日本ラブコメ大賞2019:Ⅲ ラブコメは常にアップデート

第10位:宇崎ちゃんは遊びたい!ADOKAWA:ドラゴンコミックスエイジ

宇崎ちゃんは遊びたい! 2 (ドラゴンコミックスエイジ)

宇崎ちゃんは遊びたい! 2 (ドラゴンコミックスエイジ)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/02/08
  • メディア: コミック
 

 まずラブコメから離れた一般的な話をしよう。中学生時代、高校生時代、大学生時代において、いわゆるオタク的な暗い男が女子一般と話す事はまずない。今でこそ「スクールカースト」等といった便利な言葉があるが、そのような言葉がなかった時代でも「スクールカースト」的な風習はあったのであり、「女子と気軽に冗談を言い合う」「お互いにボケたりツッこんだりする」「気安く腕や肩などをさわる」事は夢のまた夢であった。しかし我々は、本当はそのような事をしたかった、漫画やドラマに出てくるようなめくるめく大恋愛が無理でもせめて友達としてざっくばらんに話せたらどんなにいいだろうと思いつつもほとんど、いや一言も話す事なく青春時代は終わり社会人となってしまった。

 もちろん社会人になると若い女だろうが妙齢の女だろうが仕事ができると評価された途端に話ができるようになり、場合によっては内容のない雑談であっても聞いてくれたりするので社会人とは何といいのだろうと思ったりするのだが、話はそこから本作に行く。というのも本作は主人公(=読者)とヒロインに恋愛関係はない。もちろん全くないという事はなく後輩ヒロインの方はその気がある風だが、それは裏の顔であって、メインは後輩ヒロインが先輩主人公に絡んでくる日常である。「絡んでくる」と言っても肉体的に絡むのではなくややウザい感じに「遊びましょうよ」「ご飯食べに行きましょうよ」「先輩どうせぼっちなんだから相手してあげますよ」と言ってくる方の絡んでくるであり、「どっちかというと一人でいる時間の方が好きで落ち着くんだ」という主人公にとっては面倒臭い存在であるが、一方で後輩ヒロインは女(爆乳)でありながら全幅の信頼を置いて男である主人公(=読者)に声をかけてくるのでありじゃれ合おうとしてくるのであり、「~っス」「~っスか」という男くさい口調も手伝って主人公も気軽にボディタッチができる(鼻を上に引っ張る、尻を叩く、頭のてっぺんをチョップ)のであり二人で飯を食う事もできるのであり、何だかんだでその「SUGOIDEKAI」胸にも気安く(?)触れる事ができるのであった。

 ラブコメとは主人公(=読者)が積極的に動けない・動いてはならない分、対応するヒロインが積極的になるものであり、そうするとストーリー展開上主人公とヒロインが恋仲となる事が自然である(だからヒロインは積極的に立ち回る)が、ヒロイン側が積極的に立ち回る事ができれば恋仲でなくてもその形式的な条件は満たしている。とは言えヒロインは主人公(=読者)に構ってほしくてしょうがない(「遊びたい時にだけ遊ぶ都合のいい女扱いっスか」「昨日からまだずっと腰痛いんスよ。先輩のせいっスよ」「先輩と一緒にお酒飲んでみたかったんスよ」)のであり、第三者から見れば立派なバカップルである。また主人公はヒロインのおかげで常識人的にツッコミ役になりきる事ができ、且つ何だかんだで楽しい休日を過ごす事ができ、読者にとっては極上の青春体験となろう。とは言え主人公・ヒロイン以外の周囲の会話がやや不自然、芝居臭いところが気になった。舞台廻しこそ自然に、さりげなくするべきなのである。しかしいいものはいい。

「あとうちは布団一組しかないから…」

「一緒に寝ます?」

「一枚ずつ分け合うんだよバカタレ!」

   

「ちゅーしたら起きますかね」

「なにす…」

「やっぱり起きましたか。冗談ですよ、じょ・お・だ・ん」

「…」

「ところで先輩、もしかしてちゅーした事ないんスか~」

   

第9位:おもいがおもいおもいさん/矢野としたか白泉社:YOUNG ANIMAL COMICS

おもいがおもいおもいさん 1 (ヤングアニマルコミックス)

おもいがおもいおもいさん 1 (ヤングアニマルコミックス)

 

  いやはや惜しい惜しい。主人公もヒロインも中3~高1というのは幼過ぎだ。ヤングアニマルに連載するのだからせめて大学生、高校生でも高校2年生ぐらいにすべきであった。そうすれば一気に性交渉まで突っ込めたかもしれない。そこまでいけばこのヤンデレブコメは1位か2位になっていたはずだ。とは言え…そうなったらなったでこのヤンデレヒロインの魅力は半減したかもしれない。

 ラブコメのヒロインは皆多かれ少なかれヤンデレ的要素を持っている。「美人で巨乳で性格も良い」ヒロインが「地味で平凡で何の取り柄もない主人公(=読者)に惚れる」など普通ならありえないが、それを「ありえる」とするからには世間からの視線や常識を屁とも思わない強い思い込みを含んだ好意や愛が必要となり、それは一歩間違えれば精神的に病んだ状態となる危険なものとなる。しかしそこは二次元の勝利で、どれだけ重い言葉を吐かれても所詮は「怒った顔もかわいい」程度ですむのであり、主人公(=読者)は「自分はこんなかわいい女(=ヒロイン)に愛されているのだ、つまり俺はすごい存在なのだ」と自尊心も大いに上昇しよう。とにかく本作は素晴らしい、どれだけ素晴らしいかは下記にある徹底的なヤンデレ的名言を見れば一目瞭然で、主人公(=読者)はその重たい重たい愛に癒されると同時に戦慄するのであるが、それも二次元であれば許されるのである。しかし前述したように主人公はまだ15歳、16歳であるから(「主人公君8月生まれだよね、って事は高3で学生結婚が可能だね!楽しみだな~、2年ちょっと」「けっ…こん…?」「…結婚する気もないのに告白してきたの?」)本格的にドロドロしないのが物足りず、主人公が純粋にヒロイン一筋であるのもやや物足りない。もちろんラブコメの主人公は浮気などしないが、それは「地味で平凡で冴えない自分を誰も相手にしてくれないから言い寄ってくる女で満足する」という結果でしかなく、機会があればハーレムを求めるのが人の世の常である。とは言え浮気や不倫にはリスクがつきものなので目の前のいい女には鼻の下を伸ばすのが関の山だが、そのような浮気的危機があれば、ヒロインはヤンデレ的手法で主人公(=読者)に永遠の愛を誓わせ、手足を縛る事ができただろう。しかしまあ、本作は素晴らしい。ヤンデレ万歳。

「他の女の子と仲良くしないでね、私といる時に他の女の子見ないでね、連絡先とかも全部消して」

「私達付き合ってもう3日になるよね、なのに手も繋ごうとしないなんて、本当に私の事好きなの、本気で結婚する気あるの」

「という事は80歳まで生きるとしたら、あと65年もイチャイチャできるね」

「決して浮気をせず生涯私だけを愛してくれて4人の子供達のいいお父さんになってくれて」

「つまり主人公君はもう家族だから私達は永遠に一緒だって事だよね」

「結婚して子供が産まれたらパパママ呼びになっちゃうんだよ、つまり私達が名前で呼び合えるのはあと4年しかないんだよ」

「そのためにあと7年も待たせる気?私はその間ずっと『早く孫の顔を見せろ』って言われ続けるんだよ」

「これから70年も支え合っていかなきゃならないのにこの程度の事で」

     

第8位:性欲の強過ぎる彼女に困ってます。sakuメディアファクトリーMFC

性欲の強すぎる婚約者に困ってます。sakuメディアファクトリーMFC

 

性欲の強すぎる婚約者に困ってます。 (MFC)

性欲の強すぎる婚約者に困ってます。 (MFC)

  • 作者:saku
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/05/23
  • メディア: Kindle
 

 ラブコメの主人公は地味で目立たずおとなしいので、ストーリー展開上どうしても対するヒロイン側が積極的に出る事になる。それによって主人公はヒロインに引っ張られるが、かと言って主人公(=読者)を被害者にしてはいけない。ヒロインがストーリーを引っ張る事は許容するが、ヒロインが主人公に対して殴る蹴るの暴行、或いは罵詈雑言の限りを加えてはならない。当たり前の話だ。地味で目立たずおとなしい、或いは勉強も駄目スポーツも駄目だからと言ってその者を殴ったり蹴ったり罵倒していいはずがないのだ。しかもそのようにしてひたすらヒロインに殴られ蹴られ罵倒されても「トホホ…」ですますような性的倒錯者が90年代には当然のようにいたのであり、その暗黒時代に耐えた事が俺を世界のラブコメ王たらしめているわけだが、それはともかく、なぜラブコメの主人公は地味で目立たずおとなしくなければならないかと言えば、読者の大半つまり俺も諸君も地味で目立たずおとなしいからであって、ではなぜ俺や諸君は内面に激しくドロドロとしたものを抱えていながら、それはもう激しいものを抱えていながら地味で目立たずおとなしいのだろうか。それはそういう態度を取る事が一番リスクが少ないからそうしているのであって、特に女性関係においてそれは顕著で、少しでも性欲や欲望的な事を表に出せばそれはセクハラ・パワハラ・DV等となって犯罪者扱いされる世の中だからである。

 しかし不思議な事だが女性が性欲等を前面に押し出しても犯罪者扱いされず笑い話ですんでしまうのであり、その是非は置いて、そうであればそれを積極的に活用するのがラブコメであり、かくして女(=ヒロイン)側が積極的に出るのも自然なのであり、その勢いに乗って主人公もその欲望を前面に出す事ができよう。

 また女(=ヒロイン)側から積極的に性的アピールをする事で、男(=主人公=読者)側からすれば「傷物にされた」等の主張をされる心配もなく、男として責任を取らなければならないといった重苦しい罪悪感からも解放される。そして二次元であれば大抵の事は性交渉によって解決するのであり、ヒロイン側が性生活に興味津々で性欲過多であっても、それは主人公(=読者)への愛情として笑い話で処理されるのであり(「彼を虜にするフェラテク」「俺が寝ている間にAV見ながらオナニー」「見られたいし興奮されたいし襲われたい」)、その処理の過程で主人公(=読者)も気が向いた時には性生活を楽しむ事ができよう。そしてここまで愛情たっぷりの生活を送る事ができたのなら主人公(=読者)も最後の最後には背伸びをしてプロポーズを成功させ、一生語り継がれる武勇伝も獲得でき、ヒロイン側も一生の思い出と幸せを獲得できるのであった。めでたしめでたしであって、このようなうまい話はもちろん現実にはありえないが、現実にはありえないからと言ってそれを描いてはいけないわけではない。ラブコメは現実を超越するのである。

「今日は秘密兵器があります!チョコレート味の食べても平気なローション」

(中略)

「まずい…いつものしょっぱい方がいい…」

「俺いつもしょっぱいの!?」

       

第7位:黒船来襲少女!/藤坂空樹竹書房:BAMBOO COMICS COLORFULSELECT]

黒船来襲少女! (バンブーコミックス COLORFUL SELECT)

黒船来襲少女! (バンブーコミックス COLORFUL SELECT)

 

 「エロではないが、非エロでもない」「性交渉シーンが多いが、性交渉的場面以外の見所も確保する」と言えばこの竹書房双葉社の独壇場であり他の追随を許さない。本作においても魅力的なヒロイン(「好きじゃなくても、カラダだけでいいよ、主人公がシタい時だけシていいから」「カタくなった、うれしい」)・悪女的なヒロイン(「たくさん…主人公君の濃いの出たね…これが私の元気の素」)・性交渉の間で揺れ動く男心、社会的立場(組織と自分、組織の人間関係と自分、組織にいる事によって得られるメリットとデメリット、等)によって揺れ動く自負心、をうまく噛み合わせ、陰気ではっきりしない主人公像を表現する事に成功しているのであった。

 当たり前の話だが、男たるもの女の尻を追い掛けているだけではいけない。仕事をしなければならない。女ならば家事手伝いや実家暮らしや気楽な派遣もしくは非正規の仕事でも何という事はないが、男というものは仕事において遮二無二努力し、輝かなければならない。とは言え仕事一筋の仕事人間というのも所詮「女の尻を追いかけ回しているだけ」な男と「馬鹿の一つ覚え」という点では同じである。やはり会社・仕事の合間に女が出てこなければならずその女を使いこなさなければならず、その女は地味で平凡で暗い主人公(=読者)にもすぐに心を開いてくれる、明るく健康的なひまわりのような女でなければならない。本作のヒロインはまさにそのような理想的なヒロインであって、はっきり明示はされていないがアメリカからやってきたヒロイン(「正真正銘の美少女」)は憧れの日本にやってきて主人公が住むマンションの隣の部屋に住むのだがふとしたきっかけで知り合いとなるのであり(「トイレ貸してくださイ!」「刃物もクスリも持ってませン、わ私日本に来たばかりデ、悪いコトしませんから」)、アメリカ的な明るい社交性とヒロインの持つ爽やかな魅力、そして過去この日本ラブコメ大賞に登場した事のある作者(2009・15位「ヴァージンげーむ」、2008・7位「ももいろミルク」、他)が描く細く豊満なヒロインの姿態は主人公(=読者)の生活に笑顔を運んでくれるのであり、上司女(仕事のためなら女の武器を使う、且つ溜まった時は主人公を性欲処理等に使う)にいいように使われるだけのうだつの上がらない主人公(=読者)はいつの間にか救われるのであった。

 特に後半、「身体の関係でもいいから」と主人公に抱かれようとするヒロインの描写は対応する性悪上司女との比較で美しく純粋に表現され、性交渉を経て美しさに磨きがかかり、その美しさは主人公によるものと認識された時、読者は主人公と共に大いなる幸福に包まれ、力を得て、これまでの他人にいいように使われた人生から訣別する(「お断りします、好きな人ができました、もう貴女とはしません」)事ができ、ヒロインとの新しい人生をスタートさせたのであった。つまり主人公(=読者)は生まれ変わったのだ。ラブコメとは再生の物語である。

    

第6位:佐藤くんは覗ている。/ゆきの竹書房:BAMBOO COMICS BC

 耳が痛い話だが女にモテるためには努力しなければならない。スポーツ、勉学、ファッション、社交性、会話能力、等、等を強化して、自分は「強い」「かっこいい」「賢い」を世間社会一般から獲得しなければ女は振り向かない。つまりヒロインを射止めるには努力しなければならない。しかし何度も言うようにそのような努力をしても優秀にはなれない、或いは様々な理由から努力できない男も大勢いるのであり、更に言えば血と汗と涙でそれらの諸能力を獲得したとしても女にモテる事が確定するかと言えば神ならぬ人の世の常でそうとは限らない。そのような理不尽に耐える男達のための「救い、癒し、希望」としてラブコメがあるわけだが、そうは言っても天から女が降ってくるわけではないのだから、「アプリ(このアプリを使えば女の考えているコトがわかり人生バラ色間違いなし)が舞い込んでくる」という設定にしたのが本作である。アプリ、というのが現代的でいいではないか。ラブコメは常にアップデートしなければならない。

 しかしながら「女の考えているコトがわかる」と言ってもその女が自分に悪意を持っていたら(或いは何の興味も持っていなかったら)そのような女に近づくわけにはいかないのだからラブコメとはならない。自分に対してやや好意めいたものが芽生えた、或いはもともと好意を持っているからこそのこのアプリの出番となるわけで、導入当初は

①アプリを使ってヒロインの(本音の)望みをかなえよう

②その結果ヒロインの好感度を上げて、徐々にヒロインを籠絡しよう

 となるはずだったが、アプリによってヒロイン達の本音が露わになると次第にヒロイン達の方が(他人の心を見ようとする主人公よりも)危ないキャラクターとして描かれてしまうのであった。ここがやや混乱するところで、主人公(=読者)はいつの間にか童貞狩り(成功例なし)が趣味の処女に襲われそうになり、幼馴染みでヤンデレ気味のストーカーに襲われそうになり(「趣味:主人公君の盗撮・盗聴・観察日記をつける」「主人公君、あの女どもは何かな?主人公君にはヒロインだけいればいいよね、それともヒロインの愛を試してるのかな?嫉妬してほしいのかな?そんな事しなくても(以下略)」)、上記2人は副ヒロイン級扱いでメインヒロインは2人いるのだがその2人も副ヒロインの暴走と欲望に感化されて結局暴走気味に主人公へアプローチをしかける事になり(「どうせ洩らすならもういっその事主人公さんに見られたい」「エッチな同人誌みたいに、無理やり奪います」)、危険な修羅場的なハーレムとなって、最後は天下の公道で「心を覗いた責任取ってくれるのよね?」とせまられたまま強引にフェードアウトとなるのであった。

 しかし1巻完結ならこのような終わり方も許されよう。読者はその勢いに翻弄されながらも「修羅場ハーレムができた」→「主人公(=俺)はやばい修羅場を経験した、それはもうすごかった」という読後感と共に、「自分は女にモテた」という記憶をインプットできよう。それでよい。人生に勢いが必要なようにラブコメにも勢いが必要なのだ。

      

第5位:狐のお嫁ちゃん/Batta[KADOKAWA:角川コミックス・エース]

狐のお嫁ちゃん (2) (みんなのコミック)

狐のお嫁ちゃん (2) (みんなのコミック)

  • 作者:Batta
  • 出版社/メーカー: eBookJapan Plus
  • 発売日: 2017/09/28
  • メディア: Kindle
 

 さて続いてはいわゆる動物擬人化ものである。擬人化によって美しい女となった動物女との恋物語は民話の世界から当たり前のように存在しているわけだが、擬人化をラブコメで扱うメリットとしては

①人間とは違う。つまり人間社会ではモテない主人公(=読者)にも惚れる可能性が大いにある。又は惚れても違和感がない(人間ではないので)。

②人間社会や世間に染まっていない。つまり女尊男卑な昨今の風潮に染まっていない。

③発情期がある。性的な交わりを正当化できる(発情期だから仕方なく交尾しているという言い訳が得られる)。

 があるが、一方デメリットとしては

①人間とは違う。つまり人間社会とは違う価値観や美的基準がある可能性がある

②人間社会や世間に染まっていない。つまり主人公(=読者)が一から人間社会の常識や世間のしがらみを教える必要がある

③発情期がある。逆レイプ的に性交渉を強要される恐れがある。

 等もあり、動物擬人化ヒロインを恋人又は嫁にしたのでめでたしめでたし、とはならない可能性もある。それに当たり前の話だが人間には人間が一番なのであり、過去の動物擬人化ものとしては下記ぐらいしかなかった。

モンスター娘のいる日常」(2014・8位)

狼と香辛料」(20122013・5位)

魔法少女猫X」(2007・5位)

「いぬみみ」(2007・15位)

コイネコ」(2006・28位)

もののけ・ちんかも」(2004・6位)

「BOX」(2004・8位)

「おとぎストーリー 天使のしっぽ」(2002・6位)

 しかも「狼と香辛料」以外はコメディに重きを置いているので真面目に主人公(人間)とヒロイン(動物)が生活している描写はなされないのが常であったが、本作は基本的に二人の結婚後の生活が描かれ、いかにして人間社会に溶け込むか(獣としてどこまで許容できるか)、から始まって、今後の生活設計(子供はいつ作るかその場合の養育費等は)、風邪をひいたらどうするか、お互いの親との付き合いをどうするか(異類の文化にどこまで付き合えるか)、また経済的な問題(養育費をどう稼ぐか)、等、等が次から次に発生して飽きる事がないが、ヒロインである狐のお嫁ちゃん(330歳、「物心ついた頃世は生類憐みの令で野犬が溢れて狐にとっては地獄のような世の中じゃった」)は人間ではない・人間社会や世間に染まっていないからそれら面倒臭い問題に愚痴の一つもこぼさず愉快に乗り越えていくのであり(「発情期はまだまだ続くぞ、気を取り直して今晩も交尾じゃ」)、それによって主人公(=読者)はヒロインに愛されている事を実感し、擬人化ヒロインを守ろうという静かな決意さえ生まれるのであった。

 この格差社会・女尊男卑の社会では人間の女に愛される事が絶望的になってしまった。つまり「擬人化ヒロインが目の前に現れる」事も「人間の女に愛される」事も同じくらいありえないのならば、大多数の男達は前者を取るだろう。それがラブコメの本質だ。

     

第4位:○○デレ井上よしひさジャイブ:CR COMICS DX

○○デレ(2) (CR COMICS DX)

○○デレ(2) (CR COMICS DX)

  • 作者:井上よしひさ
  • 出版社/メーカー: ジャイブ
  • 発売日: 2011/09/07
  • メディア: コミック
 

  繰り返し言及しているようにラブコメの主人公は「地味で平凡で冴えない」のだから、いわゆるオタクにするのが一番手っ取り早い上に読者は感情移入しやすい。そしてヒロインもオタクにする方がよい。その方がオタク主人公(=読者)の特殊な生態及び特殊な性癖を難なく理解する事ができ、万事うまくいくように思える。

 しかしヒロインもオタクであるという事はそのような理解の助けとなる反面、オタク的生活が基盤にあるという事でヒロインには主人公(=読者)以外に優先する対象が存在する事になり、主人公(=読者)の存在感の低下、また主人公(=読者)への依存心を薄める事に繋がる。ラブコメとはヒロイン→主人公へと一方的に愛情が先行するものという方式と矛盾しよう。主人公に向けられるべきエネルギーがオタク趣味へと向けられては困るのである。依存心が強ければ強いほど主人公の存在感が大きくなり、また対恋愛の力関係でも有利になるからである。

 そのため今までのラブコメでは「ヒロインもオタク」と言いながら実態は「オタクに理解がある」程度のマイルドな感じにするのが定番であった。本作の各ヒロインもコスプレ趣味、漫画家志望、声優志望、BL作家、同人作家、等とそれぞれ濃いオタク趣味を持っているが、しかし男オタク(=主人公=読者)に都合のいい存在(オタクに理解があり、主人公のオタク趣味全般を温かく見守る)としてキープされている。主人公のオタク趣味に対して同族嫌悪に陥る事はなく、自分のオタク趣味はその道を極め一人荒野を目指すような熾烈なものではない事も描写され、しかしオタク趣味は楽しいから続けるという事で主人公側に「自分もオタク趣味を捨てなくていいんだ」という言い訳を与え、むしろそのオタク趣味によって主人公(=読者)とヒロインは出会う事ができたというまとめへと落とし込んでいるのであった。

 つまり本作はよく言われる「いい歳してオタクだから彼女ができないのだ(結婚できないのだ)」という常識を否定しているすごいものなのであった。なぜそんな事ができたかと言えば二次元のセオリーに則って女オタクヒロインは女オタクにも関わらず美人でスタイル抜群で性格もいいのであり、そのため主人公はヒロインを意識し、しかし主人公はオタクであるからヒロインに声をかけることもできず向こうから話しかけてきてもほとんど言葉が出ないが、そこへ優しい偶然を与えてきっかけを作り、お互いの関係を発展させるのである。そしてなぜ「お互いの関係を発展」できたかと言えばヒロインもオタクだからである(「オタク同士ひかれあったんだね、きっと」「せっかくオタクの神様が彼に会わせてくれたんだもの」)。素晴らしい。ラブコメとはこのように都合の良い展開を通じて弱者(オタク)を救ってくれるのである。オタクな我々は癒され、救われ、希望を持ち、今日も偏見と闘うのである。

    

第3位:BOYS BE…~young adult~/イタバシマサヒロ玉越博幸富士見書房:ドラゴンコミックスエイジ]

BOYS BE… ~young adult~ 2 (ドラゴンコミックスエイジ た 6-1-2)

BOYS BE… ~young adult~ 2 (ドラゴンコミックスエイジ た 6-1-2)

 

 

 おお。何と。「BOYS BE…」(2000・19位)ではないか。2019年になってまた「BOYS BE…」と再会を果たす事ができるとは思わなかった。というのは俺と「BOYS BE…」の出会いはかなり古く小学生の頃に読み始めていた(行きつけの散髪屋に置いてあった)からであり、小学生にとって、本作に出てくる高校生主人公達のもどかしく甘酸っぱい、しかしほのかな色気のある瑞々しい青春ストーリーはかなり刺激的であった。

 しかしながらやがて出会った「天地無用!魎皇鬼」(1997年・1位)、そして「ふたりエッチ」(1998年・1位)の壮大さと深さは俺の人生を変え、ラブコメそのものがライフワークとなって今や世界のラブコメ王として降臨しているわけだが、「天地」「ふたりエッチ」を知ってしまった後では「BOYS BE…」の甘酸っぱく瑞々しいが刺激の少ない物語は俺の琴線に触れず、2000年に備忘程度で19位とした後長い間俺の記憶と本棚の奥にしまわれていたわけだが、しかし日本ラブコメ大賞に認定された以上俺は見捨てなかったのであり、俺のような体験をした当時の少年達(今の30代~40代)は大人になってまた「BOYS BE…」を復活させたのでありそれは見事この日本ラブコメ大賞の3位を射止めたのであった。心からおめでとう。

 しかしながら当時「BOYS BE…」を読んでいた、俺を含めた「恋に興味津々だが恋に臆病な少年達」は大人になってどうなったか。社会の厳しさに触れ、将来の不安に襲われ、酒の味を覚え、しかしやはり恋に臆病なのは変わらず、周囲にいる女達はそのような初心な少年達とは住む世界が違う遠い世界に行ってしまったではないか。しかし「BOYS BE…」の世界は違う。確かな財産も才能もなく、これといって特徴もない、むしろおっちょこちょいで慌てん坊で早とちりな主人公達はしかし目先の学業や仕事や自分の将来に真摯に向き合うのであり、時に怠惰に流されてもそのような自分を反省し後悔するのであり、そんな彼らにも遅い春は訪れる。真摯に、一生懸命に生きた彼らにはヒロインの方から優しく声をかけてくれるのである。

 思えばかつての「BOYS BE…」もそうだった。ヒーロー揃いの「少年マガジン」の片隅で、悩める読者を体現したような主人公達は世界の滅亡も野望もなくただ与えられた課題を地道に真剣に乗り越えようとしていたのであり、そこにヒロイン達は優しく声をかけ、きっかけを与えてくれたのだ。あの時代にはそんな漫画を優しく微笑んで認めてくれる度量があったが、今の「少年マガジン」、いや少年誌にそんな作品は成立しない。善と悪、富と貧乏、華やかさとみすぼらしさの対比の中で、漫画さえも全てが切り捨てられる時代となってしまった。しかしラブコメだけは違う。クラーク博士が言った「ボーイズ・ビー・アンビシャス(少年よ大志を抱け)」を胸に、かつて少年だった俺は今後もラブコメを追い求め続けよう。

   

第2位:アリソンは履いてない/ねんど。[竹書房:BAMBOO COMICS]

アリソンは履いてない 2 (バンブーコミックス)

アリソンは履いてない 2 (バンブーコミックス)

 

 繰り返しになってしまうがラブコメであればよい。ストーリーはありきたり、画力も優れているわけでもない、それでもラブコメとして優れていればよい。「ラブコメとして優れた」とは「地味で平凡で冴えない主人公」が何のリスクを負わずとも辛く悲しく痛い代償を払わなくても「美人でかわいくて胸も大きくてスタイルもよくて…」なヒロインを得る事ができ、それを何の違和感もなく主人公もヒロインも周囲の世界も受け入れることができる事を言う。そのため設定もありきたりでよく、本作も

①主人公が無職

スマホゲームからヒロインが出てくる

③色々な面倒事に巻き込まれる

 というそれだけのものであるが、その話の進め方がかなりうまかった。更に整理すれば

①ヒロインがスマホゲームから突如としてやってくるドタバタとなかなか信じられない主人公

②いつの間にか主人公の家に居着いてしまうヒロイン1

③ヒロイン1を追ってやってきたヒロイン2との戦い

④更にやってきたヒロイン3とヒロイン1の戦いとそれを静観するヒロイン2

⑤お互いの戦闘とその後やはり主人公の家に居着いてしまうヒロイン1~3

⑥更に追ってやってきたヒロイン4とヒロイン1の戦い、それに加わったり加わらなかったりするヒロイン2とヒロイン3

 となるわけだが、このように終始ドタバタしながらもややアホっぼい妹、こたつでカップ麺を食うヒロイン1~3、モミモミ(「女の子の体(おっぱい)をモミモミして魔力を回復させるあの操作」)、キレのあるセリフ(「君がいたこの4日間、ちょっと迷惑だったけどトータルで言うと楽しかったよ」「私はねえ、耳は付いてても、聞く耳は持ってないのよ!」)等が挿入され緩急自在、読んでいて楽しく、しかし癒されるという極上の読書体験であった。またヒロイン1、ヒロイン2、ヒロイン3…と登場させるタイミングも絶妙で、1巻で3人を出してもカオス感がないのはこの1~3をやや険悪にしているからで、それによって主人公(=読者)とヒロインが個別にストーリーを作り上げ、しかし主人公に危害を加える場合には一時的に団結し、しかし相変わらず険悪さは維持する事によって主人公の存在感を飛躍的に上げているのであった。

 しかしまあ、以下の4頁を見ればいかに本作が楽しいものかわかるであろう。とにかく楽しかった。そして本作を象徴するセリフがこれであろう。「どうしよう、困った事態だけど悪い気はしない」。

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第1位:ブラック学校に勤めてしまった先生/双龍日本文芸社:COMIC HEAVEN COMICS

ブラック学校に勤めてしまった先生(2) (ニチブンコミックス)

ブラック学校に勤めてしまった先生(2) (ニチブンコミックス)

 

 さて2位が「とにかく楽しい」ならば見事1位となった本作は何と言うか。「とにかくすごい」である。とにかくすごい。ここまで振り切った作品は20年以上の歴史を誇るオールナイトラブコメパーカー・日本ラブコメ大賞の中でも前代未聞である。

 ラブコメの主人公はヒロイン側によって一方的に惚れられるのを常とする。しかもその惚れられる理由は読者にとって一般的でなければならず、繰り返しになるが、「容姿淡麗」「スポーツ万能」「天才(IQなんとか)」等の特殊な理由を根拠にしてはならない。そのため一目惚れが一番よいが、一目惚れ効果が何人も続いたらそれは「一目惚れ」が持つ特殊性がなくなってしまう。

 そこで本作だが、女子校に赴任した新任教師主人公がまず開始4頁目から「まじ!?チョータイプなんだけど」「超タイプだから放課後にヤるねー」と言われる。いわゆる一目惚れである。そして一目惚れが何人も続くわけがないからそこでモテ期が終わって主人公とヒロインがヤるのかと言えばさにあらず、主人公はその超巨大というか富士山というかチョモランマというか、とにかくすごい性器(しかもオクロフィリア、ポリテロフィリア、多精子症)でもってその場にいる女子高生(全員黒い)及び保健医(「何このアダルティ」)を釘付けにしてしまうのであり、その性器を目にしたが最後女子高生ヒロイン達は次々とその性器に一目惚れつまり主人公に一目惚れとなるのであり、その勢いのまま主人公争奪戦が始まる、しかし主人公はあくまで真面目に聖職者としての道を進もうとしているのであり、そんな主人公の思いなんか知らんわいとばかりにやはり主人公争奪戦が…という荒唐無稽なものだが、あまりにも女子高生ヒロイン達が次から次へと主人公(=読者)へ攻撃を仕掛けてくるのですごいすごいと圧倒され、読み終わった後は空虚感さえ感じ、その空虚感の正体を知ろうと再び読み始め、やはり圧倒され空虚感さえ感じ…を繰り返す。非常に特異な読書体験であった。ラブコメとはすごいのだ。

「大好きな人のためならマーコ何でも出来るし!センコーなんか怖くねーし!主人公がド変態でも全部受け入れて最&高のエッチしてみせるし!」「主人公の生徒は皆主人公ッチン●を狙ってる!アタシも狙って当然だ!」「はああああ!?アタシだって真っ先に目つけてるし!?主人公ッチン●ガチラブだし!?」「マジない!主人公ッチの事マジラブだもん!」「えええだっておっぱいだしぃ、主人公ッチ嬉しくないのー!?」「先生のチン●がふざけてるしなに今の超パないはよ挿れたいし」「ムラムラやばばだったら昼休みいっぱいしよ!」「私のが締まりパないよスポーツ得意だから」「主人公先生って赤ちゃんプレイ好きなんですか!?パねええ私得意なんですよ後でしますぅ!?」…というわけで最&高の主人公(=読者)争奪戦の余韻に浸りながら日本ラブコメ大賞2019を終わろう。次は日本ラブコメ大賞2019成年部門編です。

日本ラブコメ大賞2019:Ⅱ 安穏で平穏な生活を送るだけが望みの

第20位:妻に恋する66の方法/福満しげゆき講談社:イブニングKC

妻に恋する66の方法(1) (イブニングコミックス)

妻に恋する66の方法(1) (イブニングコミックス)

 

 さて作者は「僕の小規模な生活」「うちの妻ってどうでしょう」(2008・1位)「僕の小規模な失敗」(2008・5位)以来の久々の登場となったが、その後甲斐性もないのに子供を2人も作り、連載は打ち切られ、日夜どうしようもない不安に駆られつつも妻を観察する事で束の間の平安を保つのであり2008年当時から変わっていなかった。そして社会性皆無な作者(「ずっと家にいると、外に出るのが怖くなったりするのです」)が結婚し子供をもうけた事自体が奇跡なのにその妻は美人(と思われれる)で、作者は漫画家であるから一人黙々と漫画を描き、孤独や寂しさに押し潰されそうになったとしても「わっ。家に女いる!」という驚きと共に妻を再認識するのであり、それが「妻に恋する」に繋がるわけであるが、同じく社会性皆無な読者にとっては本作を読んでいる間だけは主人公(=作者)と共にその喜びを分かち合う事ができるのである。これもラブコメの一つの形と言えよう。

 とは言え主人公(=作者)はひねくれ者なので「妻は美人だよ、ちょっと身体がずんぐりむっくりしているだけ」「九州が育んだ丈夫なボディ!」「じゃあ妻もあれぐらいオッパイ大きくなってよ!」「フンゴフゴフゴ」と妻をダシにするのであり、妻の方も子供を2人産んで年齢を重ねた今となってはもう人生やり直しなど望むべくもなく、このうだつの上がらない亭主の尻を叩いて何とか生活していかなければならない。その夫(=作者)と妻が醸し出す小市民的なしょうもない諍い(「女のマタに一生懸命トーン貼ってるとこずっと見ないでくれる?」「皆が皆、常におなかが減っているわけじゃないんだよ」「ダメやっか~、カカトの事描いちゃダメやっか~」)はユーモアと安定感があり、読ませるのであった。まあ世の中の大半の夫婦はこうして老いていくのだろう。

「私の可愛いエピソード、なんか描けたとね?」

「くっ!35歳のくせになんて図々しい」(妻の発言に反感を持っても口には出さないであげよう)

 

第19位:変女/此ノ木よしる[白泉社:YOUNG ANIMAL COMICS]

  ラブコメの主人公は「地味で平凡で冴えない」が原則であるから、主人公側から積極的に動いてはならない。とは言えそれではストーリーが展開しないので、対応するヒロインが積極的にならなければならず、それは恋愛展開についても同様となる。ヒロイン側から積極的に好意や愛情を主人公(=読者)にアピールしなければならない。そのような、「『美人でスタイル抜群なヒロイン』にも関わらず『地味で平凡で冴えない主人公』に積極的に関わる」という意外性の構図がラブコメなわけだが、かと言って主人公(=読者)がひたすらヒロインに振り回されるだけでは主人公(=読者)は疲れるだけであって、主人公がストーリーの中心、或いは中心たる人物・存在・事件の鍵を握るように仕向ける事が必要となる。だから主人公なのであって、ただヒロインに「からかわれる」「オモチャ的に消費される」存在ではラブコメとして作品一般としてもどうしようもない。

 そのため変(態)女に振り回される(「毎日オナニーしているのに、あの勃起角度が保てるなんて」「主人公さんは毎日オナニーなさるので、精子に良い食材をふんだんに使った特製(弁当)ですよ」)主人公、だけではラブコメにならないが、一方で変(態)女ヒロインは不器用だが真面目な主人公に徐々に惹かれ信頼していく事も描かれており、そうなる事でヒロインは安心してより一層変態度を増して主人公を振り回してゆくのであるが、そこで副ヒロイン(主人公の従妹で主人公を幼い頃から慕っている)が表れたところで主人公・ヒロイン・副ヒロインに微妙な三角関係が生まれ、ヒロインの変態度は時に先鋭的に、時にグダグダになり、副ヒロインはより主人公への気持ちを意識しつつ変態的ヒロインに巻き込まれ、主人公は最初から最後まで翻弄されているとは言え読者にはその時々の騒動はヒロイン・副ヒロインの主人公に対する戸惑いやアピールに端を発したものである事がわかり、ラブコメへと姿を変えるのであった。さすが過去1位を受賞した経験を持つ作者で(2017・1位「こっみくすたじお」)、そのあたりは憎たらしい。

「オカズができて良かったですね、私も今日の事、オカズに使います」

「えっ!?今日何か使える事あったか!?」

   

第18位:僕の心のヤバイやつ/桜井のりお秋田書店少年チャンピオンコミックス]

僕の心のヤバイやつ 2 (少年チャンピオン・コミックス)

僕の心のヤバイやつ 2 (少年チャンピオン・コミックス)

 

  「スクールカースト」「陽キャ」「陰キャ」と言った言葉が使われ出したのはここ5年程であるが、もちろんそのような言葉が使われるはるか昔からそれらを意味する事象はあった。そして陰キャな少年達はより陰気に、よりネガティブに、暗く深い谷底へと降りていくき、思春期や青春期の傷は一生残り、大人になってもリア充を妬み嫉み、やがてネトウヨその他になってSNSその他でひたすらリア充その他を叩く底辺な人間に成り下がるのであった。

 しかしながら我々にはラブコメがある。ラブコメにはそのような「陰キャ」な人間でもラブコメができるという夢物語があり、その夢の体験を通して優しさを取り戻し、真人間へと更生するのである。世の中からラブコメがなくなったらえらい事になるというのはそういう事だ。

 話がそれたがそのようにして「陰キャ」である事を強く自覚している主人公は陰キャをこじらせた上に「中二病」にも罹っており(「僕が今最も殺したい女だ」「クソクソクソクソ女、そうやって底辺を見下している事を絶対に後悔させてやる」)対処のしようもないが、そこに「陽キャ」であるはずのヒロイン(学校イチの美人、雑誌でモデルもやっている)をぶつけ、もちろん陰キャ陽キャ、水と油のはずの二人が同じ世界、同じ空気を共有する事はありえないが、偶然と幸運の重なりによって陽キャヒロインがややアホである事が判明し(「学校でねるねるねるねを作ろうとする女」「ねるねるねるねやプルーチェを料理だと思っているのか」「私はゴミ箱に捨てていないので、違います」)、対する陰キャ主人公は相変わらず中二病でありネガティブ思考が基本であり(「そもそも僕なんかと外で二人きりになって恥ずかしい…そんな涙かもしれん」「僕と二人でいるのを見られたりしたら、著しいイメージダウンである」)、いじらしい、まどろっこしいというより面倒臭いだけの男だが、そのような面倒臭い中二病の主人公も陽キャアホヒロインに恋をしている事に気付くのであり、陽キャアホヒロインの方も自分のやや特殊な個性を正面から受け止めてくれる主人公を次第に意識してしまい、更にわけのわからない行動に出てしまうのであるが、ヒロインのその「わけのわからない行動」が主人公が発端になっている事で読者は癒されるのであった。

 また「ヒロインに振り回される主人公(=読者)」を基本としながらも時々はヒロイン側が主人公に振り回されるのであり、そのような攻守交代を経てだんだんと二人のみの独特の世界ができあがっていくのも非常に居心地が良い。かくして「スクールカースト」を乗り越える事ができるかもしれない。希望、それがラブコメだ。

「…トイレだよ」

「トイレは上にしかないだろ」

「あっ。そうなんだ間違えた~。じゃあね」

「やれやれ。…僕と…喋りに来たのか…?」

  

第17位:パラダイスウォー/梶島正樹・水樹尋[講談社講談社ラノベ文庫 

パラダイスウォー2 (講談社ラノベ文庫)

パラダイスウォー2 (講談社ラノベ文庫)

 

  小説とは何か。「活字で描かれた漫画」か。そうではない。小説とはあらゆる形式から自由なものであり、世間的常識の下にある嘘や偽善を暴くためのものである。老若男女全てが支えあい助け合うと言うが本当は老人と女だけが得をしているのではないのか、多様性の名の下に特定の層が優遇されているのではないか、愛は金では買えないというが本当にそうか、戦争反対と言うが本心では戦争したいのではないか(そして自分は絶対に負けない、死なないと思っているのではないか)、自分以外は皆不幸になれ但し自分だけは幸せになるのが当然だと思っているのではないか、等、等、人間の奥底にあるどうしようもない真実を探り当ててきたのが小説であり文学である。そしてそこから話は俺のラノベ嫌いへと繋がるが、今や権威と化し旧来の伝統に凝り固まってしまったミステリー、SF、漫画とは違い、せっかく自由な形式が保障されているにも関わらず出てくる作品は相変わらず「正義感が強い」「『友達(仲間)は大事だ』とか言う」「雨に濡れているからと言って捨て犬に傘をさして自分は(以下略)」、等、等な主人公ばかりであって、これだけ多様性が叫ばれている時代に金太郎飴のように同じ性格をした主人公だらけなのはどうしたわけだ。小説だろう、自由だろう。俺やお前のような、地味で平凡で冴えなくて、貧乏で、むっつりスケベで、チビでデブでハゲで、プライドだけは大きくて、世間体を気にして、器が小さくて、そんな主人公がしかし美人で可愛くて巨乳でスタイル抜群な女にモテモテになるやつを作ったらどうだ。小説ならそれができるのだ。

 話がそれたが本作もまたそのような「お人好し」系の主人公であり、もちろん悪人や筋金入りのワルよりはお人好しの方が読者としては感情移入しやすいが、「でも、今はちょっと頑張ってみたいんだ」「俺が一緒にいるから、安心して」「誰だって言いたくない事の一つや二つ」、等、等の歯が浮くような台詞が散りばめられると主人公=読者の図式が成り立たなくなってしまい、それでは「自分とは関係ない誰かがモテている」という胸糞悪いだけの話となってしまう。ラブコメとは主人公=読者であり、その主人公がモテる事で読者もモテる、それによって読者は救われるのである。

 とは言え本作はラブコメの老舗である「天地無用!魎皇鬼」(1997・1位)に連なるシリーズであるから及第点になるのは保証されていたのであった。主人公には前述したような「いい人過ぎる」面があるが、突然のサバイバルによる不慣れな生活や宇宙の命運を賭けた戦いに圧倒されながらも4人の美少女と1人の露出狂的美女が主人公をサポートするのであり、主人公は読者にとってリアルでなければならないがヒロイン側がいくら突飛な設定(美人でスタイル抜群で性格もいいのになぜか主人公に好意を持っている)でも問題はない。要はいかにして地味で平凡で冴えない主人公を中心にして盛り上げていくかという事であり、本家本元の「天地」主人公は特殊な家柄の人間な分、感情移入が難しいところもあったがこちらは本当にただの一般人なのでその分感情移入も容易で読みやすくもあった。

 またラノベなのだから文体や文章の不自然さ、説明を会話文で切り上げてしまう粗っぽさは問われない。何しろ本作は「天地無用!」シリーズなのであり、SF的設定も胸躍るものがある。「天地無用!魎皇鬼」第5期がいよいよ始まるが、本作もアニメ化してもらいたいものだ。

   

 第16位:脱童貞の相手は…まさかのアイツ!?ぽろりブラスト出版:comic gloss]

脱童貞の相手は…まさかのアイツ!? (Comic gloss)

脱童貞の相手は…まさかのアイツ!? (Comic gloss)

  • 作者:ぽろり
  • 出版社/メーカー: 星雲社
  • 発売日: 2017/03/18
  • メディア: コミック
 

 

 本作はいわゆるライトなエロ漫画であり、成年指定されていないエロ漫画である。この分野だと竹書房双葉社少年画報社が長く第一人者であるが、こちらの電子書籍・配信系のレーベルも馬鹿にできない。なぜならとにかく量が多いのであり、量が多ければその中にキラリと光るラブコメも多くなり、世界のラブコメ王たる俺はその類まれな嗅覚と選択眼でひょいと掴み出す事できる。世界のラブコメ王は新興勢力の味方である。

 で、本作はまず絵が上手いわけではない。キャラクターは普通だが背景が雑で、特に時々出てくる食卓の貧相さはかなりのものであるが、主人公・ヒロイン1(主人公の義妹)・ヒロイン2(主人公の恋人)による三角関係、それと並行する性交渉の進行は非常にスムーズであって、

①同棲中のヒロイン2とようやく性交渉へと至るはずの主人公はヒロイン1の妨害にあう

②事故と偶然によってヒロイン1と性交渉をすましてしまう

③その後も一つ屋根の下でヒロイン2にばれずにヒロイン1と性交渉へと至ってしまう

 と進むのであるが、この小規模感、場面展開の少なさがキャラクター・背景・その他小道具含め全てが平均的な画力とマッチして安定感を出している。また主人公とヒロイン2との性交渉を阻止しようとするヒロイン1のいじらしさ、直球さ(「お兄ちゃんはあたしだけのものなんだから」「チャンスよ!これで彼女に幻滅されちゃえ!」)、やや子供っぽい言動・髪型(ミッキーヘア…でいいはずだ)と、対するヒロイン2の天然且つ主人公を信頼し切っている大らかさ、しっとりと大人びた風貌(基本薄着、ロングヘア)、その間に立って右往左往しつつ欲望を放出する主人公という構図も安定感を持っており、偶然の結果であっても稀有なものである。

 またヒロイン1・2が「なぜこんな中途半端な主人公を慕っているのか」の理由もなく次々とラッキースケベが発生するのも良い。理由を考える暇もなく主人公(=読者)は次々と「おいしい目にあう」のであり、それによって読者はいつの間にか自然に主人公と同化し、この困った三角関係に困惑しつつ、ヒロインによるヤキモチ等のおいしいところを味わう事ができよう。こういうものがあるから電子書籍も油断ならない。これからも探し続ける事にしよう。

   

第15位:正しくない恋愛のススメ/東雲龍少年画報社:YKコミックス]

正しくない恋愛のススメ (ヤングキングコミックス)

正しくない恋愛のススメ (ヤングキングコミックス)

 

 ラブコメとは男にとって「都合のいい」ものでなければならない。それは例えば彼女いない歴=年齢で、女と目を合わせると顔が赤くなってしまうような、どう考えても春が訪れる事はない青年にも女が寄って来る…というものであり、そんな夢物語のような都合のいい話もラブコメなら可能である。という事で本作であるが、

①ぶつかったヒロインに「ねえ君、ちょっと時間ある?」

②ヒロイン「今は男でもエステとか行くのが普通なのよ。ウチの店、今だったらお試し価格で」主人公「…」

③その後紆余曲折あってヒロインの方からデートの誘い

④ヒロインは童貞喰いで、童貞を喰い終わったら関係も終了する事が判明(「私とえっちしたら…おしまい」)

⑤童貞を喰われてポイ捨てなどふざける、と逃げる主人公、追うヒロイン(「私は私のやり方で、主人公君の事、本気で落として行くから」)

⑥その主人公と同じバイト先の副ヒロインが参戦(「主人公は私と、明日出掛ける約束してるから、絶対駄目!」)

⑦ヒロインと副ヒロインが女のプライドを刺激されて主人公にアピール(「あの2人共…狭いんですが」「あんたがまたエロい事しないか監視するためよ」「私は隣に座りたいから」)、リア充状態

⑧主人公とヒロインは性交渉、更に主人公と副ヒロインも性交渉

⑨ヒロイン・副ヒロインを天秤にかけた結果、主人公はヒロインを選択

⑩ヒロインもいつの間にか主人公を好きになっていたので両想い、ハッピーエンド

 という事で、まさにラブコメとはこういうものですよという見本のような作品であった。これでもしヒロインが童貞喰い(他の男とヤッた事がある)でなければ迷わず1位となったところだが、世の中そううまくいかない。たとえばヒロインは童貞喰いを標榜しているが成功したためしがない、いわゆる「処女ビッチ」状態…とかであれば良かった。しかし主人公は二人の女を天秤にかけておきながら(ヤッておきながら)副ヒロインに「私は、告白もしたし、こうなるってわかってたし、これでいいの」「ほらっ、早く行って仲直りしてくるっ」と背中を押され許されるのであり、主人公(=読者)は罪悪感を微塵も感じず純愛気分でハッピーエンドとなり、至れり尽くせりとはまさにこの事であった。世の中のラブコメ、いや漫画が全てこうであれば俺もずいぶん楽になるが、そうもいかない。

 しかし…できればエピローグを入れてヒロイン・副ヒロインのハーレムエンドを見たかったなあ、そしたら1位にしてもよかったか。世の中そううまくいかない(ここで(笑)を入れておこう)。

    

 第14位:社畜と少女の1800日板場広志芳文社芳文社コミックス

社畜と少女の1800日 3 (芳文社コミックス)

社畜と少女の1800日 3 (芳文社コミックス)

 

  などと小難しい事を言っているがラブコメほど簡単なものはない。主人公を「地味で平凡で冴えない主人公」にすればいいだけであって、華やかさはなく、周囲から注目される事もなく、特別な才能があるわけでもなく、金にも人にも恵まれず、安穏で平穏な生活を送るだけが望みの何の取り柄のない人物を主人公にすればいい。そしてそこに女をぶつければいい。やがて物語は勝手に動き、転がり、スピードを増すだろう。人生だってそんなものだ。また主人公は何歳でもいいのであって、高校生なら高校生なりの、大学生なら大学生なりの、社会人なら社会人なりのラブコメはある。

 というわけで本作であるが、彼女がいない独身40歳の社畜男主人公はかつての高校の同級生(女)と「半年前に偶然街で会って立ち話をした」だけだというのにその同級生の娘(中学2年)が訪れてくるのであり、なぜその同級生が娘を主人公の家へ差し向けたのかは不明だが(主人公さんの住所が書かれたメモだけ残して「ここを頼れ」と…)困った主人公は「警察か専門の機関へ行けばいい」、しかし娘ヒロインは「母は…主人公さんを頼れと言いました。だからもしかしたら、近々ここに私を迎えに来るかもしれません」「どうか…私をここに置いて下さい…」、安穏で平穏な生活を送るだけが望みの主人公は「とにかく泣き止んでほしいというその場しのぎの安請け合い」で血縁なしの少女ヒロインとの奇妙な同居生活が始まってしまうが、14歳とは思えない健気で精一杯なヒロインの姿に心打たれ、延々と続く社畜生活で心が荒んだ(「生きるために仕事してるんだか仕事するために生きてるんだかわからなくなった」)主人公に彩りと安らぎと平穏が生まれ、会社の上司(既婚、やがてバツイチ)には迫られ、ヒロインの学校の担任と恋人関係になり…と物語は動き、転がり、スピードを増すのであった。

 作者は日本ラブコメ大賞の常連であり(2017・6位「脱オタしてはみたものの」、2015・8位「歳の差20/40」、他)、その年季の入った「スレンダー且つ巨乳」の艶のあるヒロインは本作でも健在だが、今までとは趣を異にして少女ヒロインと主人公の心が通い合う交流を丁寧に描き、SE会社での辛い実態(「最近の業績不振を理由に人員は増やしてもらえそうにないわ」)と社畜にならざるを得ない40歳男の実態(「まあだから俺みたいなのでも仕事があるんだよな」)も描き、その上で副ヒロイン1(ヒロインの学校の担任)、副ヒロイン2(同僚、バツイチ)との逢瀬を描く事で「人生の大半のクリスマスは楽しくなかった、20代の頃はいちゃつくカップル達を呪い、30代は年末進行に追われて12月の記憶すらなく…」だった主人公(=読者)はそれらヒロインにモテだした上に大変な事件の渦中に置かれるのである。いかにそれが大変だとしても(「現実的にこれからどうするつもり?この先ずっとその子の面倒見るの?でも主人公君はどうなるの?結婚もせずその子の親代わりとして生きていくの?」)、終わる事のない、救いのない社畜生活を営む我々読者にとって主人公の生活は一時の清涼剤となろう。そして明日も社畜となって頑張ろうではないか。ラブコメは明日への源なのである。

     

第13位:10Carats/いるまかみり芳文社芳文社コミックス]

10Carats (芳文社コミックス)

10Carats (芳文社コミックス)

 

 

 ラブコメとは優しさと不可分である。「優しさ」といってもそれはボランティアや募金といった即物的な事を言っているのではなく、この世界のあらゆる事を許容する事を言う(むしろボランティアや募金は人を選ぶという点で優しさとは正反対のものである、というのが俺の持論だが、それはともかく)。「平凡でおとなしいどこにでもいる男が、なぜか美人でスタイルのいい女と付き合う」物語となると途端に「どうして平凡でおとなしいどこにでもいる男が、なぜか美人でスタイルのいい女と付き合うのか。おかしいではないか」と糾弾する事に優しさはない。そういう事もあるのだろう、世の中には時に想像もつかない事が起こるものだ、と許容する事が優しさである。これだけ多様性が叫ばれているご時世でもひたすら自分の偏狭な基準や常識にとらわれ、且つそれを他人に強制する事が多いのは驚くばかりだが、それでこそ優しさを帯びたラブコメが引き立つというものだ。ラブコメとは思想でもあるのだ。

 「平凡でおとなしいどこにでもいる男でも、充実した人生を送れる」ためにはどうすべきか。仕事に精を出す、趣味に熱中する、四季を運ぶ日本を愛す、等色々あるが、ラブコメにおいては女を用意する。男は女によって変わるのであり、それが充実した人生に繋がるからである。もちろん男女の刺激的な恋愛の駆け引きなどは必要ない。むしろそういった、恋愛関係に付き物の葛藤や苦悩を主人公(=読者)が感じないよう優しく包み込む工夫がなされなければならず、本作はそのお手本とも言えるものであって、それぞれの短編にはややひねくれた主人公、やや自分の人生をドラマチックにしたい主人公、ただ部屋でくつろぐカップル、等が出てくるが、いずれもそれなりの「事件」を用意し(「ばあちゃんの通夜でばったり再会した幼馴染」「ものっそいパピヨンじゃねえか」「せめて女のヒモくらいは上手にこなしたいが、それすら満足にできていない」)、しかし何事もなく過ぎ、「何事か」あったとしても破滅を迎える事なく明日はやってくる事を示して穏やかに終わるのであった。

 また主人公とヒロインの会話が絶妙で、主人公に好意を持っている事を匂わせることで主人公の歓心を誘うが、それは「都合のいい展開」を露骨に感じさせない(「露骨に感じない」だけで、何となくは感じる)ギリギリの範囲で収まり、主人公(=読者)が戸惑う事もない。ラブコメのヒロインに求められるのはヒロイン側が積極的に立ち回りながらも決して主人公より前に出ないことであり、しかし愛情は持っているため「今すぐ抱いてほしい」という事を主人公がひるまない範囲で(或いは主人公が消極的という殻を捨てて積極的になってもいいと判断できるように)表明しなければならないが、その難しい役回りをごく自然に行わせている。それによって主人公(=読者)は救われ、癒され、希望が持てるのであった。ラブコメとは優しさなのだ。

    

 第12位:さくら江さんはグイグイ来すぎる/家田キリゼン芳文社:KIRARA TIME KR CIMICS

 「許嫁」というシステムはラブコメ的には大変便利なものである。わざわざ恋の駆け引き、惚れた惚れられたの面倒な諍いを起こす事なく主人公とヒロインは夫婦となるのであり、二次元の論理に従って主人公は地味で平凡な男なのにヒロインは「美人でスタイル抜群で性格もいい」且つ「主人公にぞっこん」なのであるから、こんなに楽な事はない…わけだが過去の日本ラブコメ大賞を見渡しても(下記参照)いわゆる小粒揃いの上に数も少なかった。

「許嫁協定」(2015・6位)

「はっぴい・ゆめくら」(2006・9位)

「すぱすぱ」(2003・11位)

藍より青し」(2002・18位)

 はてなぜこんなに少ない…としばし考えたが、実は「許嫁」という題材が難しいからで、まだ「嫁に来る事を許されている」程度で実際に同居して結婚生活をするわけではないのだからストーリー的に広がらないのであり、活用されないのも無理はない。しかし本作においてはヒロイン(「頭脳明晰、容姿端麗、わりと全校の憧れの的」「とにかく美人で、頭が良く、品行方正、学園のマドンナ」)はとにかく主人公にグイグイグイグイ強引にせまりまくるのであり(「ボディタッチで殿方のハートをラブゲッチュ」「マイクロビキニです」「愛の裸エプロンです」)、なぜそんなにグイグイ来るのかと言えば許嫁だからであった。

 また主人公(=読者)側からすれば「この時代に親が決めた結婚なんていいのかな」「自分はヒロインに比べて、平凡な人間だし…」と不安に思うところだが、ヒロインは率先して「私のどこが嫌いでお気に召さないのか教えていただけませんか」「主人公様の許嫁で本当によかったです」「許嫁10周年のプレゼント」と表明する事によって主人公(=読者)は前述の罪悪感から解放され、存分に独占欲を満たす事ができ、恋の駆け引きや面倒な諍いに巻き込まれる事なく安心してヒロインとの関係に没頭できる(「俺達ほっておいたって、そのうちけ…結婚するのは変わらないじゃーないですか」)のであり、ヒロインがグイグイ来るくせにいざ主人公からヒロインへ歩み寄ると途端に怖気づいてしまうところ(「覚悟の決まった分だけお見せしていきます」)も愛おしさを感じよう。つまり本作はいい事尽くしな大変に優れた作品であったが、いかんせん主人公・ヒロイン以外の出番が多く群像劇的になってしまっているのでこの順位となった。ラブコメとは主人公(=読者)のための物語なのである。自分以外の他人が誰かにモテたからどうだというのだ。

 話は変わりますが、作者のアイマスの同人誌(武内P×楓)もお薦めですよ。

   

第11位:ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?聴猫芝居石神一威・HisashiADOKAWA:電撃コミックスNEXT

ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.3 (電撃コミックスNEXT)
 

 さて本作アニメ版は3年前に放送されており俺はその時に既に見ており、その時点で本作がオールナイトラブコメパーカー・日本ラブコメ大賞に該当する事はほぼ決定していたわけだが、この日本ラブコメ大賞は原則として書籍に与えられるものであり書籍を買った時に言及すればいいだろうと呑気な事を言っていたら3年が経ってしまいました。決して他意があったわけではない。そもそもこの日本ラブコメ大賞に認定される事は大変に名誉な事なのであり、来年以降も待っている作品が多々あるのだ。

 という冗談はさておいてネットと現実の区別がつかなくなった女子高生ヒロインが出てくる。主人公が、ではない。ヒロイン側がネットと現実の区別がつかなくなって、主人公のネットゲーム上のキャラクターの嫁となり(「初心者丸出しのアコに簡単なアドバイスをしたら懐かれてしまい」)、ヒロイン的には自分の夫=ネットキャラ(ルシアン)=主人公となり、現実でも嫁として自身の立場を主張するのであった。

 「ヒロイン側の一方的な思い込みや勘違い」によって主人公(=読者)へ積極的になる、というのは時々見られるが、本作の場合は小説家にキチガイじみたファンレターを送る傍迷惑な人間のようなものであって、「ネットと現実の区別がつかない」ようなおかしな女に付きまとわれては大迷惑だが、一方で2次元の法則に沿ってそのヒロインは美人で巨乳である。そして主人公(=読者)はネット上ではそれなりに格好つけたりはするものの現実ではただの常識的なオタク高校生なわけだからその驚愕の展開に慌てふためきつつもヒロイン側から嫁嫁嫁を連呼されるわけでありその言に乗ってリア充的な青春を謳歌できる(「コンビニで肉まんでも買って帰ろうぜ」「今日は2つにわけるアイスでも買って帰るか」「わけわからなくなったので、とりあえず私の夫は最高ですと主張しておきました!」)のであり、悪い話ではないのであった。

 ラブコメの主人公は決して能動的になってはならない。またヒーローになってはならない。なぜなら読者たる我々は能動的ではなくヒーローでもないからだが、では主人公がネットゲーム上でヒロインを射止めるのはどうか。その射止める過程で歯が浮くような浮ついた言葉を吐いたり、やや偽善的な優しさを見せたとしても、素の主人公が我々読者と同じ単なるオタクであればよい。誰でも正義面したい時期があるもので、しかし正義面してヒロインを助けたところそのヒロインがネットと現実の区別がつかないヤンデレでした、現実でも嫁嫁嫁と主張します、しかもその他のネトゲメンバーも巻き込んで…となって事態は複雑化するが、そこはフィクション且つコメディであるから収まるところに収まる(「ゲームのお前よりリアルのお前の方がずっと可愛い」「私もリアルのルシアンに会った後、もっともっと好きになりました」)のであり、結果としてネットとリアルを股にかけたオタクならではのリア充生活が描かれており、これはこれでいいだろう。現代ならではの青春だ。ラブコメとは青春、或いは青春を手に入れる事ができなかった者達のための追体験の場なのだ。

 しかしヒロインのセリフがいちいち面白いのも困るな(下記参照)。ストーリーに集中できない。

「うわあ…将来が約束されたお金持ちとか死ねばいいのに…」

リア充…敵はリア充…」

「もともと私なんかリア充してる普通の女子高生と戦って勝てるわけがなかったんです」

日本ラブコメ大賞2019:Ⅰ

 死んだ死んだ、皆死んだ。明日会える、今度会える、いつか会えると思っていた人達は皆死んでしまった。その通り、皆死ぬのだ。だから生ある人間は生ある限りその命を燃やさなければならないが、それにしても彼らが死んで俺が生き残った理由はない。2019年が去ってゆく、そしてやってくる2020年に彼らはいない。なぜだ。わからない。わからないままいつものように寒い冬がやってきて日本ラブコメ大賞が始まる。

   

【一般部門】

ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?聴猫芝居石神一威・Hisashi[KADOKAWA:電撃コミックスNEXT]

・青春ポップ!/北河トウタ秋田書店ヤングチャンピオン烈コミックス]

社畜と少女の1800日/板場広志芳文社芳文社コミックス]

・狐のお嫁ちゃん/Batta[KADOKAWA:角川コミックス・エース]

・可愛ければ変態でも好きになってくれますか?/花間橙・ChuN・sune[KADOKAWA:ドラゴンコミックスエイジ]

・変女/此ノ木よしる[白泉社:YOUNG ANIMAL COMICS]

・隣人を妹せよ!/森乃葉りふ[一迅社:4コマKINGSぱれっとCOMICS]

・宇崎ちゃんは遊びたい!/丈[KADOKAWA:ドラゴンコミックスエイジ]

・手品先輩/アズ[講談社ヤンマガKC]

・性欲の強過ぎる彼女に困ってます。/saku[メディアファクトリーMFC

・性欲の強すぎる婚約者に困ってます。/saku[メディアファクトリーMFC

・BOYS BE…~young adult~/イタバシマサヒロ玉越博幸富士見書房:ドラゴンコミックスエイジ]

・○○デレ/井上よしひさ[ジャイブ:CR COMICS DX]

・あくまでモテる×××/津々巳あや[ジャイブ:CR COMICS]

・佐藤くんは覗ている。/ゆきの[竹書房:BAMBOO COMICS BC]

・小学生がママでもいいですか/ぢたま某講談社シリウスKC]

・妻に恋する66の方法/福満しげゆき講談社:イブニングKCKC]

・さくら江さんはグイグイ来すぎる/家田キリゼン[芳文社:KIRARA TIME KR CIMICS]

・脱童貞の相手は…まさかのアイツ!?/ぽろり[ブラスト出版:comic gloss]

・新婚のいろはさん/OYSTER[双葉社:ACTION COMICS]

・おもいがおもいおもいさん/矢野としたか[白泉社:YOUNG ANIMAL COMICS]

・ブラック学校に勤めてしまった先生/双龍[日本文芸社:COMIC HEAVEN COMICS]

・10Carats/いるまかみり芳文社芳文社コミックス]

・姉というもの~エッチなお姉ちゃんはスキですか?~ アンソロジーコミック[一迅社:REX COMICS]

・アンドロイド・ピニ/桑田次郎サン出版:COMIC PET SERIES]

・アリソンは履いてない/ねんど。[竹書房:BAMBOO COMICS]

・正しくない恋愛のススメ/東雲龍少年画報社:YKコミックス]

・黒船来襲少女!/藤坂空樹竹書房:BAMBOO COMICS COLORFULSELECT]

・パラダイスウォー/梶島正樹・水樹尋[講談社講談社ラノベ文庫

・僕の心のヤバイやつ/桜井のりお秋田書店少年チャンピオンコミックス]

   

【成年部門】

・妹乳ヘブン!/コトバアイ[ジーオーティー:GOT COMICS]

・恋愛スペシャリテ/emily[文苑堂:BAVEL COMICS]

・部活少女パラダイス 汗っかきの天使たち/ブラザーピエロクロエ出版:真激COMICS]

・ふたりのひみつ/コテング[ワニマガジン社:WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL]

・しすたーずサンドイッチ/キャンベル議長[ジーウォーク:ムーグコミックス]

・色めき出す世界/美矢火[文苑堂:BAVEL COMICS]

・好きの吐息/スピリタス太郎ジーオーティー:GOT COMICS]

・妹でごめんね/西川康コアマガジンメガストアコミックスシリーズ]

・ひとりじめ/なぱた[ワニマガジン社:WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL]

・黒ギャルちゃんはキミだけが好き/跳馬遊鹿メディアックス:MDコミックスNEO]

・恋慕ダイアリー/ひなづか涼[文苑堂:BAVEL COMICS]

・エルフハーレム物語/三船誠二郎ティーアイネットMUJIN COMICS]

・ははといもうと/板場広し[クロエ出版:真激COMICS]

・恋乳ているず あんこーる/momi[文苑堂:BAVEL COMICS]

・イジラレ/愛上陸[ワニマガジン社:WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL]

・ぴゅあ×シコ×みるく/ぎうにう[ジーオーティー:GOT COMICS]

・オマエがワタシをママにするんだよ!/吉田[スコラマガジン:富士美コミックス]

・ふわとろエッチランド/一ノ瀬ランドワニマガジン社:WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL]

異類婚姻譚-狐嫁と結婚しました-/上原りょう・ユキバスターZ[フランス書院フランス書院美少女文庫

・妹とエッチするのは、お兄ちゃんの義務だよねっ!/しのぎ鋭介ティーアイネットMUJIN COMICS]

・おやじでも女子学生と孕ませ多重婚ができる法律ができました/黒瀧糸由・置弓枷・Miel[パラダイム:ぷちぱら文庫]

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舞台「天地無用!魎皇鬼」、自転車でコミケ2019夏、大阪兵庫北海道茨城

2019年7月~

   

  • (腹が立ったので)会社での話。 中途採用で某帝大卒で前職は外資系で意識高い系で顔は普通な女(離婚歴あり)が入社して1年も経たないのに「辞めたい」と言い出して、その女と俺は仕事上でよくやり取りはするものの部署が違うので関係ないのに「同じ年齢だから」という理由で posted at 20:52:41
  • 「話を聞いてやってくれ」と言われ渋々話す事になったわけですが、いきなり「工場の人と話が合わない、というか、地方のドカタみたいな人と話したくない、私はそういう世界の人間じゃない(意訳)」と言い出したので俺も「じゃあ辞めなさい、地方の工場の現場があって会社なんだから」と言うと posted at 20:58:56
  • 何か反論したかったのか「あんたみたいに同じ会社に10年以上いて、サービス残業させられても文句一つ言えないで、結婚も離婚も経験してない男に何がわかる(意訳)」と言われ、こらあかんわと「はいそうですね」とだけ言って席を立ったんですが、今頃になって腹が立ってきたのでツイートじゃ posted at 21:05:47
  • @shomotsubugyo やあこんばんは。 カレーをドカ食いしたらすっきりしました。 やっぱりサラリーマンは最高? pic.twitter.com/gnOnXPb4D1 posted at 23:52:01

   

  • やはり選挙は何度経験してもいいものだ、お祭りみたいなものだからな。 次は新宿のお祭りへ行こう。 pic.twitter.com/v8ROLVHeGz posted at 15:40:10
  • 選挙と舞台と古本屋①新宿村LIVE・舞台「天地無用!魎皇鬼」(後で詳しく書きますが、大変素晴らしい出来でした。天地ファン歴20年でOVA派の俺が言うのだから間違いない) pic.twitter.com/8MLtkxfnKK posted at 20:31:55
  • 選挙と舞台と古本屋②ブックオフ新宿駅西口店(ヨボヨボの爺さんがガンダムのDVDを両手いっぱいに抱えていた) pic.twitter.com/j9NN8WNost posted at 20:34:26
  • ああ、やっぱり参議院選挙が気になる、しかし今日の舞台「天地無用!魎皇鬼」が素晴らしかったのでそっちについて書くか。 posted at 21:18:44
  • 天地無用!魎皇鬼」ですが、控え目に言って俺は1期(1~6話)をそれぞれ10回以上は見ています(2期なら20回以上、「お祭り前日の夜」なら30回以上)。それも10代後半の一番頭が冴えている時に見ているんで、まあ大体覚えているわけですね。セリフも雰囲気も。 posted at 21:26:46
  • だからやっぱり、舞台になると聞いて不安だったわけですね。そらファンなんだから見に行くのは義務というか当然なんだけども、大げさに言うと自分の青春時代に一番大事にしていた作品なんで、それが目の前で展開されて、セリフとかキャラクターの振る舞いとかが編に改変されると困るわなあと。 posted at 21:32:50
  • ところがもう、演者さんが本当に、アニメ通りに演じているんです。一番最初に出てきた天地役の方が、まさにあの、まだ樹雷や光鷹翼とか知らない時の天地、やんちゃだけど心優しい少年の時の天地を演じていて、何となく声も似ていて、おおこれはかなり完成度が高いのではと身を乗り出しましたね。 posted at 21:40:41
  • それから魎呼、阿重霞、と主要キャラクターが出てくるわけですが、セリフは全部、アニメのまんまです。もちろん省略はしていましたが、改変は一切なくて、目の前の舞台を見ながらも頭はアニメのシーンを思い出しているという体験をしているわけです。非常にスリリングな体験です。 posted at 21:47:03
  • で、ストーリーが進んで、砂沙美役の人が出てくるわけですが、この演者さんがもう、声も動きも、完全に砂沙美なんです。見ていると混乱するくらいで、もちろんこれは2次元じゃない、アニメじゃないのはわかっているんですが、これでもう完全に引き込まれてしまって、あとは夢中で見るのみです。 posted at 21:54:14
  • 俺は舞台とか全く知識がない人間なんですが、演者の人も脚本・演出の人も、「天地無用!魎皇鬼」の世界というか雰囲気というか、それを非常によくわかっていて、俺みたいな昔ながらのうるさ型のファンが見ても十分満足するように、練習に練習を重ねてこの舞台を作っていった事がよくわかりました。 posted at 22:02:18
  • 長々と駄文失礼しました。参議院選挙の開票速報等を見る事にするか。いや、しかし、まだ興奮がおさまらないというか何というか。とにかく俺は幸せな人間だ。 posted at 22:08:17

   

  • よし、日付も変わったし開票速報等も大体見たしまた天地無用!オタクに戻ろう posted at 00:17:41
  • というわけで俺の自慢のレアグッズ・CDドラマ「天地無用!魎皇鬼'」を引っ張ってきた。#天地無用 pic.twitter.com/pkht9ssRqx posted at 00:29:38
  • しまった、これは実家に置いてきたままだった… twitter.com/tarimo99/statu… posted at 00:40:48
  • レアかと思ったらヤフオクで普通に売ってました。 恥ずかしい…。 posted at 00:47:59
  • やあ皆さん、リツイート、いいね、ありがとうございます。天地ファンがいっぱいいて嬉しいねえ。 posted at 22:36:30
  • 一体なぜこんなに楽しいのだろう、とつらつら考えるに、20年前、「天地無用!」に夢中になっていた時って、まあそういう時代ですからしょうがないんですが、オタクが徹底的に軽蔑されていた時代なんで、「天地無用!」に夢中になりながらも、そんな自分に罪悪感があったわけですよ。 posted at 23:04:05
  • しかも当時、俺はまだ親のすね齧っている高校生ですからね、親に申し訳ない、勉強もせずアニメばっかり見てっていう感覚で、まあそういう感覚は誰にでも、青春の一時期にはあるもんだというのはね、おっさんになった今ならわかりますけどね、当時の俺はそんなのわかりませんからね。 posted at 23:07:48
  • ところがそれから20年以上経って、アニメとかオタクがすっかり市民権を得て、もうアニメを見る事に何の罪悪感も抱かなくていいわけです。しかもこちとら大人で一人暮らし、子供の頃のように一家に一台テレビとビデオデッキじゃなくて見放題、更に社会人なので金はそれなりにあるから大人買いも可能だと posted at 23:11:39
  • で、20年前は「天地無用!魎皇鬼」って、所詮1期と2期しかなかったわけです。それが今は3期が出て4期が出て、5期が出ると。これね、20年前の俺が知ったらショックで寝込むレベルですね。しかも罪悪感から解放される、世間はもうそうなっていると。それ知ったら死ぬかもしれんね、昔の俺は。 posted at 23:15:12
  • 第1期1話が世に出てから、27年経って、それでもまだ現役で広がり続けているわけで、しかも「ガンダム」とか「エヴァ」と違って、完全にマイナーなオタク向けの作品で、それでも続いていると。それはやっぱり、いかに梶島正樹がすごいかって事なんですが、それを支え続けたAICやスタッフもすごい、 posted at 23:21:55
  • いまだに衰えを知らない声優陣もすごいわけですが、何と言ってもね、20年以上忘れずに応援し続けたファンがすごいって事で、まあそのファンの中には俺も入っとるなあ、いやあ照れちゃうなあという事でね、だから楽しいというか幸せというかね、色々あったけどこの年まで生きてて良かったなあと。 posted at 23:24:52
  • 長々と駄文失礼しました。 自慢の天地無用!レアグッズ、富士見文庫MAGIUSシリーズの天地本2冊でどうだ #天地無用 pic.twitter.com/38CLEw2WkD posted at 23:33:25
  • うわあ、ヤフオク見たら普通に売っとるがな、昨日に続いて恥ずかしい… ヤフオクってすごいねえ(今更か) posted at 23:52:00

     

  • 会社での話。 子会社で20年近く社長をやっている人と飲んだんですが、その社長曰く「昔は『利益が出ても税金がかかる、じゃあ給与アップとか臨時賞与支給とかしよう』って事だったんだ。それが今は『給料多くすれば税金ちょっと減らします』だろ。何でそんな回りくどい事すんのかねえ、役人ってのは」 posted at 22:24:58
  • 後輩の中には結婚したはいいが奥さんが産後鬱になった、向こうの家族と折り合いが悪い、或いは離婚した、といった事象も起きております。やはり一人で静かに読書が最高よ俺こそが正しいのよというわけで「脱走と追跡」です(tarimo99.hatenadiary.jp/entry/2019/07/…)。半村良はSFが一番面白い。 posted at 22:46:13

     

   

2019年8月~

   

    

   

     

    

  • 9月も帰省しますがとりあえず東京へ帰りますので本屋古本屋①メロンブックス梅田店(大阪駅梅田駅からちょいと離れた場所にありますがそれがまたいいね) pic.twitter.com/XKpFstbhUz posted at 19:47:18
  • 9月も帰省しますがとりあえず東京へ帰りますので本屋古本屋②まんだらけ梅田店(超久しぶりに3階経由で入ったらステージで誰かが歌ってました。まだやっとんのか、俺が初めてここに来た18年前を思い出したわい pic.twitter.com/a6FXYPyIGD posted at 19:52:53

     

  • サラリーマンは辛いよ札幌編・古本屋古本屋①ブックオフ札幌川下店(うわ寒い!) pic.twitter.com/2Mcu2RVGLb posted at 22:15:51
  • ちなみに①と書いていますが、今日はこの店だけです。 明日どこかに行けるといいんですが。 posted at 22:19:15

    

  • サラリーマンは辛いよ札幌編・古本屋古本屋②ブックオフ札幌琴似店(行けた行けた) pic.twitter.com/3AosFNklt8 posted at 22:42:02
  • @gosplan1019 結局、時間がなかったのとお客さんをまかないといけなかったのとが重なって、大通にも美しが丘店にも行けずじまいでした…。 なので、また札幌に来ます。 posted at 22:45:30

 

2019年9月~

   

    

   

   

  • 先週3連休を満喫したせいで今週の休みは今日だけだ図書館古本屋本屋①多摩市立永山図書館(何で図書館のすぐ横でライブしとるんだ) pic.twitter.com/exfSWn3HpF posted at 20:40:39
  • 先週3連休を満喫したせいで今週の休みは今日だけだ図書館古本屋本屋②ブックオフ多摩永山店(いつもワクワクのシャトルバスだよ pic.twitter.com/A0QXiReGLb posted at 20:43:29
  • 先週3連休を満喫したせいで今週の休みは今日だけだ図書館古本屋本屋③とらのあな町田店(雨が降って1階のコンビニで傘を買って…しばらくして出たら雨はやんでいたから買う必要なかったか?うーん pic.twitter.com/ewVEW19gT0 posted at 20:46:56
  • 先週3連休を満喫したせいで今週の休みは今日だけだ図書館古本屋本屋④ブックオフ町田中央通り店(ダースベイダー… pic.twitter.com/CxggD8l6Fy posted at 20:50:15

   

ソ連が満州に侵攻した夏/半藤一利[文藝春秋]

ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)

ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)

 

 

 日露戦争後の「大日本帝国」の国策は満州の発展と不可分であった。満州大日本帝国にとって、「対ロシア(ソ連)に対する国防の生命線」であり、「開拓・収奪が大いに可能な資源地帯」であり、「日本内地からの人口流出先」であった。大日本帝国はこの見果てぬ夢の植民地を維持するために巨大な陸海軍を擁し、国家予算の半分近くを使って整備育成・強大化し、四囲に絶えず牙をむいたような軍事国家となった。

 その軍事国家は次第に軍人による政治支配が跋扈するようになり、暴走を始め、アメリカとの無謀な戦いに突き進むこととなる。そして昭和17年のミッドウェー海戦、翌18年のガダルカナル島の戦闘で敗北を重ね、頼みの綱のドイツは降伏し、いよいよ暗雲がたちこめる。しかし栄光ある「皇軍」は決して敗北を認めない。認めることなどできない。そして太平洋の広範囲に渡るアメリカとの戦いに固執する日本政府は国策であったはずの「満州は日本の生命線」をいとも簡単に変更し、満州に駐留する関東軍主力兵力の南方への大規模転用計画が始まる。もちろんソ連の脅威を忘れたわけではないが、まだ日ソ中立条約は厳存しており、日ソ戦は遠い将来であろう。それよりも目の前の米英との戦いに備えなければならない。満州ソ連戦の前線基地ではなく、太平洋戦争の補給基地となった。しかしそれは関東軍の存在理由である「対ソ連のための軍隊」を否定することになる。事実上、この時に陸軍中央は関東軍を見捨てた。見捨てられ弱体化した関東軍は、満州で生活する居留民と開拓団を見捨てることになる。

 一方のソ連はドイツでの勝利が確実となった頃から満州侵攻を企図する。連合国のアメリカとイギリスは「太平洋憲章」で領土不拡大の原則を宣言しているが、ソ連を率いるスターリンは独裁者であり古い帝国主義者である。ソ連の安全を脅かす満州を叩き、また領土を拡大する絶好の機会であり、日ソ中立条約など何とでもなる。今の日本はアメリカとの戦いで既に青色吐息であり、第一、アメリカがソ連に対日参戦を望んでいる。昭和20年2月のヤルタ会談ソ連の対日参戦は決定された。ところがその頃日本の指導者たちは日ソ戦を警戒するどころか、日米の和平の仲介をソ連に託そうと最後の期待を本気でかけていた。そればかりではなく「ソ連は日本に好意を抱いている」「スターリン首相という人は、なにか西郷南洲に似ているような気がする」という甘い幻想を大事に大事に抱いていた。なぜかは作者にも、いや誰にもわからない。帝国が今まさに崩壊しようという絶望的状況下で、「この人だけは敵にはしたくない」という思いが「敵にはならない」と変質するほど彼らが追いつめられていたということか。

 日本の指導者たちが甘い幻想に浸っている間にも非情な国際政治は続く。2月のヤルタ会談後、5月のドイツ降伏を経て7月にポツダムで再度連合国の三巨頭(アメリカ、ソ連、イギリス)が集まったが、米ソの対立はもはや誰の目にも明らかであった。ドイツが降伏し、日本の降伏も時間の問題となり、原爆実験も成功したとあっては、アメリカにとってソ連の対日参戦はもう重要ではなくなっていたからで、ポツダム宣言アメリカはソ連に何の相談もしなかった。スターリンは焦った。このままでは日本が降伏するのも時間の問題であり、ソ連が参戦する前に降伏されては何の果実も得られない。こうして満州攻撃の準備は大幅に繰り上げられた。ソ連の当初基本計画では攻撃開始は「8月22日~25日」であった。もしこの通りであればその後の悲劇は全て防ぐことができたが、歴史はソ連満州侵攻の日が「8月9日」であると言っている。既に主要な兵力を移してしまった関東軍ソ連軍の差は兵数が70万対150万であり、ソ連軍は関東軍の5倍の大砲、50倍の戦車、20倍以上の航空機を持っていた。

 しかし実際に攻撃が開始されたこの期に及んでもソ連に期待を抱くしかない陸軍中央の前線への指令は「侵入する敵の攻撃を排除しつつ、速やかに全面開戦を準備すべし」であった。「発動」ではなく「準備」である。グロテスクな感さえするこの指令を受けた関東軍総司令官は「楠公精神に徹して断固聖戦を戦い抜くべし」の訓示を全軍に布告した。湊川足利尊氏軍を迎え撃った楠木正成と同じく、全滅を覚悟するしかなかった。

 もっとも軍人は「断固聖戦を戦い抜」かなければならないが、非戦闘員はそうではない。速やかに非戦闘員を安全な場所まで避難させるのが軍隊の義務であるが、関東軍にそのような事を期待するのは無理であった。なぜなら大日本帝国の軍隊は所詮「天皇の軍隊」であって「国民の軍隊」ではなかったからである。「非戦闘員の安全」という軍の国際的な常識は日本軍にはなかった。またポツダム宣言を受諾した後、今まさに死闘が行われている前線へ速やかに降伏命令や戦闘行為停止命令を伝える術も日本軍は知らなかった。これが更なる悲劇へとつながる。そもそも「降伏」が国際法的に完了するのは降伏文書に調印されてからであり、ポツダム宣言を受諾した段階ではまだ戦争状態は終了していない。8月16日の時点で決定していたのは日本の占領管理の最高司令官にマッカーサー元帥が任命されることだけで、連合国軍の代表がアメリカであるとも、連合国の最高司令官がマッカーサーであることもソ連は認めていなかった。まだ戦争状態は終了していない。そして満州から逃げ遅れた日本人への、ソ連軍の暴虐が始まるのである。

 この後のソ連軍による残虐非道な行いと無残に死んでいった日本人たちについては何度読んでも吐き気が出そうでいちいち書くことはしない。数々の殺人・暴行、また紙幣や産業設備の強奪への抗議に対してソ連は「全部、戦利品である」と言うだけで、なるほど勝者からすればそれはそうかもしれない。それが戦争というものの正体であり、74年前に起こった本当の事なのである。