10 ポツダム宣伝

 おお見よ今まさに空から惨劇の雨が降ってくる。地獄の涙が降ってくる。2006年最初の更新はやはり遅れに遅れてメイド喫茶帰りに秋葉原のインターネット喫茶で陰湿に躁鬱にヤケクソ的に行われる狂気乱舞花びら回転ワカメ酒。しまった俺は酒が飲めないのだ。ではサイダーでどうだ。大方の予想通り去年12月30日から1月3日まで生まれ育った兵庫県の糞田舎に帰り故郷のぬるま湯を満喫して東京に帰ったら何にもやる気がしなくなった。そうしてあろうことかそれから1週間もしない7日に俺はまた帰ったのである。この糞阿呆め。貴様の血の色は何色か。会社で昼な昼な行われる恐ろしいプレッシャーとずっしり肩に食い込んだ責任にもはや声も出ぬ。逃げては囚われ、逃げては囚われるこの東京サラリーマン生活とやらに何もかも毟り取られそうな予感がする今日この頃、自らの死に場所を求めてラブコメに政治にその他未来への一切の希望を捨てて過去へと回顧する俺の生き様をとくとご覧あれ。

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 本作品については、俺にしては珍しく漫画よりアニメの方が印象深い。2002年夏そして2003年秋と、まさに明石三宮梅田を襲撃し支配し踊り狂っていた大学生時代のあの時期にサンテレビで深夜に放送されていたこの作品に悪い思い出があろうはずがない。青春どころか我が人生最大の快進撃を続けていたあの頃に帰りたい。いやそんなことはどうでもよいが、とにかく本書を読むことによって俺はあの頃の身体中にパワーがほとばしるような最も勢いの良かった感覚を再び味わえることができるのである。22歳が何をたわけたことを言っておるか。しかし事実会社員となった今はあの頃の自由で楽なことだけしていれば良かった日々が懐かしく、せめてその日々の胸躍る感覚だけでももう一度味わいたいと思うのである。本書を読むことは同時に大学の駅前の風景やボロ倉庫でバイトをしていた思い出や23時の冷たい風を再体験することなのである。いやに主観的だがとにかくそうなのだから仕方がない。むしろそのようなことで感動できる俺ってすごい、などと言うから「井の中のエロガッパ」などと言われるのだ。で、本題だが本書は上質のラブコメである。諸宇宙諸惑星に普通に旅立てる近未来、銭湯経営に命を燃やす時代遅れというかオッサン臭いというか(そこが俺の好感を得るわけだが)とにかく平凡な高校生のもとに何の脈絡もなく美女がやってくるのである。偶然事故にまきこまれた主人公と美女(実は銀河何とか星の皇女)は出会った瞬間からラブコメ的にラブコメしているのであり、周りには幼馴染や時折ブラコンの顔を見せるしっかり者の妹もいてラブコメの構造もしっかりしている。淡々としているようで実は濃いラブコメ描写が盛りだくさん(つまり主人公モテモテ)な読んでいて誠に楽しい良作である。ここであの侍女長とかいうヒロイン原理主義的なうっとおしい女がいなければもっといいのだが、そこらへんは昨年3月の「みちのく和姦の旅」シリーズをご参照下さい。え。もうあれは去年のことなのか。おおそうかあの時俺はまだ大学生。おお。おお。おおおおおおおおおおおおおおおお(嗚咽と号泣)。

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 2000年。同時テロ以前、小泉政権以前、まだ治安が良かったあの頃、実に俺は高校三年生であった。あれから既に6年もの月日が流れてしまったのかと思うと人間のクズの代表選手と言われる俺でもそれなりの歴史を持っているのだと思わざるを得ない。そうしてあの頃、まだ社会人でも大学生でもなく高校生として家族や学校や社会に守られながらただひたすら図書館本屋古本屋を駆け巡り次第にラブコメというメインテーマが生まれてきたのである。2000年当時、既に恐ろしい病を抱えていた俺は他人と関わることを一切拒否しひたすら沈黙を守って自分の世界を構築することに腐心した。そしてこの年は実に150冊もの本を買い漁り、その90%以上が大型古本屋で100円で売られている本だったのだから可愛らしき我が青春時代よ(今は20%ほどである)。そのような時期に本書は俺の手元に飛び込んできたのであり、オールナイトラブコメパーカーの初期には俺自身まだ「ラブコメ」の定義をはっきりと決めていなかったこともあって今考えると明らかにラブコメではない作品も紛れ込んでいるが本作品は6年たった今でも十分読むに耐えうる良作である。浪人生が大学受験のため上京したのはいいがぼったくりに遭いそれが縁となってある女と知り合いになるのである。その女は底辺の世間をたくましく生きるサバイバル女であり、住む場所のない主人公はそのサバイバル女や同じく底辺の世間を渡り歩く不法滞在の外国人たちの住むアパートで奇妙な同居生活を送るのである。当時全く勉強せず浪人となることが織り込み済であった俺はこの時期浪人生が出てくる(そして話の展開がラブコメになる)本を探し回ったものだが、本書の主人公はそれに加え周りの状況に振り回されながらも微笑ましい日々を過ごしていくのであり、当時の俺の高校生活も厄介な事だらけだと思いながらもやはり色々と楽しいこともあったなあなどと複雑な気持ちになってしまうのである。だが人生は止まらず、この後俺は未曾有の大恐慌と狂乱の三宮を経て東京へとやって来るのである。

今週の「歴史への招待」
 今週の歴史への招待は、2005年12月30日に訪れた、俺の完全なるプライベートシティ、大阪・梅田の阪急地下街にある泉の広場の写真です。

   
次回予告:脱走と追跡の読書遍歴11 満州辞典
→はばたけノブ/あや秀夫秋田書店少年チャンピオンコミックス]
住めば都のコスモス荘阿智太郎電撃文庫ポツダム宣伝