陰気な愉しみ

 わはははははははははははははははははははは。
 この俺その俺逃げることだけがとりえの俺はこの一ヶ月ただひたすらごまかしついには初任給とやらをもらってしまったのだ。どうだこの野郎。まだ全く何の仕事もしていないのにこんなにもらっていいのかい。ああいかん早く仕事を覚えて一人前にならなきゃいかんなあ。ん。そんなことを考えてどうするのだ。俺は会社を辞めるのでなかったか。楽しい優しいなまぬるいあの田舎に帰って郵便局でバイトでもしながら公務員の勉強をすればいいではないか。おおそして大阪市のように至れり尽くせりの公費天国だ。なに。公務員試験はそんなに甘くないだと。または公務員になって仕事をはじめたらそれはそれで苦労があるだと。そんなことはわかっとるわい。今はただ、すがるものが欲しいのだ。え。そんな弱音を吐いてどうするのだ。いやいや引越し貧乏の俺は当然インターネット接続もできず、こうして休日に会社に来て誰もいないのを幸いに更新をするのである。大体何週間ぶりの更新なのだ。そしてこのGWで俺は有無を言わずに田舎へ帰るのである。兵庫県の糞田舎にだ。こんな東京などというところにおったところで何だというのだ。いやここ東京もまた糞田舎には変わりあるまい。大体何が秋葉原じゃ。古本屋はどこにもないではないか。サラ本で買えってか。阿呆ではないか。そんなところに行ったところで何になる。おお金がない。ここは東京。別に三宮や梅田と大差ないではないか。何を東京東京と恐れておったのだ。いや首相官邸の周りをグルリと一周したときはさすがに足が震えたが、そして国会議事堂の前を通ったときのあの感激は忘れないが、いやだいやだ社会人などいやだ。俺はいったい何がしたいのだと言えばそれは楽をして生きたいのだがこの罪悪感は何だ。ひきこもろうにも俺には家族がいるのでありそのためにはこの東京のわけのわからん会社でわけのわからん単語や英語を覚えそして営業をしなければならんのである。おお。これではラブコメや古本屋めぐりや和姦エロ本にうつつを抜かしているわけにはいかんではないか。事実俺の狭い狭い社宅には(トイレと風呂が一緒なのだぞ。ホテルかここは)まだダンボールがぎっしりと詰まっているのだ本はその中で眠っているのだ。なぜかというともちろんクビになったときにすぐ引越しができるためだ。楽しみだなあ。どうせ俺のことだから仕事もろくにできないに決まっておるのだ。そうしてあいつが俺にクビと言ったその時には、俺は大きな大きな声で「わかりました。では帰ります。ごきげんよう」と言おうではないか。目下のところその日を想像することが俺の快楽なのだ。この会社は俺の人生に何の権限も持たないのである。どうだ俺の人生は俺のものなのだ。いやそれこそ30歳や40歳になってリストラされるよりはまだ未来のある22歳のうちに辞めておいた方が身のためだ。ああしかし俺はまだまだ暗い闇のなかだ。