千葉五番勝負(4)古本市場市川鬼高店

 4年越しの彼女と結婚するという同僚に「これでお前も給料配達人や」「人生の墓場に入って良かったね」とさんざん罵詈雑言を浴びせておまけに奢らせて上機嫌で家に帰って寝ようとしたが暑いというよりは湿気による不快度がかなりのものでなかなか寝つけず寝られず久しぶりに土曜日に会社に行かなくてもいいというのにいつもの時間に起きて9時過ぎに家を出ると爽やかな涼しい風に包まれた。俺のように会社のみならず一般社会や電子空間でもゴミ・糞・寄生虫扱いされている者にも自然は対等に接してくれるのだなあと感動して道行く女たちの薄着にため息をついた。若かろうが年増だろうが美人だろうがブサイクだろうがそれぞれが華やかに着飾って大変結構なことだが、俺には手の届かない世界なのだから目の前で展開されてもどうしようもない、というより目障りだ、大体何なのだその厚化粧はと毎度のごとく意味不明なことを考えながら図書館に着いて学習室で真面目に勉強をしていると俺の席の左隣に座っていた男は5分もしないうちに寝て、右隣に座った女は10分もしないうちに席を外して1時間後にどこかのデパートで買った買い物袋を持って戻ってきた。午後になって図書館を出て布団や洗濯物を干すために家に帰ったはいいが午前中晴れていた空は午後になってどんよりと曇っていた。だからと言って明日になれば晴れるのかというとそうでもないようなので仕方なく曇りの中途半端な天気の下で布団・洗濯機を干して、クリーニング屋に行って春もののスーツをクリーニングに出そうとすると俺の前にいたロシア人らしき夫婦(40代後半ぐらい)が受付の女に「アノ、タ、タミ、デ。ハンガー、デ、ナクッテ」「コーノ、カイスーケン、デ」と言っていた。家に帰る途中にある高く聳え立つ高級マンションの入り口から芸能人の誕生日パーティーにでも行くのかというようなスケスケのケバケバの女(23〜25歳くらい)が出てきて、その後ろを歩く男の方は明らかに極道関係とわかる雰囲気を醸し出していた。
 その後昼飯を食べて昨日読み終えたある本の「脱走と追跡の読書遍歴」用の文章を書くが、その本の作者は「俺はもてないもてない」と言いながら「でも、女の友達は結構いる」と書いていた。そうすると女にもてないどころか女の友達すらおらん俺はどうなるのだ、ああ腹立つなあと憤懣やるかたない思いを抱えながら外出したというわけで裏東京毒探偵シリーズとして千葉のどこかの大型古本屋に行くことにしましょう。まあ千葉と言ってもあくまで「裏東京」の延長戦なのだから東京の地下鉄やJRからすぐ移動できるような極力東京側に近いところに行くわけで、本日はメトロ東西線原木中山駅が目的地であり東西線に乗るため門前仲町駅まで歩くことにしよう。


 見て下さいこの天気。「今から雨を降らせるから覚悟しておけ」「今日も湿気を高くして不快指数を高くしてお前を苦しめてやろう」という声が聞こえてきそうな天気だ、嫌な感じだ。ああそう言えば嫌な感じで思い出したのだがブログをやっている人がすべからく非社交的でろくに人と話ができなくて女に相手にされないようなつまり俺のような人ではないのですね。むしろそのような人間がブログをやる事の方が珍しくて、ほとんどの人は社交性があってコミュニケーション能力があって女と対等に話せるわけで、そういう人たちの集まりに顔を出すとえらい事になるというのが最近わかったのですが、あれは嫌な感じであった。メトロ東西線門前仲町駅から原木中山駅、それから北へ15分ほど歩いて京葉道路を走る車を全てストップさせて横断して、県道283号線に出て左に曲がれば古本市場市川鬼高店であるが左側は歩道に木がたくさん並べられていて視界が悪く、右側にそれっぽい建物があったので右側へ歩き出す。



 はて「本」の字が逆さまになっているのはシャレのつもりだろうか。ここは本日のメイン会場である古本市場ではなくブックエーツー中山店であり、我が兵庫県糞田舎の明石にはこのブックエーツーのフランチャイズであるブックマーケットがあって俺も何回も利用したことがあるのでまあ無下にはしないが、入ってみるとブックオフ古本市場の劣化版みたいな雰囲気なので普段買わないようなものでも買ってお茶を濁すことにしよう。16時44分、210円。

 日本で唯一俺が認めているエロ漫画雑誌・「ポプリクラブ」2011年4月号であります。どうせどこかのDQNがコンビニで買ってすぐに売ったのだろう。
 それから283号線を西へ歩いて古本市場市川鬼高店。

 店に入ろうとすると骨と皮だけのような70過ぎであろう老人が出てきた。しかし俺もいつかはこうなるのだろうか…いや待てそんなに長く生きられるわけがないではないか…大体その歳になる頃には東海沖大地震が起きてもう…などと思いながら店内を見て回る。有線では「愛のために〜」「この恋は素敵なあなたに〜」と歌う声が耳に入ってきて、そんなことにうつつを抜かしているから政治を軽蔑して官僚がほくそ笑むのだ、あるいは俺が風俗に行くはめになるのだといつものように支離滅裂の末に買う。17時23分、300円。

かみせん。 2 (ドラゴンコミックスエイジ も 1-1-2)

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 さてこの「裏東京毒探偵」の目的の第一は優れたラブコメを安価で買い、また世にどのようなラブコメが存在しているのかを調査することであるが、第二は知らない街を歩くことでちょっとした観光気分、非日常を体験することである。そのためできるだけ歩き回るべきなのであり、原木中山駅に戻らず更に北上してJR下総中山駅まで向かう。時刻は17時半過ぎ、土曜の夕方の家路を急ぐ人々の中に入って歩いていると俺のこの刺々しい精神も幾分和らぐというものだ。やはり俺にはこういう田舎がお似合いなのだとつくづく思うが、そうは言っても東京のど真ん中に住んで東京で働けと言われている以上はしょうがない。JR下総中山駅総武線であり、特に理由はないが新宿まで行くことにしよう。席が空いていたので座って、錦糸町駅でドッと人が入ってきて、俺の前に立ったのは40過ぎの声の渋いナイスミドル風の男と、20歳前後の女子大生らしき女であった。ナイスミドルは「そこに衝立があるだけで、その空間全体が非常に広がりを持ってね」「黒と白のデザインっていうのはこれだけ強烈なんだってことがね、わかってね、素晴らしかったね」と言い、女子大生は熱心に聞いているというより熱心にそのナイスミドルを見ていた。何だこいつら不倫しとるのか、こういうナイスミドルと若い女という組み合わせが28歳の独身男性としては一番腹立つのだ、そらナイスミドルにしてみればまだまだ若い奴には負けんぞほれ若い女も俺が喰ってやったわと意気揚々というところだろうが、ねえ、腹立ちますよねえこういうの。JR新宿駅で下りて、山手線で目白駅に移動してBOOKOFF目白駅前店。

 前にここに来たのは2009年5月でその時は2年後に生きているかどうか不安だったが花も嵐も乗り越えた俺は今日から2年後もきっと生きていることだろう。そして日本ラブコメ大賞は続けられるのだ、この勢いは大丈夫だと判断して勢いに任せて買う。19時11分、350円。
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 店を出て目白駅に戻ろうとするとアメリカ人らしきグループ6〜7人が楽しそうに話していて、女二人が頬にキスをしたかと思えば今度は男女でまた頬にチュッチュッとやっていた。それを見ていた俺はでかい鼻クソが取れたと素直に喜んでいた。そのようにして今日も生きたのです。では皆さんまた来週お会いしましょう。