貧窮問答5 夢の家編

「それではお便りのコーナー。まずはジョージさんから。『いつも腹の立つことばかり書かれてあるので荒らしているのですが、すぐに消されてしまいます』。そうですね、ここにいるデブおやじ22歳は荒らしが来たらすぐに消してしまうのです。何ということでしょうね」
「…」
「『そんなわけで土曜日だけ見ることにしています。なぜなら土曜日だけは特別だからです』。なるほど確かにそうですね。土曜日は私がいますからね」
「…」
「『ラブコメ政治耳鳴全日記などというわけのわからないものを書かせないでください。やおいの小説でも書いてください。レズでもいいです。ラブラブなどというヌルイことをいう奴に負けないでください。とにかくtarimo、じゃなくてタモリの嫌がることをしてください』。はいはいわかりました。わかりましたよ」
「…」
「どうです」
「何がだ」
「これが世論なのです」
「世論ですか。こんな一日のカウンターが100ちょっとしかないようなやつに」
「それは詭弁です」
「はあ」
「では続いてのお便り。VXガスさん。『ある種の洗脳によってヒロインが主人公を好きになっている、などと書くお前は悪魔だ。死ね死ね死んでしまえ。一生幸せになるな』。その意見に大賛成です」
「おいこら」
「はいそこであなたを逮捕」
「意味わからん」
「あらあら。現行犯逮捕は一般人でもできるんですよ」
「そんなことは知っておる。しかしなぜ俺が逮捕されなきゃいかんのだ」
「それはもうここに書いてあるじゃないですか。『ある種の洗脳によってヒロインが主人公を好きになるよう仕向けることがラブコメの本質である』と。まさしく鬼畜ですね。もう逮捕ですね」
「いやいやそんなことは書いとらんぞ」
「言い訳ですか。留置場で聞きます」
「いやそれをですね、その、誤解があるんですよそこが」
「…」
「つまり俺が言いたいのは、恋愛展開に関する描写において男が積極的に出るのを見たくないという、ただそれだけのことなんですよ。だから結果的に女の方が積極的になるんですが、あなたがた女性陣がそうそう積極的にアプローチなんぞしてられないと言うから、それならばあのように小さな頃からの許嫁とかにしておけばいいだろうと言ったまでのことです。大体許嫁なんてのは洗脳の一種でしょうが」
「しかし、なぜそのように積極的な男というのを憎むのです」
「それはやはり、俺自身がそのような行動に出る男の心理が理解できませんし、やはり自分と似た性格や容姿のキャラに活躍してほしいですからね」
「それは結局あなたがオクテでありながらそんな自分を肯定してほしいからに過ぎないのではありませんか」
「え。オクテ。俺がですか」
「そうでしょう」
「あんなスカートめくりしたり初対面の女に話しかけたり大して親しくもない女に『〇〇さんはいいお嫁さんになるよ』などと言う性格異常男が普通で、そんなことをしない俺はオクテだというのですか。いつも女に対して気を遣っているこの俺が。大体あのナンパとかいうのがいかんのだ。あんなものがあるから俺みたいな紳士をオクテなどと言うのだ。オクテというのはもちろん俺にとっては名誉なことだ。しかし他人が俺を『オクテ』という時、そこには軽蔑の意味がこめられているのだ。そうでしょうが」
「え。それはまあ、その、そうかも」
「大体ナンパなんてものがあるからいかんのです。あれはガールハントだ。人さらいなのだ。それにのっかる女はもはやコールガールだ娼婦だ。違いますか」
「え。娼婦ですか」
「昨日まで赤の他人だった男と遊びに行くわけでしょう。しかも下心ありとわかっていながらどこかに行くわけでしょう。娼婦以外の何者でもないではないですか」
「…」
「ではさようなら」
「いやちょっと待ちなさいっ。論点が違います。今はあなたのその歪んだ女性観を糾弾しているのです」
「あんたの顔の方がよっぽど歪んどるぞ」
「…」
   
(略)
   
「はい。よろしいですね」
「死ぬかと思った…」
「続いてのお便り。黒田さん(本名)から。『今やその美貌と抜群のスタイルで村中の男の目が釘付け!な土曜日の女さんこんばんは』。はいこんばんは」
「阿呆だ」
「何がです」
「いえ独り言です」
「『私の嫌いなある男はあろうことかラブコメに凝っていまして、エロゲーだろうがラブコメだろうがとにかくひたすら自分のようなダメ男に都合のいい作品を買い集めています。それが俺の生きる欲望なのであってもしそれをやめたら死んでしまうと言っています。どうか彼を更生させるためにも死なせてやってください』。何と優しい人なのでしょう。全く神に感謝します。本当にねえ」
「…」
「何ですかその眼は」
「あの、更生させるのに何で殺すんですか」
「面倒くさいからでしょう」
「意味がわからん」
「そんなわけでとっとと死んでください」
「えっ。今の手紙は俺のことかい」
「当たり前です。あなた以外に『星はいつでも屋根の上』なんて読む人がいますか」
「いっぱいいるでしょう」
「うるさいですね。とにかくあなたは反省してるんですか。してないんですか」
「え。反省。何を反省するのですか」
「あなたの半生を反省するのです」
「寒いぞ」
「とにかくですね、このまま毎週毎週あなたの欲望丸出しなラブコメ書評を書かせるわけにはいきません。むしろここは私の出番を土曜日だけでなく月曜日にも、ああとにかくですね」
「あんた本音がすぐ口に出るね」
「うるさいですよ。いいですか。反省の弁をのべる気は」
「ええと、ありません」
「そうですか。それならいいでしょう。こちらにも考えがあります」
「はあ」
「先週、先々週は運良く逃げることができたかもしれませんが、今日のはもう。とてもとても逃げられるものではありません」
「はあ」
「あなたの家をブチ壊します。そうですあの兵庫県のボロ田舎にあるあなたの家には既に爆弾が仕掛けられているのです。今から1時間後に爆破します。あなたの家にあるあのラブコメコレクションは全てなくなり、あなたにはもう帰るところがなくなるのです。あっはっはっは」
「あの」
「命乞いですか。そうですね、靴でもなめてもらいましょうか」
「聞いてませんでしたか」
「何をです」
「あのですね、俺今年の四月から大学卒業して社会人になるんですよ」
「知っています」
「で、勤務先がね」
「…」
「とても通勤できるところじゃないのでね」
「…」
「ええ、引越したんですよ俺。だからあの家には何もありませんよ」