日本ラブコメ大賞2018:Ⅳ 教えてくれるのは今や

10位:花園の雌奴隷肉そうきゅー。ジーオーティー:GOT COMICS]

 さて今から成年版ラブコメを始めるわけだが、一般部門ラブコメのような難しい条件はない。「地味で平凡で冴えない男」が主人公で、その主人公がヒロイン達を獲得し、ヒロイン達が主人公(=読者)に対して性的に積極的に奉仕し、その事自体に喜びを見出す姿を見て主人公(=読者)が勝者の喜び、支配者の優越感、無限の快楽を感じる事ができればそれでよい。

 しかし短編ならば性交渉の熱気と勢いでそれら「勝者の喜び、支配者の優越感、無限の快楽」を感じる事ができるが、長編ではそうもいかない。殊に本作のような、「小汚いおっさん」「冴えない中年事務員」が「人生逆転ハーレムドリーム」を築き上げるのだからかなりの準備が必要となる。と言っても「催眠」を使えばすむ話だが、ではその催眠等のお膳立てを導入部でどう処理するか、が問題となる。都合良くひみつ道具が出るわけではないのであり、ではどうするか。その催眠ハーレムへと移行する展開こそ一番の評価ポイントなのである。

 しかし本作はやや難があって、「レイプ願望のあるヒロイン」はいいとして「支配され罵られ犯される、それこそが女性が最も美しく輝く瞬間」と信じて疑わないから主人公(=読者)がハーレムを作るのに協力し、且つ自分もそのハーレムの一員になって主人公(=読者)に犯される(「精液浣腸十連発」)、他のヒロインが主人公(=読者)に犯されるのも進んで強力する、という女が登場するが、そうなると主人公(=読者)がヒロインに操られているような感じもしてやや戸惑ってしまった。もちろん主導権はヒロイン側が握っていてもいいが、最後の最後、生殺与奪の権は主人公(=読者)が握っている事を読者がはっきりと明確に意識できなければ、読者は性欲を十分に解消する事ができない。催眠のきっかけのみヒロインに明け渡し、その後は「催眠→性奴隷化→催眠が解けた後も性奴隷化を維持」で素直にやればまた違った印象を見せたであろう。また「ポプリクラブ」出身の作者の絵は明らかにライトで淫靡さが感じられず、結果主人公も「小汚い中年のおっさん」感がなく、またヒロイン達も「雌奴隷として堕ちた」感がない。しかし作品世界上は明らかに「小汚い中年のおっさん」の「雌奴隷となった」のであり、読者は更に戸惑う事になる…などと言いたい放題書いているが、もちろん本作は成年版ラブコメとして及第点であり評価するに値する。最後のハーレム性交渉場面(「みんな主人公様のお気に召すよう、思い思いの衣装を選んだんですよ」「私達は主人公様の雌奴隷ですもの、お好きなおまんこをお好きなだけ貪り犯して下さい」「主人公様のためなら悦んで、ここは主人公様の雌奴隷が通う花園なのですから」)は迫力があり、なるほど「人生逆転ハーレムドリーム」であった。次回作に期待している。

 

9位:てんぷてーしょんRecoワニマガジン社:WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL

 「地味で平凡で冴えない男」が主人公で、その結果、対するヒロインが積極的になるのがラブコメである。つまりエロ漫画においてはヒロインが積極的に主人公(=読者)を誘惑し身体を開くわけだが、大事な事は「主人公(=読者)に対してのみ」積極的になる事であって、元々そのような積極的、開放的、或いは「男なら誰でもいい(棒なら何でもいい)」淫乱女だったから主人公(=読者)と性交渉に至った、は駄目となる。最もそのような淫乱女との性交渉漫画などそもそも買わないわけだが、注意すべきは「ただ何となく」性交渉へと至る場合であって、ヒロイン側からの明確な愛の告白なく性交渉へと至った場合、それはラブコメかと言えば否である。もちろん「主人公側から愛を告白し、その結果ヒロインも愛を告白した」パターンも駄目であって、あくまでヒロイン側から仕掛けなければならない。かと言って淫乱女であってはならない。ヒロインは主人公(=読者)の事が好きだから身体を開くのであって、それ以外の男にはまるで興味がない、という事をはっきり意思表明してこそ(それを読者も認識してこそ)、主人公(=読者)は欲望を放出する事ができる。

 翻って本作はと言えば各短編は基本的にヒロイン側から仕掛けてはいるが、仕掛ける側の葛藤や内面描写がない場合もあり、その場合の主人公(=読者)はやや手探り的に性交渉へと移行し、その中でも性交渉の過程で愛を告白されるパターンもあれば何もなく終了するパターンもあり、まさに玉石混交というところであった。これらはつまるところ「都合のいい女」という存在の奥深さを作者を含めた制作側が消化できていないからで、例えば土下座して「私とセックスして下さい」とヒロインが言ったところで実際に性交渉へと至る事はないのであるから(ムードも何もないから)、やはり性交渉の前段階がしっかりしていないとただ性交渉場面を描くことに意識が行ってしまい(エロ漫画である以上当然だが)中途半端なものとなる。ヒロインが主人公(=読者)に身も心も支配されたいと心から願い、またそれを全身全霊で表現するところからラブコメは始まるのである。

 と言いたい放題になってしまったのはそれでも本作の良さが揺るがないからで、玉石混交の「玉」の短編は単体なら1位や2位になってもおかしくない素晴らしさであった。主人公(=読者)のために頑張るヒロインは念願の性交渉が叶った後も「彼女にして欲しいなんて言わないので、またえっちしてくれませんか」と健気に振る舞うのであり、同棲中のヒロインは忙しい主人公(=読者)のために「今日はもう遅いからお風呂でしてあげますね」と至れり尽くせりの奉仕をするのであり、年下どころか10以上も年も離れているヒロインから「付き合わなくてもいいので傍に居させて下さい」と言われた主人公(=読者)はそうは言ってもその可愛さいじらしさに負けて濃厚な性交渉へと至る(「どうしてそんな大事そうに飲むの?」「飲むと主人公さんのものが身体のなかにあると思えて、すごく嬉しいんです」)のであった。素晴らしい。次回作に期待している。

 

8位:ふにちちているかいづかジーオーティー:GOT COMICS

ふにちちている (GOT COMICS)

ふにちちている (GOT COMICS)

 当たり前だが最後は「総合力」がものを言う。部分的に優れていても、全体的な成果が出なければ意味がない。上手い絵、美しい絵、感心するような絵、等、等を描く人はたくさんいるが、それを物語として提示し、読者に感動を与えるのがゴールである。そし成年版ラブコメであれば「地味で平凡で冴えない男」が「美人で胸も大きくてスタイルも良くて性格もいい云々な女」と性交渉へと至り、しかしその性交渉は無理やりではなくあくまでヒロイン側の意思によるものでなければならず、性交渉も形式的なものではなく主人公(=読者)を癒しつつ性的な欲望を解消させつつ、主人公(=読者)にとって負い目とならない(ヒロイン側からの要請による性交渉なのだから、いかにケダモノ的な欲望を叶えようともよい)という力強い物語を提示しなければならず、それさえ満たせば画力など大した問題ではない。

 というのも本作は画力一般については明らかに10位、9位の作品より劣るからで、もちろん十分読むに値するレベルであるし作者は過去に別の作品でもランクインしている(2015年9位「エローライフ」)立派な中堅であるが、時々主人公やヒロインの顔が雑に描かれているところもあり、間違いなく自慰には使えない(であろう)。しかしラブコメとして見た時にヒロインの主人公(=読者)に対する仕掛け、性交渉へとなだれ込む過程が絶妙であり、構図としては

①ヒロインはやや単純な性格

②何らかのきっかけ・事故・偶然によって主人公とヒロインの関係が深まる

③ヒロインは単純なので、深まった事によって「じゃあ性交渉まで行こう。元々好きだった(気になっていた)し」と主人公側に持ちかける

④性交渉後は「ここまで深まったのだから、これからも宜しくね」

 を踏まえており、非常にスムーズに終わりながら読後感は爽やかなものとなっている。つまりヒロインから主人公(=読者)へのアシスト、パスがうまいのであり、後はその流れに乗って主人公(=読者)は性交渉へとゴールすればよく、またそれによって主人公(=読者)は達成感を味わう事もできよう。言わばヒロインは主人公(=読者)を立てているのであり、更に見逃せないのがそれによってヒロインが実利を得る事まで描写している(「このお兄ちゃんの大きいおちんちんで、ちゃんとお嫁さんにして下さい」「ちゃんと赤ちゃんできるかな、そしたら先生に責任取ってもらうんだ」)事である。スムーズに終われば、性交渉後の余韻も十分楽しむ事ができるのである。

 画力がそれほどではなくても立派なラブコメであれば大いに評価する、という俺の方針にドンピシャな作品であった。作者には感謝したい。

 

7位:隣のJKエルフさん/なるさわ景ヒット出版社:SERAPHIM COMICS]

 こちらも9位と同じく「都合のいい女」に分類されるヒロインが出てくるが、それよりも「棚ボタ」的ヒロインと言った方が正確であろう。特に理由もなく主人公とヒロイン達は性交渉を始め、ヒロイン達は異種族(エルフ、サキュバス)であるから、ラブコメがいつも悩まされる「どうしてこんな地味で平凡で冴えない男が美人で胸も大きくてスタイルも良くて性格もいい云々な女と簡単に性交渉ができるのか」という問いにも「異種族(エルフ、サキュバス)だからしょうがない、地味で平凡で冴えない男と性交渉する事にも抵抗がないのだ」と答える事ができよう。但しこれは諸刃の剣であって、そのような常識から逸脱した「異種族(エルフ、サキュバス)だからこそ性交渉を行う事ができる」という事は、主人公(=読者)は「異種族(エルフ、サキュバス)」ぐらいの異質な存在としか性交渉できないという事にもなろう。やはり異種族だろうが人間だろうが好きな時に好きなだけ性交渉ができる、しかし今は異種族を選んで性交渉を行っている、という事を示さなければならない。それによって異種族ヒロイン側は「人間を選ぶ事もできるのに、わざわざ私達異種族を選んで下さった」となって、主人公(=読者)へ忠誠を誓い奉仕に精を出す事になろう。

 話がそれたがそのようにして主人公は棚ボタ的に異種族ヒロインと性交渉を行うのであり(「飲み会で酔い潰れた勢いで、冗談交じりにイチャ付き合っていただけで…」「サキュバスは定期的に精液を必要とする」)、ラブコメにおいて必要な「ヒロイン側→主人公(=読者)の仕掛け、誘惑、愛の告白」がなくいきなりな展開となるわけだが、しかしヒロイン達は主人公(=読者)にその身体を完全に差し出し、主人公(=読者)は容赦なく膣内射精を行い、しかしヒロインは一度や二度の射精では飽き足らず貪欲に主人公(=読者)を求め、しかしそこに「異種族」或いは「淫乱」といった異常な感覚は醸し出されず、それでもヒロイン達はあくまで主人公(=読者)の欲望を受け入れ、受け入れた事に歓喜し、その歓喜の波がまた新たな快楽を呼び覚ますのであり、言わば主人公(=読者)に完全に屈服しているのであった。

 「屈服」とは言ってもその性交渉はマイルドであり、仲睦まじい恋人同士の甘ったるい雰囲気で包まれている。それは支離滅裂なただの淫乱となる恐れのある「異種族ヒロイン」を、非常に可愛らしく愛らしく描く事を作者が意識しているからであろう。また複数のヒロインの使い分けも効いていて、前半のエルフものにしろ後半のサキュバスものにしろそれぞれのヒロインと主人公(=読者)の性交渉を丁寧に描きつつ、調味料的にそれぞれのヒロインの痴話喧嘩を挿入し(「ちょっと二人とも、晩御飯食べたばかりなのに」「だってお姉ちゃんは帰り道で主人公にしてあげたんでしょ、ずるいじゃん」「ずるいですよ二人とも、帰った途端始めちゃうなんて、いくら私だって妬けちゃいます」)、それによってヒロインはより一層主人公(=読者)の欲望に応えようと過激に身体を開き、より旨味が出るのであった。

 しかし最初に言ったように、ヒロイン達は「異種族」であるから、屈服させたとしてもそれは「異種族だから」とも言えるのであり、興奮度としてはそれほどではない。世の中うまい事いかんが、しかしいいラブコメである。

 

6位:義妹とスル?志乃武丹英富士美出版:富士美コミックス

義妹とスル? (富士美コミックス)

義妹とスル? (富士美コミックス)

 さて日本ラブコメ大賞成年部門編恒例となった義妹シリーズ、もう何作目か忘れてしまったがとりあえず過去の作品は以下となる。

・2014「義妹処女幻想」→2位

・2015「義妹禁断衝動」→3位

・2016「義理なら兄妹恋愛してもいいよね」→5位

・2017「義理の妹なら溺愛しちゃう?」→4位

 という事でおめでとう、今後もそのストイックさを崩す事なく、力の許す限り義妹もので我々を楽しませてもらいたい…という事なのだが、今年のメインである「父の再婚で娘ほど年齢の離れた義妹ができた」「バツイチで独身の俺」「別れた妻との間に娘が一人」はひねり過ぎ、こすり過ぎであろう。いくら何でも高校生の娘がいる身分で、「娘ほど年齢の離れた義妹ができたが、その義妹と性交渉を行う」は倒錯的であり、なるほどエロ漫画とは倒錯的なものであるから駄目とは言わないが、しかしこれは…と世界のラブコメ王も少し悩んだが、そうは言ってもこれまでの義妹シリーズで言及してきた「清楚な雰囲気を持ちながらもその台詞から仕草まで全ては『お兄ちゃん(=主人公=読者)が好きで、お兄ちゃんに抱かれたい』を表現している」「義理とは言え妹であるため躊躇している義兄(=主人公=読者)を何とか誘惑しようと健気に拙い努力をする」「義兄に全力でぶつかりつつもキュートさを失わないその愛くるしさは遊んでほしそうに寄ってくる子犬か子猫のよう」は本作でも健在で、そこに父親を慕う娘のような錯覚も混ぜ合わせる事でほのかに倒錯性を匂わせ、しかしヒロインには「父親」的な言葉は一切言わせずひたすら「お兄ちゃんお兄ちゃん」と言わせる事で主人公は若返ったような感覚となり、読者は「バツイチで子持ちで、それでも娘ほど年齢の離れたヒロインを抱く」主人公と一体化できなくても、主人公の若返ったような感覚、自分を欲し愛してくれる女性がいる(「お兄ちゃんの赤ちゃんがいつか欲しいって、本気でそう思って、そう思ったら直接言いたくて」)と認識した時の力強さを感じる事はできよう。成年版ラブコメの目的の一つに「読者が明日を生きる希望、勇気を感じる事ができる」があり、見事に本作はそれを達成しているのであった。

 とは言えこの「バツイチの俺に義妹ができた」話はメインと言っても全体の3分の1程度であり、その他は普通に高校生の主人公と義妹ヒロインの間で甘美な一時が展開される。それも露出プレイ、アナル拡張プレイ、新体操プレイと盛り沢山であるが、全ての義妹はひたすら義兄主人公(=読者)のためにややアブノーマルな世界に足を踏み入れるのであり、いかにアブノーマルであってもその根底には義兄主人公(=読者)への一途な想いが溢れ清々しさを感じさせ、またその清々しい性交渉を通じて義妹ヒロインと義兄主人公(=読者)の関係は家族以上に家族的な絆となっていくのであった。これも「読者が明日を生きる希望、勇気を感じる事ができる」であろう。日本ラブコメ大賞に不可欠となった義妹シリーズ、来年も宜しくお願いしたい。

 

5位:あいとかえっちとかね榎本ハイツコアマガジン:ホットミルクコミックスシリーズ]

 優れたエロ漫画はラブコメよりラブコメ的である。性交渉という、男と女が最も赤裸々に自分という存在をぶつけ合う姿を描く事で二人が背負う愛と人生を謳い上げる事ができるからで、一般のラブコメであれば性交描写はエロ漫画に比べ淡白にせざるを得ず、淡白であるから主人公とヒロインの関係を描く上で性交渉が何らかの役割を果たす事はないが、エロ漫画であれば、幾多の困難を経て性交渉へと至り、また性交渉を繰り返し行う事で二人の絆を深くしていき、困難に立ち向かう事ができる。それによってラブコメの使命である「希望、癒し、救い」を読者は深く感じる事ができよう。

 と言っても本作は少々複雑で、主人公は金持ちであった。しかし親の愛を知らずに育ったため何でも金で解決しようとするが(「僕の周りは皆金目当てです」「家族なんてくだらないですよ」)、かと言って金の力で何でもかんでも屈服しようとするわけでもなくただ無気力に日々を生きているだけである(但し一人暮らしなので家事は得意)。言わば贅沢者であって、ラブコメの主人公は「地味で平凡で冴えない男」なわけであるから当然貧乏人を想定しており減点にはなる。

 とは言え本作の魅力はヒロインにある。良く言えば恵まれない、悪く言えば甘えているだけの主人公に対してヒロインは「仲良く愛を探求していこう」と言って純粋に愛らしく身体を開くのであり、半信半疑で性交渉を繰り返す主人公に対してなお一途に優しく包もうとするのであり(「私が一肌脱いでやる、私のおっぱい吸ってみてくれ」「宇宙で一番大好きなんだぞ」)、やがて主人公の心を開き相思相愛となった、とわかった時のヒロインは激しく乱れ快楽に打ち震え(「チンポがレベルアップした、太い太い太い」「主人公のチンポでかき回してほしいんだよ」)、それでもヒロインにはエロ漫画特有の淫靡さや下品さがなく可憐さ愛らしさが失われないのは、ヒロインが愛を知り愛そのものとなったからである。そのため主人公に試練が立ちはだかっても(主人公の義母による妨害)快楽に飲み込まれそうになっても、最後に主人公はヒロインの元へと帰るのであった。なぜなら主人公の求める愛はヒロインそのものだからで、そうなれば「僕の子供を産んで下さい」となるのもごく自然な成り行きであろう。愛と性交渉は新たな命の誕生へと繋がるのであり、「人間にはお金より大事なものがある」事を人は知るのである。それが人生というものだが、それらを教えてくれるのは今やエロ漫画もしくはラブコメだけになってしまった。ただ表面的な綺麗さや華やかさだけを求めて世の中はずいぶんと殺伐になってしまったが、本作のような作品に出会うと「生きてて良かった」と思うのである。ラブコメ万歳。

 

4位:ギャル姉社長とハーレムオフィス辰波要徳ジーウォーク:ムーグコミックス]

 とにかくまあ、すごい巨乳・爆乳であり、すごい巨乳・爆乳でありながらヒロイン達の腰は締まり脚は細く長く、プロポーションは完璧、しかしこの世のものと思えない巨乳・爆乳であり(しつこいな)、その驚異的な画力をドドーンと開陳して読者を鷲掴みにしている。エロ漫画として真っ当な方法であるが、もちろん俺が優先すべきはラブコメであり、胸の大きさは関係ない。しかしまあすごい巨乳・爆乳である(しつこいな)。俺はおっぱい星人だ(知らんがな)。

 主人公は弟で正ヒロインは「姉で、ギャルで、女性用ファッション(エロ水着やエロ下着)の社長」であり、エロ漫画のセオリーに則って姉は弟(=主人公=読者)を溺愛し「(姉弟だけど)いつまでもこうしてセックスしてあげる」のであり、しかし姉弟では公然と付き合う事はできないからと社内の同僚部下の女たち(社内は弟以外全員女)に弟(=主人公=読者)との性交渉の機会をプレゼントし(「アプローチし放題状態よ」)、そうは言っても弟(=主人公=読者)が実際に同僚部下の女たちと性交渉を繰り返し深みにはまっていく様を見せられると嫉妬してより激しく弟(=主人公=読者)を求めるのであり(「しばらくエッチしてなかったから我慢できなくなっちゃった」「こらー、誰かとヤッてたな」)、姉として弟の将来を心配しているという優しさと、しかし弟が他の女と仲良くすると我慢できないという女性ならではのいじらしさ可愛らしさがうまく表現できている。また姉ヒロインもその他のヒロインもすごい巨乳・爆乳でスタイル抜群な上に主人公(=読者)との性交渉にぞっこんなのだから、読者は大いに優越感を感じ、欲望を放出する事ができ、更に姉の嫉妬によって自分がいかに愛されているかを確認でき安心感に浸る事ができよう。

 つまり本作は成年ラブコメとしては百点満点に近かったが、やはり「ギャル」を持ってきたためか弟(=主人公=読者)と姉の間で物語を回収するためか、やや痴女的な雰囲気も醸し出されてしまっている(「そろそろウチのセフレチーム入りして複数プレイとかしてみちゃう?」「他の男と一緒はちょっと…」)のが惜しい。ハーレムだからと言って理由もなく(ただ気持ちよくなりたいから性交渉をする)主人公とヒロインが性交渉をしては駄目なのであって、それぞれのヒロイン達がそれぞれの理由によって(一目惚れ・何となく好きになった、でもよい)主人公と性交渉を重ねなければならない。それによってハーレムとしての重みが増し、快楽は2倍にも3倍にもなろう。

 などと注文をつけたが、最後のシーン、際どい水着での各ヒロインとのハーレムプレイとその直後の姉ヒロインの必死の告白(「主人公を誰かに取られたくないよ、他の子といくらセックスしてもいいから、付き合うのはお姉ちゃんだけにして」)はそんな細かい事など全て払拭してしまう力強さであった。なるほどこういう風にして(「主人公君の心は姉ヒロインのもの、主人公君の身体は皆のもの」)ハーレムを正当化する事もあるのだ。人生日々勉強ですなあ。

 

3位:宵はじめこっぽり生ビールワニマガジン社:WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL

 何度も言うようにラブコメとは「地味で平凡で冴えない男」に「なぜか女が寄って来る」というありえない物語であり、成年版ラブコメともなれば「寄って来る」などという甘っちょろいものではなく女が自ら望んで身体を開き股を広げてくるわけだが、それを違和感なく展開させる事ができるかどうか(読者に違和感を感じさせないかどうか)がポイントとなる。

 そこで本作であるが、性交渉前→性交渉→性交渉後の一連の流れに違和感が全くなかった。もちろん何度も読めばいわゆる「都合の良い」部分に気付くが、構成としては、

①主人公とヒロインはごく自然に会話

②いつの間にかいい雰囲気(或いは淫猥な雰囲気、甘ったるい雰囲気)となる

③お互い気になっている、好き合っている事はわかっている

④性交渉

⑤性交渉後も濃密な二人の世界を維持

 となって、立て板に水のように全てがスムーズなのであり、なぜこのようにスムーズなのかと言えば作者の目的意識が明確だからで、作者はエロを描こうとしているのではなくエロの前と後にある二人の物語を描こうとしており、年頃の男と女の物語を描けば必然的に性交渉となりエロ漫画となり、その男を「地味で平凡で冴えない男」にして、女から積極的に身体を寄せてくればそれがラブコメとなるのである。

 大事な事なので何度も言うが、主人公が「地味で平凡で冴えない男」であればそれだけでラブコメとして成立するのは、対するヒロインが「地味で平凡で冴えない男」の相手役である以上「女から積極的に身体を寄せてくる」とならざるを得ないからである。本作のヒロイン達もやや奥手な主人公に積極的に性交渉へと導くが(「本当に温めたげてもいいんだよ」「主人公君と二人っきりになれるところがいいな…」「主人公が今考えてる事…する?」)、それは主人公を「地味で平凡で冴えない男」に設定した以上自然な流れであり、誰でも描こうと思えば描けるが、しかしそれを実際に描く者は少ない。だが作者は躊躇なく描いたのであり、それは正当に評価されるのである。奇抜な設定を駆使しなくてもよい、ラブコメとは市井の人々に寄り添うものである事を本作は証明してくれているのであった。

 但しスムーズさに意識を集中させているせいでヒロインが美人かどうかの言及がないのが惜しい(胸が大きくてスタイルが良いのは見ればわかる)。もちろん二次元であるからどうとでもなるのだが、「こんな美人」なのに自分のような「地味で平凡で冴えない男」に抱かれて喜んでいるとわかった時、読者は欲望のタガを外す事ができるのである。しかしそんな事は瑣末な事で、文句なしの良作であった。

 

2位:純愛まにあっく~RePure~あゆま紗由[文苑堂:BAVEL COMICS]

純愛まにあっく ~RePure~ (BAVEL COMICS)

純愛まにあっく ~RePure~ (BAVEL COMICS)

 さて日本ラブコメ大賞2018も本作とあと一作なので、やはり「愛」の問題を考えたい。タイトルにもある「純愛」とは何かという事だが、もちろんエロと純愛は基本的に関係ない。エロがなくても純愛は成り立つし、性的な意味を含まない「純愛」は世の中にたくさんある。また性的な意味を含んだ「純愛」にも「エロ」という後ろめたさはない。困難を乗り越えてゴールインしたカップル…というような大げさなものでなくても、例えば教会で愛を誓う新婚夫婦に「エロ」は感じられない。しかし夫婦にしろ恋人同士にしろ性交渉は不可欠で、性交渉にはエロが不可欠である。ところが多くの場合「エロ」は純愛を否定する。純愛という言葉がもたらす「清く正しく美しい」世界から歪んだものが「エロ」だからである。

 しかし純愛とエロが成り立つ場合がある。それはその2つの相反する概念の間に「恋」がある場合で、「恋」がブリッジとなって純愛とエロを繋ぐのである。抽象的な言い方になってしまうが、「恋」とは通常女性特有のもので、男にはその裏側に必ずどす黒い欲望が貼り付いてるが女性の「恋」にはどす黒い欲望の姿かたちはない。ただ純粋に、恋する男と同じ時間・同じ場所を共有したいというピュアな感情で成り立っており、その「ピュアな感情」はピュアゆえにやや暴走して主人公(=読者)へと向けられる。いわゆる「乙女心ゆえの暴走」となるわけだが、そこにエロ漫画的な表現が加えられる事で「ピュアな乙女心」をベースにヒロインは主人公(=読者)へとアタックし、主人公(=読者)は何の後ろめたさもなくヒロインに欲望を解放する事ができよう。エロ漫画において主人公(=読者)は汚い欲望を吐き出すためそこに汚らしさが発生してしまうが(その「汚らしさ」ゆえに性的効果は一層向上するが)、「ピュアな乙女心」に端を発する性交渉には恋する女性特有のかわいらしさが作用し、それが主人公が背負う汚らしさを一切感じさせず浄化するのである。

 そのようにして本作では少女漫画さながらの目が大きく描かれた顔、丸みを帯びた身体を備えたヒロイン達が主人公へ恋する気持ちを暴走させるのであり(「風紀を乱す生徒なら風紀委員の先輩に見てもらえる」「衣装を脱いだら私も普通の女の子ですよ」「いちゃいちゃするぞこらー」)、その暴走は女性特有の甘さと愛らしさを伴って描かれ、また繰り返し主人公への愛を表現してもそれが少しもくどくないのは、主人公(=読者)への愛がヒロインには溢れており、それをはっきりと読者に提示できているからである。そして性交渉が終われば主人公とヒロインの仲は「純愛」となる。なぜならその性交渉はエロに端を発したものではなくあくまで「ピュアな恋心」によるものだからであり、しかし性交渉にはエロが含まれる。恋するヒロイン達を描く事で「エロ」と「純愛」を両立する事に成功していた本作はラブコメエロ漫画が求める一つの頂点である。素晴らしい。来年もまたこのようなエロ漫画に出会いたいものだ。

    

1位:君想ふ恋ゲンツキ[文苑堂:BAVEL COMICS]

君想ふ恋 (BAVEL COMICS)

君想ふ恋 (BAVEL COMICS)

 またしても抽象的な話となるが、エロ漫画など青臭い童貞、素人童貞、或いは女性経験の少ないオタク等が読むものである。そしてそのような「青臭い童貞・素人童貞・女性経験の少ないオタク等」は性交渉一般そして女性というものに対して幻想を抱き憧れを抱いている。女性とはすべからく美人で胸も大きくてスタイルも良いのであり、母性に溢れ、弱く儚い自分・世間に対してひねくれねじくれてしまった自分を優しく包んでくれるのであり、且つ進んで身体を開き自分の汚らしい欲望を解消してくれる存在であって、そうではない女性など女性ではない、どこかにきっとそんな女性がいる、自分のいる学校や会社にたまたまそのような女性がいないだけだ…と信じているのである。

 当たり前だがそのような女性はどこにもいないので昔の男達は早々にあきらめてさっさと結婚して子供を作っていったわけだが、平成の時代を生きる我々には二次元のエロ漫画がある、あきらめる必要はない、なぜなら本作にはまさにそのような理想的なヒロインばかり登場するからで、透き通るような細く流麗な線によって描かれた各短編のヒロイン達はいずれも気高さと美しさを維持し、且つ胸が大きく腰は締まり脚は細く長く、華やかに輝き、そのようなヒロイン達は自分の弱さやだらしなさを自嘲する或いは自嘲する事に酔っている主人公(「触れようとして壊してしまうくらいなら、せめて優しい思い出として焼き付けておけるように」「限られた時間を有意義に過ごすには合理的は判断が不可欠」「頼ってばかりいる自分が不甲斐なかった、だからずっと、僕を選んでくれた事を素直に喜ぶ事ができなかった」)に優しく声をかけ、奮い立たせ、奮い立たないようなら性交渉OKのサインを送るのであり(「他の誰かのところに行っちゃ…困る」「お姉ちゃんは好きな人のためなら…平気だよ」「私は主人公が好き、それだけは何があっても…変わらない」)、そこまでしてやっと性交渉へとなだれ込む事ができた主人公をヒロインはやはり優しく包み、欲望を受け止めた上でヒロインは歓喜の声を上げるのであり、性交渉の終わりと共に主人公(=読者)は永遠の愛を保証されるのである。まさに至れり尽くせりというか、主人公(=読者)は女神のようなヒロインを手に入れる事ができたのだから読者は無上の快楽に酔い痴れる事となる。

 また本作はとにかく「綺麗」の印象が強く他のエロ漫画とは別格であった。象徴的なのが31頁3コマ目(下記参照)で、ぎこちなく意識している幼馴染の主人公とヒロイン(共に高校生)が自転車に乗っている姿と対比して仲のよさそうな小学生の男の子と女の子を配置する描写はとても美しい。このようなエロ漫画が現われ、またこの日本ラブコメ大賞に加えられた事で生きる希望が湧いてこよう。f:id:tarimo:20181123104358j:plain