Ⅲ 戦国童貞

   
 なるほど確かにその通りだ。病気や痛みや苦しみが全くないというのは死んでいるのと同じではないか。これからも生きていたいなら病気や痛みや苦しみを受け入れるべきなのだ。俺はそれをせねばならんのだ。気が付けば23歳であり来年には24歳。TVに出ている芸能人が俺より年下で唖然とする。あの「ふたりエッチ」の真と優良が結婚したのが25歳で愕然とする。俺の精神年齢の幼さに驚愕する。頑張れ俺。立ち向かえ俺。仕事・病気・金・人間関係・家族、その全てはラブコメのために。
  
第20位 ミッションスクール/田中哲弥[ハヤカワ書房:ハヤカワ文庫JA]

 本書は俺が兵庫県の糞田舎へ帰っていた7月1日に、地元の本屋で買ったものである。7月というのは新しい職場にも慣れ仕事も一段落し、また第二次大病戦争が終結したかに見えた(ところが8月に電撃戦がやってきた)唯一調子の良かった月なのである。事実この月は今年一番出費が多い月でもある。本作者の作品は2000年の「やみなべの陰謀」以来となり、「やみなべの陰謀」は2000年度日本ラブコメ大賞3位という輝かしい経歴を持つが本書はこの通り20位となった。別に出来が悪いわけではないのだが本書は5つの短編から成り、そのうち3編は「やみなべ」「大久保町」のような平凡な男を主人公にせず糞生意気な女だったりごっついスパイだったり(どうごっついかは読めばわかる)で俺としては釈然としない。それでも残る二つの短編「ポルターガイスト」と「スクーリング・インフェルノ」は俺でさえ呆れるほどの棚から牡丹餅的ラブコメが展開されまあ元は取った(古本屋ではなく新品で買ったので)と言えよう。この強引なラブコメ話こそ今の日本ラブコメ界に足りないものなのだ。諸君も見習い給え。
  
第19位 ちまちま/加賀美ふみを双葉社:ACTION COMICS]

 さて本書もまた第二次大病戦争前夜の4月16日に秋葉原とらのあなで購入されたものである。本作者はこのあと成年部門でも上位の順位入りが決定していることからわかる通り、なかなか頑固なまでのラブコメ作家である。これはもう俺のおかげと言わずして何と言おうか。我ながら阿呆か、ではなくてとにかくタイトル通りちまちまっとした甘酸っぱいカップルの手をつなぐことすらままならぬ初々しいラブコメが描かれる本書だが、いかんせん俺は腕に胸を押し付ける女とか突然キスしてくる女とかいきなり布団にもぐり込む女とかに慣れきっているのでここまでプラトニックだとイライラとしてしまう。結局付き合って3年経ってもアレどころかアレさえしてないのだから読むのに大変苦労した。別に女から押し倒せとは言わぬがもう少し積極的に出てもらわないと困りますなあ。あまりのスローモーぶりにB’zの「煌めく人」を聞きたくなった。
  
第18位 蒼き星のメリクリウス/高嶋規之[集英社集英社スーパーダッシュ文庫

 3月11日に購入された本書は俺の敬愛する「空から美女が降ってくる」型ラブコメである。しかも「その美女が守ってくれる」のだからラブコメ冥利に尽きると言うべきか。宇宙からやってきたのはいわゆる許嫁。対する平凡な主人公。即ちラブコメ。ご都合主義の最たるものだが俺が許容するご都合主義はそこまでであって、その後の自衛隊云々や内閣安全調査室から派遣された美人女教師云々はもういかん。非現実なありえない話だからと言って全編を宙の浮いた空想話にしてどうするのだ。どうしてこんな事がわからんのだと嘆いても毎月毎月大量に消えては現れ消えては現れるライトノベルズ群を前に俺ができることは取捨選択し電子空間において叫ぶことだけなのだ。何ともむなしいがそれでよい。俺は言い続けるのだ。そして宇宙を自由に創造できるなら、恐らく俺は宇宙をオモチャに遊ぶだろう。俺はそういう人間なのだ。
 
第17位 青い髪のミコ/爲我井徹[竹書房:ゼータ文庫]

 さて本書は9月15日に兵庫県糞田舎の地元の大型古本屋で購入したものである。この大型古本屋は我が糞田舎の大型古本屋の中では一番の老舗であり中学高校大学そして現在と変わらず利用し続けているという俺の人生史上大変態重要な空間なのであり、ここを訪れることはかつての俺に会うということでもあるのだ。まあ古本屋ごときに何を言っとるのだと思うがそれもまた俺らしいではないか。しかしこの遅い夏休み帰省によりはっきりわかったことは東京に出て一年半経ち俺の中で故郷を懐かしむ気持ちが確実に薄れているということでありこれには俺も面食らった。そうなのだまさしく今俺が住んでいるこの東京こそが俺にとって第二の故郷なのであり、この第二の故郷を大事にしようという気持ちが俺の中でムクムクと育っているのである。一体何がどうなっているのかと混乱のなかで本書は俺の手に収められた。「空から美女が降ってくる」というパターンはよくあるが本作品のように「人形が魂を持って具現化し主人公とくっつく」というのはありそうでなかったのではないか。何だかわからんがとにかく「私は○○を助けるの!」と言われちゃあ男としてそりゃもう快楽の渦の中へ飛び込め俺。ご都合主義とベタな展開にこそラブコメの真髄があるのだ。
 
第16位 月姫キャラクターコレクション さつき編 ヒロイン宣言[宙(あおぞら)出版:ツインハートコミックス]

 本屋古本屋通い及びラブコメ探訪をはじめてかれこれ6年。そのなかでいくつかの格言を持つようになったが代表的なものは「駅前の古本屋より国道・大道路沿いの古本屋の方が品揃いが豊富」「高いところより低いところを見よ」そして「困った時は月姫(2002年度日本ラブコメ大賞一般部門1位受賞作品)を買え」である。特にこれと言ったラブコメがない大型古本屋ではまるでそれにバランスするように月姫のアンソロジーが置いてあることが多々ある。まるで給水所のように、最近少し「月姫」を買ってないなという頃になると決まって俺の目の前に表れるのだからこれこそラブコメの神秘人生の不思議。さて本書は有給休暇を取った9月1日にBOOKOFF糀谷駅前店で購入されたが、その時俺は8月より本格化した第二次大病戦争に押され気味であった。全く展望が開けぬ状態であり、糀谷駅へ向かう道中でJR浜松町駅から東京モノレールに乗った時には突然猛烈にこのまま羽田に行って兵庫県糞田舎に帰りたくなった。だが帰らなかったのは帰ったところで病気が治るわけではないとわかっていたからだ。本書を手に取る度に狭い店内で呆然としていた俺の姿が浮かぶ。さて本作品のメインである弓塚というキャラクターが持つ悲劇性とそれ故の喜劇性は非常に特異であって、これと同じ特異性を持つのは「エウ゛ァンゲリオン」のアスカぐらいであろう。これほどの特異性はキャラクターの背後にある物語全体の壮大さがあってはじめて成り立つのであって、月姫以外のいわゆるアンソロジーが特に振るわないのもそこに原因があるのだ。2002年という輝かしき日々から4年。月姫とはできるだけ長く付き合いたいものだ。
  
第15位 うさぎの花嫁/黒河零[双葉社:ACTION COMICS]

 さて本書は発売日から一ヶ月も経たぬ6月25日にBOOKOFF江東門前仲町店にて350円で買ったものである。成年マークはついてないが双葉社で俺が買うものと言えばまあアレな展開のものに決まっておる。作者は今や一般的となった「男性向け成年漫画及びそれに準じた男性向け漫画を主に描く女」であり、当然そこに描かれる男は俺とは180度違う格好いいスマートな積極的なイケメンであり俺とは住む世界どころか吸う空気すら違うはずであるがなかなかどうしてこれがすんなりと読めるのである。女が描く細くスマートなラインで描かれた女が積極的というのは非常に新鮮でよろしい。寝る前に本書を読むとぐっすり眠れます。それは俺が変態だからか。そうかそうかうわはははははははははははははははは。
  
第14位 黒門らぶぁーず/きらら萌双葉社:ACTION COMICS]
第13位 黒門ぽぷしくる/きらら萌双葉社:ACTION COMICS]



 ううむ。今思ったのだが舞台が大阪ということで少々採点が甘かったのではないか。いやしかし上記2作品は10位以内に入れるほどではないしかと言って20位以上にするのも忍びないし15位以上というのもどうもしっくり来ないからええとまあやっぱりこれが一番妥当ですな。本作品は3月25日・4月10日にそれぞれ購入されたものである。まだ第二次大病戦争前に買ったからか、両作品には悲愴なイメージがほとんどなく今年気楽に楽しんで読めた作品の一つでもある。双葉社の作品であるからもちろんすぐヤるわけだが2作品とも俗事に疎い大阪青年に最初の50ページほどでなぜか可愛い恋人ができるのでありその後仲良くアレをやってお互い幸せだよねえそうだよねえで最後まで読ませる力量は大変なものである。デート中に自分の趣味に没頭する男をカワイイと思ってくれる女を彼女にしよう。
  
第12位 怪獣の家/星里もちる小学館ビッグコミックス

 星里もちると言えばかの大作「りびんぐゲーム」がある。あの「りびんぐゲーム」というのは俺にとって大変思い出深いもので、1998年高校一年の夏「りびんぐゲーム」と出会ってはじめて俺は「大人を主人公とした漫画」、即ち「大人向けの漫画」があることを知り「大人になっても漫画を読んでもいいのだなぜならそのための市場があるからだ」とラブコメ街道を爆走するきっかけを与えてくれたのである。ああ1998年から第一次大病戦争の1999年を経て今は第二次大病戦争中の2006年。本作品は3月15日にその1巻が、5月27日に最終巻2巻が購入された。ちなみに2巻を買ったのはBOOKOFF西五反田店である。その通り五反田の風俗に行った帰りであります。その前にいったのが3月25日だからやっぱり2ヶ月ぐらい間が空いているわけです。何の話をしとるか。奇妙な成り行きで主人公が住む家(二階建て)に同居することになった女二人。この成り行きというのがちゃんと作りこまれており角川電撃系やライトノベルズの人たちは見習えと言いたい。練りに練られたストーリーと普通な登場人物たちの自然な行動(ラブコメも含む)はまるで一冊の小説のようだ。角川電撃系やライトノベルズの人たちは見習えと繰り返し言いたい。ラブコメ万歳。
  
第11位 ヘンカノ/大橋薫講談社ヤンマガKC]

 本書は10月7日に購入された。やがて来る簿記3級試験勉強の足音が聞こえる中で憂鬱と最後の花火が俺の身体をグルグル回っていたのを思い出す。そうだあの日俺は試験勉強に専念するため第二次大病戦争に降伏し病院へ行ったのだ。以来現在まで薬漬けで何とか生きている日々。嗚呼、23歳の冬。それにしてもこの大橋薫・楠圭姉妹というのは女でありながらどうしてこう男の妄想を軽やかに描きあげるのだろうか。本作品にしても男のヘタレさやかっこ悪さが非常に好感が持てる(俺に好感を持たれたらおしまいだぜ)。しかしこんなに積極的な女(男の布団にもぐり込む)というのを女が描いて嫌悪感を感じないのだろうか。併録されている「秘ショック!」という短編はもうご都合主義的ラブコメな上に大層いやらしくて使わせて頂きました。うわははははははははははははははラブコメじゃラブコメ
  
 まだまだ続きますぞ!お楽しみはこれからじゃ。