5 抜き打ち解散(成年 20→1)

第20位:ツンマゾ! ツンなお嬢様は、実はM/葉原鉄[フランス書院フランス書院美少女文庫えすかれ

ツンマゾ!―ツンなお嬢様は、実はM (えすかれ美少女文庫)

ツンマゾ!―ツンなお嬢様は、実はM (えすかれ美少女文庫)

 英語圏では「好きなら好き、嫌いなら嫌い」と言う。日本においては「好きな相手に何となく好きと思わせ、嫌いな相手に何となく嫌いと思わせる」から、ラブコメのヒロインたちは突如として突飛な行動(いきなり腕を組んだり主人公の部屋に侵入したり)に出て「主人公好き好き大好き」であることをわかってもらおうとするのである。アメリカ人であれば「好きなら好きって言え。そしたら膣内射精でも何でもしてやる」というところであろうが、何となく接してやる文化を持つ我々は「ここまで積極的になるということは俺のことが好きなんだな」となる。まるでストリップショーのようにお色気攻撃を繰り返すキャラクターたちがいざ告白しようとすると「あ、あの…好き、です…」と顔を赤らめる描写を諸君も見飽きるほど見ているだろうが、それはそういうことである。
 そうなるとツンデレというものがいかにラブコメというより日本文化にとって似合わぬものかがよくわかる。幼児なら「本当は好きなのについ反対のことを言ってしまう」というのもわかるが、高校生にもなってそんなことをされてはたまらない。何となく察してくれというのならともかく、反対のことを言われてはどうしようもないではないか。それも照れ隠しで言っているならまだ妥協の余地があろうが、「私はツンデレだからそのあたりを考慮して当然だろう」と言われてどうしろというのか。
 しかしながらいつも言っているように大半のオタクはマゾなので(というより世の中全体が『女はドSでなければならない、男はドMでなければならない』となっているのだが、その点については日を改めて)そのような情緒障害とでも言うべき精神病な女キャラクターが大量生産されているのであり、もちろん俺は相手にしないが、本作は「ツンでマゾ」ということなので物珍しさもあって買ったのである。余談だがフランス書院美少女文庫は今年これ一冊しか買っておらず、来年は積極的に買っていきたいと思います。
 そして本作を読んでみての感想は「これは忍耐の物語である」ということであった。主人公はヒロインに対してファーストキスよりもSMプレイを強要され、高圧的に主従関係(主人公がSでヒロインがM)を強要されるのであり(「距離が縮まったとか対等になれたとか思わないでよね、あんたはただのご主人様で、あたしはただの奴隷」)、ややSっ気はあるもののこんな関係はおかしいと思う主人公は落胆し(「結局はただのセフレ止まりなんだな」)、まさに忍耐の物語であった。後半に入ってよしこうなったら徹底的にSMプレイに興じてやると主人公はありとあらゆる調教を投入(詳細は省くが、「泣くまでメチャクチャに、泣いてもグチャグチャにしてやりたいなあ」)、あげくの果てには「お前が一番嫌がるプレイをしてやる。その名もラブラブ・カップル・プレイだ」となってヒロインの心をつかむ(?)のであるが、こうなってくるともうメタSMの世界であった。本作を読んで、やはり俺には普通の和姦もので十分だと思った次第です。色んな分野に触れて勉強するのはいいことだが、基本を忘れてはいかんよ。
   
第19位:愛がいっぱい エロはおっぱい/アスヒロコアマガジンメガストアコミックス]
 このブログを始めた5年前ならば「もう和姦なら何でもいいよ」というぐらい飢えていたし、和姦ものは本当に数が絶対的に少なかった。ところが俺の長年の活動のおかげで今や和姦ものもだいぶ多くなった。というわけで本来の、「成年版ラブコメ」としての評価をやってきたいと思います。もちろん成年漫画なのだから男と女が性交渉するのが目的であるが、ラブコメとして見る場合その性交渉へと至る過程がどうであるか、或いは性交渉における二人の想いはどのように表現されるか、また性交渉終了後に何を持ってくるかが重要になってくるわけで、成年漫画とはいえただヤレばいいというわけではないのである。特に「性交渉」という、一般ラブコメから更に進んだ関係を描写することができるのだから、更に主人公とヒロインの絆を強固にすることもできよう。
 翻って本作はというと「性交渉前→性交渉→性交渉後」の一連の進行が少しぎこちないように見受けられる。何やかんやと性交渉前に主人公とヒロインには一騒動起こるが、所詮それは性交渉を引き立てるための付け足しに過ぎなくなっていて、その代わり性交渉時の描写において成年版ラブコメの基本である「主人公とヒロインの愛情の対話としての性交渉」はしっかりと確保できているが、どこか物足りない、というよりは食おうと思ってもそれほど食えず、19位となりました。こんな感じで一般ラブコメよりは簡潔に評価していきます。
    
第18位:なかだしHAPPYEND主義/LapisLazuli[マックス:ポプリコミックス]
なかだしHAPPY END主義 (ポプリコミックス76)

なかだしHAPPY END主義 (ポプリコミックス76)

 「なかだし」で「HAPPYEND」。実にいい言葉だ。女性の社会進出が進んでコンドームが当たり前となって今やエロ漫画でしか膣内射精もハッピーエンドもありえないということがはっきりとわかったが、本作はそんな現状に警鐘を鳴らすようなものではありません(当たり前だ)が、とにかくポプリクラブという和姦専門雑誌に載っていること自体がすでに武器である。ただし19位と同じく「性交渉前→性交渉→性交渉後」の進行がぎこちないが、こちらはその「ぎこちなさ」もコメディとして処理しよう、コメディとしても処理できないのであれば主人公やヒロインをアホとして描こうと開き直っているのでまだ上である。性交渉の描写もキャラクターの描写も大したことはないが(女はともかく、男の身体までスタイルを良くしてどうする)、性交渉へと至る流れがちゃんと「女(ヒロイン)が男(主人公)に積極的にアピールしながら、決して男より上位には立たない」というラブコメの文法で魅せているのが和姦専門雑誌・ポプリクラブで長いキャリアを誇る作者ならではであろう。キャラクターもアホならアホとしてのエロ、ちょっとサドっぽいならサドっぽいなりのエロに配慮がされていて、こういう女を丸裸にすることで快感もより広がるというものである。
  
第17位:母子、濡れた一夜[一水社:いずみコミックス]
母子、濡れた一夜 2 (いずみコミックス)

母子、濡れた一夜 2 (いずみコミックス)

 近親相姦で一般的なのは何と言っても兄妹相姦であり、次いで姉弟相姦であるが、やはり近親相姦と言えば「母子相姦」が興奮度も完成度も一番であろう(何を言っとるんだ)。しかしながらここはどれだけエロいか(自慰をするのに一番使えるか)を競う場ではないのでどうしてもこのような順位にならざるを得ないわけで、興奮度で言うたらまあ3位ぐらいですかな(だから何を言っとるんだ)。
 近親相姦とはラブコメの最後の砦である。「何でこんな美人がこんな平凡で普通な主人公を好きになるんだよ」と言われた時に「いや、このカップルは実は兄妹(姉弟)で許されざる関係なのさ」と言えば誰も反論しない。許されざる関係云々はともかく、長年一緒に暮らした家族であれば当然慕っているのであり、それが悪魔の所業で恋愛感情に転換してしまうことも想像上ではありえよう。しかし兄妹や姉弟の家族愛はそれほど絶対的ではなく、そこで「母・息子」となるのである。これにはもう誰も近寄れない。母性本能は人類が授かった宿命だからである。
 もちろん母子相姦と聞いただけで普通の人間は本能的に嫌悪を感じるが(キチガイを自認する俺も少し躊躇する)、そこは漫画であるから見目麗しくまるで20〜30代のような母親を登場させることによって現実感を麻痺させ、しかし「母」なる無条件の無償の愛に包まれることで未知なる快楽を得るのである。ラブコメとしてもこの、主人公側は何もしなくていいという「無条件の無償の愛」という人類最大の都合の良いものを無視するわけにはいかない。本作もまた立派なラブコメなのである。
  
第16位:どっちもLOVE!?/木谷椎一水社:いずみコミックス]
どっちもLOVE!? (いずみコミックス)

どっちもLOVE!? (いずみコミックス)

 「3P」とはエロ漫画においては常套手段であり別に難しいものではない。結末も主人公1人とヒロイン2人が仲良く愛し合う(ただしレズ的行為に走らせてはいけない)などとして容易に取り繕うこともできよう。ただしハーレムと同様、ヒロイン2人を同列に扱って魅力的に描いていくのはかなり根気のいることであって、ヒロイン2人と主人公の性交渉描写をふんだんに盛り込まなければならない(穴2つに棒1つで対応しなければならない)のだから、キャラクターとしての魅力に細心の注意を払わなければならない。
 本作の表題作の場合主人公の相手となるのは妹と同級生(近所の幼馴染)であり、妹については先ほどの近親相姦の論理である程度は説明を省略できるが、それでも「ルール無用のLOVEバトル」と言いながら本当にそれぞれのキャラクターを描き切るには無理があるから結局ヒロイン2人が共同作業的に主人公と性交渉を持つところで落ち着いて物足りなくもある。別にそれが悪いわけではないが、そうなるとラブコメの見せ場の一つでもある「男をめぐって左右で女2人が対峙している」感じをあまり意識できないのが物足りんのであり、まあ平均的な作品ということですかな。むしろ読後の印象は表題作以外の短編の方が強烈で、作者の描く絵は線が細いというよりも薄く、その結果キャラクターの存在感があまりないが、それが性交渉を行うことによって「劣情」を読者に意識させ、それでいて和姦なのだから興奮を誘おう。特にこの母子相姦ものは素晴らしいが、まあそれは別の話ですな。
 今度「日本ラブコメ大賞特別編・エロ漫画興奮セレクション」でもやろうかな。
   
第15位:ラブ・ハン〜告白は射精中〜/マイノリティ[コアマガジンメガストアコミックス]
ラブ  ハン (メガストアコミックスシリーズ No. 155)

ラブ ハン (メガストアコミックスシリーズ No. 155)

 それでですね、日頃から「ぬくぬくとした居心地の良い世界に逃げ込めばいいんじゃ」と言ってますが、それはそれこれはこれでぬくぬくとした居心地の良い世界にばかり浸っていても駄目なので幅広く見聞を深めようと思うわけですが、かと言って鬼畜凌辱強姦輪姦ホモレズサドマゾと握手する気はないし、「寝取られ」ものって言うんですか、ああいうのももちろんノーサンキューですからね。では「寝取り」ものはどうかというと、まあ読んでみないとわかりませんな。
 俺は「処女厨」ではないので処女じゃないといかんというわけではないが、しかしヒロインが主人公(つまり読者)以外の男と肌を合わせては気分が悪い。その気分の悪さを彼氏がいる女を略奪することによってより興奮に転化させるというのも手法としてはありえようが、そのような高等テクニックはラブコメの文法にはない。ラブコメにおいては「平凡で地味で冴えなくて目立たない青年」が美人で可愛いヒロインを射止めることによって「イケメンでスポーツができる野郎に勝った」という優越感に浸ることが基本であって、実際に目の前に彼氏がいてその彼氏からヒロインを略奪して後ろめたさを感じず(「後ろめたさ」が快楽の導火線になることもあるかもしれんが、ややこしいのでここでは考えない)快楽として楽しむのは大変な困難である。ところが本作ではその困難さをヒロインたちの「マゾっぷり」で解決しているところが豪快というか、思わず目を奪われる。各短編全てに共通しているのは彼氏がいるヒロインはなぜか主人公と性的関係を持ち、その主人公にヤられるうちにヒロインは自分の本性である「マゾ」的快楽に目覚め、その快楽を目覚めさせてくれた主人公に乗りかえる、という展開である。
 「マゾ」と言っても色々あるが、本作では「身も心も平凡で地味な主人公に捧げる」という極めてラブコメ的なものであり、そのようにヒロインをマゾに開発した優越感(イケメンでスポーツマンな彼氏ではなく自分が開発した)によって略奪の後ろめたさを帳消して「寝取った」ことの快楽がムクムクと勃起してくるという寸法である。が、やはり俺の趣味ではないしラブコメ的にも評価のしようがないので「寝取り」ではなくあくまでヒロインの「マゾっ子」ぶりを評価してこの順位となりました。
 しかし最後の腹ポテプレイ短編はちょっとなあ…。
    
第14位:恋愛スタンピート!/Dr.P[富士美出版:富士美コミックス]
恋愛スタンピード! (富士美コミックス)

恋愛スタンピード! (富士美コミックス)

 ずるい言い方だが普通にやっておれば本作はもっと上位を狙えたはずなのだ。各短編におけるヒロインは積極的・消極的を問わず暴走気味に主人公にアタックするが(まさに「アタック」という表現がぴったりだ)、終始暴走しているわけではなく男(主人公)の意を汲んで行動し決して不愉快にさせない細やかな気遣いも持ち合わせており言うことなしであった。しかし男主人公たちがどことなく中性的なのだ。そのため今ひとつ主人公に感情移入できず、この順位まで下がることとなった。何とも惜しいが、ではどういう風に中性的かというともう見た目がそうであって、あまり凹凸のない丸っこい童顔な絵がそうさせているのだろうが、その絵の持つ雰囲気に引っ張られたのか言動もどことなく幼さと可愛さを醸し出してしまっている。男主人公をわざと幼く可愛くするという手法はなるほど書く側にとっては楽かもしれないが、どんなにごまかしても所詮最後は男が女を組み敷くのである(騎上位ならいいだろうとかの問題ではない)。本作に限ったことではないが、わざと男を女より下位に持っていくことでその場を取り繕ったとしても性交渉の場面となってその違和感は一気に放出するのである(もちろん「ドS女とドM男」として意識的に作っていれば別であるが)。つまりラブコメとして見た時そのように男を中性的に描くことは間違いなのであり、また中性的な面に引っ張られてか主人公たちの言動も青臭く不自然に爽やか過ぎて読むのが億劫にすらなる危険性も孕んでいる。読んでいて時々苛々させられるのである。
 しかしながら本作は決して出来の悪いものでもない。実際「中性的」や「童顔」をあまり強調しない短編の完成度はかなりのものがあるが、総合的な評価をするとこの順位に甘んじてもらうのが妥当であろう。うまいこといかんなあ。
  
第13位:しすた〜ずえっち/アーセナル富士美出版:富士美コミックス]
しすた?ずえっち (富士美コミックス)

しすた?ずえっち (富士美コミックス)

 あまり精神論は言いたくないが、本作が読後あまり印象に残らないのは作者を含めた制作側が何がしたいのかわからないからである。キャラクターはいずれも美人で可愛く、スレンダーさと巨乳のバランスも良く、性交渉の魅せ方も優れているが、どうもまとまりがないので印象に残らんのである(キャラクターをデフォルメした時の雑な感じも気に入らない)。上等な刺身と上等な米を用意しておきながら寿司にしないで別々に食ってしまったような感じで戸惑うばかりであった。
 本作は一応「姉妹系」ということだが、姉妹と性交渉を持つことによる淫猥さもなく(例えばこの姉妹をクラスメイトにしても全く違和感はないだろう)、各短編とも次々と各ヒロインが主人公に襲い掛かるが、その流れも淡白である。よくある成年漫画のシナリオをとりあえずやってみたような印象で、作者の個々の技法が申し分ない(というより無駄がない)から余計残念である。
 俺は大量生産される成年漫画に「今までとは違った、奇抜で独創性のある」ストーリーを求めているのではない(そんなことは無理だ)。しかし何もしないでいいというわけでもなく、だから俺は繰り返し「平凡で普通な青年を主人公とすること」を唱え、少なからぬ成年漫画家たちも俺ほどの狂気染みた執着はないにしろ「平凡で普通な青年を主人公とすること」によって差別化を図ろうと日夜工夫をこらしているはずである。だがこの作者の場合その器用さによって表面上は完璧に仕上げてしまえるのでそこに込めるべき熱意がなくても問題がないことになってしまっている印象を拭いきれなかった。精神論は好きではないが、しかしテクニックが精神を超えるかというとそうではないので申し訳ないが俺は本作についてこのように書かざるを得ない。もし条件が整えば本作は1位となっていたはずである。
  
第12位:パイ×クラ/工藤洋[ティーアイネットMUJIN COMICS] 
パイ×クラ (MUJIN COMICS)

パイ×クラ (MUJIN COMICS)

 本作は15位の作品と並んでその豪快さで今年の日本ラブコメ大賞成年部門を見事にかき回してくれたが、特徴はというと作中にある「気持ちいい?おっぱいとおち○ちんが愛し合ってるよ」が全てを物語っている。俺が身銭を切って買う以上そのエロ漫画は和姦であり、よって主人公とヒロインが愛し合うことは読む前からわかっているが、本作は会話ではなく身体で愛し合うのである。などと言ってもわけがわからんだろうが、普通なら主人公とヒロインがいて何らかの事件もしくは騒動を経て性交渉へと至るはずが本作の場合性交渉前のやり取りはあくまで付け足しに過ぎず、本番はあくまでも性交渉から始まるのである。そして和姦であることを証明するために性交渉による上昇気流に乗って和姦のための諸条件を一気に解決しているところに最大の特色がある。何とも大胆、豪快で、星の数ほどエロ漫画があってもこのような漫画にはそうそうお目にかかれない。
 ラブコメとしては最初に掲載されている「平凡で地味な主人公(フリーターで基本ひきこもりで今年30歳になる駄目なおっさん)」がどこかのグラビアアイドルとヤることができるというそれだけで満点であるが、本作では身体で愛し合うのであるから非常に荒々しく生々しく、また言葉が通用しないから真剣勝負となる。そして真剣勝負でありながら男(主人公)側が勝つことはエロ漫画である以上当然であり、それにややマゾっぽく性欲旺盛なヒロインたちの魅力も重なって非常に快楽的な作品世界を堪能できるのである。シナリオのないシナリオをもとに戦うプロレスのようだ。また自慰の道具としても大変お世話になりました。
   
第11位:なりきりツンドレイ/どわるこふキルタイムコミュニケーション:アンリアルコミックス]
 さて今回の日本ラブコメ大賞成年版ではやけにテクニック的なことに言及しているが、あくまで「ラブコメとして優れているかいないか」で評価していることを忘れそうなのでここでもう一度書いておこう。また総合評価であるから、作画能力が優れていてもそれがラブコメ描写に活きていなければ評価されないし、作画能力があまりなくても極めてラブコメ描写が優れていれば評価される。本作の場合作者の作画能力はまさに平均点というところだが、「ツンドレイ」という、ラブコメとして素晴らしい題材をうまく料理しているためこの順位となった。ラブコメとは基本的に男が優位に立とうという思想だからである。
 しつこいようだが男が女を支配すると言ってもその「男」を平凡で地味で冴えない男に限定するところにラブコメの特異性がある。本作は「奴隷(それも性奴隷)」であることを全面に出すことによって優位さを強烈に意識させ、20位の作品の場合なぜか「ツン」と「奴隷」を並列に扱おうとしていたが、本作の場合題名こそ「ツンドレイ」であるが「ツン」状態の女が男に優位に立とうとする描写はほとんどないので問題はない。そして奴隷にさせることで性交渉をより淫猥にさせ、それが男(主人公)の立場を有利にさせることでラブコメとしてもおいしくなっている。これこそが「エロ(和姦)とラブコメの共同作業」が成立した稀有な例である。しかし「女=ドS」「男=ドM」という風潮が我々のみならず一般にも広まってしまったことで逆に反発が起こって最近「M女」ものが増えてきたのは大変いい事だ。
  
第10位:いちゃ×2 らぶ×2 コスプレ乙女/肉そうきゅー。[マックス:ポプリコミックス]
いちゃ×2らぶ×2コスプレ乙女 (ポプリコミックス74)

いちゃ×2らぶ×2コスプレ乙女 (ポプリコミックス74)

 言うまでもないことだがラブコメを書く側も読む側も恥ずかしがってはいけない。これだけエロ漫画が溢れてあらゆる刺激を手に入れることができるというのに「いちゃいちゃ」や「らぶらぶ」をはっきりと書こうとすると多くの書き手のみならず読み手までもが恥ずかしがってしまってなかなか書こうとはしない。日本は「恥の文化」であるから仕方がないが、だからこそ「ふたりエッチ」は依然として日本ラブコメの最長老にして最大の作品となっているのである。
 そして最近は和姦系の成年漫画が多くなってきたとは言え(それは俺のおかげだと思うんですがどうですか)「いちゃいちゃ・らぶらぶ」なものと言えばポプリクラブの右に出る者はいないが、本作はなるほど題名の通り「いちゃいちゃ・らぶらぶ」について他の成年漫画とは一線を画していると言えよう。もちろん「いちゃいちゃ・らぶらぶ」を強調すると本来の成年漫画の仕事である「刺激的」なものが引っ込むが、では「刺激的」に描くことに集中すれば刺激度は伸びていくかというとそうでもない。ある一定のレベルを超えればあとはただ惰性的に進むだけであって、それならば作者のように、ベテラン成年漫画家に比べればやや劣る作画能力であっても性交渉描写を「いちゃいちゃ・らぶらぶ」という雰囲気でまとめ上げている作品の方がラブコメとして生産的なのである。つまり今回の順位は「いちゃいちゃ・らぶらぶ」を選択したことによるものであって作者の実力とは言い難いが、せっかく「ポプリクラブ」という素晴らしい舞台があるのだから是非とも「いちゃいちゃ・らぶらぶ」を極めて頂きたい。コスプレについてはまあどうでもいいが、この「お兄様らぶらぶメイド妹」は良いですなあ。
  
第9位:俺専彼女/小暮マリコ[ティーアイネットMUJIN COMICS] 
俺専彼女 (MUJINコミックス)

俺専彼女 (MUJINコミックス)

 ラブコメにおいては女が積極的に出なければならない。それを成年漫画に応用すると女がエロくないといけない。そして諸君もおわかりだとは思うが「エロい」と「淫乱」は違うのであって、淫乱とは棒なら何でもいいという人外の化け物のことを言い、「エロい」ヒロインとは「男(主人公)に肉体的にも精神的にも自分の全てを差し出す」ことを言うのであつる。それを主人公(読者)が受け取った時はじめて「この女(ヒロイン)、エロいな」となる。
 「ヒロインが主人公に自分自身を差し出す」ことで成年漫画として成立させ、あるいはラブコメ的に最大限魅力的にするための巨乳であり可愛い子ちゃんなのである。服の上からもそのボリュームがわかる巨乳であってもそれが「主人公に差し出す」わけではないのであればただの脂肪の塊でしかない。その点、本作においては積極的消極的を問わずヒロインが自分の身体を差し出すどころかまるで主人公のためにその存在を許されているかのような異様な雰囲気に包まれながらもそれをラブラブな和姦ものとして読者に提示して、「心地よい違和感」とでも言うべき強烈な読後感を発生させている。またこの「俺専彼女」という題名もいい。まさに本作は「俺(=主人公=読者)」と俺専用の彼女たちの物語である。
  
第8位:ぱいぱいん/さいだ一明エンジェル出版:エンジェルコミックス]
ぱいぱいん (エンジェルコミックス)

ぱいぱいん (エンジェルコミックス)

 「淫猥」と言っても計算された淫猥さと純粋な淫猥さがあって、どちらがより興奮を誘うかというとそれはもう純粋な方である。計算された淫猥さというのは所詮人工的なもので、わかりやすく言えば婚活女による打算にまみれた色気でしかない。対して純粋な淫猥さとは例によって5〜10人の男たちに犯されながらピースサインをしているような人外の化け物女によるものだが、本作の各短編は「純粋な淫猥さ」はそのままに、和姦として、ラブコメとして展開されていることに破壊力がある。
 恐らく年季の入ったエロ漫画読者の方なら俺が本作のキャラクターの特徴を「もう目つきからしていやらしい」と言っても賛同してくれるものと思う。この目は複数の男に犯されながら喜んでいるというキチガイとそう変わらない目である(ただしエロ漫画の論理で考えれば「複数の男に犯されながら喜んでいる」=「キチガイ」ではない)。それを和姦という世界で包んでその破壊的なエネルギーをプラスの方向に持っていくことに成功している、というのが俺が言いたいことに最も近い表現であるが、とにかく破壊的な淫猥さが主人公だけに向けられた時のパワーは計り知れない。ラブコメにおいて「ヒロインが主人公に過大なまでの愛を捧げる」というとお決まりのヤンデレものとなってしまうが、本作の場合終始「淫猥さ」による愛で乗り切っているところにその迫力があろう。よく「アヘ顔にしておけば何でもいやらしくなる」というが、やはりそれはテクニックだけの話で、本当のいやらしさとは本作のようにもっと根源的な淫猥さから発せられるのである。
  
第7位:バナナミルクセーキへようこそ/成田香車若生出版:WAKOH COMICS]
 その昔、作者の作風を「バリバリのハードロックのようだ」と言ったことがある(2006年10位)が、今回もその激しさは健在であった。この場合の「激しさ」とは「荒々しさ」や「暴力的」というものではなく、身体と身体がぶつかることによって生じる一瞬の空白と、その後の衝撃が間断なく押し寄せる、を繰り返す現象の総体である。そのため15位・12位の作品で言及した「豪快さ」とは似て非なるものであって、本作は別に身体で愛し合おうなどとはしていない。しかし主人公の身体とヒロインの身体がぶつかることによってより効果的に性交渉としての見せ場と「和姦」さを強調できている。
 ストーリー自体は表題作だと冴えない童貞の浪人生が親戚の家(喫茶店を経営)に下宿してその家に下宿させてもらう代わりに喫茶店を手伝いその家の母や娘とヤッて…というどこにでもあるものであって、主人公は何一つ能動的に動くことはなくこの女たちと性交渉に及ぶという珍しくもないありきたりなものである。女四人の痴話喧嘩とハーレム展開も平凡である(えらい贅沢なことを言うとるが)が、そこに「身体と身体のぶつかり合い」の迫力がプラスされることで和姦さ、そしてラブコメさを強調することに成功している。またそこはかとなく淫猥さ(複数の男に犯されて喜ぶような淫猥さであるが、もちろん本作にそのような描写はない)も漂わせ、それによってどこか違和感も感じさせているので読後感は非常に複雑なものとなっているが、そこに俺は成年漫画の根本を見る。例えラブコメという枠内であっても和姦を採用していても、所詮「性交渉」とはタブーなのであり、それを軽く楽しみながらもその「タブー」は突如としてやってきて我々はハッとさせられるのである。本作はそこまで考えさせてくれる稀有な作品でもあった。
    
第6位:あまみドコロ/睦茸コアマガジンメガストアコミックス]
あまみドコロ (メガストアコミックスシリーズ No. 262)

あまみドコロ (メガストアコミックスシリーズ No. 262)

 地味で平凡で普通な青年が現実では考えられない見目麗しいヒロインと恋仲となり、現実では到底叶えられないような甘い愛の世界に浸るのも広い意味でラブコメであるが、「甘い」云々はラブコメにおいてあまり重要ではない。しかし「甘さ」はないよりあった方がもちろんよい。成年漫画ともなれば甘ったるく性交渉を書けば書くほどよい。特に本作の特色であり象徴と言っても過言ではないマシュマロのごとき柔らかみのある巨乳は他のエロ漫画では考えられないほど主人公とヒロインの性交渉に甘さを与えている。
 「甘さ」がなぜ「おっぱい」と結びつくのかというと母性の象徴(赤ん坊は誰しも母の乳を吸う)であるおっぱいには母が子に乳を与えるような甘美な世界を引き立てるものがあるからである。とにかく本作の「おっぱい」はいわゆる扇情的な、成年漫画の文脈にある「おっぱい」ではない。いや「エロ」すらも包み込んでしまう甘さの象徴としての「おっぱい」であって、そのため本作はエロよりも母性的なもの、母を前にした子のように「主人公側は何もせずヒロインに恋愛事をリードしてもらう」というラブコメにつながるのである。とにかくここまで乳を強調されるとおっぱいおっぱい言うても全然恥ずかしくならんな。それよりも「ちゅーしながら洗う」だの「ちゃんと前からいっぱいいっぱいキスしながらぎゅってだっこしながらしろ」などと言われる方が恥ずかしい。
    
第5位:ヴァージンルーム/八十八良ワニマガジン社:WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL]
ヴァージンルーム (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)

ヴァージンルーム (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)

 「エロ(和姦)とラブコメの共同作業で…」と簡単に言っているが、エロとラブコメは本来両立することの方が珍しい。エロに特化すればラブコメは引っ込み、ラブコメに特化すればエロは引っ込むのである。真面目にエロ漫画を描こう(読者のアレをびんびんに滾らせよう)と思えば思うほどぬるいゆるい世界を基本とするラブコメから離れていくのであるが、両立させる方法がないわけではない。本作はその好例と言える。一見すると他の作品より「エロ」さが薄い(その分ラブコメ度は濃くなっている)印象を受けるが、それでも成年漫画としても優れたものになっていて、なぜかと言えば各短編はいずれもヒロインから出発しているからである。と言ってもわかりにくいが、性交渉をどうするというところから出発していないのであり、しっかりとヒロインの魅力を確保した上でそこに平凡で地味で普通の主人公をぶつけ、やがて性交渉へと至るよう律儀に過程を踏んでいるので性交渉前までを切り取れば一般用のラブコメとしても十分通用し、性交渉まで行けば成年漫画となるのである。作者がそれを自分のものとして確立していなければ「非暮の澱」のような短編小説風の高級エロ漫画は描けないであろう。
 しかしながらエロ漫画の宿命か、本作は玉石混合の短編を集めた作品集でありたとえ作者が優れた手腕を持っていてもやはり良いものと悪いものが同列で扱われて作者の優れた能力が分散されてこの順位となった。もし作者が長編ものに挑戦すれば1位は大いにありえただろう。惜しいことだ。
 
第4位:誘惑という名の愛/ゆうきともか富士美出版:富士美コミックス] 
誘惑という名の愛 (富士美コミックス)

誘惑という名の愛 (富士美コミックス)

 作者は今では想像もできないほど和姦に対するバッシングが強かった時代からのベテランであり、「ファンタジイカクテル」の時代からよく知っている。いつもながら抜群の安定感には頭が下がる。
 刺激的で煽動的であればあるほど良い成年漫画において作者の描く淡白な絵は異端である。いや「淡白」というよりも男と女が出会って性交渉へと至るまでの余計な雑音を全て捨てている「潔さ」と言うべきであって、雑音を消し去り、ヒロインたちのモノローグをさりげなく挿入し、そのモノローグが結局は普通の男(主人公)に対する愛の告白であったりそこから一歩進んで誘惑しようとする企みであったりするので非常にラブコメ的で快楽的にできている。ヒロインの内面に踏み込み、しかしその踏み込みを余計な雑音なしにあくまで性交渉へと至る理由に限定しているところが丁寧でありながらスピーディーでもある。そうすることによって読者は完全に作品世界に感情移入することができ、極上の世界を味わうことができるが、そうなるとすぐに味わい尽くしてしまって10編程度だと物足りなくもある。それはちょっと贅沢過ぎるのかな。とにかく本作を日本ラブコメ大賞に入れることで何とも言えない重厚感が出よう。こういう作者、作品を大事にすべきだと再認識した次第であります。
   
第3位:その唇で囁いて/いとうえいワニマガジン社:WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL]
その唇で囁いて (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)

その唇で囁いて (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)

 例えば芸能人が笑いを取る時に「素に戻る」ことによって笑いを取ることがあるが、本来芸能人であるからしてそのような華やかな舞台に立っているのにその芸能人であるという立場から「素」に戻ったことで笑いを取るというのは邪道である。プロである以上やはり作りこまれ計算されたものの方が上なのは当然で、成年漫画も同じようにストーリーは工夫もなく面白くもないがこれはエロ漫画であり要は自慰ができればいいだろうとしてただひたすら女の股を広げさせるものは邪道である。笑いが取れたらいい、女の裸を出せばいいというのはただの面倒臭がりであろう。もちろん現在の大量生産される成年漫画においてはストーリーなどどこかで見たことのあるものばかりとなり、読みながらもオチはどうなるかが予想できて読んでいる途中で現実に戻ってしまうことも仕方ないが、しかしこちらは金を出しているのであるから「他とは違う何か」を要求するのは当然のはずである。それでも使い古されたストーリーを使うのなら、せめてそれを意識させないスピード感を出さなければならない。それが本作である。
 決して作画能力が高いと言えず、ストーリーにびっくりする工夫をこらしているわけではない本作は小さくまとまっていると言えばそれまでであるが、だからこそ読む側によって柔軟に対応できているのである。説明が難しいが、ホームランを狙わずヒットを量産することに専念した安定感というものが本作にはあって、その結果饒舌でもなく雄弁でもなく、「主人公×ヒロイン×性交渉」という図式で完結され、これが驚くほど気持ちいい響きを生んでいるのである。そしてこの気持ちよさと、ラブコメで言うところの「ヒロインが主人公に積極的に動くことによって主人公側は何もしなくてよい」といういつもの閉鎖性が合わさった時、本作はありきたりな作品ながら3位たりえるのである。
   
第2位:お姉コレ/柚木N’[茜新社:TENMA COMICS]
お姉コレ (TENMAコミックス)

お姉コレ (TENMAコミックス)

 近親相姦と言っても「母子相姦」なら特殊過ぎ、「兄妹相姦」なら一般的過ぎる。そのため「姉弟相姦」ものが一番無難となるが、前にも言ったように「姉もの」を本当に効果的に描くのであればまず「姉と弟」と言う関係上どうしても上に立ってしまう姉(女)をどうやって男の下に位置づけるかという問題が発生しよう。本作の場合どちらかと言えばあまりしっかりしていない姉を描いてその位置づけを曖昧にしているところから始まっていて、それは本来ならば欠点ではあるが、「母」とは違うもっとゆるやかな母性本能を持った「姉」があまり姉弟を意識させないゆるやかな「姉」として存在することでその曖昧さが良性となり、また絶妙な「愛され感」を生んでいる。
 姉に限らずヒロインが主人公より年上の場合は積極的に出ることが多いが、物語が進むに連れてその距離感の違い(積極的なヒロインと消極的な主人公)が欠点となって主人公との関係性が希薄になることが多々ある。しかし本作の場合物理的な「姉」としての立ち位置以外はそのあたりを曖昧にして矛盾を最小限にしているため希薄とならず、また希薄になる前に性交渉へと流れ、結果として「姉弟相姦」の一番おいしい部分である「恋人でありながら姉、姉でありながら妹、姉でありながら母」という快楽を味わうことができる非常に効率のいいエロ漫画となっていてあれよあれよと2位にまで登りつめてしまった。
 しかしこの姉たちもエロいな。何回使ったことか。
  
第1位:ショッキングピンク!/ヤスイリオスケ[MAX:ポプリコミック]
ショッキングピンク! (ポプリコミックス68)

ショッキングピンク! (ポプリコミックス68)

 ああ、これでやっと終わりや終わり。もうホンマ疲れた。いつも一般部門で力を使い果たして更に成年部門でない力を振り絞って疲労困憊になるというのに今年は成年部門が20位まであるからもうしんどかったわあ。
 で、成年漫画は所詮は日陰者である。いかに明るくしたところでいかに健康的な男女の爽やかな愛を装ったところでそれは表に出てはいけないものである。美しい月にはなれても太陽にはなれない。だが本作は太陽のごとき底抜けに明るいものがある。それはもう根底からして底抜けに明るく、そこにラブコメがプラスされ性交渉もプラスされればもう無敵である。ストーリー自体も明るいというか能天気そのものであるが(いきなり女がやってきて「私の事好きって言え」「世界征服のために子作りしましょう」)、その能天気さを勢いや力技あるいはテクニックではなく根本に据えているところに本作の特徴がある。太陽のような明るさで成年漫画が宿命的に持つ陰気さをほぼゼロとし、「平凡で地味な主人公に天下の美女がやってくる」という都合のいい設定を求めることの後ろめたささえも消しているのである。また出てくるヒロインたちが高飛車で傲岸不遜でありながら主人公なしではいられないというのも大いにプラスに働いている。そして本作はエロ漫画にしては珍しい240ページの大作であり、またこれほどの長丁場を「太陽のような明るさ」で描き切ってしまうエロ漫画は過去に類例がないだろう。更に言えばその「明るさ」はあくまでヒロインたちがこの平凡で地味で冴えない主人公に関わったことから生まれるものなのであり、あくまで主導権は主人公側が握っていることもラブコメとして非常に優れている。読み出して途中からはまるで大船に乗ったつもりで安心して読むことができた。桁違いの実力であり、今年度圧勝の1位である。
 
 さて以上を持ちまして2010年の更新は終了であります。ああ疲れた。今年も皆様(推定12人くらいの定期読者の皆さん)にはお世話になりました。また来年お会いしましょう。