- 作者: 岡戸達也
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/09/23
- メディア: コミック
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20歳前後と思われるヒロインは五体満足で恵まれた生活をしてボーイフレンドもいるにもかかわらず「何かが違う」と悩んで悦に入っているただの阿呆スイーツ((笑)も入れておくか)である。一方50歳前後と思われる主人公はまさしく枯れた中年男(既婚だが別居中)であり、「そこだけ(快楽だけ)でいいだろ、面倒くせえ、男と女の機微とか愛とか恋とかどうでもいいんじゃ」と言い切り、用途はわからないがダッチワイフを所持している。俺も是非こんな中年になりたいと思うが、それはともかく阿呆スイーツ(笑)であるヒロインと、自分なりの変態道を行こうとする主人公には理解できない溝が存在するのである。昔主人公に恋したヒロイン(そして今も淡い想いを抱いている)は何とかその溝を狭めようとするが枯れた中年男にとってはもう恋愛事はどうでもよく、若い女に相手にされるのは悪い気はしないが正直言って面倒臭いのであり、その二人のどうしようもない壁を象徴するのがダッチワイフであった。うーん、渋いねえ。
「押しかけ」型ラブコメには「強引で少々頭の弱いヒロインに振り回される」ことで「こいつは頭が弱い(良く言えば不思議ちゃん、悪く言えば阿呆)からこのように強引なのだ」と精神的に優位に立つ快楽がその裏に隠されているが、更に本作の場合主人公を50男に据えたことで「50男に何をやっとるんだこの女は」と感じることもできよう(まあそれはひねくれ過ぎかもしれんが)。そして容易に想像できることだが結局主人公とヒロインの間には何も起こらず何ということもない結末を迎えるのであり、この作品ではそうするしかなかったと言えるし、その結果このような上位でも下位でもない順位になったのもこの作品ではそうするしかなかったと言えよう。
第19位:えむ×えす/さのたかよし[グリーンアロー出版:グリーンアローコミックス]
えむ×えす 上―MOTHER×SISTER (GAコミックス)
- 作者: さのたかよし
- 出版社/メーカー: Bbmfマガジン
- 発売日: 2009/03/25
- メディア: コミック
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本作の場合ヒロインは義理の母と妹であり当然展開としてはエロくなる(特に母ヒロインの巨乳ぶりと過保護ぶりは自慰に使…やめておこう)が、「暴走の一歩手前」で踏みとどまる形で各話を刻んでいるのでエロさは感じられず、しかしながらヤることはヤッているのであるからエロは中途半端になるが、それを「軽さ」という作品全体の勢いで中和しているので非常に居心地が良くなっている。これはハーレムによる居心地の良さというよりは「ハーレムになる直前の居心地の良さ」とでも言うべきもので、常に最後まで行かないながらも美味しいところは頂いてしまうというラブコメの快楽と直結しよう。とにかく本作は文句なしなわけである。
にもかかわらずこのような順位となった理由はただ一つ、主人公が爽やか好青年タイプで変質者をやっつける正義漢だからである。全くもう、この主人公が普通のヘタレ変質者であったら間違いなく3位以内には入っていたというのになあ。うまいこといかんなあ。
第18位:先輩熱/まだ子[実業之日本社:マンサンコミックス]
- 作者: まだ子
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2009/04/27
- メディア: コミック
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各短編の主人公とヒロインの話がいずれも甘酸っぱい典型的な学園ものながらあまり「リア充」の匂いがしないのもヒロインが先輩でありながら先輩っぽくない(大人っぽくない)から主人公がヒロインに協力して何かしら共同作業をしているように見えるからであろう。しかしページを開いて最初に「幼児体型の先輩」「飛び級で年下の幼馴染が先輩に」という回りくどい「先輩」を持ってきたのは理解に苦しむ。これでは特に興味はないがまあ読んでみようという人を追い出すようなものではないか。作者というよりは編集側の怠慢であろう。
平凡で地味な主人公が一風変わった先輩ヒロインに振り回され、やがて結ばれる本作はラブコメとしては合格点であるが、前述したように先輩ヒロインたちはいずれも「もどかしい」先輩ばかりで、それはそれで愛らしいが公的な関係と私的な関係を把握していないので少しチグハグな印象も与える。「先輩」をヒロインに据えたことの魅力とラブコメとしての魅せ方が一致していないのであって、作者個人の「先輩」に対する並々ならぬ熱意は買うがパンチ力に欠けるというのが正直な感想で、決して悪いわけではないがこの順位となった。
あと、この縫いつけたような不自然な乳首は何とかならんかね。勃たんよ。
第17位:よめはいむ/西野映一[実業之日本社:マンサンコミックス]
- 作者: 西野映一
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2010/01/29
- メディア: コミック
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複数のヒロインと関係を持ちながら常に1対1で展開していくことで罪悪感から解放され、その解放感をそのままエロに転化させていることに本作の特色がある。「アパートの一室で主人公とヒロインが暮らす」という設定がそうさせているのであろう。やはりアパートで同棲するカップルというのはいつの時代もエロいのだ。そしてわざわざ上へ下への大騒動を描かずとも設定がしっかりしていてキャラクターが魅力的で主人公が平凡であればそれだけでラブコメたりえるのであるということを再認識させられた。ただし「キャラクターが魅力的」と一言で言ってもそれには二重にも三重にも用意されたエピソードが必要であって(これは後に出てくる「アマガミ」で述べる)、本作ではヒロインたちは現れては消え現れては消えを繰り返し、しかも必ず性交渉をしなければならないという制約があるのでキャラクターの魅力を伝えるハートフルなストーリーは付け足し程度でしかないため読後はほとんど印象に残らなかったというのが正直な感想である。各キャラクターをそれこそ等分に扱っているから薄味となってこの順位に甘んじてもらうことになった。それにしても本作の性交渉シーンは効果音というか吹き出しが多くて読みにくいな。
第16位:ロマンス地獄/むつきつとむ[実業之日本社:マンサンコミックス]
- 作者: むつきつとむ
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2009/06/29
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長々と愚痴を書いたが別に本作を批判したいわけではない。主人公をめぐるヒロイン姉妹(姉は天真爛漫、妹は積極的に主人公にアタック)の駆け引きは両者の主人公に対する真剣な想いが溢れ緊張感がある一方で和気藹々としていてまさにロマンスである。しかしながら途中で姉ヒロインは主人公と関係を結んでおきながら主人公の知人ともヤるのであり、最後に「実は主人公の子供を身篭ったので妹の気持ちを慮ってそれを隠すために別の男とヤッたのだ」と説明され主人公もそうかそれなら一からやり直そうとハッピーエンドで終わるが、やはり少し納得いかない部分があるのは致し方ないだろう。もしそういうストーリーでなければ本作は10位以内は確実に入っていたはずだ。うーん。ラブコメの基本原則を根底から崩しかねないことをされても困るよねえ。
第15位:僕のカノジョは18才/早野旬太郎[日本文芸社:NICHIBUN COMICS]
- 作者: 早野旬太郎
- 出版社/メーカー: 日本文芸社
- 発売日: 2009/11/28
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それは結局ラブコメにおいて主人公をいかに描くべきかという問題であって、本作の場合「30歳の冴えないサラリーマンが18歳のピチピチ女子高生と付き合う」という素晴らしい設定である反面その30歳の冴えないサラリーマンが18歳ヒロインと性交渉をしようとして常に寸止めで終わる、を繰り返すので読者はいつまでも安心して読めないのである。少年誌ならともかく、明らかに少年誌ではない大人向けのメディアを使って散々ヒロインたちの裸を出しておきながら寸止めを常にオチとして使われてもチグハグな印象しかない。もう「寸止め」がショーとして成立する時代ではないのだ。
「寸止め」に限らず、本作では30歳の冴えないサラリーマンが18歳のヒロインと付き合う上で様々な困難(もちろんコメディ的な「困難」)にぶち当たり、常に「ヒロインと別れてしまうかもしれない」という恐怖心が横たわっているが、本来ラブコメにおいてそのように主人公が女性関係において苦痛を感じるのはタブーなのである。他のどんな些細なことでも悩んでいいが、「平凡で地味で女性関係において恐怖心を持つ」はずの主人公が女性関係による不安から解放されることがラブコメの暗黙の了解であって、読んでいてなぜ主人公がこのような情けない目にあわなければならないのかと苛立ちを隠せなかった。
繰り返すが、「30歳の冴えないサラリーマンが18歳のピチピチ女子高生と付き合う」という素晴らしい設定もヒロインの18歳でありながら熟女のような全身これエロい身体もこの苛立ちによって相殺されてしまうのである。またヒロイン以外の女とも寸止め的事件に巻き込まれるが、寸止めであれば他のヒロインと絡ませてもあまり意味がないではないか。ただでさえ正ヒロインとヤれず鬱憤がたまっているのに他のヒロインともできないというのはラブコメにおいては邪道であろう。しかしながら本作が優れたラブコメであることは間違いない。ああ、これが普通にヒロインとヤッておったら5位以内に入れたであろうになあ。
第14位:シカクのセンセ!/板場広志[竹書房:BAMBOO COMICS]
[rakuten:book:13487706:detail]
「お前は長ったらしく難しいことを書いとるが、要はモテない男が棚ボタ的に女とヤることができればそれでいいんだろう」と問われたら「はいそうです」と答えるしかない。しかし俺が難しく書くのはその「モテない男」のモテない度はどれくらいでなぜモテるようになったのか、或いはどれだけ労力を使わずに苦痛を感じずにそれでいて複数の女と性交渉を持つことの違和感を読者に感じさせずにストーリーを展開させることができたかを具体的な事例でもって評価するのがこの日本ラブコメ大賞だから難しく書くのである。一口に「モテない」と言ってもその形態は様々なのであり、「棚ボタ」にも様々な形があろう。それらを馬鹿にすることなく快楽に惑わされることなく考えることが俺の使命なのだ。
というわけで本作の場合だがストーリー云々よりまず作者の描く超スレンダーでありながら爆乳の女キャラクターにどうしても目が行ってしまって物語部分が後追いとなるのが欠点であるが、本作はただのエロ漫画ではないのであり一読するとただヤッているだけに見えるが様々な仕掛けが施されている。
主人公は就職先が見つからないフリーターであり(293社に不採用)、義理の母親(この母親がもうたまらん)が経営するカルチャースクールに通うことになって期待通り主人公は義母ともそれ以外の女ともやるのである。それ以外の女はともかく何故義母ともやるかというと「あの人(主人公の父親、故人)は私の全てなの、だからあなた(主人公)からあの人のDNAを欲しい」からであり、これはかなり上級者向けだがそれはともかくそのようにして「母」が主人公を求め続け(「今からあいつ(主人公)を犯しに行く」)それに逃げながら主人公は彼女をはじめ様々な女とヤるのであるが、強烈な「母」の存在感によってハーレムを意識させず、むしろより一層快楽的な世界を成立させているのである。ハーレムとは主人公によって他のヒロインを一方的に支配する構図であるが、本作の主人公は性交渉をすることによってヒロインを支配する一方で巨大なる「母」の存在を意識しているのであり、支配しながらも「母」に安住することもできるというアンビバレンツな人間関係を堪能できるのである。場当たり的な偶然で複数の女とヤることでその迫力は何倍にも増し、非常に「美味しい」物語と言えよう。それにしても「セクシー」という言葉は作者のためにあるような作画力には脱帽ものである。
第13位:ワケありな彼女/音無響介[芳文社:芳文社コミックス]
- 作者: 音無響介
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2009/11/16
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本作では主人公とヒロインの間にある亀裂(「ワケあり」な彼女の不信な言動)が生じ、主人公は不安を抱くが、本作の場合その主人公の不安をそのままストーリーとしてぶつけ、それがヒロインとの関係性を高めラブコメとしての展開をドラマチックに演出しているところに特色がある。またあくまでコメディをベースとして暗くならない気遣いもなされ、主人公・ヒロインともそれぞれの人生の悩みや喜びをひねくれることなく直球で表現して結末へとなだれ込んでいるので非常に後味の良いものに仕上げられているのである。大体こういう場合(要は主人公とヒロインの喧嘩)は極めて安易に和解して性交渉に臨むのが常であるが、本作ではきっちりと、それまでの二人のどこかよそよそしい関係を総括した上で次なる段階へと進んでいるのも好感が持てよう。
本作はキャラクター描写、作画能力、ラブコメとしてのストーリー展開、エロとしての魅力のどれも平均点ながらそれらを合わせた総合力は固い岩盤のように頼もしいものがある。また最後に収録されている短編もダークでありながら決してバッドエンドではないという衝撃的なもので、こういう漫画に出会うとラブコメの前途は洋々であると嬉しくなりますな。
第12位:れすきゅーME!/巻田佳春[秋田書店:チャンピオンREDコミックス]
- 作者: 巻田佳春
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2010/03/19
- メディア: コミック
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つまり本作はかなり優れた作品なのであるが、後半よりヒロインの1人の従者的位置にレズまがいのキャラクターを放り投げたことでその価値を暴落させている。レズキャラというのは一時的にせよ話の回転を一気に活発にさせる威力を持っているが、ラブコメというぬくぬくとした居心地のいい世界において同性愛キャラというのは本質的に異質で、それまでに作品が培ってきた空気を破壊させる威力も持っているのである。そのためこの作品はそう長くはないだろう。残念なことだ。そして繰り返すように様々な制約の下で性交渉を実行できない主人公と性的に奔放なまでにアピールするヒロインというのは10年前の俺ならば目を輝かせて読んだであろうが今ではそんなに重宝しなくなった。もう若くないということだろうか。とにかくレズが出てきたせいで残念ながらこの順位となった。漫画は総合的なものなのであり、ラブコメもまた総合的なものなのである。
第11位:秘書課ドロップ/春輝[竹書房:BAMBOO COMICS]
秘書課ドロップ (3) (バンブー・コミックス DOKI SELECT)
- 作者: 春輝
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2007/12/17
- メディア: コミック
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曲がりなりにもちゃんとした「会社」を舞台にするわけであるから舞台装置としての会社は我々が日々過ごしている会社とできるだけ近いものでなければならない。「会社」として厳格に存在してこそラブコメの主要舞台としてのヤッたりヤられたり乱交パーティーの場としての価値が出るのである。その点、本作は一部上場企業のサラリーマンである俺が読んでとくに違和感を感じるものではなかったが、本作の優れているところはそこではなく主人公の立場を鮮明にしていることであろう。なぜかはわからないが簡単に身体を許すヒロインに囲まれた主人公はヒロインが簡単に身体を許すからこそ自分の価値について意識し常に一歩引いた立場で現状を把握するのであり、その自身の曖昧な立場が「会社」という巨大な組織を意識させ、その巨大な組織に何かしらの因縁があると思われるヒロインたちと主人公が関係を持つことでラブコメとして非常に広がりがあるものになっているのである。だからこそ主人公とヒロインの関係がなかなか親密なものにならないことが惜しまれる。もしヒロインたちの誰か一人でもいいから「好き好き大好き主人公」タイプにしていれば更に奥行きが広がったはずだからである。曖昧な立場や謎に翻弄される主人公に更に中途半端な関係(身体だけの関係)を押しつけては読者は整理できず、読んでいてどことなく窮屈な感じもしてしまう。そのあたりの気遣いがあれば本作は5位以内となっていただろう。