第25位:ちぇり×ちぇり/そりむらようじ[角川グループパブリッシング:角川コミックスドラゴンJr]
ちぇり×ちぇり CHERRY×CHERRY2 (角川コミックス ドラゴンJr. 132-2)
- 作者: そりむらようじ
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2009/04/09
- メディア: コミック
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本書ではひきこもりがちの浪人生に突然小学生の妹二人が訪ねてくるのであるが、何とその糞生意気な小学生は兄を家から追い出そうと画策するのである。これでは「性格破綻」を通り越して「情緒障害児」であるが、とにかくページを開いて間もないうちに主人公(つまり読者)を追い出そうとするのを見せられてヘラヘラ喜ぶような読者がどこにいるのだろうか。生粋のドMならばそれもまたありなのだろうが俺は普通の人間である。もちろんそのような糞生意気な描写は最初だけであって中盤あたりからこの妹達はすっかりお兄ちゃんになついていくのでありツンデレで言うところの「ツン」がそのような行動に駆り立てたのであろうが、読むこちらとしては最初の「妹VS兄」の描写が不快で後々までこの不快感は消えなかった。
そもそもラブコメにおいて妹とはひたすら「お兄ちゃん大好き」でなければならないのであって、そうでなければ「妹」は「妹」でなくなってしまうのがシスプリ以降の暗黙のルールであった。普通の男女の喧嘩ならまだしも年頃の妹が兄を嫌悪するというのはリアルを通り越して生々しく、その生々しさはラブコメが言及する「平凡で冴えない主人公(男)に美人で聡明なヒロイン(女)が惚れ込む」という現実から浮遊するが故に二次元等において成立する図式を崩壊させる危険性を孕んでいるからである。
ただまあ唯一の救いは主人公がドMでなかったことか。やられてもやられても「トホホ…」ですます狂気の阿呆が多い中でこの主人公は「出て行けクソガキ」とちゃんと言うべきことは言うのである。それが普通ですよねやっぱり。
第24位:ユリア100式/原田重光・萩尾ノブト[白泉社:JETS COMICS]
- 作者: 萩尾ノブト,原田重光
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2006/11/29
- メディア: コミック
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ひょんなことから一緒に暮らすことになった主人公と関係を結びたい(性奴隷になりたい)と思うようになるヒロインは実はダッチワイフであるからやる事なす事全てが下ネタに結びつき、田舎に許嫁を残している主人公は何とかダッチワイフからの誘惑から逃れるという寸止め漫画が本作である。その「下らなさ」は大いに肩の力を抜いて読むことができる大変便利なものであるが、「下らなさ」と「軽さ」を混同している節があって読後どころか読んでいる最中もあまり印象に残らないのが難点であろう。
「機械でありながら人間に恋心を抱く」というラブコメは別に目新しいものではないが(2002年4位「ぶっとび!!CPU」、2003年1位「無敵英雄エスガイヤー」)、本作ではのっけから「主人公のダッチワイフになりたい」として主人公との関係性を築き上げていくのであり、その展開は読者を作品世界に引き込みやすいが最初からそのような刺激的な関係性を設定すると飽きが来るのもまた仕方のないことである。「とろろを食べた口で主人公の性器を口に含んだから性器がかゆくなった」り「第三の足にドラゴンスクリュー」などと見せられては読むこちらも困ってしまう。
しかし本作もまたラブコメであることは間違いない。「主人公の性奴隷になりたい」というダッチワイフヒロインとそれを阻止する主人公の最後の挿入までの激しい攻防は他のどんなラブコメも寄せつけないであろう。
第23位:スットコ図書館/刻田門大[双葉社:ACTION COMICS]
- 作者: 刻田門大
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2008/08/12
- メディア: コミック
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しかしながら読み手が主人公に感情移入するためにはより一層親しみやすさが求められるのであって、主人公が社交性がなかったりオタクであったりひきこもりであったりすればなおいいし、本作のように主人公が図書館司書で更に運痴である(球拾いでアキレス腱切断)というのも非常に親しみがもてよう。後はラブコメ的描写が自然と顔を出すのを待てばいいだけである。
作者は「月姫」アンソロジー本(2002年1位)の常連執筆者でもあり、ラブコメ描写に不安はないはずであるが内容はヒロインを2人も据えておきながらほとんど動かさずほのぼの4コマが展開されるだけという、非常にスカスカなものであった(ラブコメがないわけではないが)。とにかく体力がない主人公と怪力ヒロインの対比は確かに面白いが、そのせいでもう一人のヒロイン(ブラコンの妹)と主人公の絡みも中途半端にしか消化されないのが非常に惜しまれよう。ただしこれは作者のせいというよりは最近地位を確立した(と言われる)「萌え四コマ」ジャンルのせいであって、ラブコメが登場人物たちの急激な心理の変化や上へ下へ大騒ぎする状況設定があって成り立つものであるのに、本作のごとく1ページ8コマの枠内でただページを消化していくことを求められていてはオチのない話がダラダラと続くか話が大きくなろうとすると強引にぶったぎられてしまうかのどちらかしかないのであって、もちろん優れた漫画家であれば1ページ8コマであろうがなかろうが関係ないが、ただ漫然と「萌え的な漫画」を書こうとする中堅以下の漫画家にとっては非常に楽ができる反面このように話が広がらずに終わってしまうのである。もし本作が四コマという枠にとらわれず自由に漫画空間を広げていたとしたらもっとラブコメ描写が濃くなったいただろう。惜しいことだ。
22位:キミとボクとのインフィニティ/小野寺浩二[竹書房:BAMBOO COMICS MOMO SELECTION]
キミとボクとの∞ (バンブー・コミックス MOMO SELECTION)
- 作者: 小野寺浩二
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2009/02/19
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俺を含めたオタクという人種が程度の差はあれどこかしら「一般人とは違う感性」、即ち「フェチ」の感覚を非常に大事にするのはそのような特殊なフェチ感覚が新たな世界を導いてくれることを知っているからであり、本作のように「眼鏡っ子フェチ」(眼鏡っ子が好きじゃああああ)に対してストイック(という表現を使っていいのかわからんが)に情熱的に動き回る描写を我々はつい好意的に見てしまう。その事を作者はわかって描いているのが何とも憎らしい。
主人公は基本的には普通の高校生であるがとにかく眼鏡っ子というものについて一家言持っていて(もちろんコメディの枠に包まれているが)、その眼鏡っ子に対するこだわりと主人公に好意を持っているヒロインを絡ませることでラブコメ的な空間を作りそれをフェチ的感覚を持つ俺や諸君のようなオタクに読ませることで一種の反論を許さない空気にまで持ち上げているのである。十年以上の歴史を誇るこの日本ラブコメ大賞の作品群の中でも一、二を争う特異な作品であることは間違いない。
主人公=平凡、その他の周りの登場人物=非凡、というのが俺が主張するラブコメの前提であった。しかしながら本作において主人公はキチガイ一歩手前の「平凡からはほど遠い青年」であるのに、俺が蛇蝎のごとく嫌う主人公ではないのである。具体的に言うと「雨に濡れている子犬が可哀想だからと自分の傘を子犬に使い自分はどしゃぶりの雨に濡れ」云々という頭のネジが完全に狂った「『いい人』にしようとするあまり人間味のない『いい人』にしてしまう症候群」とは無関係な「主張する青年」なのである。「フェチ」という極めて下品なジャンルであってもそこで自分の意見というものをしっかり持っている人間に対して俺は敬意を表するのであり、そのような人物が主人公でなおかつラブコメであるというこのような作品は大歓迎である。
21位:マジキュー4コマ タユタマ−Kiss on my Deity−[エンターブレイン:マジキューコミックス]
マジキュー4コマ タユタマ -Kiss on my Deity- (1) (マジキューコミックス)
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2009/04/25
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もはや漫画のみならずアニメもゲームもラノベもあらゆる作品が短期間で消費され捨てられることがオタクの作法となってしまった。人々は常に新たな作品と刺激を求め、一つの作品を注意深く見守りその内容を何度も何度も読み返して咀嚼することはない。第一に巷に溢れる作品数が多すぎるからであり、それらの作品がただ「萌え」や「エロ」に訴えるだけの薄っぺらい中身しかないものだから人々はすぐに渇き、その渇きを潤すためひたすら少しずつ少しずつ作品を飲んでいくのである。これは別にオタクマーケットに限ったことではなく、歌謡曲や映画やテレビのバラエティにも言えることだ。今は瞬間的にパッと話題になり、驚くほど早く散ってゆくのである。そしてそれは悪いわけではない。内容が薄っぺらいとはいえ10年前に比べればオタクへの風当たりは「地獄から天国」へと様変わりし、その結果出版側は何のためらいもなく一般向けとは違うオタク向け漫画を大量生産できるようになった。我々はその中から自分の肌に合う作品を取捨選択すればよく、1年もすれば忘れられるであろう「エロゲーからメディアミックス」作品である本作は他のエロゲーと違ってラブコメの平均点を押さえている。それでよいではないか。
突然主人公の目の前に現れた獣耳と尻尾が可愛いヒロイン(神社の女神様?よくわからん)は「私はあなたの嫁」と言い、それに反応して主人公が気になりだす幼馴染と妹と金髪の金持ちお嬢様を用意しておけばあとは適当に動いてくれよう。もちろん状況設定やストーリー展開をもっと深く作りこめば更に面白くなるかもしれんが、本作のようなメディアミックス作品に求められるのはそのような「深い」作り込みではなく平均的な誰もが反感を持たない無難なストーリーを転がすことで経済効果(売上)を得ることにあるのだからこれでいいわけである。俺も深く求めはしない。アニメも最後は例によって「人間もグロテスクな怪物もみんな一緒に仲良く暮らそう」という何の解決にもならないその場限りの美辞麗句を並べてさようならなのであり、そのようなおままごとは適当に受け流し、自らの快楽原則である「ラブコメ」に有用なものだけを切り取りとっていけばいいのである。所詮その作品の価値を決めるのは自分でしかないのだからな。