第6シリーズ 生命線(4)BOOKOFF練馬区役所前店

 兵庫県糞田舎で怠惰と惰眠を貪っていた糞阿呆俺が東京にやってきて5度目の秋を迎えたわけであり、26歳という年齢にさしかかり今や会社と仕事の命運が俺の肩に重くのしかかってきて身動きができず、ついにあの1年に4回開かれるというオリンピックと双璧をなす国際的フェスティバル「永神秋門攻防戦2009秋」は中止に追い込まれたのである。何せ9月下旬から1週間に1回は福岡の工場に出張してああでもないこうでもないと現場とやり合わなければならず、自らの老け顔と寡黙を武器にして彼らを説き伏せることに成功したものの工場は日々動き月に1回は給料を払わなければならないのだから組織に終わりはなく俺にできるせめてもの抵抗は残業代をたっぷりつけることだけなのだ。何とか日曜日は休むことができるが土曜日に休むなど夢のまた夢であり、日曜日は国会図書館が開いてないのだから万事休すである。今の状態が一段落するのはどう考えても11月中旬であり季節はもう冬であるから、つまるところこの秋は永神秋門には行かないことが決定したのである。しかしつくづく思うのだが国会図書館ともあろう者が日曜日は休館というのはどういうことなんでしょうか。サービス業を何だと思っとるのだ。
 というわけで本日土曜日も会社へと乗り込み、目をつぶってハンコを押し、戦いに明け暮れる現場と本社の間で生き残るための隠れ場所に潜り込み、学歴と資格と主張だけが取り柄の後輩を無視して貴重な一日が費やされたのである。しかし例えば一年前と比べれば嫌な感じはしない。良くも悪くも重要な仕事を任され、それを何とかこなしていくと充実感が生まれ、それに伴い「ヤケ食い的現実逃避的」な食欲ではなく本当に心地よい疲れから来る食欲が湧いてきて腹が満たされたら今度は性欲じゃと最近自慰の回数が増えたような気が(以下略)。ちなみに前回の裏東京毒探偵の時は風俗に行ったが、今回は行きません。なぜかというと既に今日の朝に自慰を(以下略)。
 本日向かうのはBOOKOFF練馬区役所前店であるが、前回から1ヶ月以上経ってのBOOKOFF遠征である。前述の仕事上の多忙や鳩山新政権発足に伴い首相補佐官に任命されたりしたので行く暇がなかったからなのだが、本来はこのように1ヶ月に1回くらいのペースがちょうどいいのかもしれぬ。毎週毎週足を向けたところで俺の意に沿うような本が大量にあるわけでもなし、本屋で売られ古本屋に売られる期間というのを見越してもっと緩急自在にやっていくべきなのだ。昔は「早く買わないとなくなってしまうし、早く行かないと俺の命が尽きてしまう」と矢も楯もたまらず射精しておったがまあ色々と考えるわけですよ俺もね。
 メトロ有楽町線小竹向原駅まで行って西武線に乗り換えて練馬駅で下り、新宿や池袋のような豪華さはないが8月に行った札幌の琴似駅付近を彷彿とさせる明るい街並みを歩き、信号待ちをしていると30代夫婦と思われる男女のうち女が「スクランブルってどういう意味?」と言って男が「それ英語じゃなくてフランス語だよ」と言ったのが耳に入った。そんなわけでBOOKOFF練馬区役所前店。毎度意味不明のごとく写真を撮ろうとしたが駐輪自転車の取り締まりのためか警官が店の前にいてなかなか撮るチャンスがなく、仕方なくメールを打っている振りをしていると警察が誰かに「ちょっと来てもらおうかな」と言っているのが聞こえ、一瞬俺に言ったのかと思って腰が抜けそうになった。

 おお。BOOKOFFに足を運ぶのは一ヶ月ぶりでありこの独特の本の匂いを久し振りに嗅いでああやはり俺にはこういうところが似合っているのだなあと感慨深いものがある。金も女も地位も手に入れた同世代の敵と戦う俺の唯一の武器は「陰にこもり、一人の世界を確立する」ことにあるのかもしれぬ。品揃えは可もなく不可もなくというところか。こちらを買う。20時2分、400円。

うちの妻ってどうでしょう? 2 (アクションコミックス)

うちの妻ってどうでしょう? 2 (アクションコミックス)

 記憶に新しい日本ラブコメ大賞2008・1位の大作である。そう言えば最近お子さんが生まれたそうですな。おめでとうございます。これでより一層生活の重荷に苦しめられ、作品の糧となるでしょう。
 で、次なる目的地は西武線練馬駅池袋駅でJR乗換え→JR大塚駅のBOOKOFF大塚駅前店であり、すわ風俗かと勃起するのはわかるがまあ俺のテリトリーは五反田・鶯谷・池袋なので別にそんな期待するようなところには行きまへん。大体あんな使いまわされた疲れた女たちを金で買うこと自体がおかしいのだ。しかしそうでもしなければ永遠に女に相手されないではないかと言われたらその通りであり、それを言い出したらまた時間がいくらあっても足りませんのでBOOKOFF大塚駅前店。

 前にこの店に来たのが去年の8月であり、それほど品揃えのいい店ではなかったはずだが今回はやたらと大漁であった(特に双葉社少年画報社などの非成年系のアダルト漫画)。こういう事があるからBOOKOFFめぐりはやめられず生きることをやめられないのだ。どれにしたろうかなと舌から涎を垂れ流すが今は10月でもう日本ラブコメ大賞2009はすぐそこまで迫っているのでありそれらを考慮しながらこの俺の天才的頭脳は今日もクリーン・ヒットを放つのである(自分でも何を言っているのかわかりません)。21時16分、350円。
かおすへっどH (CR COMICS)

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 これでもう後は帰るだけなのであるが、BOOKOFFの隣りに「バッティングセンター」のネオンが毒々しく光っており、その光に釣られるように俺はバッティングセンターに足を踏み入れていた。確かに第一次大病戦争が起こる前の、まだオタクにも目覚めていない中学生の俺は野球少年であったがそれはもう遠い昔である。「リトルリーグの練習に」と書かれた95キロのコーナーに入ってバットを振るが最初の5球は全く当たらず、次の5球で何とかバットにかすり、残る10球はすべてファウルの方向にボールは飛んでいった。そのコーナーを出てまた20球用のメダルを買うと別の客が95キロコーナーに入ったので空いていた105キロコーナーに入って、最初の10球はやはりファウルの方向だったが残る10球は内野ゴロや内野フライぐらいには打つことができた。もう一回やろうかとも思ったが店内に「蛍の光」のBGMが流れて出したので店を出て駅へ歩いていくと、俺の前を20代前後の大学生らしきカップルがお互いの尻をさすりながら歩いていた。金も女も地位もある彼らに天下の醜男と言われる俺が「勝つ」ためには…。