徹底図解 大奥/榎本秋[新星出版社]

徹底図解 大奥

徹底図解 大奥

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 はて聞いた事のない出版社であるが…まあ内容が良ければ問題ないだろう、大奥と言えば江戸時代のいわゆるハーレムであり、そのハーレムの美人達の絵が所狭しと描かれているし退屈する事はあるまい…という事でどこかの古本祭りで買って、読んで、退屈する事はなかったが文章に工夫というか読む者を盛り上げる姿勢が感じられないので読後は不完全燃焼であった。俺のような、年100冊以上読むまあまあな読書家ならばまあまあ退屈する事なく読めるだろうが、普段本を読まない人間が本書を読むと無味乾燥な印象を与え退屈させてしまうのではないかな。

 本書では江戸の大奥を鮮やかに生きた美女たちの絵がたんまりと盛り込まれ、目を奪われる事は奪われるが、一方でその美女たちの説明文はどこかの本を書き写したような冗長さで、どうにも頭に入ってこない。しかも「徹底図解・大奥!」と言いながら後半は吉原遊郭や当時の庶民の女性達の事を書いていて、これはこれで重宝するが、どうせならタイトルも「江戸の女性達~大奥から庶民まで~」という風にすればよかったのでは。まあ発売当時(2008年)は大奥を舞台にした大河ドラマが放送されていたのでそれにあやかろうとして、大奥!(ババーン!)としたかったのだろう。やれやれ、どの業界も大変ですなあ。大奥!

    

・将軍と過ごす夜

 将軍は大奥に泊まる時は、相手が御台所(正室)でも側室でも前もって届け出をする。自由にハーレムを楽しめたわけではない。

 夜、大奥に入った将軍は御台所(正室)と話し、酒を飲み、午後十時(亥の刻)に床入りする。しかしその時すぐ隣の部屋では御年寄(大奥のあらゆる事を取り仕切る最高権力者、女性版の老中)と御中靄(将軍・御台所の身辺を世話する者)が控えて一部始終を聞くのがしきたり。

 側室の場合はもっと複雑で、隣の部屋で御年寄と御中靄が控えているばかりか、もう一人の御中靄と御伽坊主(将軍の雑用係、頭髪を剃って坊主になった五十歳前後の女性)が将軍と側室を挟んで添い寝をした。

   

・幕府による吉原遊郭の認可

 江戸幕府開設によって江戸は急激に人口が増加するも、男女比のバランスは圧倒的に男性が多く、独身男性達の性的欲求を満たす遊女の需要が急増。江戸の各地に遊女屋が散在し、治安と風紀の点から好ましくないとする幕府側に対し、商機と見た遊女屋主人が「遊郭」(遊女屋を集中させ、堀や塀と外界を遮断した空間)の設立を提案。

 申請にあたって遊女屋主人側が申告した条件は、

①客を泊めるのは一晩だけ、連泊はさせない。

②騙されて身売りされた娘は、調査して親元へ戻す。

③犯罪者はかくまわない。

 対して、幕府は追加で以下の条件を提示。これを遊女屋主人側が受け入れた。

①江戸市中には吉原以外に一切遊女屋は置かない。

②遊女の市中への派遣もしない。

③遊女の着るものは華美にしない。

④遊女屋の建物も華美にしない。

⑤営業は日中に限る。

   

武家の女性に求められた四つの徳

①婦徳…貞節を守り、善徳を積み、夫に仕えること

②婦言…言葉少なく、大きな声を出さず、身分を守ること

③婦容…化粧や衣服に驕ることなく、慎みを保つこと

④婦行…裁縫、料理、洗濯などの家事百般をこなすこと