中国笑話集/駒田信二・編訳[講談社:講談社文庫]

中国笑話集 (1978年) (講談社文庫)

中国笑話集 (1978年) (講談社文庫)

 

 さすが中国、4千年の歴史を誇り世界に冠たる大帝国を築いただけあって、ユーモアの数も規模も日本とは一味も二味も違う。時に壮大、時に重箱の隅をつつき、多種多様な笑い話、ほら話、失敗談を堪能すれば我らの祖先も我らとちっとも変わらぬ人達であった事が如実にわかる。しかし一番面白いのはいつの時代も艶笑譚だ、いやはや愉快愉快。

   

足袋

 夫婦喧嘩をして、互い違いに寝た。夜中に女房はきざしてきたが、口に出しかね、亭主のものをつかんで、

「これ何なの」と言う。

「足だよ」

 と亭主が言うと、

「足なら足らしく、足袋の中に入れたらどうなの」

 

理屈

 親父が息子の嫁を手篭めにしようとしているところ、息子が見つけて、

「いくら何でもひどいじゃないか」

 と怒ると、親父は

「何がひどいものか。お前は子供の時、ずっと俺の女房と寝てきたじゃないか。俺がお前の女房と寝るのがなぜ悪い!」

 

犬取り

 犬がつるんでいるのを見て、幼い娘が母親に尋ねた。

「あの二匹、どうして一つにつながっているの」

「たぶん寒いからだろうよ」

 と母親が言うと、娘は

「違うよ」と言う。

「どうして、違うと言うの」

「だって、いつだったか暑い日に、お父さんとお母さんがああやっているのを見たよ

 

高望み

 陰萎(インポ)になった男、神様に牛、豚、羊の三牲を供え、巫女に頼んで祈ってもらった。

「どうぞこの男のいちもつが鉄のように固くなりますように」

 巫女がそう祈るのを聞いて、男が

「それほどの高望みはしないよ」

 と言うと、女房が衝立のかげから亭主を呼んで、

「おまえさん、せっかく大金を使ったんだから、それぐらいしてもらわなければ、損じゃないか」

  

三突き

 ある道学先生、房時を行う際には、下着を脱いで一礼し、大声で言う。

「わしは色を好んでかような事をしようとするのではない。先祖の供養をする者を絶やすまいと思ってするのじゃ」

 そして一突きすると、また言う。

「わしは色を好んでかような事をしようとするのではない。お上のために人口を増やそうと思ってするのじゃ」

 そして一突きすると、また言う。

「色を好んでかような事をしようとするのではない。天地のために万物の生成を願ってするのじゃ」

 そしてまた一突きする。

 ある人がそれを聞いて、

「四突き目には何と言うのだろう」

と聞くと、物知りが言った。

「道学先生は三突きでもうおしまいなんだ。それ以上、何を言う事があろう」

 

精をつける

 蝦を食べると精がつくと言われている。

 ある母親、息子が蝦に箸をつけようとすると、慌ててとめて、

「それはお父さんに取っておきなさい」

と言うので、息子が

「どうして?お父さんは蝦が好きなの?」と聞くと、

「それほど好きじゃないけど…。お前も嫁をもらえばわかるようになるよ」