そこが知りたい!自衛隊100科事典/歴史群像編集部・編[学研パブリッシング]

 自衛隊に対していかにして臨むべきか。非現実的な平和絶対主義を掲げて全否定するわけにはいかず、右翼思想にかぶれて崇拝するのもいけない。しかし腫れ物に触るようにするのもおかしいし、「とりあえず核武装しろ」と単純に叫ぶ輩にもなりたくない。我々は民主主義国家に生きる理性的で合理的な国民且つ主権者なのであり、自衛隊は我々国民の税金を使って日々業務を遂行しているのだから国民は主人で自衛隊は使用人である。金を払って雇っているのだから使用人が主人の命令に従うのは当然で、しかし使用人連中が反旗を翻さないよう(翻す気が起きないよう)「生かさず殺さず」にするのが最もよろしい。だから自衛隊に対しては「まあ、大変な仕事だとは思うが、別に無給でやっとるわけやなし、所詮は仕事だからな。世のため人のため、そして納税者である俺のために日夜頑張ってくれればいいよ」というぐらいで臨んで本書を読むのがちょうどいいだろう。
 
天皇、皇族、高官や外国の賓客等に対し特別儀仗を行うのが第302保安警務中隊。特別儀仗に憧れる隊員は多く、競争は激しい。しかも選考基準がなかなか厳しく、身長は170〜180センチ、体重60〜70キロ、矯正視力が0.6以上で眼鏡は不可(コンタクトレンズは可)、容姿は「端正な者」。O脚など骨格も厳しくチェックされ、一度「不可」の判断が下されると、二度と配属されるチャンスはない。
 身なりにも当然気を使う。散髪は10日に一度、しかも「周り2分、前髪5センチ以内」という規則つき。クリーニングに出した儀仗服にも更にアイロンがけをし、靴磨きには数時間かける。
    
・単調になりがちな(海上自衛隊の)艦内の生活の楽しみは食事だと言われる。そのため、どの艦でも専門の給養員が隊員の士気の維持・向上のため日夜腕を振るっている。中でもカレーライスが毎週金曜昼食の定番メニューというのは有名な話だが、これは長期の航海において曜日の感覚を維持するために考えられたもの。
    
自衛隊の任務は、自衛隊法第6章に定めた「本来任務」(外国の侵略に対し我が国を防衛する防衛出動、公共の秩序維持に当たる治安出動、災害派遣、等)と、第8章の雑則や付則にある「付随的任務」に分けられる。「付随的任務」とは、自衛隊の組織、装備、能力を活かして行っている各種の民生支援活動で、輸送活動、不発弾等の危険物の処理、教育訓練の受託、医療面での貢献、運動競技会に対する協力、国家的行事への参加、南極地域観測に対する支援等が挙げられる。
    
・多くの軍隊がそうであるように、自衛隊も高い自己完結性を持っている。「自己完結」とは、日常を送るために必要とされるほぼ全てを自らの装備と人員で補う能力だ。そこには建設・輸送・通信・医療・防疫・給食・給水等、あらゆる分野が含まれる。
 救難や救助の前方支援と同様、後方支援も充実している。給水においては給水車や艦艇等を駆使し、必要ならば川や湖の水をくみ上げ、浄水車で浄化して支給する事も可能。給食では、一台で200人分以上の炊飯、副菜が作れる炊事車を装備。
 また、屋外にテントを張って野外の入浴施設もしつらえる(1時間に約100人の入浴が可能)。長引く避難生活を励ますために、音楽隊が避難所を訪問して、慰問コンサートを催す事もある。
 更に、水害時には防疫班が衛生の維持管理のために広範囲な消毒にあたり、有害化学物質が関連する災害では、有毒化学物質の除去等にも奔走する。
   
自衛隊用語
 官品…国から支給されたもの。転じて自衛隊員の子弟の事。
 首から下…体力で行う仕事。またはその仕事をする人。
    
・軍隊では、「陸は頭が固くて体育会系、海は保守的で儀礼を重んじ伝統にこだわる、空はノリが軽くて新しいものが好き」といった気質が世界各国で共通しているという。
 陸上自衛隊を表す四字熟語は「用意周到動脈硬化」「用意周到頑迷固陋」「用意周到一歩後退」、海上自衛隊は「伝統墨守唯我独尊」、航空自衛隊は「勇猛果敢支離滅裂」、統合幕僚会議は「高位高官権限皆無」(統合幕僚監部になってからは「高位高官権限無限」「三軍統括権限絶大」)、内部部局は「優柔不断本末転倒」。