噂の真相 1999年12月[噂の真相]

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 言うまでもないことだが俺は下衆である。いや違う。小市民である。いやこれも違うな。特にこれと言って特徴のない一般大衆であります。なので有名人の噂話には当然興味がある。「○○と××が泥沼不倫」とか「△△が金と権力にモノを言わせて接待漬け」とか「※※がヤクザ(or暴力団or非合法組織)と手を組んで云々」とかを読んで、ああやっぱり有名人は華やかな世界に生きているだけあって俺らみたいな一般大衆とは違う、だからこういう事になるんやなあ、ざまあみやがれ、華やかな世界でチヤホヤされていい気になりやがって、聖人みたいな顔しやがって、正義の味方面しやがって、どしゃぶりの雨に打たれてズブ濡れになるがよいわ、惨めな思いをすればよいわ、はっはっはっは。

 というわけで本書を読み、当然信憑性が薄い事はわかっているもののこれだけ悪意のある誹謗中傷記事を読んでしまうと少々胸焼けもするのであって、「フジテレビの幹部が芸能事務所の大名接待ゴルフを受けた証拠写真」だの「直木賞作家・○○の愛人が語る○○の醜さ」だの「日本を代表する映画会社(東宝東映、松竹)の経営陣の呆れた実態」だのを立て続けに読んでいるとそれらの悪意がボディブローのように我が身に効いてくる…ような気がするが、しかし読む事自体はやめられないのは俺が下衆で小市民な一般大衆だからで、誰が人の幸せ話など聞きたいものか、才能ある人や成功した人と違ってこちとら毎日の生活が不安な下衆で小市民な一般大衆なのだ。新聞雑誌TVに出ている奴らも俺達みたいに不安に怯えてもらわねば不公平ではないかそうだそうだその通りだ、我々は聖人君子ではないのだ正義の味方ではないのだ、さあ奴らを引きずり降ろせ、胸焼けなど気にするな、とにかく誰かを誹謗中傷できればいいのだ、それで気持ちが晴れるのだ、それには有名人が手っ取り早いのだ、いいじゃねえかそれくらい、有名人になるぐらいだから金はたくさん持っているんだろう、誹謗中傷の一つ二つ三つ何でもないだろうわはははははははのは。

 いかんいかん、どうも悪意にあてられて文章が支離滅裂になってきた。本当は「大手マスコミに迎合しない、反権力・反体制の姿勢が一貫していて素晴らしい。特に本誌に書かれている『検察の腐敗』『原発利権』などはやがて起こる陸山会事件や東日本大震災を知っているだけに神妙な気持ちになって読んでしまった」という趣旨の事を書こうと思っていたのだ、しかしながらもう一度軽く読み直そうとして各頁の左側にある見出しを読んでいると(「文化人○○は妻と愛人の面倒を見る艶福家」「総合誌創刊で躁状態の××と△△がW不倫で頻繁に密会説」「△△連載の※※とS局次長は担当を超えた関係との噂」「沖縄移住の○○が長年不倫関係にあった愛人と遂に入籍との噂」「悪徳商法の□□社××会長は銀座の高級クラブSの陰のオーナー説」「※※が夫以外の子供を妊娠し子供二人を連れて家出中との噂」「レイプ事件で揺れた△△大学医学部に交通死亡事故揉み消し説」)有名人と名のつく奴らは支離滅裂な世界に生きていると錯覚してしまったようだ。いや…本当に錯覚なのかな。案外本当だったりして。だとしたらますますワクワクするではないか。完全に安全な場所から、他人の壮絶な修羅場を見物する事ほど楽しい事はないからな。へ。へへへへ。へへへへへへへへ。

 

・いかにも○○(直木賞作家)らしい話である。常に強気な台詞で自分を飾り、若手作家や編集者には尊大な態度を見せつけ、その一方で権力や権威、ブランドには人一倍弱い。文壇でも知られる○○のこうしたキャラクターは、A子さん(○○の愛人)もさんざん目の当たりにしたという。

・「東京ペログリ日記/田中康夫」より。

 9月23日(木)

(ガールフレンド?のW嬢と秋葉原へ)オタクがいっぱーい、と叫び声を上げるW嬢に、買う当てもないのに銀座で洋服を眺めるのと同じ行動心理が彼ら。貴女だってオタクでしょ、化粧品の、と諭す。

 9月24日(金)

 毎回、わずか数秒の「寿命」とかの夫に不満を持つJ嬢も興奮。PG。午睡の後、PG。以前は一回に一度が限度だった彼女も、一回に十数度へと突如成長。アロマフレスカで食事の後、幼児の待つ自宅へと送る。

・週刊誌記者匿名座談会。

 (東海村の臨界事故について)新聞・TVの責任追及の姿勢も甘かったしね。今回の事故の背後にこの国のデタラメな原子力推進政策があるのは明らかなのに、それには触れず、ひたすらJCOの失策叩きに終始するメディアがほとんど。

 大手マスコミは電力会社の広告漬けで、朝日から産経まで原発推進派だからね。原発でも今回と同様の事故が起きる可能性は十分あるのに、国民の「生命」を守ろうという気がないのかな。

 もっとも、そのマスコミも自分達の「生命」となると、かなり神経質になっているようだよ。というのは今回の事故で、各社とものべ数十人を東海村の事故現場に派遣しているんだが、その記者達の多くが「被曝」してしまい、大慌てしているんだ。