4 厚化粧から遠く離れて(成年部門13→1)

13位:会長の秘蜜日記/琴吹かづき三和出版:SANWA COMICS]

会長の秘蜜日記 (SANWA COMICS No. 58)

会長の秘蜜日記 (SANWA COMICS No. 58)

 さて最初からこんな事を言ってはいかんのだろうが本作についてはあまり評価したくない。というより評価するほどの内容もない。「こちらが13位となります。10位以内には入れませんでしたが、13位ぐらいなら妥当だと思います」と言えば皆納得するはずだ。
 しかしまあそれだけというわけにもいかんので手短に言いますが、表紙を見るとひたすらヤられて雄叫びをあげるだけの人外の女の性地獄漫画かと思われるだろうが(それはそうなのだが)、一方で男(主人公)の存在感も確保されている。どのように確保されているかというとそのでかい性器によってであって、エロ漫画とは男の性器を女の性器に入れることを描いたものであるからそれ自体は何らやましいものではないが、それではストーリーも何もないからラブコメとしての過程をほんの少し追加したのが本作である。しかしながら性器によってその「ラブコメとしての過程」を表現しているのだからこれはもう大胆というか無謀で、しかし読み物としては実にギリギリであるが確かに成立している。獣の如き雄叫びをあげるヒロインのセリフを読めば性交渉によるぶつかり合いの波においてラブコメを表現していることはわかる。結局ヒロインは主人公に依存しているのであり、それをほぼ性交渉のみで進行させているのが何とも荒々しく野生的で、しかしこれはラブコメなのである。
 それにしてもチ○コがでか過ぎるとは思うがね。
 
12位:恋愛ほりっく/久水あるた富士美出版:富士美コミックス]
恋愛 ほりっく (富士美コミックス)

恋愛 ほりっく (富士美コミックス)

 ハイレベルな絵を描けとは言わない。ラブコメとして優れていればそれだけでよい。しかしこれは…線の強弱が常に一定で、しかも太いから非常に間延びした印象を抱かせる。読んでいてすぐに飽きてしまった。
 またラブコメにおいては性交渉に至るまでの過程が大事であるが、本作の全短編において過程の描写はほぼゼロで、まだ恋愛関係にない主人公とヒロインも含めて身体と身体のぶつかり合いからラブコメが始まり、しかしその肉体のぶつかり合いによって対話が生まれているのでラブコメとしてセーフではある。ヒロイン側がリードするというよりも一方的に強引に主人公を押さえ込み、同時に主人公に対する愛を表明しているのでその時点で愛の対話が成立しラブコメとなっていて、それが独特の「太い」線によって描かれ非常に拙く無骨な感じを与えながらも紙一重のところでラブコメとして成立しているのは確かである。また太い線によって描かれるヒロインたちの積極さに主人公(読者)はどこまでやっても大丈夫という奇妙な安心感さえ感じることができ、荒々しさや騒がしさがありながらも非常に母性的な構造となっている。しかしいくら母性的であっても無骨であることには変わりない。ラブコメとはヒロイン(女)が主人公(男)よりも積極的でありながら、ヒロインは決して主人公よりも大きな存在とはならず、また最終的には主人公がヒロインを支配するという思想であり、そのためには「洗練さ」が要求される。その点を本作が満たしている…とは言い難く、この順位で評価するのが妥当であろう。
 しかし表紙を見た時はかなり良さそうに見えたんだがなあ…。昔はよく表紙買いをして失敗したものだが、エロ漫画歴10年になってまた失敗するとは思わなかった。日々勉強ですなあ…。
 
11位:純愛以上レイプ未満 りとるらびっつ/ドバト[オークス:XO COMICS]
純愛以上レイプ未満~りとるらびっつ~ (XOコミックス)

純愛以上レイプ未満~りとるらびっつ~ (XOコミックス)

 「ヤンデレ」だからと言って必要以上に病んだ状態にしてはいけない。ラブコメのヒロインは一方的に主人公に言い寄るのが大半であり、それだけでも十分病んでいるので、特に「ヤンデレ」を強調する必要はない。それでも「ヤンデレ」を使う場合に大事なことは主人公の関係があって始めて「病んだ状態」にしなければならないことであって、主人公がいようがいまいがキチガイであればそれはヤンデレとは違うのである。その点、本作のヒロインはまさに主人公(お兄ちゃん)に依存しているから及第点であるが、だからと言って主人公を押し倒したり襲うようになると話は違ってくる。
 ラブコメとは男が女より優位に立つ思想であるが、それは精神的な優位のことを言っているのであって実際の行動は女(ヒロイン)側が積極的に出る方が望ましい。ヒロイン側が愛を示し、行動に出ることによって主人公(男)の行動に余裕が生まれ、制約がなくなり(ヒロインの方から告白してきたので)、結果として優位に立つのである。そしてそこさえ守ることができれば性交渉時において逆に主人公がヒロインに積極的に出ても問題はない。性交渉描写においてもヒロインが主人公を終始リードすると精神的な優位が揺らぐ可能性があり、本作のように「妹が兄をレイプする」となるとせっかく確保した優位性が消滅する可能性があろう。
 「平凡で冴えない男が容姿端麗な女をなぜか支配する」ところにラブコメの根源的な快楽があるのであって、後半において妹が兄を肉体的に拘束し、肉体面において拘束することで精神面においても支配しようとするところは明らかにラブコメのルールから逸脱してしまっている。例えそれが「お兄ちゃん好き好き大好き」から発せられたものだったとしてもそれは行き過ぎなのである。とは言え本作全体を通じての妹の兄への想いは本物であり、「想いのあまり、暴走した」という範囲でギリギリおさまって最後はハッピーエンドとなったので大事にはならなかった。かくして「日本ラブコメ大賞成年版」に認定されることになったのである。
 それにしても、こういうのを読むとオタクは基本的にマゾだと言うことがよくわかりますね。だから俺は少数派なのだ。
 
10位:ビーナスラプソディ/春城秋介[ティーアイネットMUJIN COMICS]
ビーナスラプソディ (MUJIN COMICS)

ビーナスラプソディ (MUJIN COMICS)

 絵のクオリティはもちろん高い方がいい。しかしいくら絵がうまくても(自慰に使えるものでも)ラブコメでなければただの絵と紙である。ラブコメへの情熱が大切なのだ。本作はキャラクターのクオリティ(というより顔そのもの)がやや大雑把(男も女も同じ顔立ちに見える)で、背景や空間もどことなくぎこちないが、この日本ラブコメ大賞に認定されたほどであるからそんなことはどうでもよい。
 ではラブコメとしてどうなのかと言うとヒロインと主人公の距離感をヒロイン側の積極的な行動によって縮めながら、それを少し離してまたくっつけるという動と静のテクニックをうまく使いこなしているところがミソである。それが物語に艶を出してエロ漫画のキャラクターの性的魅力を引き出している。また本作全体を通して共通しているのは随所に「女性本来の弱さ」を描写していることで、いわゆる「強く求められたら拒めない」というやつであるが、最初にヒロイン側がリードすることによって主人公が勢いに乗り、やがて形勢逆転した時のヒロインの困惑と期待が妖艶に描かれている。ヒロインが積極的に主人公を誘うことがラブコメの条件であるが、性交渉においては所詮男(主人公)が女(ヒロイン)を組み敷き、女が組み敷かれるのである(騎乗位ならいいだろうという問題ではない)。そこに女の愛らしさがあり、本作の場合序盤は女の方が強い(誘っている)分、性交渉時において女性が持つ弱さが引き立って主人公の優位性がかなり保証されている。ラブコメとはヒロインの積極性や社会的地位、あるいは性格を駆使しながら最後には主人公が優位に立つ思想であり、本作はそれをちゃんと満たしている良作なのである。しかし少しクオリティ的に大雑把なところがあるのも事実で、次作に期待することにしよう。
 それにしても…こいつらもチ○コでかいなあ。
   
9位:Virgin Hunt ばーじんはんと/さいだ一明エンジェル出版:エンジェルコミックス]
Virgin Hunt (エンジェルコミックス)

Virgin Hunt (エンジェルコミックス)

 惜しい惜しい。後ほど出てくる6位の作品にも言えることだが本作は「ハーレム」ものでありながら「ハーレム」の持つ一番おいしいところを調理できていないのである。
 もともと「ハーレム」ほど簡単なようで難しいものはない。過程も何もなくハーレムにしても(男1人・女複数で性交渉させても)唐突なだけであるから過程を用意しなければならないが、その「過程」においてはハーレムを醸成するための周到なストーリーと各キャラクターへの綿密な心理描写が必要で、各人各様の主人公への想いを吐き出させながらそれを無理なく「一夫多妻」状態であることの肯定へと導かなければならないのである。しかし本作は「ハーレム」とは違うストーリーラインがある(「六人の処女と交わって」云々)ためにとても「各人各様の主人公への想い」まで行かず、行き当たりばったりな感は否めない。そして成年漫画でハーレムにする場合は2〜4人が適正規模である。それ以上の人数とのプレイとなると男(主人公)は一人なのだから手が回らず、女同士の絡みに頼らざるを得なくなってレズ的描写が入ってしまう(実際、6人のうちの1人はレズであった)。
 本作の惜しいところは主人公が次々とヒロイン達と性的関係を持ち、ヒロイン達と主人公はもともと相思相愛であったのに「六人の処女を姦し、堕とせ」という厄介な設定によって何となく義務的な臭いが醸し出されてしまっていることである。その設定によって次々とヒロインと関係が持てるのだから仕方ないが、ラブコメの基本は「ヒロイン側の積極的な行動によって関係が始まる」ことにあり、義務的では駄目なのである。しかしハーレムの魅力である「主人公が複数のヒロイン達と性的関係を持ちながら、ヒロイン達はその状態を肯定する」ことは結末によって確保されているのでこの順位となった。結局本作はハーレムの恐ろしさを知らずただ勢いで描いたというところだろう。しかしその意気や良し、究極のラブコメとはハーレムなのである。「1人につき10秒ずつね!」。
 
8位:年刊中年チャンプ 初期作品号/中年[MAX:ポプリコミックス]
年刊 中年チャンプ 初期作品号 (ポプリコミックス79)

年刊 中年チャンプ 初期作品号 (ポプリコミックス79)

 本作の評価が難しいのはややふざけている感じがするからである。主人公やヒロインをやや癖のある人物として描いてギャグの要素を取り入れているのが本作であるが、基本的にエロとギャグは相容れない。性交渉は本質的に厳粛なものであり、破壊をベースとするギャグとは別次元のものなのである。しかし「コメディ色を強くすること」とエロを両立させることは可能であって、本作はギャグにならないギリギリまでコメディ色を強くしているだけなのでエロ漫画のボルテージは維持している。そしてラブコメ描写も忘れていない。ここの評価が難しい。
 主人公とヒロインの間には性交渉へと至る対話が必要であるが、本作ではその部分をコメディとして処理している。しかしそれがラブコメとしての表現を一層強くする方向で目指されており、そうすることで主人公とヒロインのぎこちなさが解消され、作品全体が和やかで緩い雰囲気となってラブコメ本来の甘い描写が出ている。その思い切りの良さが本作の魅力で、ほぼ「ギャグ」に近いコメディの持つ力強さとスピード感で主人公とヒロインの関係を一気に発展させ、発展した後の性交渉はもちろん、ヒロイン側の主人公に対する想いなどもそのスピード感で一気に頂点へと持っていっている。そのため読む側としては「いつの間に相思相愛になったのだ」という違和感もあるが、それは決して不快なものではない。主人公とヒロインの対話をスピーディーに成立させた分、残りを「愛の対話としての性交渉描写」に費やすことができ、性交渉の過程でヒロインがいかに主人公を想っているかを確認できるのだからこちらの方がお得なのである。
 確かにこの癖のある、細かい部分を狙い撃ちしたコメディ描写は万人受けするものではないが、俺は気に入っている。是非とも体調を回復され、復活してほしいものだ。
 
7位:らぶ・かん/憧明良茜新社:TENMA COMICS]
らぶ・かん (TENMAコミックス)

らぶ・かん (TENMAコミックス)

 繰り返すが、ラブコメにおいては女(ヒロイン)が積極的に出なければならない。そしてその「積極的」はストーリー展開上の要請を踏まえたものでなければならず、いきなり股を開けばいいのではない。またヒロインが積極的であっても男(主人公)が常に受身でいるわけにはいかない。性交渉において、どこまでも女に任せっぱなしであればいずれ破綻するからである。そもそも男と女が絡むことによって成立する成年漫画においてどちらか一方だけが主張してもうまくいくはずがないのである(どうせ男は野獣になる)。発端におけるリスクを女に背負わせることからラブコメが始まるのであり、「きっかけを女が作る」のがラブコメなのである。
 そこで本作についてであるが、ヒロイン達の積極さが軽快ながら緩急を伴って描かれて、主人公(読者)側に何ら重さを感じさせず非常に読みやすかった。また成年漫画となると性交渉以外のシーン、特にキャラクターたちの会話が杜撰なものになるが、本作の場合その会話のキャッチボールがテンポよく飽きさせない。それが本作全体を非常に明るいものにして、読後は「ヒロイン達が積極的に出た」ということに気付かないほどであり、結果として読者(=主人公)は「ヒロインを組み敷いた」という満足感を得ることになるのである。ただし惜しいことに本作はヒロインをほぼナースに限定しているのでどうしても窮屈な印象を受ける。ヤッていることはラブコメなのであるが、本来主人公とヒロインだけの関係性から発展するはずのラブコメに余計な制約が付されているためにこの順位となった。しかしいいものはいい。俺も今度、五反田の風俗でナースのコスプレを頼んでみるか(いつもはレースクイーンとかボンテージとかを頼んでいるが。わははは)
 
6位:美人な義母と強気なクラスメート/OKAWARI[茜新社:TENMA COMICS]
美人な義母と強気なクラスメート (TENMAコミックス)

美人な義母と強気なクラスメート (TENMAコミックス)

 タイトルを見ればわかるように本作は「美人な義母」と「強気なクラスメート」と主人公による長編ものである。つまり主人公は2人の女性と性的関係を持ち、2人の女性に愛されながらハーレムの世界を味わう作品なのであるが、何度も言っているようにハーレムものが難しいのは「主人公(読者)に罪悪感を抱かせない」ようにしなければならないからで、一般のラブコメならば実質的にハーレム状態であっても性交渉まではいかないから罪悪感もそれほど深刻なものではないが、本作では2人の女性と性的関係を結び快楽に翻弄される主人公にはどこか淀んだものが感じられ読者は罪悪感を意識してしまう。それはストーリー展開をコメディとして処理していないからで、両ヒロインによる修羅場も派手に行われない分緊迫したものになって、それはそれで面白いが「快楽としてのラブコメ」を求める俺には違和感があった。結果として暗くなっているのである。
 恐らくこの暗さは作者があとがきで述べているように「主人公は最後に悲惨な目に、いっそ死ぬか殺されるか」とも考えていたらからであろう。もちろん最後は主人公と両ヒロインによる現状維持(ハーレム状態)で終わるが、当初はそのような悲惨な最終回をもくろんでいたのだろうから性交渉描写も「悲惨な結末のためのもの」となってラブコメとは違う緊張感のあるものとなっている。その緊張感のために両ヒロインの主人公に対する想いは真剣で一途なものとなり、性交渉場面でもその情熱は画面におさまらないほどの乱れた動きとなって表れ迫力が増している。しかし結末はハーレムなのだから、結果的にはラブコメでありながら非常に締まるスタイリッシュな良作となった。
 それにしても惜しいのは、この義母が他の男(主人公の父親)とヤッてしまっていることだ。それによって本作の魅力は半減している。ラブコメはあくまで主人公との関係性の上に展開されなければならない。そうでなければただの自慰の道具ではないか。
 
5位:デキる妹はイヤですか?2/089タロー[キルタイムコミュニケーション二次元ドリーム文庫
デキる妹はイヤですか?2 (二次元ドリーム文庫 194)

デキる妹はイヤですか?2 (二次元ドリーム文庫 194)

 何度も言っているようにツンデレはラブコメにおいて邪道である。「平凡で冴えない男」が「絶えず周囲の注目の的になるほどの美人」に惚れられるのがラブコメの大原則なのであり、「あたしみたいな美人が、何であんたなんか好きになるのよっ」などと言われたら目も当てられない。それでも二人っきりの時は「デレ」になるのは手法としてはありえるが、ラブコメにおいては「周りに人がいる」にも関わらずヒロイン側が主人公に愛を告白することがヒロインの愛情を測る一番のバロメーターなのである。
 そのように考えると、反抗期真っ最中の義妹たちが記憶を失って幼児(小学生低学年くらい?)のようになり、あどけないながらも一途に主人公(義兄)を想い、成長した身体で主人公を篭絡するというのは素晴らしい設定ではある。「美人なヒロイン」が「平凡で冴えない主人公」に理由もなく惚れてしまうのは無理があるが、同じ屋根の下で暮らしてきた家族(しかも義理)の間ならば理由なく惚れてしまうのも自然であり、且つ幼児特有の無邪気な好意であれば誰も口出しできないから主人公(=読者)は存分に快楽へダイブできよう。そして中盤に差しかかる前からひたすら義妹ヒロイン2人は「お兄ちゃんのお嫁さんになるには、子供ができないといけないから、いっぱい子供作ろう」となって主人公を押し倒すのであるが、その愛情も幼児の素直さによって常に主人公に降りかかり、非常においしいものになっている。
 そして中盤以降の主人公はまさに快楽の虜となるが、ヒロイン達はそれでも純粋に「お兄ちゃんのお嫁さんになりたい、子供を授かりたい」と願って性交渉に臨み、やがて主人公以上に快楽の虜になって主人公への愛情のみならず献身や忠誠心まで身につけていくのである。言わば調教までされるのであって、にもかかわらず両ヒロインは幸せを維持し、記憶が戻ったとしてもやはり主人公の「妻で、妊婦で、義妹で」となるのである。まさにハーレムラブコメと言えよう。これで最初のツンなシーンがなければ1位になっていたかもしれないが、結果的には導入部で両ヒロインのツンな描写を入れることで中盤以降のひたすら甘い性交渉の場面が映えることになったのも事実だ。これでいいのだ。
 
 今や子宮唇もぱっくり開いて奥から愛液をドバドバ垂らす。実玖のヒダヒダは狭さを増して舌をペロペロ舐め返すし、吸い込むような動きでもってラビアでディープキスしてくれる。芽衣菜の中はもうゼリーよりも柔らかくて、細かいツブツブが隙間なく吸い付きひたすら熱く男根を悦ばせてくれた。
 違いはあれど、どちらにも深い深い愛情がある。彼だけを愛し、彼だけを受け入れ、彼だけの子を身籠るという女としての最高の求愛が。
 
4位:Only You/青木幹治コアマガジン:ホットミルクコミックスシリーズ]
Only You (ホットミルクコミックス)

Only You (ホットミルクコミックス)

 何度も言うが、ラブコメにおいてはヒロイン側が積極的に主人公をリードしなければならないが、淫乱(「男なら誰でもいい」「挿入してくれるなら誰でもいい」)にしてはならない。成年版ラブコメにおいてはヒロインのその積極的な性交渉への助走は「相手が主人公(=読者)だから」ということが必要なのである。そしてその「主人公が相手だから」ということをしっかりと確保した上で、次に「成年漫画としての表現」に移るのである。最近は和姦傾向のエロ漫画が増えてきたとは言え、ほとんどが「ヒロインを淫乱にして、しかしそれでは純情でピュアな読者が納得しないのでとりあえず主人公と相思相愛にしておいた」というものばかりであり、それではラブコメにならない。しかし本作は違う。
 以前に作者の別の作品(2009年度成年・11位)で評したように、各短編で特徴的なのはヒロインが主人公に対して想いを持っていることを認識して悩むことである。それはヒロインが主人公との関係を第一に考えていることを意味する。また「積極的に主人公をリードする」場合でも、それはどうすれば主人公に愛されるかに端を発している行為であるから主人公側より決して前に出ない節度を伴って描かれている。「節子さんシリーズ」を読めばわかる通り、ヒロインは主人公にベタ惚れであるが決してそれを前に出さず、それでもその「前に出さない」ことを主人公(=読者)はわかっているのであり、それによって主人公側の優位が確保され、且つ棚ボタ的に幸せな夫婦生活を送る(子供も授かる)のである。これはなかなか味があってよいではないか。
 ラブコメにおいては興奮できるかどうか(自慰に使えるかどうか)は関係なく、性交渉描写が淡白でもよい。「性交渉について女性側が積極的にリードする」構図そのものが重要なのであり、その過程がラブコメの評価になるのである。
 
3位:恋糸記念日/たかやKi[コアマガジンメガストアコミックス]
恋糸記念日 (メガストアコミックス)

恋糸記念日 (メガストアコミックス)

 まず絵柄が非常に可愛らしく愛くるしく、そのくせヒロイン達の身体はエロ漫画の水準を保っていて、そのようなヒロイン達に愛を告白されるのが本作品の基本的なパターンである。特に感極まって泣きながら告白するところなどはラブコメとしては非常にポイントが高い。告白するという積極性と、好きすぎて自分でも感情を抑えれらないという困惑を表明することで主人公側は特に気張ることなくヒロインに積極的に接することができるからである。何も最初から最後までヒロインが積極的で主人公が受身でなければならないというのではない(それではただのサドとマゾだ)。何度も言っているが、性交渉の「きっかけ」をヒロイン側が誘発するところがラブコメの最大の魅力であり、その役割を可愛らしく愛くるしいヒロインが実行することによって主人公側も大いに動くことができ、それを読者が違和感なく自然に読むことができれば万々歳なのである。また最後にはちゃんと肉体的にも精神的にも結ばれたことによるヒロインの幸せを描写していて、何とも甘く幸せな気分に浸ることができた。しかしそのような「可愛らしく愛くるしいヒロイン」を描くことにのみ集中してしまって、主人公(男)が「平凡で冴えない男」であることを表明する機会を逸してしまっているのが残念でもある。またハーレム描写(男1人に女2人)があまりないことも大変残念だ。このようなヒロインを同時多発的に投入すれば本作は文句なしの1位となっていただろうに。
 しかし「アパートの管理人で若い女」というのは何であんなに魅力的なんでしょうかねえ…。
 
2位:脱・妹宣言/EBA[マックス:ポプリコミックス] 
脱☆妹宣言 (ポプリコミックス 95)

脱☆妹宣言 (ポプリコミックス 95)

 繰り返し言っているように、ただ自慰の道具として機能すればいいのではない。求めるものはあくまでラブコメであり、性交渉までの過程と、性交渉本番におけるぶつかり合いの中でいかにラブコメ描写を表現できるかにかかっている(そもそも本作のような、ロリ体型のくせに不自然に巨乳なヒロインに興奮できるわけがない)。そのような「男女の愛の対話としての性交渉」において、濃密な主人公とヒロインの関係性をそのまま性交渉シーンに反映できている本作は優秀である。また各短編において「膣内射精」、つまり妊娠をイメージさせるところまで踏み込んでいるところなどまさに「和姦」「愛の対話」としてのラブコメの一つの頂点であり、シンプルにそれだけを描くことでラブコメの完成度も高くなっている。
 本作の特徴は、ヒロインが主人公に抱かれ恋愛を成就したことで簡単に幸せに達してしまうことである。しかし決してお気楽に描かれているわけではない(表題作など実の兄妹ものである)。平凡で冴えない男(=主人公=読者)が性交渉を謳歌し愛を謳歌し、この世の春を手に入れ、それでも違和感を感じないのはヒロインがそれ以上の幸せの絶頂にあることが読者にわかっているからである。そのシンプルさを一途に描くことこそラブコメの到達点である。ラブコメとは多くの読者の代わりに主人公とヒロインを幸せにすることで、自分自身も幸せにさせるものなのである。
 それにしてもカバー裏の「脱・妹宣言書」はいいなあ。
 
1位:First Love/尾鈴明臣茜新社:TENMA COMICS] 
First Love (TENMAコミックス)

First Love (TENMAコミックス)

 まずテクニック的なことになるが、ヒロインたちの肉感的な身体と、それにもかかわらずスタイリッシュで芯の強そうな清らかさを醸し出している身体の表現力は俺の見渡すエロ漫画の世界においてトップレベルであった。また作品全体が主人公とヒロインの2人だけの世界に特化していて、2人の関係性を丁寧に、しつこいぐらいわかりやすく描いていながら少しも不自然さが感じられない。こうなっては2人の間には誰も近寄れず、そこにトップレベルの画力を投入するわけだから非常にそそるものになる(特にカラーがものすごくそそる)。
 トップレベルの画力で描かれたヒロインたちが主人公との2人だけの世界を作るのである。それはラブコメにおける本質的な魅力、つまり「平凡で何の取り柄もない男(主人公)に、容姿端麗な女(ヒロイン)が積極的に絡む」という魅力を暴力的なまでに昇華させている。その暴力的な魅力が和姦という非常に穏やかな空気の中に取り込まれることで初々しさと愛らしさも見事に表現できている。本作はエロ漫画という暴力的なものをラブコメとしてうまく抽出できているのである。また2人だけの世界であることの甘さと、容姿端麗なヒロインの魅力によって微妙に淫靡さも加えることに成功している。ただし主人公とヒロインの関係性に重点を置くあまり、それ以外の人物や背景による盛り上がりはほとんど皆無であるが、そんなものは大した問題ではない。ラブコメの魅力を暴力的なまでに磨き上げた本作は文句なしの1位である。