黄金コースというものがあって

 黄金コースというものがあって、これは言ってみれば休日を有意義に過ごす最良の方法のことである。そして俺の場合「休日を過ごす最良の方法」イコール本屋古本屋に行くことでありお決まりの店を訪ね歩くことで残り少ない人生の火を燃焼させるわけである。何だか最近やけに自暴自棄になっておるが大丈夫かね。
 もちろん学生時代(兵庫県の糞田舎時代)の頃から黄金コースは確立されていたわけで、当時の黄金コースと言えば阪急梅田駅からスタートし1:まんだらけ梅田店2:阪急ブックファーストコミックランド梅田店、その後三宮駅へ移動して3:超書店MANYO神戸三宮店4:GAMERS神戸三宮店5:エンジョイスペースギルド6:とらのあな三宮店(写真)7:メロンブックス三宮店8:ジュンク堂書店三宮店となり、最後は故郷糞田舎に帰り9:大型古本屋五連発自転車訪問というコースであった。

 これだけの本屋をまわり且つ電車移動自転車移動もするわけであるからかなりの時間がかかったが、この毎週日曜日昼12時から夜の11時までの黄金コースは心底楽しかった。まさに俺の青春絶頂期の思い出である。体力的にも時間的にも今の俺にこのようなことは不可能で、いやはやあの時俺は若かった。ちなみに実際に本を買うのは1、3、8そして9であって、それ以外はただ本屋に行って並べてある本を見るだけ(もしくは今何が発売されているのか記憶するだけ)というのもいかにも貧乏くさく俺らしい。
 と、以上が西日本の黄金コース(梅田・三宮)でありますが現在俺がいるのは東日本の東京であるわけです。できれば土日は実家に帰って今まで通り西日本黄金コースを満喫したいところだがそうもいかんので東日本版黄金コースを実施し、もって俺の人生の最後の花火を散らせようというこういうわけであります。だからもう自暴自棄ごっこはいいと言うのに。
 東日本コースは西日本コースと違って洗練されているところが特徴でありまして、且つ西日本コースと違い移動手段が自転車のみという、東京で電車に煩わされず自転車で風を切り宙を舞うという贅沢極まるコースなのであります。即ち自転車で銀座を通り抜け日比谷に唾を吐きつけまず永田町で1:国会図書館で優雅に本を読み、その後神保町へ移動し2:小宮山書店ガレッジ3:ブックス@ワンダー三省堂書店横の4:神保町古書モールと続きます。そしてメインとなります秋葉原では5:メロンブックス秋葉原6:古本市場AKIBAPLACE7:とらのあな一号店となり、最後はホームグラウンドである8:BOOKOFF江東門前仲町となるわけであります。ただし諸君もお察しの通り現在俺は「裏東京毒探偵突撃古本屋」作戦の真っ最中でありますから、このコースは現在月に一回のペースで行われておりまして、まあ体力的にも時間的にもこんなもん月一回ぐらいやないとやってられんでと、ああ歳ですなあ。
 そのようなわけで昼過ぎに出発する。愛(自転)車である「クイーン・ウィルコム」に乗って優雅に銀座を突きぬけ華麗に日比谷を蹴飛ばせばハアハアゼエゼエ涎を垂らしながら汗びっしょりであっという間に永田町に着く。そしてそう言えば最近国会の写真を撮ってないなということで撮る。これが2007年夏の国会議事堂と俺の愛(自転)車であります。

 日本広しと言えどもこのような馬鹿なことをするのは俺しかいないのではないかな。称えよ俺の行動力を。更に国会図書館(の入口)も撮ることにする。

 ええと、まあ諸君の中でどれだけ「2005年夏事件」をご存知か知らないが、あの時国会図書館の中の写真を撮ってそれをここに載せてえらい事になったわけですね。まあ一度国家公務員殿からクレームが来たので一時的に削除しただけで、その後何の音沙汰もないので今でも写真は厳として載っているわけですが、あの、今日行って、また撮ったわけですね。大したもんじゃないですけど、どうですかねえ、別に載せてもいいはずなんですがねえ。やっぱり載せない方がいいですかねえ。また国家公務員に目をつけられるかもしれんしなあ。皆さんのご意見をお待ちしております。
 国会図書館に着いたのが14時。昼飯がまだなので喫茶室へ行く。いつも国会図書館喫茶室ではホットケーキかカレーのどちらかを食べるが、今回はカレーにする。ここのカレーは具に肉が入ってない(ニンジンとタマネギのみ)しルーもレトルトのしょぼいやつだが、もう「国会図書館でカレーを食べる」という驚きと喜びに酔っているので正直なところ味はどうでもいい。
 で、黄金コースの決まりで16時までここで本を読んで過ごす。新館1階の隅に置かれているソファに深々と座り「図書館の死体/ジェフ・アボット」(ハヤカワミステリ文庫)を読む。なぜか国会図書館で読む本はいつも海外の小説なのだ(前に来た時はハインラインの「銀河市民」を読んでいた)。
 16時になって外へ出ると蝉がその生涯をかけて鳴いており、俺もこの生涯を(以下略)。三宅坂から内堀通りをまっすぐ走り突き当たりの靖国神社を右に折れて一気に下ればすぐそこは神保町である。いやあ、こんなところを自転車で移動できる俺は幸せですなあ。

 さてせっかく古書店街が股を開いて待っているのに俺ときたら行くのは小宮山書店ガレッジ・ブックス@ワンダー・古書モールの三つだけである。どうしてこの三店だけなのかと言えばまあ何となくとしか言いようがなく、まさに「面倒くさい病」の本領発揮というところだがとりあえずこれらより安くていいところはないと思われるので今日も105円210円の本を物色することにする。せっかく神保町に来ているのだからBOOKOFFじゃ買えないものを買えばいいんだろうが、やはり「古本は安くないといかん」という偏見に屈して買ったのは以下である。小宮山書店ガレッジ:「共同幻想論吉本隆明」(角川文庫)100円、ブックス@ワンダー:「ロシア市民/中村逸郎」(岩波新書)210円、古書モール:「半七捕物帳/岡本綺堂」(講談社大衆文学館)300円。基本的に俺は「一店一冊」主義者であり、先週の五反田即売会みたいな特別イベントならともかくこのように毎回行く店では極力複数冊買わずになるべく多くの本屋を訪ねることを国是としております。ああ生粋の貧乏人。
 神保町には18時までいることにしており、これらの本屋をまわれば大抵18時となるが今日は少し時間が余ったので三省堂書店へ行く。俺が高一の時に三宮にあった三省堂書店が閉店して結構話題になったが、あの三省堂書店の東京本店にまさか俺がいるとは当時の俺は夢にも思わない。しかしあれですな、最近の本屋に行って強く感じるのは出版界もずいぶん幼稚化したということですな。エンターテイメントノベルかなんか知らんけどさ、漫画ちっくなミステリがずいぶんと幅を利かせてたり青臭い感傷に浸る単純な小説が「文芸書」コーナーにあるんだもんなあ。別々にやったらいいと思うんだけどねえ。こっちは普通の小説・こっちはライトノベル、みたいなさ。どうも最近、「次世代エンターテイメント小説」「ライトノベル」とやらがえらそうに「これが新しい時代の文学、小説だ」と言ってる感じなんよなあ。そうは思えんけどなあ。第三の新人内向の世代から村上龍村上春樹まで共通してあった「生活の垢」とでも言うべきものが彼らの小説には全く欠けている気がしてならんのだが、そんな事考えるのは俺だけかね。
 そう言えば小宮山書店ガレッジに電撃文庫とか富士見ファンタジア文庫がまざっていて、俺としてはできればそういう「漫画・アニメ」的なものと古本の街・神保町をミックスしないでほしいわけで、それぞれ独自の閉鎖的な世界を確立されているなかをあっちこっちと旅行するのが俺の楽しみであるのだからな。今みたいに妙につながってると「こっちの世界」から「そっちの世界」へ移動しているという疑似体験ができんのだよ。俺の場合、そういう全く違ったジャンルを縦横無尽に飛び跳ねることに無上の喜びを感じるんだがなあ。まあそんなこと言うのは俺だけだろうなあ。どうもイヤだなあ。
 いつものように三省堂二階のトイレで小便をしていよいよ秋葉原へ行く。これがまた靖国通りを東に進めばすぐに着くわけでして、いやはや永田町・神保町・秋葉原と一日で走り抜けるというのは非常に幸せでございます。

 で、ここでも「面倒くさい病」が勃起して俺が行くのはメロンブックス古本市場とらのあなの三店なわけですね。まあ他の店も行くべきなんでしょうけど、別にこの三つで足りないことはないでしょうからねえ。特に最近はアニメをほとんど見ないのでDVD等も買わず、より一層この三店しか行かなくなっております。歳かなあ。
 そんなわけでメロンブックスに入る。7月末発売の最新刊群が相変わらず生ごみのように大量に置かれており、いつも思うことだがこの中から俺のいう「ラブコメ」を探すのは至難の技である。まあ楽しいからいいけどね。ここで大体何を買うのか決めて、実際に買うのはとらのあなである。なぜそんなことをするのかと言われても、まあ「楽しみは後に取っておく方がいいから」ということでしょうな。第一サラで買いたい本なんかそんなにないからね(大抵はBOOKOFFで売られるのを待つわけで、ここで買うのはほとんど成年向けコミックである)。
 一旦メロンブックスを出て、次は古本市場へ行く。おお古本市場。我が故郷にもあるこの古本市場。末永く続いてもらいたいものだが、ここはいつも客が少ないので最近心配になってきた。土曜の夜19時で人がまばらにしか入ってないというのは、そりゃ俺としては落ち着くがメロンブックスとらのあなに較べると同じ秋葉原とは思えぬ。確かに品揃えもいいわけではないが。で、俺が買ったのはこれである。270円。

未来日記 (2) (カドカワコミックスAエース)

未来日記 (2) (カドカワコミックスAエース)

 まあこれラブコメじゃないんだけどね。「ラブコメ的」な描写があるだけで、中身はどっちかと言うとホラーだからね。しかしこういうのも発掘しておかないと、どんどん嗅覚が鈍くなっていくわけですよ。出版側が「ラブコメ」と言っても俺としてはラブコメと認められないものがあるということは、その逆もあるわけですからね。そのあたりはもう地道に探すしかないんでしょうね。ああそういやこれ、BOOKOFFで買ったら350円だろうね。BOOKOFFはB6版コミックは350円で統一されてますからね。その点、古本市場は半額ですからね。そこらへんもちゃんと計算しないといかんですな。
 さてだいぶカバンが重くなってきて次はとらのあなである。地下の成年向けコーナーへ行く。さっき言ったように普通のコミックスはBOOKOFFで買えばいいのだからここで買うのは成年向けである。発売3〜6ヵ月後の成年向けコミックがBOOKOFFに売られることはまずないし、そもそも成年向けコミックがBOOKOFFで潤沢に並べられることはまずない。というわけでサラで900円から1000円を出して買うわけである。メロンブックスで目星はつけておいたがやはり中身を読まないことには始まらない。特にこのとらのあなでは試し読みできる本が豊富で非常に助かる。ただし試し読み本の周りの人だかりを押しのけなければならんが。で、買いました。940円。
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 2ちゃんねるの「和姦じゃないと萌えられません」等で本書が和姦であることは調査済であります。ロリコンですが。腰巻には「膣外(そと)に射精(だす)なんてありえない」と書いていますね。まあそういうことですね。さてこのようにして秋葉原を過ごし潔く去るわけであります。この間、約1時間半。まあこれぐらいがちょうどいいんでしょうね。短くもなく長くもなく。
 さてここまで来ると疲れも出てくる。自転車で中央通りを南へ走らせ、日本橋交差点を左に曲がり永代通りをこれまた南へ走る。日本橋兜町であり平日の活気が嘘のように眠るオフィス街を横目に自転車を走らせるこの快感は筆舌に尽くし難い。
 永代通りを走らせると清澄通りに出る。右に曲がればBOOKOFF江東門前仲町店が見える。俺のホームグラウンドである。ここは東京ではじめて訪れた本屋であり、その日俺は東京から逃げるつもりであった。東京を去る前に一つぐらい本屋へ行っておこうと涙をこらえてこの店に入ったあの時のことは今でもはっきりと覚えている。以来、この店はもはや俺の東京人生の代名詞的存在なのである。且つこの店は品揃えが非常に良く、さすが俺のホームグラウンドというところだが今日に限ってあまり芳しくない。買ったのはこれである。350円。
年上ノ彼女 4 (ジェッツコミックス)

年上ノ彼女 4 (ジェッツコミックス)

 ま、悪くないんだけどね。ラブコメだしね。ただこの前の3巻を買ったのが去年の6月30日(まんだらけ梅田店)ですからね。一年以上買わなかったのはなぜかと言うと、まあその程度の優先順位だったということですね。悪くないんだけどねえ。作品全体の主張が青臭過ぎるんだよなあ。読んでいてこっちが恥ずかしい。
    
 と、いうわけでああ書いた書いた。疲れた。何だこりゃここまで書くのに2時間以上もかかっとるやないか。うーん。やっぱりこまめに更新するならパッパと書かないといかんよなあ。こんなことでは時間も身体も持たんしなあ。皆さんどうしてるんですかねえ。うへ。いつの間に話し言葉になってるのだ。ああもうわからん。寝よう寝よう。
「待ちなさい」
「はあ。ああ」
「一体何回言ったら」
「お疲れさまでした」
「いやちょっと」
「グッドナイト」
「だからいい加減に」
「しんどいねん」
「知りません。相変わらずラブコメブコメと汚らわしい」
「うるさいボケ」
「な、なんですって」
「なにが土曜日の女じゃ。お前なんか日曜日じゃ」
「…」
「…グゥ」
「寝るなと言ってるでしょうが」
「なんやねんだから。俺はラブコメやぞ」
「だからそれが」
「失礼。私は国会図書館の国家公務員ですが、写真の件でちょっと」
「うるさいわね。あんた誰よ」
「いやですから国家公務員ですが」
「年金でも計算してなさい。起きなさいこら。こら」
「また次回。グゥ」