18位:かみせん。/百瀬武昭[富士見書房:ドラゴンコミックスエイジ]
かみせん。 2 (ドラゴンコミックスエイジ も 1-1-2)
- 作者: 百瀬武昭
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2010/06/09
- メディア: コミック
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しかしそれ以外についてはさすがであって、「美少女として降臨した守り神(貧乳)」「主人公の幼馴染」「その守り神が主人公の学校にまでやってきてドタバタ」「ノリのいい脇役キャラたち」という使い古された設定をフルに動員した「ファンタジー学園ラブコメ」が自然に機能して、ストーリーが破綻する心配もなく安心して読むことができる。動と静、シリアスとコメディの使い分けも巧みである。ただし2巻まで読んだところ主人公がストーリーに積極的に関わるわけではなくまた「事件の鍵を握る」的な重要な役柄を与えられているわけでもないのが物足りなくもある。これではただの傍観者だ。ラブコメの面白さは「平凡で冴えない主人公」がなぜか事件の鍵を握り、その結果ストーリーを左右する存在になることにあるのだからな。
とにかく本作は角川系が得意とする「ファンタジー学園ラブコメ」であり、マンネリであるが故に安心して読める良作である。ラブコメは常に奇抜で刺激的でなければならないわけではない。マンネリには安心感があり、それを武器とすることも大いにありえよう。常に刺激的なものに囲まれていては安心して眠れない。飽きるまで「お約束」をやればよい。飽きたとしても、またしばらくすれば「お約束」が恋しくなるのは、ラブコメとて例外ではない。
しかし「オジイをはりつけてみました!」は面白かったな。
17位:お気に召すままご主人サマ/いとうえい[秋田書店:ヤングチャンピオン烈コミックス]
お気に召すままご主人サマ 1―今日からアナタ様のメイド宣言!! (ヤングチャンピオン烈コミックス)
- 作者: いとうえい
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2009/08/20
- メディア: コミック
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「ドタバタ」で「主人公が平凡な社会人」にヒロインを投入することでラブコメの平均的な展開となるのはある意味当然であり、安心して読むことはできよう。作者は過去にも日本ラブコメ大賞に顔を出している(2010成年部門3位、2009成年部門7位)のでラブコメが求める平均点はキープできており、そこに薄いとはいえ「メイド」の持つ特徴(ご主人様である主人公に忠実に仕える)を追加してラブコメとしての体裁を整えてはいる。しかし前述したように「駄メイド」を強調するあまり2巻以降はラブコメが求める「ときめき」がほとんど顔を出さないばかりか、騒がしさを強調して主人公はヒロインに蹴られまくる(服を脱がそうとすると「メイドがメイド服を脱いだらいかんのじゃ〜」云々)のであって、これではときめき以前の問題だ。宝の持ち腐れとはまさにこの事だ。少し残念であった。
16位:テツカレ/ハルタハナ[朝日新聞出版:ASAHI COMICS]
- 作者: ハルタハナ
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/02/07
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この主人公は鉄道オタクであり、鉄道以外の世間一般のことにはほとんど興味がないから世間一般では美人でモテるはずのヒロインを前にしても何もしないことになる。そこでヒロインは反発し、自分に興味を示してもらうために過激な手段に出る(「私、逆境であればあるほどヤル気出るから。そのためには手段も選ばないし」)、周囲はヤキモキする…という使い古された展開が用いられているのが本作であるが、使い古されていようがこれこそラブコメの基本であることに変わりはない。そして前述したように「周囲にチヤホヤされる」はずの女が労力を使わなければならず、その労力が「主人公=オタク=読者」のために行われたということで読者は優越感を得る。またヒロインが主人公のことをよく知ろうと率先してオタク趣味(鉄道オタク)に手を突っ込み、しかし何が楽しいのかわからない…でも好きな人の趣味だから…ということで「オタク」と「一般人」の間にある落差もうまく料理しているのも高ポイントである。
しかし作者が女である以上仕方がないことではあるが主人公を含めた男たちにはどこか違和感を感じる。高校生で女性と接することがほとんどないオタクならば実は頭の中はドスケベな事で埋まっているのであり、鉄オタだからスケベでないというわけではないのである。作者が男であればその男の感覚は自然とキャラクターに投影されるが女だとそうはいかず、結局不自然になってしまった。しかしまあそれでもこれはなかなか…と思いながら2巻を読んで恐ろしい事になった。1巻は楽しいドタバタラブコメ路線であったのに2巻でいきなりヒロインに想いを寄せる別の男が出てきて、主人公とその男が2人してヒロインを取り合うことになり、ヒロインはその別の男にも心揺れることになるのである。何だそれは。1巻であれだけ積極的に主人公をかき回しておいて(下着姿になったり唇を奪っておいて)なぜ2巻になったら他の男に心揺らぐのだ。そんなヒロインでラブコメになるか阿呆め。本作は1巻がラブコメであったが2巻で淫売女の物語に堕ちてしまった。1巻を読んだ限りでは3位あたりが妥当かと思っていたが結局この順位だ。2巻はさっさとブックオフに売ることにする。所詮女にラブコメはわからんのだ。
15位:魔界天使ジブリール4/フロントウィング・蒼一郎[秋田書店:チャンピオンREDコミックス]
- 作者: フロントウイング,蒼一郎
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2011/03/19
- メディア: コミック
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だからこそ前巻よりキャラクターたちのデフォルメ感が強いのが少々残念でもある。まあこれぐらいならば愛嬌の範囲ではあるが、そのデフォルメのせいでラブコメに必要な緊張感や修羅場といった雰囲気が抑えられているのが少々物足りない。これではまるで仲良しクラブだ。最初から「同級生と同居してウハウハ」な設定で始まっているから仕方ないのかもしれないが、そうであっても「表面上は仲良く、しかし見えないところで静かな戦いが展開されている…」などにすればよいのであって、やり方はいくらでもあろう。1巻完結ものでそこまで求めるのは酷かもしれないが、ラブコメは奥が深いのであり、心を鬼にして本作をこの順位としよう。
14位:夏の前日/吉田基已[講談社:アフタヌーンKC]
- 作者: 吉田基已
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/02/05
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更に言えば性交渉による対話を淡白に描写することによってヒロインのみならず主人公も活きていない。性交渉とは性欲を満たすことであるが、それが「軽く」処理されているために引っ張るものがないのである。ラブコメは読者の性欲処理も兼ねているのであり、その性欲処理をヒロイン側の積極さに委ねることで主人公(読者)側の性欲を解消させ、且つその性欲をヒロイン側の事情によるものということで後を引かないものにすることが肝心なのである。とは言えこの淡白さによって年上女性との逢瀬という淫猥さや罪悪感が中和され、恋愛関係における初々しいときめきや新鮮さを表現できているのも事実ではある。また主人公の不器用さ(社会と折り合いをつけるはずがいつの間にか外れ、器用にやっているはずが不器用に逆戻りとなって悩む)はまさに大学生特有の贅沢な悩みであるが、それは俺が社会人だからそう思うのであって今の大学生が読めばそれなりに感じるところもあるだろう。そしてその主人公の苛立ちを包んでしまうような年上ヒロインの魅力と、そのヒロインとの恋愛によって夢見心地に浸ることができた。何だかんだでいい作品である。
しかしこの主人公は「美形」という設定なのだろうか。画力というかクオリティ的に無理があろう。
13位:妹・だ〜りん/堀博昭[少年画報社:YCコミックス]
- 作者: 堀博昭
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2010/02/22
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やたら「〜でなければならない」を連呼してしまったのは本作を評価するにあたってラブコメの条件を整理したかったからである。とは言え本作自体は特に難しく考えるような作品ではない。主人公にヒロインたち(妹たち)がやってきていきなり主人公と性交渉に及ぶようになり、「妹」の持つ甘酸っぱさや可愛らしさも考慮せず「妹になりたい」と言って股を広げ、それらは「妹」の持つ神聖さを台無しにしているようでややシラケてしまうものの、一方でその性交渉はねっとりといやらしく、また各ヒロインはやたら「好き」と言って主人公への執着が本物であることを証明しているのでその「ねっとりといやらしい」描写が活き、上々の出来となっている。
しかし後半からが問題であって、盛り上がりを出すためかヒロインの一人が他のヒロインとレズ的行為を演出してしまうのであり、これがまた前半のように「ねっとりといやらしく」なるのだからたまらない。それはやってはいけないのである。繰り返すが、恋愛関係においても性的関係においても主人公がヒロインより上位に立つことがラブコメの最大の魅力なのであって、一瞬であっても主人公以外の人間が主人公より上位に立てば魅力は大幅に減退されるのである。それでも最後は正常なハーレムとなったから良かったが、これではとても10位以内に入れることはできない。残念なことである。
12位:ハッピーネガティブマリッジ/甘詰留太[少年画報社:YKコミックス]
ハッピーネガティブマリッジ 1巻 (ヤングキングコミックス)
- 作者: 甘詰留太
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2010/04/19
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もちろん以上のことはこの「日本ラブコメ大賞」における評価であって、日本ラブコメ大賞にエントリーすらされない糞のような作品に比べれば本作もまた光り輝いている。しかし過去に何度もこの「日本ラブコメ大賞」にランクインされている作者(2005年9位、2006年24位、2009年7位)だから言わせてもらうが、残念ながら本作はラブコメとして中途半端なのである。設定、キャラクター、画力が良ければいいというものではない。それらをまとめ上げて「30にもなって女の経験がない」男を救済しなければならず、たとえヒロインが「主人公好き好き大好き」でなくても何となく主人公に気がある風に描かなければならない。もちろん本作のヒロインが主人公を好ましく思っていることは何となく読者にはわかるが、主人公は「期待して裏切られるのも期待されて裏切ってしまうのも面倒くさい。いや…怖い」という臆病な男なのであり、その男を救済するにはヒロインをもっと積極的にしなければいけなかったのである。ラブコメとは日々劣等感を感じているモテない男のためのものであり、救済の物語なのだ。「モテない男」である主人公(=読者)に希望を抱かせるものでなければならず、その手っ取り早い方法が「空から女が降ってくる」であるが、その方法を取らないのであればそれ以外のあらゆる方法を使って主人公を納得させるべきである。設定を整え、偶然を駆使して、主人公(=読者)に愛を与えてこそラブコメなのである。
11位:思い立ったら乳日/琴義弓介[竹書房:BAMBOO COMICS]
思いたったら乳日 (バンブーコミックス NAMAIKI SELECT)
- 作者: 琴義 弓介
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2010/10/27
- メディア: コミック
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しかし本作の特徴はそのグラビアアイドル(結婚して引退)がとにかく性欲旺盛であることで、最初から最後まで本作は人外のボリュームを誇る巨乳を使ってのべつまくなし夫(主人公)にセックスを要求するだけと言っても過言ではないものであった。もちろんラブコメとはヒロイン側が積極的に出るものであるからこのようにヒロインが淫乱であってもいいのである。更に本作ではヒロインは既に「妻」となっており、ヒロインが主人公とのセックス依存症となっていてもどこか微笑ましさがある。またそれによって夫(主人公)は精神的に優位に立てるばかりか、後半で他のヒロインと性交渉を持っても「元グラビアアイドルで性欲旺盛な妻」がいながら他の女にも手を出せるということで読者の支配欲をかき立てることにも成功している。素晴らしい。これで主人公を暑苦しい奴ではなくもう少しぬるめの性格にしてくれたら1位だったのだが。
ラブコメの融通無碍さは、ラブコメが「男と女がコメディ的な騒動に巻き込まれながら恋愛をする」もので、その恋愛のゴールが多くの場合「結婚」でありながら、ゴール後のステージである「夫婦」という設定でも始められるという点にある。「妻」というどことなく生活臭がする言葉と「ヒロイン」という単語が持つ華やかさは本来両立しないが、既に「夫婦」であることの安心感、「性交渉することが社会的に認められた」ことによる解放感から本作のように妻を淫乱(結婚式の直前にセックスを要求する)にすることで強烈なラブコメに仕立て上げることもできる。ラブコメとは男(主人公)が女(ヒロイン)よりも精神的に優位に立つという思想であるから、「夫婦であること」によってヒロイン側を拘束し(不倫には社会的な制裁が不可避である)、それによって主人公(夫)は精神的に優位となることこそ本来のラブコメの姿なのであり、実は「夫婦もの」こそラブコメの真の姿なのである。
それにしても、乳でかすぎ。