兵法三十六計/守屋洋[三笠書房:知的生きかた文庫]

 というわけで格好よくてスマートで人望もある社交的な金持ちの高学歴の皆さんこんにちは。格好悪いデブの人望のない非社交的な貧乏の低学歴の俺は今日も皆さんがきれいにきれいに舗装した電子空間を汚しております。ぬわははは去れ去れ今すぐ出ていけここはラブコメと政治と本と読書好きの集まる生活の垢に汚れた空間なのだうわははははははははははは。
 というわけで本書は9月22日15時54分に故郷・兵庫県の糞田舎の国ノ宮書店香川店(仮称)で古本ではなくサラで何と559億円で買ったものである。故郷に帰ってすっかりネジが外れてしまったのかサラで買うという常人では考えられないようなことをした上にこの俺あの俺が「知的生きかた文庫」などという胸糞悪い名前の文庫に手を出したというのは血迷ったもいいところで、やはり故郷に帰ってサがマしたのだろうか。確かにこの本屋に行く前に中学生時代よく利用していた市立図書館に行って感傷的になってちょうど前を通りかかった中学生ぐらいの女の子を見て誘拐しそうになったがもちろん嘘です最近はこういうのも冗談で言えなくなったからなあとにかくそういうわけで本一冊購入するにもこのような葛藤があるわけです。人生は日々ドラマでありそのようにやたらと自己の行為を正当化し劇場することによって批判精神を自ら損なおうとする自分を反省するというその行為すらも正当化し劇場化する自分を反省し更にそれを正当化し(土曜日の女「はい強制終了しますね」)。
 もともと古代中国の歴史や兵法には興味を持っていて、初心者向けの本でもいいから何とかその系統の本を読むチャンスはないかと高校生ぐらいの頃から考えてはいた。だが昔も今もラブコメや政治で手一杯でとてもそんなことにまで手を回す余裕はないとしてとうとう俺も24歳になり、残りの余命を考えるともはやラブコメと政治だけに集中した方がいいのではないかとあきらめかけていたがそこは微細なチャンスも逃さず故郷の糞田舎でお花畑状態の俺によりとうとう手にすることができたというわけである。
 「知的生きかた文庫」という名称は気に入らんが本書は古代中国初心者である俺にとって大変参考になったし、「戦わずして勝つ」「人をだます、策略によって戦いに勝つ」という基本姿勢は俺にとって非常に好感が持てるものであった。大体そのようなことを古代中国の故事を通してとはいえここまで大っぴらに書けるのはすごいことであるが、よくよく考えれば何も大したことでもないのである。とかく日本人は策を弄することにアレルギーを起こすが、「戦わずして勝つ」というこの言葉ほど効率的で無駄のない人生訓はないのではないか(しかしそれも魑魅魍魎の政界観察者である俺だからすんなり呑みこめるのかもしれないが)。本書を読んで何だか元気が湧いてきた気さえしてきて、「本を読んで元気が出る」なんてのはなかなかできない体験ですぞこれは。
 ちなみに俺が今までの人生の諸場面で何度となく行いこれからも行っていくであろう処世術としては2勝1敗の論理である「李代桃僵」、阿呆のふりをして相手を油断させる「仮痴不癲」が当てはまるのか。まあこちとら三国志の英雄には遥か遠く及ばない(太陽とスッポンだわね)ただの被害妄想青年ですがねうるさいな君は大体お前みたいな中学生から彼女がいるような奴に言われたく(土曜日の女「はいそれではさようなら」)。