第10位:マは小悪魔のマ/海野螢[実業之日本社:マンサンコミックス]
- 作者: 海野螢
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2008/09/29
- メディア: コミック
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しかしながら「空から美少女が降ってくる」というのは突飛過ぎて夢多き高校生ならともかく今の俺には受け入れ難いものであるが、世に溢れる漫画の大半では主人公とヒロインの出会いは「幼い頃結婚の約束をした」ものでなければ「雨に濡れている子犬が可哀想だからと自分の傘を子犬に使い自分はどしゃぶりの雨に濡れている」主人公を見てヒロインが恋心を抱くといういい加減それやめろ、やるなら派遣切りにあって家を失った人に傘を渡せと言いたくなるような出会いしかないのである。そこへ行くと本作はすごい。「全裸オナニーしていたら悪魔(ヒロイン)がやってきました」なのであるから、これはもう俺であれ諸君であれオナニーはするのでありそこへ悪魔ヒロイン(貧乳)がやってくるというのは俺にも諸君にもありえることではないか!最高である。
主人公には全裸オナニーせざるを得ないほど想いを寄せる同級生(貧乳)がおり、悪魔ヒロイン(貧乳)の特殊な能力によってめでたく同級生に告白され肉体関係にまで発展するがその時既に悪魔ヒロイン(貧乳)もまた主人公に恋心を抱いていたというのは「オレたま」(2008年6位)を彷彿とさせるが、主人公と二人の女性の三角関係が発覚し修羅場が発生すると同時に時空崩壊、世界の危機を救うのは平凡で何の変哲もない人生を送る主人公お前だと言われそうかわかったどうすればいいえっそれじゃ結局悪魔ヒロイン(貧乳)とヤれってことかと小気味良いテンポには胸が躍ろう。話の膨らませ方次第ではもっと壮大でもっとラブコメに(ハーレムに)なったかもしれないが締めもオチもきれいにまとまってこれはこれで満足である。最初から最後まで平凡で何の変哲もない人生を送る主人公を中心にストーリーが展開していることがはっきりと実感できるのも良い。
それにしてもこの貧乳は何とかならんのか。
第9位:ラブユメみっくす/カイシンシ[秋田書店:チャンピオンREDコミックス]
- 作者: カイシンシ
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2008/10/20
- メディア: コミック
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ノリのいい女神様に都合の良い世界を作ってもらった主人公はお約束通り「主人公好き好き大好き」な妹や幼馴染と風呂に入ったり布団に入ったり「私、胸小さいのかな」と言われて胸を揉むはめになったり「どうかなこの下着」と下着ショーを敢行されたりと至れり尽くせりなのであり、しかし「これは女神様が作ってくれたラブコメの世界で、ラブコメの主人公は最後まで行かない」として自覚的な寸止めを行うのである。
寸止めが悪いわけではない。こんなことを言うと身も蓋もないが肉体関係を結んでしまったが最後嫉妬や口喧嘩は頻発し結婚を考えた女は打算で行動し男は自由の翼をもぎ取られまいと反抗するのであり、もはや傷物にしてしまったのだから他の女と仲良くすることは許されず、若くてピチピチの女たちのハーレム生活が生活の垢がこびりついた生物学的に女なだけの女との疲れた生活に取って代わってしまうのに比べれば寸止めの状態で止めておけばいつでも適度に快楽の瞬間を味わうことができるのである。そっちの方がいいに決まっている。
また「主人公を『いい人』にするあまり全く人間味のない現実感のない『いい人』にしている症候群」にかかった主人公による寸止めは偽善的であるが(この場合の「偽善的」という言葉の意味は通常とは違う)、本作では寸止めによって主人公(読者)が自らの立ち位置を知るのであり、そういう方法もあるのかと唸ってしまった。ラブコメ世界の新たな発見である。
何度も言うが女とヤることがラブコメの目的ではない。いかにして普通で平凡な主人公が女に囲まれ、その関係を破綻させず持続させ快楽を引き出し続けることができるかがラブコメの目的なのである。
第8位:魔界天使ジブリール/フロントウィング・蒼一郎[秋田書店:チャンピオンREDコミックス]
- 作者: フロントウィング,蒼一郎
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2009/03/19
- メディア: コミック
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「エンジェルカッターとは心に受けた傷を実体化し撃ち放つまさに心の刃なのだ!その威力は全身のツボを一斉に針で刺激される程に効果的なのだ!」「エンジェルソードとはジブリールだけが使える魔法の剣なのだ!その切れ味はサンマからマグロまでどんなモノをも一瞬でおいしく三枚におろす事ができるのだ!」「オリジナリティの欠片もない貧乳セレブゆとり世代が!」「エンジェルミサイルとは体内の老廃物をミサイルとして再編成して指先から発射する技なのだ!」「私の究極のガチプニてんこ盛りで汁ヤバアゲアゲなヘルズゲートがっ!オープン!オープン!オープーン!」等々の、珍妙で毒舌な説明文やセリフがそこかしこに散らばり、作者のサービス精神は非常に行き届き、しかしながらそれがラブコメ的場面を減少させていないところに本作の優れたところがある。コメディ色を強めるということをバカっぽくすることと勘違いし、結果ラブコメが持つシリアスな部分をぶち壊してしまうということが多々あるが、本作では非常に面白いながらもそのラブコメ場面を見せるところは全くブレていないのである。
本作はヒロインたちが敵と味方に分かれても混乱することなく話を収拾し、且つ1巻完結としてまとめなければならないところはきっちりと押さえている。もし本作が2巻、3巻と続き、このペースを維持していたら1位か、少なくとも2位にはなっていたであろう。惜しいことだ。
第7位:ナナとカオル/甘詰留太[白泉社:JETS COMICS]
- 作者: 甘詰留太
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2009/05/29
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ところが本作は非常に俺好みなのであります。何と言っても主人公がブサイクでチビでスケベであり(俺から言わせれば普通だが)、「スイーツでも食べながら一生じゃれあってろ」「バレンタインとかでうかれる奴らはさ、死ねばいいんだよ、贈るブスももらうバカも」とひたすら苛立っており(俺から言わせれば普通の高校生だが)、SM好きのグツグツの童貞と言うではありませんか。いいことだ。このような青年たちにスポットライトを当てることがラブコメの醍醐味である。
そして内容の方はひょんなことから幼馴染ヒロインを調教することになった主人公とヒロインのまだろっこしいがそれだけグツグツといやらしい初心者SMものである。最近その方面にも詳しい俺から言わせればSMというのは非常に奥が深いものであって、与えるのは快楽のための痛みであって物理的な痛みではない。男と女の恋愛関係を支配/被支配の関係から見つめ直し、更に深い快楽的なものに昇華させるものである。ブサイクでチビで日々陰鬱な青春を送る主人公は生徒会のマドンナとして名高いヒロインを調教しようと妄想し、手探りではあるがその妄想を実現しようとし、ヒロインは元々Mっ気があるのか最初は抵抗しても最後は命じられた恥ずかしいプレイを実行する姿(首輪、放尿、コートの下は縄化粧)は(何度かその方面の風俗に行って詳しい俺から言わせれば)興奮と勃起を誘おう。
言うまでもなく今までのオタク向け漫画においては男は例外なくマゾであり、女がサドであった(あの唾棄すべき駄作「ラブひな」がその代表格)。男たちはひたすら女に下手に出てご機嫌取りに走り、女たちはそんな男を侮蔑の目で見て自らのサド的欲求の解消のために殴る蹴るの暴力沙汰を行ってきた。ほとんどのオタクがマゾだからそれは仕方のないことかもしれぬが、俺はマゾの欲求解消漫画ではなくラブコメ漫画(モテない男の願望漫画)をずっと追い続けてきたのである。今、モテない男が見目麗しい女を調教するような漫画が世に出たことに俺は心の底から喜んでいる。
第6位:センセ。/春輝[秋田書店:ヤングチャンピオンコミックス]
- 作者: 春輝
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2009/07/17
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本作の主人公は若くて活きのいい女子高校生が溢れる女子高の教師であり、グラビアアイドルとして活動している生徒を筆頭に様々な女と接触するわけであるが、一言二言彼女たちと会話し、彼女たちの笑顔や思わずときめいてしまう仕草に遭遇した途端に妄想の世界へと場面が転換され、その「現実から妄想への接続」を唐突にそして曖昧にすることで非常に現実味がある「妄想」へと美味しく料理しているのである。もちろん唐突、かつ曖昧になれば読むづらくなるが、不思議と本作の場合読みづらくない。読み進んでいくうちに「現実→妄想→現実→妄想…」の場面転換のパターンを把握していくからであるが、それは世界のラブコメ王である俺だからできることかもしれんがまあとにかく6位であることに疑いの余地はない。
妄想ではない、現実の実際のヒロインたちも(なぜか)主人公にほのかな恋心を抱いていて、それを読む者はわかっている。と言うことは作中で出てくる妄想が実現化する可能性もあるということも読者はわかっている。これは「モテない男の願望」を二重に満足させていると言える。つまり妄想を展開させ読む者を満足させ、その妄想が終わった後の主人公とヒロインのやり取りがまた妄想には劣るものの甘酸っぱいものであり、読者は二重の快楽を味わうことになるのである。もちろん狙ってそういう風にやっているのでありましょう。何とも憎たらしい。
現実ではありえないことや禁じられていること(教師が生徒に手を出す、はその最たるものだ)を想像の世界で弄ぶのが「妄想」であり、その妄想の美味しいところだけを味わい、且つその妄想が実現するかもしれないという期待感がその妄想を美味しくする。本作はそこまで読者にサービスしているのである。感服致しました。こういうラブコメがもっともっと増えてほしいね。
第5位:おふらいんげーむ/えむあ[双葉社:ACTION COMICS]
- 作者: えむあ
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2009/06/27
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「オンラインゲーム」というものがあることはもちろん知っている。あいにく俺はゲーム全般が苦手(エロゲーすら年に一、二本しか買わない)なので手を出さないが、本作のような「家にこもってゲームばかりして口下手」な主人公には当然自分を重ねて見てしまう。そしてオフ会に誘われた主人公は不安で胸が張り裂けそうになりながら会場へ行き、「我らがリーダー!」ともてはやされ(そのオンラインゲームで主人公はチームのまとめ役をやっている)、何せチームリーダーだからゲームのことについては詳しい主人公、「初対面とは言えゲームの中じゃ気を許している仲間たちだもんな。それで同じ趣味の話をしているんだから楽しくないわけがない」と気を良くしたところでいかにも軽そうなお姉さんにヤられるという寸法である。さあそこからゲームの世界でもありえないようなモテモテでヤり得な話が始まるのあります。素晴らしい。そんなもんありえへんわい、と思いながらもやはり食い入るように読んでしまう。何度も言うように主人公と自分が重なっているからね。
そして繰り返し繰り返し述べていることだが主人公が劇中の女たちに好意を抱かれる理由は普遍的でなければならない。「雨に濡れている子犬が可哀想だからと自分の傘を子犬に使い自分はどしゃぶりの雨に濡れている」主人公を見てヒロインたちが恋心を抱くというそんなことより親の金で大学行くならバイトしろと言いたくなるような日本に誰一人当てはまらないような理由ではなく、あくまで自然に読者が納得できるものでなければならない。その点、「オンラインゲーム」という極めて身近なものを出してそれを中心にしてヒロインたちと主人公の関係性を構築するというのは非常に手堅く、漏れがない。これはアイデアの勝利である。
また本作のアイデアはそれだけにとどまらない。ヒロインの一人に声優を据え、当然一介の平凡人である主人公と声優は連絡もままならないわけであるが、一方でオンラインゲームではいくらでも会話することができる。主人公とヒロインは身分の違う関係(大げさに言えば)でありながら一方でチームのリーダー(主人公)とサブリーダー(ヒロイン)の関係にあることで主人公とヒロインの関係性が非常に印象的なものになっているのである。これもまたいいアイデアだ。ヤるヤらないはもはや問題ではない。この主人公とヒロインをめぐるシチュエーションの妙こそラブコメの醍醐味である。
第4位:お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!/草野紅壱[双葉社:ACTION COMICS]
お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!! (1) (アクションコミックス)
- 作者: 草野紅壱
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2009/04/11
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話を展開させ転がせていくためには登場人物たちが動かなければならないのであり、その積極性を担うのがラブコメの場合ヒロインとなるだけである。しかしながら本作の場合はその「ヒロインの積極性」が非常に飛び抜けているのであって、俺も多くの妹ラブコメを見てきたがここまで兄に対して情熱的で危険な想いを持つ妹ヒロインというのはちょっと見たことがない。普段は年頃の女らしく兄に対して反発を隠さないが、裏では兄が風呂から上がって身体を拭いたバスタオルの匂いを嗅ぎ、エロ本の検閲をして妹モノ以外は全部処分し、兄がうたた寝ている隙に腕を組んだり、兄が中学生の頃使っていたリコーダーで○○したりともう大変なものである。
ヒロインが積極的に動くことの利点は何と言ってもそのヒロインの心が主人公に向いていることがはっきりとわかることであり、自分ではなく向こうから動くことによって自分(主人公)のリスクがほぼゼロだということである。言葉にすると「だって向こうから言い寄ってきたんだから」と非常に情けない度量の狭い男のようだが、今更そんな建前を言っても仕方がない。恋愛は惚れた方が負けなのだ。まあそれはともかく、本作においてはどの頁を見ても妹は「お兄ちゃんお兄ちゃん」なのであり、妹から兄への想いともなれば通常の恋愛的親愛に肉親的親愛(ただし義理の関係)が追加されてその想いはもはや巨大な岩や山のようであり、そこにほのかに禁断のスパイスの匂いがすればもうやめられない。これほど危険で魅力的な妹ラブコメはないと断言できる。
第3位:リン×ママ/真鍋譲治[竹書房:BAMBOO COMICS]
リン×ママ 1 (バンブー・コミックスNAMAIKI SELECT)
- 作者: 真鍋譲治
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2008/08/27
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漫画なのだからどうでもいいとは言っても、作品内の現象全てを受け入れることはできない。なぜなら読む我々はこの三次元の現実を生きているし作品内の登場人物もこの三次元の現実を生きているという設定になっている以上、我々と同じ感覚を共有しなければならない。「雨に濡れている子犬が可哀想だからと自分の傘を子犬に使い自分はどしゃぶりの雨に濡れている」主人公を見てヒロインたちが恋心を抱くというそんな奴がおったら精神病院行きじゃと思わず叫んでしまうものが跋扈する狂気の世界がすぐそこにあるのだ。「都合の良い世界」をより楽しみより満足のいくものにするためにはそれをどれだけリアルに近づかせることができるか、リアルであればあるほど読む者の感情移入を容易にしてより楽しめることができよう。
前置きが長くなったが、(1)プロレスオタクとして今は引退した女子プロレスラーのDVD等を今も見続ける主人公、(2)実はその引退した女子プロレスラーはアパートの大家、(3)主人公の女子プロレスラーに対する熱い想いを知った女子プロレスラー大家(ヒロイン)は「うわこいつキモオタ!」と侮蔑することなくそれどころか主人公とベッド・イン、(4)のみならず復活すべきかどうか迷っていたさなかにいまだ自分を力強く応援してくれるファンを見てヒロインは復活を決意したということでいい雰囲気、(5)あっという間に主人公は憧れの女子プロレスラー軍団のマネージャーに就任、(6)大家ヒロインのみならずその他の女子プロレスラーと大したこともしていないのに(ゲーセンでただゲームしていたらアメリカのパッキンのパイオツカイデーなプロレスラーとヤれた)次々に関係を結ぶ、とこういう風になっているわけである。「都合の良い世界」を違和感なく展開するために様々な工夫を凝らしていることが窺えよう。
そして一度そのような状況を作り主人公とヒロインの関係が繋がった途端ハーレムへと流れる思い切りの良さ、しかしながらヤりっぱなしでは終わらずそれ以降も要所要所で強化される主人公と各ヒロインとの関係の確立はラブコメの何たるかを完全に把握しているものである。20頁の短編でもなく10巻以上の大長編でもない中で面白さを最大限表現し、ラブコメ(エロ含む)を可能な限りサービスするための基本を完全に押さえている。
また作者の、もう結構な年齢であるのに常に可愛く進化する登場人物たちの画力には脱帽であるが、肝心の主人公が時として「『いい人』にしようとするあまり人間味のない『いい人』にしてしまう症候群」にかかってしまっているのが残念である。それさえなければ断トツの1位であっただろう。うまくいかんもんですな。
第2位:かおすへっどH/みづきたけひと[ジャイブ:CR COMICS]
- 作者: みづきたけひと,ニトロプラス・5pb.
- 出版社/メーカー: ジャイブ
- 発売日: 2009/03/27
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「ただ何事もなく日々をやり過ごす、僕の望みはそれだけだよ」として日々二次元キャラとの甘酸っぱい生活を夢想し「妄想セックル」する非常に好感が持てる高校生に突如とやってくるヒロインたちは他者に干渉されるのを嫌う(怖がる)主人公に強引なアプローチを敢行、いきなり見知らぬ女に手を握られ「さあ学校行こう!」と言われ主人公は脅える一方で「突然現れたこの女が怖くて頭では拒絶しているのに、この時僕の手を握る細くてなめらかな指先が離れてしまうことのほうがずっと恐ろしく思えたんだ(肉欲が恐怖心を凌駕してしまった)」というのがまた好感が持てるではないですか。やはり主人公はこうでないといけません。
もちろん女たちが主人公に寄ってたかって吸いつこうとするのは本編で(本書はこの本編の番外編に当たる)主人公と共に戦ったからであり、戦いが終わり平和になったので本来の乙女の願望を叶えようといやらしく策を練るわけである。本編に全くノータッチな俺であるがそれぐらいは容易に想像できよう。そして本作の主人公は一貫してヘタレであり、それにもかかわらずヒロインたちは主人公に懸想し、主人公に懸想する想いが二次元キャラを実体化させ(ただし触れることはできない)二重のハーレムまで用意され至れり尽くせりとはこのことである。ただの高校生である主人公は目の前の壁にぶち当たっても何もできず(ヘタレなので)、ネットで質問することぐらいしかできない。それにもかかわらず主人公をあくまでサポートしようとするヒロインたちの一途さは他の作品群から一歩抜け出している。
ヒロインたちの一途さの背景には「(本編で)共に戦った」一体感があるからであり、その戦いの過程で主人公が非常に阿呆らしいことを言ったことも容易に想像できる(「僕が君を守ってみせる」とか「必ずあいつを倒してみせる」とか)が、このスピンオフ漫画1巻だけを読んでいる俺としてはそんな描写は知らんのでそれでいいのである。運が良かったということだろうが、その運を呼び寄せたのは他ならぬ本作なのであるからそれで良し。作画能力がもう少しあれば1位といい勝負だったのだが。
第1位:鬼龍院冴子探偵事務所/三上龍哉[小学館:ビッグコミックス]
- 作者: 三上龍哉
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/04/30
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ギャグの手法の一つとして「積極的過ぎる女性」が登場する。「マカロニほうれん荘」(2001年22位)「ストップ!ひばりくん!」(2001年1位)以来使い古された手法の一つであるがその難点は「ギャグ」であるからラブコメが要請する「エロ」や「癒し」や「萌え」が備わっていないため、ヒロインはただの阿呆に成り下がるという致命的なものであった。「ギャグ」が破壊をベースとし「ラブコメ」が予定調和な居心地の良い妄想をベースにしているわけであるから当然である。過去どの作品もギャグに引っ張られるとラブコメが引っ込み、ラブコメに引っ張られるとギャグが引っ込んだ。ところが本作が表れた。俺は衝撃を受けた。
本作の内容は主人公がよくわからぬままにヒロインである女探偵に気に入られ(主人公がイケメンだかららしいが、注意深く読まないとそこまではわからない。とにかく唐突に女探偵は主人公に接近する)、これっぽちも協力すると言っていないにもかかわらず珍妙な(というより不条理で理解不能な)事件に巻き込まれてしまうものであり、ラブコメの要件を満たしてはいるが、この作品自体が「ラブコメ」にしようとしてそうしたのではなくただギャグの手法として行っているのは明白である。にもかかわらずラブコメとしての刺激は今年の作品のなかでナンバー・ワンなのである。なぜなら本作は「ヒロインが主人公に対して積極的に出る(エロ攻撃を繰り出す)」ことをギャグのメインにしているからであって、肉感的なヒロインの身体も伴いかつてない破壊力とラブコメを求める俺の満足度を両立させているのである。これは少し絵心があって場数を踏んでいる漫画家なら誰でも描けるような代物ではない。ギャグの引き出しが豊富で、作画能力が優れ、そしてラブコメにおける「おいしい部分」、女が男に対して積極的に出ることによる状況の高低と場面転換の妙を熟知してそれを適用しないと成立しない「綱渡り」を難なくやってのける本作は間違いなく圧勝の1位である。
もちろんラブコメを目的とした漫画ではないから「ヒロインがエロ攻撃を繰り出す」のみが本作の特徴ではないが、そんなものは問題にならない破壊力である。例をあげると「主人公くんの好きな電車で痴漢ゴッコさせてあげるから(主人公のツッコミ:好きじゃねえよ!)」「あたし縛るより、縛られるほうが好きだから(…声が大きい!)」「もう体だけの関係は嫌なの、心も愛してほしいのよ(そんな関係ないわ!)」等々である。抱腹絶倒とはこのことですな。
繰り返し述べるが、俺はただ市場に大量に溢れる漫画を取捨選択しその漫画のおいしい部分だけを取捨選択すればいいだけの話なのである。本作を1位と決定した今年はそれを再認識する非常に有意義な一年であった。まだまだラブコメは終わらず俺の人生も終わらんのであります。
さあ今年最後の更新である次回は成年部門編であります。母・息子や妹・兄の近親系や獣耳やロリや外人やもちろんオーソドックスな和姦ものまで俺の性癖を暴露し生き恥さらしの時間までもうすぐでっせ。