週刊ポスト1971年12月10日号[小学館]


 はてさて1971年つまり昭和46年が終わろうとしているわけですが今年はどんな一年だったかでありますが、去年の暮れは「鼻血ブーッ」で終わったものの今年は逆さに振っても鼻血も出ず「右も左も真っ暗闇じゃございませんか」、中小企業の倒産が相次ぎ「ガンバラナクッチャ」と働いてはみたものの「憎損(ニクソン)ショック」、ボーナス袋は「ショーゲキ」で、これでは家庭は「わが壊体」…。どれも言わずと知れた1971年の流行語でありますが、今年はなんとなくヤケッパチな感じのものが多いんでありまして、「歩行者天国」で、「バンタロン」の女性が手にしていたカチカチ「クラッカー」。2〜3カ月は「バスに乗り遅れるな」とばかり、全ての女性が手にしていたが、「頭越し」の「ピンポン外交」で、「仮面ライダー」となって「バケラッタ」。
 どうも意味不明になってきましたが続けますと「自然保護」を「モクヒョー」にした「環境庁」が生まれれば、世には「ラブ・ストーリー」が生まれ、「ポルノ解禁」も「デノミ」され、トルコの「泡踊り」も「自主規制」して「アヒルの水かき」、若い者は「ジーンズ」はいて「緑色革命」叫ぶのも、つまりは「ゲバルト・ファッション」でイキがっている「長髪族」の「オナニスト」。「ススンデルーッ」と言われた国も「逆重要」で負けてから、「ミノベンジャー」の「ニアミス」で更に「国威失墜」、国民としましては「ドウスンダヨー、ドウスンダヨー」とわめいてみても「国益」のために「ディスカバー・ジャパン」してくれと言われりゃ、「キミのはフトーイ」と言うばかり…。
 とにかく1971年とはこのような年だったのであり、1983年生まれの俺は生まれていないがこうして生まれていない時の週刊誌を2017年に読む事ができて大変満足であります。そのようにして人々の汚点、週刊誌に書かれるような汚点は永遠に残り続け、昔も今も世の中は混沌として視界不良でその中でもがき続けるしかない事を改めて知るのです。
 
・さて、西のピンクエリアは神戸。今も昔も、「京都に住んで大阪で働き、神戸で遊ぶ」が関西人の理想らしい。
 三宮のなじみのクラブ・ホステスから「今夜、面白いゲームをしましょ」と誘われ(中略)、店がハネてからタクシーで行ったところが布引の高級マンション。
 男三人と女5人がくんずほぐれつの乱戦は、夜明け近くまで続いたという。
「会費は三万円で、月に一度くらい、女達のマンションをあちこち移動しながら開いてるって言うてましたなあ。言わば『移動快楽館』ですわ。私の連れのホステスが言うてましたが、十人ぐらいの女が、ズラリと全裸で迎えてくれるパーティーもあるそうですわ。
 帰りの道すがら、山陽新幹線新神戸駅のそば通ったら、もう工事関係の人達が働いてました。なんや、申し訳ないような気ィしましたなあ」
・今年末のボーナスの伸び率は、昨年に比べ12.1%増と、昨年同期の22.1%増と比較すると、大幅にダウンする事が予想されている。
 昭和41年から45年までの5年間、前年比は15%から20数%と大幅な上昇を記録してきた年末ボーナス伸び率だが、今年は一挙に、40年不況時の23.8%増、37年不況時の12.6%増をも下回るという最悪の事態を迎える事になったわけである。
・OKサインだけで、スキンレススキンがお求めになれます。この看板の出ている薬局・薬店でどうぞ。
・不況ムードの中で、今年の忘年会の幹事さんの責任は重大だが、ここに朗報あり。「是非お手伝いさせて」と甘い声でせまる若いポルノ娘さんがたくさんいるのだ。あなたが電話一本かければ、不景気顔の上司も思わずニタリとする事うけあい。レズ、サド、マゾ、何でもご注文に応じます、という最新情報です。さて、どうしますか。
サリドマイド被害児は、今ようやく、小学校の中学年から高学年に進もうとしている。自分を見つめる年齢になりつつある。
「4歳ごろ。『神様はいじわるだね、僕のような曲がった手の子を作るなんて』。
 6歳ごろ。『お母さんは、僕が生まれた時、本当に嬉しかったの?手が曲がっていてどんな気がした?』
 8歳ごろ。『僕は子供は欲しくないよ。僕のように曲がった手の子供が生まれたら困るから』
 現在、ほとんど手について申しません。ただ『お医者様は本当に研究をしていて下さるのだろうか。僕はもう治らないと思うよ』
 以上が、子供が『手』について申しました言葉です」
・(自動車)輸出は相変わらず好調だが、国内需要はそろそろ頭打ち。自動車業界の再編成も一段落、ビッグ3の上陸も一応の提携先を見つけ、ほっとした今年のモーター・ショーも自粛ムード。各社の主力車種のほとんどが、マイナーチェンジに終止。ところで男にとってクルマは魅力的である事に変わりはないが、もともと添え花でしかなかったコンパニオンが、ショールームでは今や「女性だけ見て頂いても結構」という華麗なる存在。彼女達は「ガラスの城」の中で企業の「真心を伝える」のが役割だ。その華麗な装いと、身近な微笑で、訪れた顧客につい価格まで聞かせてしまう。魅力の対象が、車から彼女達へ。ショールームの主役の座は変わった。