ゾクセイ(4)/松山せいじ[秋田書店:少年チャンピオンコミックス]

 あれま。これで最終巻ですか。本書については今や一億二千万人がその存在を知っているがそれは本書が日本ラブコメ大賞2007第一位に輝いたからであり当然世界中からそれによる利権を求めて亡者たちがやってきたであろうからそれに嫌気がさして連載をやめたのでなければいいのだが、などと言うとるが本書の発売日は2007年11月5日でありその時点ではまだラブコメ大賞1位どころかノミネートさえ発表されてないのだからつまり俺の言ってることは全く独りよがりの大言壮語の妄想症の阿呆音頭ということになりますがあなたどう思いますか。
 えーと、そうですか最終巻ですか。惜しいことですなあ。わざわざヒロインの相手役となる男を匿名にして(女は必ず「○○くん」と呼ぶ)しかも顔もはっきりと描いてない(目が描かれていない)ものだからあとは読む者の力さえあればいくらでも快楽の世界にトリップできるという麻薬的な本書であるからきっと官憲の鉄槌が舞い降りたに違いないと言うのは冗談ではないが、まあ毎回毎回違う女を出してしかもその女と時に何の関係もない男をお近付きにさせるというのは大変な作業であったろう(しかも週刊連載である)。また作者の絵はどうしても巨乳に目が行きがちだがその巨乳女の身体全体の人体描写力とでも言うべきものこそ注目すべきであって、いわゆる「均整の取れた体型」の女性キャラを「萌え」の文脈で且つ限りなくエロティックにしかし生々しさを感じさせず描いたのは作者が先駆ではないだろうか(詳しくは作者の大作「エイケン」を読めばわかる。日本ラブコメ大賞2003第2位)。まあ色んな女を出して色んなシチュエーションを用意してこのレベルを維持するには4巻ぐらいがちょうどいいとこでしょうなあ。
 しかし1・2・3巻ときてこの4巻が一番ラブコメ量が濃いのではないか。今までは「何だか知らないけどきれいな女と友達になりました。そして…」というオチであったが本書では「何だか知らないけどきれいな女に好かれました。そして…もう時間の問題です」という感じの棚ボタ的展開が非常に強調されている内容なのであって、真の快楽とは何かを教えてくれる漫画であります。