- 作者: 本の雑誌編集部
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2000/01
- メディア: 文庫
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「本の雑誌」と言えばとにかく「活字に関するあらゆること」を気取らずに楽しむことを第一とする、日本最大の偏屈読書青年である俺ですら心を許してしまうほどの大物である。そんな「本の雑誌」編集部が「活字探偵団」として活字に関するあらゆること(というよりは些細なこと、どうでもいいこと)を楽しく陽気に調査していく本書は身も心も疲れきった俺にとって非常にいい薬であった。
とにかく面白い企画だらけの本書であるが、気に入ったものを拝借させてもらおう。一番面白かったのは「コンビニにはどんな雑誌が置いてあるか」というやつで、実は俺も少々気になっていた。本調査では新宿のコンビニを調査対象として、(1)歌舞伎町近くのコンビニではさすがに風俗誌が多い(2)近くに専門学校があって女性客が多いコンビニは女性コミック誌が多い(3)コンビニ全体として、一番多い雑誌のジャンルはコミック誌や風俗誌ではなく趣味・娯楽誌であるが、趣味・娯楽誌の半分が車・バイク雑誌。コンビニによく来る若者向けに置かれてある、等が報告され、コンビニといえど立地条件や客層をしっかり考えていることがわかったのである。なるほどねえ。そう言えば最近よく行く池袋の風俗紹介所の隣りにあるコンビニも風俗誌多いなあ。
次に面白かったのが「献辞」の調査である。「故○○○氏に捧ぐ」とかいうアレである。結構よく見る気がするが探偵団の調査によると献辞があった本150冊のうち日本人作家のものは25冊しかなかったそうである。また献辞には「両親へ捧ぐ」「妻へ捧ぐ」というオーソドックスなもの以外に「アメリカの納税者へ」と書いてあったり詩を載せていたりするという。確かに詩が載っているものもよく見る気がしますね。まあ「ノルウェイの森」の「多くの祭りのために」もいいが、俺が一番印象に残っているのは「砂の女」の「罰がなければ、逃げるたのしみがない」である。読み終わった後の衝撃はすごかった。
まだ続く。文庫の背の色は作家毎に変わっているが、その色は誰がどうやって決めるのか。また出版社で作家の色が違うのはなぜかという疑問を探偵団が調査したところ、「編集部等がその作家のイメージで決めている」だけだという。それにしては赤川次郎の文庫は「新潮:緑、角川:青、講談社:山吹、文春:黄、集英社:紫、徳間:オレンジ、光文社:ショッキングピンク」とバラバラである。筒井康隆だと「新潮:赤、角川:レモン、文春:赤、中公:赤、集英社:赤」と統一しているが、しかし筒井康隆って赤かね。黒とか紫の感じがするなあ。
他にも「新宿駅で捨てられる雑誌の実態」や「日本で一番治安の悪い街はどこか(ミステリー小説での話。当然東京で殺される回数が一番多い)」等、深い感動もなければ感銘もないが読みながらついついニヤニヤしてしまう本書もまた重宝すべきであります。また今度「本の雑誌」を立ち読みしよう。