13の超小説/横田順彌[徳間書店:徳間文庫]

<登場人物紹介>
俺:このブログの執筆者にして主人公。怠惰・陰気・嫉妬・狂気といった負のオーラを放つことに関しては右に出る者はいないと言われる。ラブコメ探索と政治研究にその命を捧げると言いながら「真面目な読書青年」と言われて悪い気はしない。「金持ちは皆地獄行き」「外見がオシャレな奴は内面がブサイク」が口癖。最近パスタをよく食べる。
土曜日の女:このブログの唯一のヒロインにして俺の宿敵。「合コン」「スイーツ」「きれいな女になるための楽な方法」「フェミニズム」などに夢中だが、そろそろそんな事を言ってられる年齢ではないことに本人は気付いていない。もちろんラブコメは大嫌い。ただしホモやレズも嫌いなので、一応俺と会話はできる。
  
「やあやあやあ。あけましておめでとうございますというわけでまたまたやってきました俺であります。今年も言語不明瞭意味不明瞭な読書感想文をいやというほど皆さんにお届け致しますよ。そしてお相手は『そんな事を言ってられる年齢ではないことに本人は気付いていない』土曜日の女さんです」
「…何ですか?」
「いや別に繰り返すつもりはありません。そして今日ご紹介するのは横田順彌『13の超小説』というやつです。これはSFなんですが、SFと言えば何を思い浮かべますか」
「…やっぱり宇宙船とか、宇宙人との戦いとかですか」
「何を言ってるんですか。SFと言えばダジャレでしょうが」
「は?」
「ダジャレですよダジャレ。『女は通んな!』とか『言い訳なんか言っていいわけ?』とか『猿が来てすぐに去る』とか『布団がふっとんだ』とか」
「もういいです」
「『猛威が来た。もういい』とか」
「しつこいわね」
「とにかく本書にはそのようなダジャレが一杯詰まっているわけです。これは確かに阿呆らしい。しかし読んでも読んでもダジャレの洪水がひたすら流れてくるわけで、そのダジャレに合わせて展開があれよあれよと坂道を転がり落ちるように進んでいって最後もまたダジャレで落ちるわけです。これは簡単にできるようでいてなかなかできるものではありません。そして洒落のわかる大人のいい男である俺はこのくだらなさを大いに楽しんだわけです」
「…」
「本書中のダジャレを紹介しますと、『シャチが作ったYシャチ』『マリアというロボットをお歳暮にもらったから歳暮マリア』『サナダ虫十匹でサナダ十勇虫』『赤ちゃんが出てくる音楽。産道・オブ・ミュージック』『鉄瓶に一合枡で28杯のお湯が入ったから鉄瓶28合』『尿道が知能を持ったら三好清海尿道』『ウルトラマンタロウに似ているから、ウルトラマンダロウ』『シビン族(という種族が宇宙にいる)はほとんど喋りません。シビンに口なし』『魚人の野球チーム、即ち魚人軍』」
「ちょっと待ってください。頭が痛くなってきました」
「頭が痛い。それは普通の痛みですか、それとも頭痛の痛みですか」
「面白くありません」
「その通り、作者の繰り出す縦横無尽・融通無碍・森羅万象な駄洒落に比べれば俺など面白いはずがない。とにかくすごいわけです」
「…何もこんな本を読まなくても。何が『真面目な読書青年』ですか」
「真面目な読書青年?いえ俺は地味ですから『地味目な読書青年』、あるいは成年漫画を読むので『真面目な読書成年』ですよ」
「もういいです。帰ります」
「帰る。また合コンに行くのですか。じゃ俺もコンパニオンのいるパブにでも行きますか。ゴー・コンパニオンなんちゃって」
「…」
「それともまたスイーツですか。昔俺もよくやりましたよ。いやあれは『スト2』か」
「…もうやめた方が」
「ご安心ください、もう出てきません。というわけでごきげんよう