陣中携帯国会2 地獄の予感

 はい携帯電話から今日もお送りします。しかし当世風の若者にはなりたくないと思って風雪を忍び肉体労働に精を出し学費を全て自分で賄いその夜間大学を明日卒業するこの俺がなぜあんな茶髪のピアスの奴らと一緒になって満員電車のなかでメールをしなければならんのだ。おお何という屈辱だ。ひたすら内面を磨き完全に脱世間的なラブコメ理論を完成させたこの俺が、少なくとも表面上はあんな流行亡者の女にもてることしか考えない茶髪のピアスの服装に金をかけ皮膚の内側には何も無い自分の趣味すらも持たずただひたすらマスコミの言うことに従うという「当世風の若者」と同じことをしておるのだ。ん。おや。ちょっと危険だなこのエリート意識は。しかし「当世風の若者」と違うのは口からはどんな言葉も出るが財布からは何も出ないということだ。わはははははははははははははははははははは。おお引越しがこんなにしんどいものとは思わなかった。電化製品や家具を揃えろといったところでそれはつまり買うということでそんなお金はないのだ。この野郎めただでさえこの一年間ラブコメも本もエロゲーもほとんど買わずに貯めたこのお金をもう使えというのか。しかし何たって向こうは東京だからなあ。この兵庫県の糞田舎の物価の安いところで買ったほうが断然良いのである。恐らく東京というからには猥褻犯罪が跋扈し右翼と共産党が銃撃戦を繰り広げ陸軍の武官たちがサーベル刀を持って電車に乗り事業に成功したという金持ちたちが日夜殺人パーティーを開き、そして秋葉原には我が宿敵・反和姦総軍総司令官×××××(あなたの考える鬼畜凌辱強姦輪姦ホモレズ作家及びあなたの考える鬼畜凌辱強姦輪姦ホモレズ雑誌を入れてください)が陣取り俺が東京に来るのを獲物を前にした虎のように待ち構えているのであろう。
 や。これは戦争ではないか。その通りもはやあの穏やかな五十五年体制は過去のものとなり自由化のグローバル化の民営化のとどのつまり老若男女入り乱れての金稼ぎ合戦がはじまっているのである。ああ醜いなあ。別にいいじゃないか大きな政府に守ってもらえば。こっちはラブコメや反和姦糾弾キャンペーンやらで忙しいのだ。なぜプライベートな時間を割いてまで資産運用という名のギャンブルをしなきゃならんのだ。そんなもん郵便局に預けておけばいいだろうが。郵便局は国営なんだからよ、つぶれる心配ないしな。え。1000万しか預けられないから駄目だと。1000万も持つやつなんているかよ。一体どんな金持ちだそいつは。うちのオヤジなんか年収350万以下、いや300万以下だぞ。それも家のローンやら生命保険料やら固定資産税とかで毎日火の車だ。だからよ、もうそんな資産運用とか銀行とか考える時間なんてないっての。だから国営の銀行に難しいことは全部任せておけばいいんだよ。どうせ糞田舎の貧乏人だからな俺たちは。え。国営じゃなくなるって。誰だそんなことを言い出したのは。どうせ都会の、社会的地位のある、おえらい大学のセンセイかなんかだろ。よくある話だ。しわ寄せはみんな田舎にやってくるんだもんなあ。地獄の予感がするなあ。