昭和の宰相3 東条英機と軍部独裁/戸川猪佐武[講談社]

 7月28日に五反田の風俗に行っていつもの女を指名して、ではなかった五反田遊古会に行って買った本書は戦後政治史の重要証人である戸川猪佐武による「政局同時代史」である。但し本書は昭和15年から昭和20年ポツダム宣言受諾までの政局であって、当時は政党ではなく陸軍・海軍・重臣・官僚が主役であるから非常に殺伐としている。特に陸軍対反陸軍の戦いの構図で最も激しかった中野正剛の倒閣運動は追い詰められた中野の割腹自殺で幕を閉じるわけだが、これらはどう考えても陸軍支配と東条の憲兵政治による日本の汚点であろう。昭和陸軍の最大にして唯一の問題である「政治支配」を、今更ながら俺も断罪しよう。
 また太平洋戦争直前の松岡外交とポツダム宣言受諾前の和平交渉にも多く言及されていて、前者は英米に対する驕りとドイツへの過信とソ連への誤解による失敗、後者は正確な戦況判断の誤認識と英米ソへの無理解による失敗であることがわかる。とかく昭和の政治家というのは明治大正の政治家のように「国際政治感」とでも言うべき大局を読み取る知識が抜けていて、ひたすら権威主義的に日本の考えとやらを押し付けてそれで何とかなると思っているのだから困ったものである。ん。今も似たようなもんか。まあ俺も含めてみんな国内の政局しか興味がないからな(自民党総裁選なんてその最たるもんだな)。案外また原爆が落とされたりして。…笑い事ではないな。