特別編 裏京都毒探偵突撃古本屋(1)

 27歳になって最近とみに感じるのは躁と鬱の落差がなくなってきたことであって、例えば5年前ならば楽しい時は(主に本屋めぐりをしている時はラブコメを読んでいる時は)我が世の春を謳歌している気分であったが、辛い時は(主に仕事中や包茎である我が息子をじっと眺めている時は)今すぐ死ぬべきだと思いながらも死んだって何もならへんしなあと暗澹たる気分であった。時同じくして開始せられたこの「ラブコメ政治耳鳴全日記」にもその片鱗は見られよう。良く言えば俺にもそれなりに感情の激しい時代があったということなのだろうが、最近そのような感情の上下がなくなってきて代わりに台頭してきたのが「焦り」である。27歳と言えばこれはもう「アラサー」なのであり、俺が結婚できないのは既定路線であるから俺は俺一代限りなのであって、そろそろ本格的に仕事や家族に何かあった時の面倒などの社会的生活を中心にすることが必要ではないかと腸を煮えくり返して考えている。その焦りを解消する手っ取り早い方法として仕事や会社の立場が有利になる資格取得があるが、最近やたらと「裏東京毒探偵シリーズはもうすぐ終わる」と連呼するのはその流れの一つなのである。
 しかしながらブックオフ古本市場に行き永神秋門攻防戦を連戦連勝するという俺の「個人的生活」がなくなるわけでもないのであって、むしろこれまで気楽に毎週のように足を運んでいたのが月1〜2回に限定されることによってより濃密にいやらしく、その全てを吸い取ってやろうと妖しく蠢くかもしれない。というわけで今年の夏休みも例年通り「地方都市のブックオフ等を巡り巡る」旅へと出かけるわけであるが、新潟・広島・名古屋・横浜・札幌と制覇して他に地下鉄等の公共交通機関が整備されているところと言えば残るは京都と福岡ぐらいしかないが、福岡には仕事の関係で何度も出張しているので(4月に2回、6月に1回行っている)今回は京都に行くことにしよう。千年以上の歴史を持つ古都に世界のラブコメ王・平成日本の廃棄物・天下の糞阿呆と言われる俺が乗り込むわけで、彼らの震えは一日中続いたと言われるが、なにブックオフとか古本市場とかに行くだけです。
 というわけで時系列で書くと13日(金)も休むことなく会社に出勤し、お盆休みで半分ぐらいの人が休んでいるので仕事をする振りをして時々会議室に忍び込んでは本を読んだり○○をしたりして我が世の夏を謳歌し、19時前には上司先輩数人で飲みに行ったわけである。と言っても俺は下戸なのでもっぱら注ぎ役であり、一人場違いな奴がいてやたらと周りの人や俺に説教じみたことを言ってくるので「はあ、まあ、気を付けます」と言ってコーラを飲み何とかパスタをズルズルと食べ、その店を出たのが22時頃だったのでもう一軒行きましょうかという雰囲気になってその場違い男もついてきそうだったので「おっ。○○さん、どないですか、次行きますか」と言ってやると嬉しそうに「いやいや俺帰るよ帰る」と言って帰っていった。もちろん本気で場違い男を誘ったわけではない。こういうテクニックを駆使できるようになったあたり、俺も大人になったなあという気がしますね。
 場違い男がいなくなれば気さくな先輩ばかりなので大いに経営陣の悪口を言い女社員の噂話をして(○○課のあの女はアバズレ、××課の女は30過ぎてまだ合コン好きだが相手にされなくて怒って帰るを繰り返している)その居酒屋を出たのは2時頃であった。先輩の一人がまだ話し足りないと言うのでタクシー乗り場の近くにあるベンチで話そうとするも、4つあるベンチにはいずれも20歳前後の若い男が座ってゲーム(DSか何か)をしていた。そのうちの一人が大きな紙袋を持っていて、その紙袋を一目見てコミケ帰りとわかった。いや、2時過ぎでここにいるということは朝一番の電車でビックサイトに行くのだろう。確かにこのあたりは東京ビックサイトからまあまあ近いところではあるが。ちなみに俺は今年コミケには行かないが、それは昔のように「あの人たちオタク、俺ラブコメ」と非常にしょうもない差別意識を持っているわけではなくただ仕事の関係で京都に行ける唯一の機会がコミケ開催日と重なってしまっただけです。大体、人ゴミが嫌いな俺が3年連続であのような、人が蟻のようにひしめく蒸し風呂のようなところに行ったこと自体が異例のことなのだ。
 先輩のタクシーに同乗させてもらって家に帰ったのはもう3時頃で直ちに寝て、起きたのは11時半頃でそれから掃除とトイレ掃除をして下着をカバンに詰め込んでまた眠くなったので1時間ほど寝て(これが後に痛手となる)、寝ぼけた状態で自慰をしようとしたのでこのボケさっさと起きんかいと幼馴染に起こされ、「ラブコメ政治耳鳴全日記」に「脱走と追跡の読書遍歴」を投稿して相変わらずいまいち使い勝手がわからないツイッターにつぶやいて家を出たのは15時頃、まだ昼飯を食べていないが昨日の夜は日付が変わっても断続的に食べ続けたのであまり腹は減っていないのでまあいいかと(これが後に痛手となる)家を出て最寄りの駅へ向かう10分の間に俺の歩く方向と反対にすれ違うのは10〜20代の若者ばかりで、今日夜に行われる花火大会の会場へ一斉に向かっているようだった。この前ツイッターに「『合コンに行く』『クリスマスパーティーに行く』『誕生日会に行く』ような奴は殺してやりたいほど憎いが、夏祭りに行くとなればそんなに腹は立たない。日本人の原風景だからね」と書いたが、そうは言っても目の前を20歳前後のカップル(女は浴衣姿)が一つ、二つ、三つと俺の前を通り過ぎると憎悪の感情がメラメラと俺の胸を焼くが、女たちの顔をじっと見ると顔全体は不自然に白いのにまつげや目が不自然に黒いのがやけにグロテスクに見えた。いや俺も風俗嬢を相手にすることがあるから厚化粧は見慣れているが、この「グロテスクに見えた」は俺の偽らざる感想である。
 夜20時には京都に着きたいが、もちろんこの俺が普通に東京駅から新幹線に乗って京都に行くわけがないのであり一昨年に名古屋に行った時のようにとりあえず在来線で西へ行けるところまで行ってまずは横浜駅

 おお懐かしい。「裏横浜毒探偵」が去年の3月だからもう1年以上前になりますか。まあ、あの頃よりはだいぶ利口になったかな俺もと感慨深いものがあります。一昨年と同じように「相鉄ジョイナス」というところに入って記憶を辿りにブラブラ歩いていると一昨年と同じくカレー専門店があって腹も幾らか空いてきたのでビーフカレーを食べよう。時刻は16時頃で俺の他には2人しか客がいなかったが、そのうちの一人(40過ぎの男)がタバコを吸っていた。よく知らんが神奈川県ってそういうのいかんのじゃないのか。当然灰皿はなく、男はタバコを携帯用灰皿のようなものに押し込んでいた。
 さて更に西へ行こうととりあえず小田原まで向かおう。当然新幹線で行けばいいものをわざわざ在来線で小田原まで行くわけであるから電車はガラガラだろうと予想するも車内は座れないどころかかなりのギュウギュウ詰めで、一昨年は余裕で座れたというのは記憶違いかなあと思うも平塚駅でほとんどの乗客が降りたので座って本を読み始めやがて寝て(家で8時間寝て更に1時間寝たというのに)、あっという間に小田原。

 時刻は17時20分頃であり、そろそろ新幹線に乗らないと京都に着かないのではと時刻表を見て、しばらく状況が把握できなかったがまとめるとこうである。今から17時37分発名古屋行きの「こだま」に乗れば名古屋に着くのは19時59分であり、そこから京都に行くには20時10分発の新幹線に乗るのが一番早いが、その場合京都に着くのは20時59分である。これでは20時に京都に着かない。なぜ20時に京都に着きたいかというと大抵の本屋は21時で終わるからである。いや21時を過ぎてもやっているところはあるかもしれないが、俺の経験上駅前の大型書店というのは21時閉店がほとんどである。まず移動日である今日、本屋でサラ本を買い罪滅ぼしをして、翌日ブックオフ古本市場を回るというのがいつもの旅行のパターンであるから今日は本屋に行かなければならない。京都駅前にどの本屋があって何時閉店か調べなかったのが悔やまれ(調べたのは京都市内にあるブックオフ古本市場の位置だけである)、8時間寝て更に1時間寝たことを悔やんだが、今更そんなことを考えても仕方がないので17時41分発の東京行きの「こだま」で新横浜駅まで戻り(17時57分新横浜着)、17時59分の新横浜発の新大阪行きの新幹線に乗れば20時3分には京都に着くらしいので新横浜駅まで戻ることとなった。何が「利口になった」だ。