉へと至る理由に限定しているところが丁寧でありながらスピーディーでもある。そうすることによって読者は完全に作品世界に感情移入することができ、極上の世界を味わうことができるが、そうなるとすぐに味わい尽くしてしまって10編程度だと物足りなくもある。それはちょっと贅沢過ぎるのかな。とにかく本作を日本ラブコメ大賞に入れることで何とも言えない重厚感が出よう。こういう作者、作品を大事にすべきだと再認識した次第であります。
第3位:その唇で囁いて/いとうえい[ワニマガジン社:WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL]
その唇で囁いて (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)
- 作者: いとうえい
- 出版社/メーカー: ワニマガジン社
- 発売日: 2009/12/01
- メディア: コミック
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決して作画能力が高いと言えず、ストーリーにびっくりする工夫をこらしているわけではない本作は小さくまとまっていると言えばそれまでであるが、だからこそ読む側によって柔軟に対応できているのである。説明が難しいが、ホームランを狙わずヒットを量産することに専念した安定感というものが本作にはあって、その結果饒舌でもなく雄弁でもなく、「主人公×ヒロイン×性交渉」という図式で完結され、これが驚くほど気持ちいい響きを生んでいるのである。そしてこの気持ちよさと、ラブコメで言うところの「ヒロインが主人公に積極的に動くことによって主人公側は何もしなくてよい」といういつもの閉鎖性が合わさった時、本作はありきたりな作品ながら3位たりえるのである。
第2位:お姉コレ/柚木N’[茜新社:TENMA COMICS]
- 作者: 柚木N’
- 出版社/メーカー: 茜新社
- 発売日: 2010/04/23
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姉に限らずヒロインが主人公より年上の場合は積極的に出ることが多いが、物語が進むに連れてその距離感の違い(積極的なヒロインと消極的な主人公)が欠点となって主人公との関係性が希薄になることが多々ある。しかし本作の場合物理的な「姉」としての立ち位置以外はそのあたりを曖昧にして矛盾を最小限にしているため希薄とならず、また希薄になる前に性交渉へと流れ、結果として「姉弟相姦」の一番おいしい部分である「恋人でありながら姉、姉でありながら妹、姉でありながら母」という快楽を味わうことができる非常に効率のいいエロ漫画となっていてあれよあれよと2位にまで登りつめてしまった。
しかしこの姉たちもエロいな。何回使ったことか。
第1位:ショッキングピンク!/ヤスイリオスケ[MAX:ポプリコミック]
- 作者: ヤスイリオスケ
- 出版社/メーカー: マックス
- 発売日: 2010/04/22
- メディア: コミック
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で、成年漫画は所詮は日陰者である。いかに明るくしたところでいかに健康的な男女の爽やかな愛を装ったところでそれは表に出てはいけないものである。美しい月にはなれても太陽にはなれない。だが本作は太陽のごとき底抜けに明るいものがある。それはもう根底からして底抜けに明るく、そこにラブコメがプラスされ性交渉もプラスされればもう無敵である。ストーリー自体も明るいというか能天気そのものであるが(いきなり女がやってきて「私の事好きって言え」「世界征服のために子作りしましょう」)、その能天気さを勢いや力技あるいはテクニックではなく根本に据えているところに本作の特徴がある。太陽のような明るさで成年漫画が宿命的に持つ陰気さをほぼゼロとし、「平凡で地味な主人公に天下の美女がやってくる」という都合のいい設定を求めることの後ろめたささえも消しているのである。また出てくるヒロインたちが高飛車で傲岸不遜でありながら主人公なしではいられないというのも大いにプラスに働いている。そして本作はエロ漫画にしては珍しい240ページの大作であり、またこれほどの長丁場を「太陽のような明るさ」で描き切ってしまうエロ漫画は過去に類例がないだろう。更に言えばその「明るさ」はあくまでヒロインたちがこの平凡で地味で冴えない主人公に関わったことから生まれるものなのであり、あくまで主導権は主人公側が握っていることもラブコメとして非常に優れている。読み出して途中からはまるで大船に乗ったつもりで安心して読むことができた。桁違いの実力であり、今年度圧勝の1位である。
さて以上を持ちまして2010年の更新は終了であります。ああ疲れた。今年も皆様(推定12人くらいの定期読者の皆さん)にはお世話になりました。また来年お会いしましょう。