「短編小説礼賛/阿部昭」(岩波書店:岩波新書)

 さすがに本書の画像は出てこないか。しかしたかが20年前の本すら網羅できないようでは何が「電子書籍の時代が到来」か。俺は電子書籍化に反対ではないがそれが物理書籍とどう違うのかメリットは何なのかよくわからんから現在反対しておるのであって、もっと楽に読書ができるのならそれに越した事はないのである。
 で、本書は3月25日に神保町のブックス@ワンダーで210円で買ったものである。昔なら漫画はともかくこういった本は105円でなければ絶対買わなかったが、寄る年波か経済的心配がなくなったのか最近は210円でも315円でも買うのに抵抗がなくなってきた。いかんなあ。将来の事を考えると決して楽観はできんのだがなあ。ただしさすがに神保町で210円315円で売ってる本はBOOKOFFではお目にかかれない本ばかりなので(特に近現代史やSF)、やはり神保町はいいですなあ。
 優れた短編小説は余計なものを削ぎ落として書かれる故に人生そのものを虚飾なく切り取ったものであるとする作者の考えは正しい。時には滑稽ですらある人生の悲しみ苦しみを的確に言い表し、その伝えたいことだけを伝えて潔く終わる短編小説はやはり人の心を打つのであろう。「So this is what life is,is it?(ではこれは人生というものなのか)」
 翻って俺はというと、文学を読み漁った高校生時代は短編よりは長編を、(本書にて紹介される)明治・大正の作品よりは現代の作品をとしてろくに短編小説を読んでいないのである。あの頃は根拠もなく短いものよりも長いものを、明治大正の高等遊民の文学よりは現代文学をと思っていていやはや汗顔の至りというものであるが、今度真面目に国木田独歩でも読んでみよう。