日本トンデモ本大賞2009

 「ラブコメ狂いが政治語ってんじゃねえよ」「BOOKOFFに行っておきながら神保町に行くな馬鹿」「アキバ系のくせに純文学とかノンフィクションとか読んでかっこつけるな」「風俗行った後にどうして普通に本屋に行けるんだ変態」等、俺の多彩にして節操のない日々の業績に非難轟々であることは重々承知しておりますが、しかしながら俺としてはラブコメや政治にその身を捧げながらもそれだけで終わっていては何というか面白くないとも思うのでありまして、いつ死ぬか殺されるか発狂するかわからないのだからそれまでは積極的に行動すべきなのである。いやに健全なことを言うとるが、結局興味の赴くまま本能の赴くままに田舎者特有のミーハー根性丸出しで本日行ってきたのは「日本トンデモ本大賞2009」である。

 かつて意味もなく三宮のジュンク堂書店で5時間ばかりブラブラするような大学生活を送った俺は当然「トンデモ本」「と学会」について知っているし、と学会の本も大学生の頃2〜3冊買ったことがある(残念ながら2004年7月の「鉄血革命」により売ってしまったが)。大真面目に奇妙奇天烈なことを言う人々にバッサリとツっこむ快感というのは大変いいものだと感心し、年々大規模になってきてライブみたいなこともしているらしいが所詮それは東京でのことであって、怠惰と惰眠を貪る兵庫県糞田舎の人間である俺には関係ないと次第に忘れてしまったが、2週間前上司に無理やり残業(というか上司の尻拭い)をさせられ日付が変わって当の上司がフロア全体に響き渡るほどのいびきをかき出したので仕事を放棄してネットサーフィンをしているとどういう訳か「日本トンデモ本大賞2009」に辿り着いたのである。
 開催日である6月6日土曜日というのは仕事の方も一段落して休みも取れるが、「と学会」というのは10年以上も活動を続けているわけであるから当然固定ファンも多いだろうから既にチケットは売り切れているだろうとあきらめるのがいつもの俺である。が、この日は何せ日付が変わっても会社にいて間違いなく泊り込みが予想されるという状況であり腹が立つやら悲しいやらでどういうわけかローソンチケットに電話したのである。そして機械音声の指示に従ってあれよあれよという間にチケットは入手せられた。うーん。そんなもんなのか。拍子抜けしてしまった。
 ちなみに俺は棺桶に両足を突っ込んでいる人間であるが耳にも爆弾を抱えている人間であるからして、巨大な音が響き渡るライブはおろか映画にも行けないし、カラオケもできれば行きたくない(会社の飲み会等で嫌々行くが)。そういうこともあって東京生活も丸四年になるがこのようなイベントには足が向かなかったが、まあ「トンデモ本大賞」は一生に一度は行ってみたい部類の魅力的なものではあるし、こんな機会はもう二度とないかもしれない。というわけで池袋に着き、中池袋公園近くの立ち食い屋でカレー丼セットを食べていざ出陣である。豊島区公会堂。

 当たり前ですが場内は撮影禁止ですので中の様子は撮っていません。それにしても会場は想像していたよりもずいぶん狭かった。俺の席は2階席の一番後方である「10−7」だったのだが、椅子も小さく前とのスペースも狭く、左横に座っている40代後半と思われる男が結構な肥満体であったから同じく肥満体である俺は身体を縮め、両足とも右向き(俺の席は通路側の右端だった)にしなければならなかった。まあ2800円だとこんなもんか。トイレに行くといやに40代・50代の男が目についた。「40代・50代でも2ちゃんねるをしている奴が結構いる」というのを聞くたびに嘘だろうと思っていたが、このようなキワモノイベントにいい大人がやってくるのを目の当たりにするとそれも本当なんでしょうなあ。やはり百聞は一見にしかず、ですな。
 というわけで内容についてだが、一応「以下ネタバレ注意」と書いて書くことにするが、いやもう本当に面白かった。いきなり「ノストラダムス大予言外れ10周年、でも本当に外れてたの?」というワクワクするプレゼンテーションが始まり、「恐怖の大王は六本木ヒルズだった!」説が語られ抱腹絶倒し(「三社目の適格者」「最後の四社」は実に良かった)、休む暇もなく「と学会エクストラ」として6〜7人が壇上で様々な「研究」を発表してきたが特に「ちんこ文具」と「と学会、街を歩く(秘密結社を見に行く・カッパに会いに行く)」は大声で笑ってしまった。それから唐沢俊一もお決まりの黒いスーツに黒いシルクハットで出てきて「ひとりの性生活の嗜み(昭和40年代の、オナニーの心得みたいなものを大真面目で書いたもの)」を紹介してこれも面白かったが、その後の休憩の時に2階席に来てこちらは普通のネクタイにスーツの人と話していた。実は俺は高校三年の時に唐沢俊一の「古本マニア雑学ノート」を繰り返し読んでいた時期があって、そんな思い出深い人が5メートルもない範囲にいることにびっくりしたのだがそれよりもびっくりしたのが周りの観客が全くノーリアクションだったことで、この人たちにとってはもう見慣れた存在なのだろうかしかしサインをねだるとか握手してくださいとか言ってもいいのではないか。その後も唐沢氏は誰かを探しているのか周りをグルングルンと見渡しながら歩き回り、一瞬俺と目が合ったような気がして俺はもうただただびっくりしていた。いやあこれが「と学会」なのですねえ。
 その後「トンデモ本2009」の選考会が始まり、「精子の時、あるいは卵子の時の記憶がある」と主張する本と「オリジナリティがなくても小説家になれる。専門知識に詳しいオタクこそ最も小説家になれる」と主張する本と「ハチとハチでハハウエ(母上)」「シュメール人は日本人だった。魂が転生してシュメール人は日本人になった」と主張する本と「とにかく何でもかんでもこの世にあふれるものは危険だらけ」と主張する本が紹介され、それにパネリスト8人がコメントしていくのだがこの掛け合いがまた「俺たちだけがこの面白さをわかるんだよなあ」という何とも閉鎖的で先鋭的な空気を醸し出して大変面白かった。しかし候補作の発表者である山本弘は早口なのか時折喋りが聞き取れなかったりしたが、まあそういう素人さが全然不快でないところに「と学会」の魅力があるのだろう。
 候補作紹介が終わり、休憩の合間に事前に配られた投票用紙に記入して時間があったので物販コーナーに行って「と学会会誌21」と、こちらを買う。

と学会年鑑KIMIDORI

と学会年鑑KIMIDORI

 1200円だったかな。何せコミケのように狭いスペースで人がごった返していたのであまり覚えておりません。
 その後、さっき観客からノーリアクションだった唐沢氏が再び壇上に出てきて「トンデモ本は、我々が追いかけても追いかけても出てくる」「たとえば、週刊文春阿川佐和子と対談している谷村新司は(以下略。なぜかこれは言ってはいけない気がする)」とまたしても笑いをさらって紹介したのが「トンデモ活弁士・坂本頼光」なる人であって、昭和10年の無声日本映画を当時さながらにこの坂本活弁士が声をあてて上映するのだがこれも非常に面白かった。内容についてはチャップリンの短編無声映画筒井康隆のドタバタを足して2で割ったようで俺は特に驚かなかったが、そういう予備知識がない人には大層衝撃だったのではあるまいか。とは言え俺も夢中になって見てしまったが。
 確かその上映が終わったのが16時50分頃であり、これでいよいよ今年度のトンデモ本大賞の発表になるのだなと思っていると坂本氏が「もう、このまま帰りたい」「次ですが、いやー、私は二度ほど発狂しそうになりました」「一体これに何の意味があるのか」と話し出して会場が爆笑の渦に包まれているものだから怪訝に思っていると、どうやらもう一つ上映を用意しているらしいということで合点がいくが、これがもう大変なものであった。一体どこまで書いていいのかわからぬが、「サザザさん」というサザエさんのパロディーアニメが展開されるのだがそれがグロテスクというかブラックユーモアの極北というかキチガイというかとにかくとんでもないもので、それを坂本氏がたった一人で声をあてているのである。まあ、こういう言い方は何だが、結構こういうノリも嫌いじゃないけどね俺は。しかしあの、マスオ(?)の「何だこのアニメ!」には腹を抱えて笑ってしまった。
 その後、1票という僅差で今年度の大賞が決まって(俺は「魂が転生」が気に入ったのでそちらに投票したが、まあ大賞が何かは俺が言ってはいかんな)、司会アシスタントの女ができちゃった結婚になっておめでとうというよくわからん祝福ムードで会場の興奮は一気に高まって終わったのである。いやあ面白かった面白かった。これは来年も是非行かねばなりませんなあ。
 というわけでここまで書くのに2時間かかってもうしんどいのだが俺は若いのであり特に今日は風俗には行かないので(またそんなこと言うとるわ)26歳の有り余る性欲の代わりにいつものようにBOOKOFF等へ行くのである。いやもう今日はトンデモ大賞の余韻に浸りながら帰ってもいいのだが、しかし「と学会」の人たちがトンデモ本に並々ならぬ意欲を日夜燃やし続けているというのにこの俺がしおれていてはいかんのである。池袋からJR山手線で高田馬場駅、その後メトロ東西線中野駅で降りて最近はカップルどころか若い女を見ただけでもう視線がそっちへ行ってしまうというどうしようもない俺はいつものように中野ブロードウェイまんだらけへ。

 いやもうこんなん写真撮らんでもええんやけどなあ。しかし撮らんのも変な感じやしなあ。というわけでこちらを買う。18時29分、315円。お。350円とちゃうのか。
鬼龍院冴子探偵事務所 2 (ビッグコミックス)

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 日本トンデモ本大賞2009は終わり、本家本元である日本ラブコメ大賞2009の選考作業は年末に向けて着々と準備を進めておるのである。今のところ一般部門の方が潤沢で成年部門が今ひとつパンチにかけるのだが、まあそのあたりは俺の腕の見せ所である。負けまへんで。
 で、「二鷹体制」に従い次に行くのはどこかというとBOOKOFF中野早稲田通店である。こちらの方は2年前の夏のコミケの直前である8月18日に行って以来であって、品揃えも悪くないのだがいかんせん駅より遠く今日ぐらいしか行く機会がないので一つ足を伸ばしてみよう。時刻はまだ19時前で、早稲田通を高田馬場方面に歩いているとスーパーから買い物帰りと思われる若いカップルを見ては(以下略)。もう最近は嫉妬の鬼と化しとるな俺は。

 さて前述の通り日本ラブコメ大賞2009は着々と準備が進んでいるのだが、いかんせん諸君の大好きなライトノベルスが今年はまだ一つしか俺の手元にないのである。去年が一昨年の反動でかなりラノベに手を出したのであるから、今年はその去年の反動で逆にラノベになかなか手が伸びないだけだとも思うが、常に広い視野を持ち可能性を追求する俺はラノベにも愛の手を差し伸べてやろうと考えるのであるが、しかし生活感のかけらもないガキンチョの生意気な女が暴れまわるだけの糞面白くない作品群が百鬼夜行しているラノベにどうして俺が気を遣わなければならんのかねまあまあここは一つ26歳の大人として広い心でラブコメ魂を発揮してやりましょうやということで頑張るが、結局買ったのはこちら。19時20分、300円。おお。今日は安いでおますなあ。
センセ。 1 (ヤングチャンピオンコミックス)

センセ。 1 (ヤングチャンピオンコミックス)

 ま、これはこれでいいけどね。しかしどうしますかねえこの「ラノベ問題」は。うーん。俺は男やからね。男の俺が女が主人公のやつ読んだってねえ。そら純文学とかノンフィクションならこっちも我慢と思って読むけどさあ。やっぱりそこは譲れない、というか女が主人公ではこのブログで言うところの「ラブコメ」なんてありえへんからね。まあ男が主人公のラノベも腐るほどあるけど大抵「美少年」「困っている人を見るとほっとけない」「人一倍お人よし」等、等、もう人間味のない感情移入できないただの記号論的主人公であってね。そのあたりも俺は我慢できへんわけよ。うーん。
 と、日本トンデモ本大賞の感動もどこへやらで相変わらずラブコメブコメと騒ぎ続けながらさようなら。次回はちょっとした企画をやりますので(いつものアレの拡大版)ご期待下さい。

 上の写真には会場全員に配られていた「と」印のバッチが写っておるが、これどうしましょう。いまどきバッチもらってもなあ。しかし捨てるのももったいないしなあ。