16 四十日妄想

 
 なるほど。なるほど。あなたが言いたいことはよくわかりましたつまり俺はしばらくこのわけのわからぬ病気から逃れられないということですね。そしてできるだけ俺を苦しめようという魂胆なわけですな。なるほど。お察しの通り俺は負けました。ですが、だからどうだというのです。俺はもう自ら戦うことを放棄しました。おとなしく病院と薬という軍門に下ることにしました。所詮素人がどんな方法を試しても駄目なのです。さてあなたはどうしますか。このまま病院通いを続ければ治るかもしれませんよ。そうです俺は自殺しないのです。そしてラブコメや政治やYouTubeを堪能し楽しい一時を過ごしています。俺は勝てぬが負けもしませんぞ。永遠に引き分けに持ち込めば執拗と陰湿において右に出る者のいない俺が踊り狂う。
  
聖凡人伝/松本零士小学館文庫]

 おお「聖凡人伝」ではないか。2003年度日本ラブコメ大賞一般部門一位である本作は2003年の狂騒と共に忘れられない作品である。購入日付は以下となっている。
1:2003年1月28日(於:まんだらけ梅田店)
2:同年2月23日
3:同年5月25日
4:同年6月15日(於:まんだらけ梅田店)
5:同年9月14日(於:まんだらけ梅田店)
6:2004年9月12日
 何ということだ一年で5冊も買っておるではないか。去年12月25日に俺は「一年にシリーズ作品を4冊買ったのが最高」と言ってしまったがそれは間違いであった。しかしいやまあ一年に5冊とはなあ。いくら一週間に4店も5店も回っていたとはいえこれはえらい事ですよ。というのもこれは今でもそうだが俺はできるだけ長く本屋古本屋通いを続けるためなるべくシリーズものは間隔をあけて買うようにしているのである。理想を言えば一年に一冊という風にしたい。しかしそれだと週一で一冊買うとしても48冊。考えてみたまえ今この日本で48冊もラブコメがあるものか。小さな小さな土俵で踊り狂う俺はもうすぐ24歳になります。
 で、本作であるが1巻は大学の後期試験の翌日に買ったものである。2巻も大学の長い長い春休みの最中に買ったものである。そして瞼の裏に浮かぶあれはラブコメと政治にまみれ勢いにまかせて三宮梅田を駆け抜けた俺の姿ではないか。更に3・4巻を買った2003年5月6月と言えば我が家を恐怖のドン底に陥れた経済恐慌が完全に終結したまさにその時であり、5巻を買った2003年9月14日と言えば自転車で糞田舎→明石→三宮→梅田まで1泊2日で小旅行した時の戦果なのである。景気は悲惨社会は混乱という人も世も荒れ果てていた2003年に(今もそうか)俺はひたすら自転車を漕いで歓喜の歌を叫んでいたのだ。俺と寸分違わぬ小汚いうだつのあがらぬ主人公は就職に失敗しては酒を飲みわけのわからぬことに狂騒し綺麗な大人のお姉さんを枕にして一日一日を壮大に無為に過ごしていくのである。だがだからこそ青春は爆発なのだ(意味不明)。ああ俺も人並みに青春を過ごしたのだなあ(「人並み」の意味がちと違う気がするが)。良かった良かったこれで安心して死ねるいや俺は死にませんぞ。いつか早名さんのような都合のいい女ができるその日まで。
  
御石神落とし/永久保貴一増田剛白泉社:JETS COMICS]

 おお「御石神落とし」ではないか。2004年度日本ラブコメ大賞一般部門九位である本作は2004年のレジスタンス運動と共に忘れられない作品である。民俗学を専攻する平凡な主人公になぜか神の力が宿るのであるがそれは神は神でも性の神様であり主人公は自在に「女を発情させるフェロモン」を放出することができまたごっつい性器を身にまとうことができるのである。その結果女たちは主人公とヤらないではいられない。「ヤらないではいられない」のである。まさに女を自らの支配下におきたい俺好みの作品である。ぬわはははははは。購入日付は以下となっている。
1:2004年11月2日(於:まんだらけ梅田店)
2:2005年8月15日
3:2006年7月22日(於:BOOKOFF西五反田店)
4:同年11月26日(於:BOOKOFF西五反田店)
 何ということだ本作の1巻もまんだらけ梅田店で買っておるではないか。俺と関係が深いことは歴史的事実だがこう何度も何度も出てくると現在の俺の女であるBOOKOFFに悪い気がするなあ。まあ本妻は我が兵庫県の糞田舎にあるあの古本屋なのだが、女房と畳と魚介類は新しい方がいいとも言うしなあ。今でも鮮明に覚えているが2004年11月2日というのは就職活動と称してある企業を訪問し2000円の交通費を得た時であり、その通り定期券がありながら俺はまんまと2000円をもぎ取ったのである。そしてその金でまんだらけに行き本作を買い飯を食べ残りは家計の足しにしたのである。
 2004年はレジスタンスの日々であった。世に氾濫する「アキバ系ブーム」とそれに伴う漫画アニメゲームにすり寄る企業マスコミ時代を俺は受け入れることができず(今もそうか)三宮梅田へ行く回数は激減し代わりに兵庫県の糞田舎に点在する大型古本屋(古本市場やBOOKOFFや地域限定の大型古本屋)を夜自転車で訪問するという、現在にも通じるライフスタイルが確立されたのもこの頃である。車しか通らない夜の道路を自転車で駆け抜けるというのは地下生活者が夜だけ地上に出てくるようで筆舌に尽くし難い快楽であった。また2002年2003年の狂騒の中で鍛えられた俺のラブコメに対する選択眼と執拗さは常人を遥かに超えており、この頃の購入リストを見るとそのあまりの芸術的購入術に射精してしまうくらいである。嘘である。とにかくあの頃は今と違い切れ味鋭かったのは確かである。今は切れ味よりは円熟さを出したい。
 2巻だが敗戦記念日のこの日俺は帰省しており地元の本屋で購入している。この本屋は全国チェーン店ではないが個人商店でもない地元の小さな会社が運営している本屋で(本社が姫路にあった)、はじめてエロ漫画を読んだのもはじめてエロ漫画本を買ったのもこの本屋という思い出深い場所であった。しかし3〜4年前からはどこもそうであったように漫画とエロ本だけの店となり2005年11月に短くはなかった生涯を閉じたそうである。みんななくなっていくのだなあ。まだジュンク堂紀伊国屋も知らなかった小学生中学生の頃、あの小さな本屋が俺にはとてつもなく大きく見えたものだ。あの頃の風景は徐々にだが確実に変わり、今や俺の瞼の裏に存在するのみ。
 で、3巻4巻ですがこれがBOOKOFF西五反田店で、えーと買われていますね。あのーまあね、東京のBOOKOFFを隈なく訪問するはずの俺が何で同じ店に行くのかと言いますとね、これはその、要は五反田に行ったからついでに寄ったということになるのですね。ええまあ、風俗(ファッションヘルス)に行った帰りですね。去年行ったのが1月3日、3月25日、5月27日、7月22日、11月26日ですからまあそう言う事ですね。大体2〜3ヶ月の割合で行きますからね。そうすると今週あたり行こうかなあというかね。まあ先ほど行ってきたなんて言えませんよね。わはははははははは。それでは次回までごきげんよう