第20位:奥サマは小学生/松山せいじ[秋田書店:チャンピオンREDコミックス]
- 作者: 松山せいじ
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2008/11/20
- メディア: コミック
- 購入: 1人 クリック: 131回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
主人公は小学校の教師でヒロインは小学生であり、当然主人公はヒロインに対して劣情を抱いてはいけないのだがヒロインのやたらのサービスシーンに主人公の心は揺らぐわけである。そのあたりの作者の絵の巧さは今まで散々このブログで言及してきたので繰り返さないが、ロリコン的なエロと通常のエロ(いわゆる「巨乳」に代表される世間一般でイメージするところのエロ)を同居させておきながらそこに違和感がないのが作者の絵の特徴である。しかしながら本作ではそれが仇となり、お互いがお互いを中和しているものだからインパクトが薄く、結果それぞれを過剰に表現しそれがまた中和され更に過剰にならざるを得ず尻切れトンボで終わっている印象を拭いきれない。
またロリコン系ラブコメの利点はヒロインの主人公への態度の表明がよりストレートに出すことができる点とそのストレートな好意はあくまで純粋な気持ちによるものであるということであって、それによって他のラブコメ作品とは一線を画すことができるし、更に進んでロリエロに走るということも手法としてはあるだろう。ところが本作のように最初から「二人は夫婦でした」で始まってしまうと一番おいしい場面であるはずの「ロリヒロインが主人公を気に入り、次第に二人は周囲とは違う独特の『仲良し』的空間を作ってゆく」がなくなってしまい読む側としてはいまいち話に乗れないのではないか。ヒロインを高校生以上にするならまだしもロリコンヒロインを使っての話の転がし方に少々無理があったのではないかというのが俺の感想である。ロリ方面には疎いので少し辛口になってしまいましたね。
結局エロに徹するならエロに、非エロに徹するなら非エロに徹するという正攻法が総合的には一番良いのであり、どちらも取りにいこうという作者及び出版側のやる気は評価するが中途半端な感じは否めず、20位ぐらいが妥当であろう。
第19位:スイーツ!/しなな泰之[集英社:集英社スーパーダッシュ文庫]
- 作者: しなな泰之,柏餅よもぎ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/09/25
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 17回
- この商品を含むブログ (23件) を見る
本作全体に醸し出される、「俺は2ちゃんねらーや携帯電話小説のようなフニャフニャな文体は使わず、もっとしっかりとした文体を使っている」とでも言いたげな一人称は確かにしっかりしており、「真面目な読書青年」である俺も合格の太鼓判を押すが、所詮ラノベなのであって妄想ばかりしている平凡な高校生を中盤で阿呆のごとく理由もなくスーパーマンに仕立て上げてしまっており(「この一握りの見栄、女の子の前で張らなくて、いつ張ればいい?」「だから、戦うよ。組織だとか面子とかのためじゃなくて、目の前のヒロインちゃんのために」)、まあ世間の穢溜めを知らぬひきこもりニートとその予備軍がラノベを支えているのだから彼らに媚を売らざるを得ないかもしれんが、それでは五年十年も語り継がれる作品にはなりえませんよと一応忠告しておこう。
しかし上記のようなことに目をつぶれば本作は非常に好感が持てる作品と言える。主人公は「妄想力」逞しき高校生であり、その高校生が突如異変に巻き込まれる状況設定やヒロインたちと主人公の関係性は読んでいて違和感なく入り込むことができよう。それだけに主人公の青臭さが気になって仕方がないのが惜しいことだ。大体「妄想」が本作全体を通じてのキーポイントとなっているが、「妄想」はそんなにきれいなものではない。もっとドロドロとしたいやらしく汚いものだ。それをエンターテイメントとして浄化しながらもその「ドロドロとしたいやらしく汚い」という本質を見逃さずに書くことが我が日本ラブコメ大賞には求められるのである。
第18位:せーふく気分/ななみ静[竹書房:BAMBOO COMICS]
せーふく気分 (バンブー・コミックス DOKI SELECT)
- 作者: ななみ静
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2009/02/07
- メディア: コミック
- 購入: 2人 クリック: 114回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
で、作者は俺を成年漫画へと導いてくれた良心的な雑誌「ファンタジイカクテル」(2004年に休刊)がまだあった頃に既にベテランとして認知されていたぐらいのベテランである。とは言え昔は「和姦」を全面に押し出したり「男と女が相思相愛にSEX」という描写がなぜかタブーとされていたのであり(田中ユタカだけが例外であった)、その昔の面影をひきずってか男と女の愛の意思表示が少なくただ漫然とSEXシーンに行く短編もあって不完全燃焼な感じは拭えない。もちろんちゃんとした「あなたが好きよ」→「ほんならまあヤろうか」という短編も存在するし愛情をベースにしながらも一度スイッチが入った女たちの淫乱描写はやはり最近の若いエロ漫画家たちの追随を許さない年季の入ったものであるが(女社長・女上司・隣に住む妹系幼馴染は非常に良かった)、画力の方も女たちの巨乳具合が身体全体では少しバランスが悪かったり表情も終始口が半開きになっていたりしていくら長い付き合いとは言え声を大にして「本作はいいです!めちゃくちゃ興奮します!」とは言えません。
ただしフォローするわけではないが、本作に漂う「明るさ」は非常に自然な感じがするのであって、これはたとえ成年漫画という社会に何一つ役に立たないものであっても同じ仕事を長い長い間やり続けていることからくる安定感と風通しの良さであろう。そういうところも評価してはじめてその道の奥深さを知るのですね俺はね。
第17位:蜜愛フルコース/さきうらら[竹書房:BAMBOO COMICS]
蜜愛フルコース (バンブー・コミックス VITAMAN SELECT)
- 作者: さきうらら
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2008/10/16
- メディア: コミック
- 購入: 1人 クリック: 22回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
男にとって「色気」とは何か。それは男が女を見るとき無意識下で必ず感じる性の感覚であり、もっとわかりやすく言えば「肉感的」なものである。女が女を美しく描く場合は大抵「肉感的」なものが欠け、代わりに「お人形のような」美しさで描かれるのは、女にとっては女が性の対象ではないからである。だから「男を興奮させる」目的で作られる成年漫画に女の出る幕はないのであるが、だからと言って鬼畜凌辱強姦輪姦ホモレズサドマゾが跋扈する現状ではたとえ女が描いたものでも手を出さざるを得ないのである。
しかし大事なことはその作品がいかにラブコメかどうかであって、女の作者によって描かれた本作では男と女がいとも簡単に好き合い最後まで行きそのほとんどの場合女の方が積極的に動きあるいは誘惑する状況であるから十分おいしいのであるが、そのような理由もあってどこか食い足りない。とは言え鬼畜凌辱強姦輪姦ホモレズサドマゾでなければ俺は文句を言わぬ。それに各短編においてはベッドシーンの前の日常的な場面の中でも必ず「見せ場」を作るなど細やかな気遣いも行き届いており、作中で女たちが男に向かって「どうですか?私の身体、気持ちいいですか?」と聞くように作者もまた「どうですか?このエロ漫画で興奮してくれますか?」と聞いているようでこれはこれでありである。
第16位:恋愛ばいぶる/東タイラ[竹書房:BAMBOO COMICS]
恋愛ばいぶる (バンブー・コミックス VITAMAN SELECT)
- 作者: 東タイラ
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2008/11/07
- メディア: コミック
- 購入: 1人 クリック: 80回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
非成年系の成年漫画に求められているのは本書のような「ラブコメを補強するためのエロ」であって、そうすることによって一般誌と成年誌のいいところだけを取り入れることができ、ラブコメの幅も広がろう。「寸止めばかりでは不満だし、エロに特化しては近寄り難い」という読者に本書は最適である。それぞれの道を極めるのも結構だが、同時に常に受け入れやすい中間地帯を用意する本書のようなものもまた、必要なのである。
第15位:ヴァージンげ〜む/藤坂空樹[竹書房:BAMBOO COMICS
ヴァージンげ〜む (バンブー・コミックス VITAMAN SELECT)
- 作者: 藤坂空樹
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2008/06/27
- メディア: コミック
- 購入: 16人 クリック: 2,124回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
作者は3年連続でこの「非成年漫画」枠でランクインしているベテランであるが(2007年18位「蜜(ハニー)な毎日」、2008年7位「ももいろミルク」)、画力やストーリー構成や心理描写それぞれはそれほど高い得点を稼いでいないのに全体を通して評価すれば15位に足る作品となっている。それは「エロにすべし」という掲載誌からのプレッシャーの中で、性行為を挟んだ男と女の関係をゼロから見直し、改めて「エロ」を選択している誠実さによるものである。などと言うと訳が分からなくなってしまうが、要するに作品内では性行為へと至る流れを最小限に抑え、別の視点から(キャラクターの関係性の上から)性行為へと選択する流れを律儀に守っているのである。「誠実」と言ったのはそういう意味からである。
別に俺は従来の「エロ」を頭ごなしに否定しているわけではない。しかしきっかけも理由もなくただ女が裸になって股を開くだけでは漫画としても陳腐であるし何も生まれない。金銭の対価として物語を手に入れる以上、そこに何らかの工夫を期待するのは当然のことのはずだ。「エロ」もまた、分析されなければならないのであり、それを俺はラブコメという方法論からアプローチしているのである。いやに難しいことを言ってしまったが、まあそう思ったのだから仕方ない。内容についてはおしとやかだが積極的な女が引っ込み思案で小さいことにウジウジ悩む男を引っ張ってそして股を開いてオッケーオッケー。
第14位:ろーまじ〜我が征くはぬめりの大海〜/大見武士[少年画報社:YC COMICS]
ろーまじ―我が征くはぬめりの大海 (ヤングコミックコミックス)
- 作者: 大見武士
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2008/12/10
- メディア: コミック
- 購入: 7人 クリック: 23回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
本作は「ローション」を扱ってそれぞれの男女たちのラブコメ模様を連作という形で読者に提供し、当方としてはローションを使おうが使うまいが各短編のヒロインたちがいずれも男に従順であり(プレイの内容は問わない)独特の「甘さ」を醸し出していることで満足である。ラブコメにおいては主人公とヒロインの好いた惚れたの嫉妬策略が強調され恋人関係となり肉体関係となった者同士の気だるい甘さはほとんど表に出てこないが、26歳の大人の男である俺にはそろそろそのあたりも欲しいところなのである。
ところで「甘さ」などと一口で言うがそれを醸し出すためには登場人物たちの関係性から状況設定そして実際の性行為の描写に至るまで微細に気を使わなければならない。なぜなら「甘さ」が有効に機能するためには「場面」が重要になってくるからである。「甘さ」という意識が読者に浸透するためには連続する場面の要所要所でその甘さを表現しなければならず、その間作者は気を抜くことができない。「甘さ」を維持するには男と女の間でいわゆる「すきま風」を読者に悟られてはいけないのだから、よく使われる「雨降って地固まる」転がし方はご法度なのである。この「甘さ」は、流麗で伸びやかなキャラクターたちの輪郭と柔らかさが全身に溢れているような女性たちの身体という優れた作画能力によって生み出されるものであって、もうたまらんわいである。肉感的でありながら人形のように美しく、こういうのを犯す快感というものを(以下略)。
第13位:トラジマ! ルイと栄太の事情/阿智太郎[メディアワークス:電撃文庫]
- 作者: 阿智太郎,立羽
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2007/08
- メディア: 文庫
- クリック: 8回
- この商品を含むブログ (24件) を見る
どこにでもいる平凡な主人公は鬼のシマ模様パンツ(黄色と黒色が交互に入れ乱れている)を手に入れてパーマンのごとく無敵の力を手に入れ、それが縁で活発な(金にがめつい)同級生の女とも仲良くなるのであるが、そのシマ模様パンツのせいで毎日が大騒ぎ、「何でこんな目に遭うんだ!」と叫ぶ主人公だが傍から見ていると実に楽しそうで頁をめくるのが嬉しくてしょうがなかった高校生の頃の胸のときめきを少しだけ思い出すことができました。
以前「住めば都のコスモス荘」を本ブログで取り上げた時に書いた通り、作者の作品はひたすら話をノリよく展開させることにその特色がある。文体や作品の世界設定さえもその面白さのためならどうにでも転がす思い切りの良さとそれに付随するラブコメ展開は印象深くはないものの読者に一時の清涼感を与えてくれよう。強引に次から次へとしょうもない諍いに巻き込まれ一癖も二癖もある周囲の人間たちに振り回され、自分では何一つ解決できないながらも時の状況によって何となく丸く収まるストーリーは非常に懐かしかった。
第12位:精一杯の恋/春輝[芳文社:芳文社コミックス]
- 作者: 春輝
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2009/03/16
- メディア: コミック
- 購入: 26人 クリック: 228回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
一回り以上歳の離れた女と付き合ったり上司の娘をデリヘルの風俗嬢と勘違いしたりと本作の各短編はエロ漫画が一般的に身に着けている「不潔さ」をベースとしている。しかし読み進めるうちにいつの間にかその不潔さが消えているのである。それは結末を清潔(ハッピーエンド)にしたことによるものではない。主人公・ヒロインを問わず線が細く、背景をあまり多様せずバックに白を多く使うこともその一因ではあるが、そこにラブコメ的なコミュニケーションが偶然にも入り込んでいるからである。
ラブコメ的なコミュニケーションとは一言で言えば「通常のエロの形式にとらわれないエロ」であって、エロを性行為ではなくもちろんフェチでもなく男女の愛の対話の一形式として表現しようとすることである。本来不潔で毒々しい話であるはずなのにそこにラブコメ的なコミュニケーションを入れ込んで、その結果起こる矛盾について突き放しながら自然と清潔(ハッピーエンド)に落とすものだから違和感が起こるが、それが良性的な誤算を起こしているのである。作者にとってはただの偶然であるが、その偶然を引き起こしたのは作者であり本作である。会話を少なく、モノローグをやや雄弁にして実際の会話による男と女の関係性の浮上を抑え、より深いところ(性交時)での二人の「繋がり」を意識させるところも良い方向に動いた要因であろう。深く読み込めば読み込むほどラブコメの楽しさは二倍にも三倍にもなることを本書で再認識した次第である。
第11位:歓迎!未亡人横丁/えむあ[少年画報社:YC COMICS]・大歓迎!未亡人横丁/えむあ[少年画報社:YC COMICS]
- 作者: えむあ
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2008/10/08
- メディア: コミック
- 購入: 1人 クリック: 24回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
- 作者: えむあ
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2009/09/28
- メディア: コミック
- 購入: 1人 クリック: 46回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
使い古された陳腐な設定、というのは別に悪い意味ではない。未亡人兄嫁というのは「タブー」を表している。そして我々読者は日常生活で多かれ少なかれタブーというものを意識しているのであり、単に女と肉体関係を結ぶだけで何かしら後ろめたい感覚に陥ることもあるのだから、兄嫁との肉体関係なら尚更である。その後ろめたさを払拭するために主人公は兄嫁のみならず様々な女性と関係を持つ(エロ漫画のセオリー通り)のであるが、身体を開く女性たちによって後ろめたさがなくなり、やがてまた後ろめたさが主人公の心理に浮かんでくると再度肉体関係を結ぶという二重構造となっているのである。とは言え別に本作は病的なわけではない。あくまで軽いコメディをベースとして主人公対多数のヒロインたちというハーレム関係を築き上げるのであるが、ここには快楽の根源に罪があり、罪を忘れるため更に快楽を求めるという相反する普遍的な行動が認められ(そんなことを認めるのはお前ぐらいだと言われそうだが)作品世界から目が放せない。そのような妖しい展開の上に描かれるヒロインたちの裸や裸エプロンや性交シーンの艶かしさは実際に描かれる性交以上の効果がある。もちろん作者はそんな大それたことをやるつもりはなくただのハーレムエロ漫画に少し深みを与えようとしただけであろうが、作品は作者の手を離れ読み手の者となった時、より自由な解釈が生まれるのである。