ルサンチマン(4)/花沢健吾[小学館:ビッグコミックス]

 さて11月11日にBOOKOFF蒲田駅東口店で350円で買った本書はどの古本屋に行ってもなかなか手に入らなかったものである。2月24日に本作第3巻を買い、その後ずっと探し続けて9ヵ月後にやっと買うことができたわけである。後述するがこのような素晴らしい作品がなかなか古本屋で手に入らないのはある意味正しいことであって、BOOKOFF等大型古本屋への批判を最近よく耳にするが(「漫画家に利益がいかない」「文化の発達を阻害させる」)、だったら本作のように古本屋で売られないような作品を作ればいいだけではないかな。
 本作は2004年度日本ラブコメ大賞第5位の作品である(http://d.hatena.ne.jp/tarimo/20050221#p1)。とは言っても本作は「ラブコメ」というにはあまりにも重すぎる内容であって、まあ1巻を読んでいた時はこのような大それた結末になるなど想像もできなかったのだから仕方ないが、しかしやはり俺のラブコメ世界ではこの作品(30前のうだつのあがらない男が主人公)もまたラブコメなのである。俺が世界だ。
 1巻から伏線としてはあったとは言え、最後には「人類滅亡の危機」にまで発展するなどと一体誰が想像できよう。それも30前のうだつのあがらない男が仮想現実と現実の間を飛び回って人類滅亡の危機を(結果的に)回避するのであるから、これぞラブコメ冥利に尽きると言える。更にまた仮想現実で女と楽しんでいたところ現実の女が怒鳴り込んできたりその後現実の方でその女と関係を結ぶようになるなど、今まで誰もが一度は考えてはいてもなかなかそれを実際に漫画として描くことはなかったはずである。本作品のように仮想現実というものがあったらならばその時人々は日頃の欲望を醜く発散させるであろうことは自明の理でありだからこそ作り手側も読み手側もそういう描写を今まで避けてきたのであって、しかし作者はそれを描き切ったのであり俺は賞賛を惜しまない。
 仮想現実世界が戦場になり、主人公の相手である仮想現実側の女は世界中のコンピューターを支配できるソフトとして主人公を呼び寄せ(「私が幸せにする」とまで言う)、その行方を見守る現実の人々という緊迫感溢れるクライマックスはどこかのハリウッド映画など比べ物にならないくらい面白く、思わず鳥肌が立ったほどだ。これほどの鳥肌は「寄生獣」を読んだ時以来のものと言えば俺がいかに本作に感動したかわかるかもしれんが、とにかくどえらい作品であった。こういうのを読むとやっぱり生きててよかったと思ってしまうねえ。