第5シリーズ 全てが終わり全てが始まる(11)古本市場西大島駅前店

「あのー、やっぱり仕方ないと思うんですよ。何せ100年に一度の危機ですから、売上も利益も激減していますから、給料カットも一斉休業も仕方ないと思います。ただですね、その、俺なんかが言うまでもないことですけど、やっぱり給料カットというのは、本当にモチベーションがものすごく下がるわけですね。あの、これも言うまでもないことですけど、今管理職の人たちと違って我々組合員は若くて、給料がものすごく少なくて、且つ増給の審査も非常に厳しいわけですね。ですから、やっぱり、会社に対する思い入れというのが薄れてしまうというかですね、そういう危険性があると思うんです。どんどん辞めていっちゃうのではないかと。で、あのー、何が言いたいのかというと、こういう時こそ若手に頑張ってもらいたい、会社の将来は君たち若手にかかっているから、どうか辞めないでほしいみたいなことをですね、経営陣から直接我々に言ってもらいたいと。その、一体感みたいなものを何とか維持した方がいいと思うんですよ」
 給料カットや早期退職の奨励等の緊急対策案が正式に決定する前日、我が社の労働組合何とか協議会は組合員全員を呼び出した。日頃から「高い組合費を取るだけであとは上の言いなり」と陰で言われている組合側の説明を聞く者たちは皆しらけていた。状況を正しく認識できない一般職の女数人が「役員報酬をもっと下げろ」「工場が一斉休業だからと言ってどうして私達まで」と感情的に抗議してますますむなしい雰囲気となり、困った組合委員長は顔見知りである俺に「○○くん、どう思う」と突然振ってきたので俺は上記のように答えたが、当然しらけたムードはそのままだった。翌日、コスト削減のための緊急対策何とか計画の正式発表と共に早速四人が退職願を提出した。その四人は皆、前日俺と同じ会場にいた人たちだった。
 「残業は原則禁止、土日出勤も禁止」というのはつまりサービス残業しろということで今日も会社へ向かったが、俺一人が頑張ったところで他の人たちが残業せず帰るつまり仕事をしないのであれば結局何もできない。今更だが阿呆らしくなってきた。そろそろ潮時かもしれない。社内一の有望株と言われるTが辞め、実務の司令塔と言われた係長が辞め、他にも様々な個性的で優秀な人たちがこの一年間で続々と辞めていった。しかしこの俺が辞めたところでどうしようもない。我が身に致命的な身体と性格を抱える俺にできることは今まで通り沈黙を続けることだけだ。
 そんなわけで17時過ぎに会社を出て本日行くのは江東区にある古本市場西大島駅前店である。あの秋葉原撤退事件の衝撃がやっと思い出になりかけたと思ったら去年の12月ひっそりとオープンしたのであり、何度も言うが故郷兵庫県糞田舎時代からの付き合いもあり俺はBOOKOFFなんかより古本市場の方が断然好きなのである。そんなわけで光よりも早く着きました。

 併設されているコンビニの前で高校生ぐらいのカップルが深刻な顔をして話しており、声は聞き取れなかったが女が「妊娠」と言っていたように聞こえた。店内は広く奥行きもあって古本市場魚住店を綺麗にした感じであります。そして古本市場の品揃えがBOOKOFFより劣っていることも経験上わかっているのでどうという事はなく、こちらを買う。18時34分、300円。

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 ん。そう言えば前巻を買ったのは我が兵庫県糞田舎の古本市場魚住店ではないか。いやあ無意識にこういう事ができるのが世界のラブコメ王の王たるゆえんですね。違いますか。
 さて次はどこに行くかというと足立区のBOOKOFF綾瀬駅前店である。よく聞かれるんですがどこに行くか事前に決めているわけではありません。都内23区のBOOKOFFは全て俺の脳内にインプットされているのでただ気の向くままに行っているだけです。「そんなことをして何の意味がある」とこれまたよく聞かれますがそんなもんこっちが聞きたいわいというわけで都営新宿線西大島駅から小川町駅、乗り換えてメトロ千代田線新御茶ノ水駅から綾瀬駅へ行くわけである。東京の鉄道網は本当に便利ですねえというわけであっという間に綾瀬駅に着いて松屋で大盛りカレーを食べてBOOKOFF綾瀬駅前店の写真。

 もう毎度毎度何でこんなもん撮るのか俺にもよくわからんのよ。でもまあ何かの記録にはなるでしょう。そう言えば西口から歩いているとバス停があってそこで高校生カップルが見つめあって接吻なんかしておったが、さてどうしたものか。うらやましくはないが、しかし何というか…そう言えばこの前俺の同期が一年前に結婚したばかりだというのにもう子供ができたとか言ってきて、その時俺は心底そいつを哀れに思ったものだが実は哀れなのは俺なのでは…とよくわからんことを考えながら買ったのはこちら。20時48分、250円。
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 ついでに「DVD値下げしました」コーナーを何気なく見ていたらこちらが500円で売っていたのでこれも買う。 いや懐かしいですなあ。これは確か2002年の作品ではないか(漫画版は日本ラブコメ大賞2002・21位、小説版は日本ラブコメ大賞2003・20位)。まだ大学一年やそこらの頃の作品ではないか。あの頃の俺が2009年の東京で一人暮らしをしている俺を知ったらどんな顔をするかなあと呑気に考えながらさようなら。しかしこれからは残業もできないことだし、溜まっている「脱走と追跡の読書遍歴」各読書感想文を10連続くらい大放出してみようかな。