人生合唱断章2007

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 肉体の痛みと精神の痛みのどちらが辛いか。
 両方とも辛いわいボケ。(「ラブコメ政治耳鳴全日記自選集6」)
[2]
「私、あなたのこと好きよ。多分、永遠に忘れないわ」
「じゃ、何故、姿を消したんだ」
「数時間一緒にいても、数十年間一緒にいても、好きだったというおもいでは私にとっては同じことなんだもの」(梶尾真治「おもいでエマノン」)
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 瀬戸経理部長(仮名)の言うことを聞く者はほとんどいない。実務を取り仕切っているのは山田副部長(仮名)であり、部の人間は山田副部長(仮名)を信頼し山田副部長(仮名)の指示の下で動くのである。だが山田副部長(仮名)は若く、「営業に気を遣いすぎるところがある」ため平沼経理部長代理(仮名)や武田総務部長(仮名)からの評判は良くない。更に山田副部長(仮名)の直系と言われる稲葉係長(仮名)は仕事ができる反面そのはっきりとした物言いに社内で敵が多い。
 で、その稲葉係長(仮名)になぜか気に入られたのが兵庫県の糞田舎から出てきた無口でオタクで鈍重な俺である。一体どうなっておるのだ。(「ラブコメ政治耳鳴全日記リターンズ・アイシャルリターン」)
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 しかるに今日の学校では、このように社会を批判的に見ることを禁じているのである。そこでは学問そのものも批判的であることを許されていない。批判力は知能の最も重要な要素である。批判力を養成することなしに、知能の発達を期することはできぬ。しかるに今日の教育は青年の批判力を養成しようとは欲せず、かえって日本精神や日本文化についての権威主義的な、独断論的な説教を詰め込むことによって彼らの批判力を滅ぼすことに努めているように見える。(三木清「学生の知能低下に就いて」)
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 悲観してはならぬ。自暴自棄になってはならぬ。心の平穏を失ってはならぬ。これらはあの日々で得た教訓であり、俺はこの教訓を活かさなければならない。活かせなければ、あの頃の俺があまりにかわいそうではないか。(「週刊ラブコメ政治耳鳴全日記」)
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「これまでのソ連では、法律で許可されていないことは禁止されていたのです。だけど今は、法律で禁止されていないことは許可されているのです」(川崎浹「ペレストロイカの現場を行く」)
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文民統制の考えに基づき、防衛庁長官が必要と認めるときは、戦争指揮及び戦場軍務または防衛行政における長は、選挙権を有する日本国民の中からくじで選定した者を以ってこれを指名することができる。なお、くじの結果選定された者は正当な理由なしにこれを拒否することはできない」(政府通達平成19年第45号)
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「遅いわね、もう」
「どうして」
「貴方にはなにも出来ないわ」
「それをやることに決めたんだ」
「もっと前に決めてほしかったわ」
「今からでも間に合うさ」(黒井千次「群棲」)
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 本来日記というものは極めて私的で赤裸々なものであり、日記を書く最大の楽しみはそういう「誰にも言えない」ことを何の検閲もなく活字にして残すことができるに尽きるのである。ブログだミクシイだと騒々しいが所詮それらは公開を前提としたものである以上必ず「書いてはいけないこと」が存在するのであって、まあ大したことないってことよ。(「ラブコメ政治耳鳴全日記7・呪縛街道」)
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「しかし、宇宙空間に浮かんでいる間の宇宙服の中は完璧な静寂だった。そのとき以外全く経験したことがない無音の世界だった。(中略)宇宙服のヘルメットは、透明な球体だから、視野をさえぎるものが何もない。自分が宇宙空間のまっただ中にボツンと浮いていることがわかる。下を見ると、地球がそこに在る」(立花隆「宇宙からの帰還」)
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 ラブコメはどこだ。どこなのだ。(「ラブコメ政治耳鳴全日記13・月と腰と砂漠」)
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 昔の妻は、彼女の裸に見惚れていると恥かしげに「見ないで」と、言ったものだ。今の妻は「何よ」と言って睨みつける。(筒井康隆「天狗の落し文」)
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 金さえもらえばどんな仕事もするとは言うものの、やはり仕事はラクな方がよい。だが仕事はラクでも人間関係が厄介だったり、きつい時はきついがラクな時はラクという仕事もある。
 確かな事は、俺はあと36年以上働かなければならないということだ。憂鬱イエイ。(「劇場版ラブコメ政治耳鳴全日記」)
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 ――とんとある話。あったか無かったかは知らねども、昔のことなれば無かった事もあったにして聴かねばならぬ。よいか?
 ――うん!(大江健三郎「M/Tと森のフシギの物語」)
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 というわけで4月末現在で五反田のヘルスに行ったのは2月3日の一回のみであります。そして今年の予定としては5月4日、8月26日、11月23日の3回を予定しております。ぬわははははは。(「ラブコメ政治耳鳴全日記全集4」)
[15]
 あ。間違えました。(俺)
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「私は最近、貴国に、『勝って兜の緒を締めよ』という諺のあることを承知したが、これは、まことに意味深い言である。ドイツは今まで、幸いに次々と、困難な問題を解決してきたが、欧州の形勢は、ご承知の通りだ。我々は今こそ、兜の緒を締むべき時である」(大島浩「勝って兜の緒を締めよ」)
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 15歳の時に「ふたりエッチ」を読みはじめたわけですけど、作中の主人公夫婦って、25歳で結婚しているわけじゃないですか。で、その時俺は15歳で、当然自分が25歳になるなんてのは頭ではわかっていても実際はよくわからんわけですね。よくわからんもんだから、「俺も25ぐらいになったら結婚とかすんのかなあ」とか漠然と考えるわけですよ。ところが実際24歳になって、もう25歳が目前ときて、「ああ結婚とかそんなの絶対無理やなあ」とひしひしと感じるんですね。
 何が無理って、まず仕事が半人前ですし、いまだに故郷とか家族が恋しいですし、何より中身まだ子供ですからね。こんな俺が結婚して他人の人生に責任持つというのは、犯罪的といいますかね。うん。子供なんて本当に駄目ですよ。子供が子供持ってどうすんねんっちゅう話ですよ、いやもう本当に。
 ああ、でも相手がおらんか(笑)。そうやそうや(笑)。(「週刊朝春トスポ」4月30日号・ラブコメ政治耳鳴全日記特集)
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 ああ疲れた。あと二つか。(俺)
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 明治の政治家たちは、国家として何がしかのコトを行うときに、必ず事前に欧米の国々に謙虚に相談し、了承を取りつけている。だから、日清・日露両戦争も日韓併合でさえも、欧米の国々の支持が得られた。ところが満州事変以後、政府は、欧米の国々への配慮も相談する謙虚さも失って独走している。その結果、世界で孤立し無惨な敗戦を迎えたのだった。(田原総一郎「日本の戦争」)
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「総司令官。総司令官」
「は。ん。ここはどこですか」
「総司令官。何を言ってるんですか」
「え。あなたは誰」
「何をとぼけているんです。早く作戦の可否を」
「だから何が。あなたは誰です。まるで自衛隊のような格好をして」
「とぼけるのもいい加減にして下さい。早く真面目に戻って下さい。我々は戦争をしているのですよ」
「いや、ええと、確かあの、よく自分が何かの総司令官になってああだこうだする夢は見るんだけどね、あの、ああこれ夢か」
「何を阿呆な事を言ってるんですか」
「いや、ごめんごめん、あんたにとっては夢でも何でもないかもしれないけど、俺にとっては夢なんだよね。だから、ええと、とりあえず今回も攻撃はしないで、相手の補給線を絶つということで行きましょう。そんなわけでさようなら」
 時計を見れば朝七時、外は曇りで雨も降っている。それにしても最近よくあの夢を見るが、いつまでも攻撃しないわけにはいかないか。どうせ夢なんだからドカーンと。うーん。難しいところですなあ。しかしいつも俺に付いているあの女は何という名前なのだろうか。(「劇場版ラブコメ政治耳鳴全日記2・銀河の躁と鬱)