福田の敵と味方と味方と敵と

 内閣改造によるマスコミ及び反マスコミ(ブログの事ね)の反響はひとまず落ち着いたようである。反マスコミ陣営、要するにアマチュアの建前主義の勧善懲悪を信じて疑わない単細胞阿呆ブログのその阿呆さ加減には辟易するばかりであるがさりとて新聞をはじめとするマスコミ各紙もとんちんかんな事が書かれておって俺は心配になってきた。いやもしかするととんちんかんは俺の方であって、政治とは奴らの言う通り「政策本位で議論を正々堂々と行い正義と公平にのっとって行われ権力闘争や派閥争いなど微塵もない」清く正しいものなのかもしれぬ。まあそういう風にして現実のドロドロとした生臭い権力争いに目を閉じ耳を塞ぐならそれはそれで宜しい。俺はそう思わぬというだけの事だ。
 福田首相の権力基盤は驚くほど脆弱である。そもそも福田はたかだか当選6回の中堅議員に過ぎない。マスコミはほとんど伝えないが当選回数こそ政治家のキャリアの際たるものであり、「当選6回の奴が首相になれるのなら当選回数の多い俺だって」と内心次の座を狙う者が多数存在するのは火を見るより明らかである。更に自前の勢力も持たず、世論へのパフォーマンス能力も持たない中で「小泉・安部色から遠くて、知名度のある政治家」として半ば緊急避難的に担ぎ出された人物が福田なのである。福田は確かに各派閥に担がれて首相の座を射止めたが、自分を支持する強固な勢力を動員したわけではない。このことを認識しなければ政局を読むことはできない。
 福田には敵にも味方にもなる勢力が少なくとも四つ存在する。「親小泉」「反小泉」「民主党」「公明党」である。そのうち最も重要なのは「親小泉」と「反小泉」であるが、親小泉勢力とは安部内閣に重用された者たちであり、中川秀直率いる「上げ潮派」や小池百合子を先頭とする「小泉チルドレン」たちが相当しよう。いまだ国民的人気を誇る小泉元首相に近い勢力であり、最大の強みはその小泉との緊密さである。対する反小泉勢力とはもちろん小泉政権時代に冷遇された古賀誠選対委員長であり、与謝野馨率いる「財政再建派」であり、「自民党はぶっ壊された。その自民党を立て直す」と明言した麻生太郎である。反小泉派とは小泉人気小泉路線を見限った者たちである。
 どちらに傾斜しても衆参ねじれという異常事態を乗り切ることはできない、或いは自分が主導権を握ることはできないと感じたからこそ福田は民主党との大連立を提案したはずである。自民党民主党との間であれば自民党としては「対民主党対策」に力を注ぎ党内での反目は休戦して福田総裁の下で一致団結せざるを得ないからである。だが「お坊ちゃん政党」こと民主党は何を思ったか政権というアメを前にして目を閉じ耳を塞いでどこかへ走り去ってしまったのであり、かくて福田は「親小泉」と「反小泉」のどちらと同盟を結ぶべきか悩み、内閣改造を行ったのである。そして諸君ご存知の通り、福田は「反小泉」を選んだのである。麻生幹事長、与謝野経済財政担当相、そして「郵政造反組」の象徴とも言える野田消費者行政担当相…。
 ところで福田内閣発足後予想だにしなかったのが第四の勢力「公明党」の動向である。当然福田は公明党を味方とし公明党もまた福田に味方すると考えていたが俺の見るところ隙間風は強くなる一方である。それもそのはずで、参院選の惨敗をひきずったまま来年の都議選を迎えるのは公明党としても死活問題であり、当然福田自民党に対する要求は日増しに強くなるのである。とにかく一刻も早く総選挙をやってほしい、都議選まで一年を切り公明党の苦悩は増すばかりであるが、福田も自民党も解散する気は全くない。なぜか。解散すれば「衆議院の3分の2」という現在の唯一の力の源泉が失われるからである。
 今回の改造で公明党の閣僚ポストは「環境相」となった。国土交通相厚生労働相を途中で辞めると目立つが環境相を辞めてもそんなに目立たないということまで計算しているかどうか。実は俺は公明党の動向こそ今後の政局の鍵となる気がするのである。
 ともあれ、もはや任期満了まで一年足らずである。いずれ行われる「天下分け目の決戦」に向かって、政局は一寸の暇もなく動き続けることであろう。いやあ、政治って本当に面白いですねえ。