特別編 裏札幌毒探偵突撃古本屋(2)

 何度も言っているように俺はホテルに泊まる場合必ず「朝食付」のホテルに泊まることにしていて、何故かというとあのバイキングというやつに幼い頃から憧れていたからである。とにかく焼魚だろうが野菜だろうがハンバーグだろうが何でも食べてよいというあのシステムが貧乏人の家庭に生まれた俺には衝撃的であったのだ。そのためなら1億4千万円払ったところで悔いはない、命を懸けた男の戦いが始まるのだというわけで8時に起きて肉じゃがだのイワシだのスクランブルエッグだのをけだもののように食い食われたのである。驚くべきことにはカレーもあったのでこちらも大いに食べた。昨日の昼も夜もカレーだったことは気にしなかった。
 ところでこのホテルでは北海道新聞を無料で配っていて、一面には「民主300議席うかがう勢い」と書いていた。うーん、ほんまかいなと更に紙面をめくると「北海道小選挙区情勢」というものがあってこれは大変面白かった。ここ北海道は小選挙区が12もあるのだからこの地域が国政に与える影響は馬鹿にならないのであり、それを地元新聞ならではの詳しい分析で見ることができるのだからいやいい時期にいい場所に来たものだ。やはり日頃の行いがいいからだろうなあ。ついでに彼女の一人や二人降って湧いて来ませんか。
 新聞を読み耽っているうちに10時となり毎度お馴染みのサンデープロジェクトを見るが、ホテルの楽しみの一つは「BSの海外ニュースや海外ドキュメンタリーを見る」ことであるのでチャンネルを変え続け(海外ドキュメンタリーでアメリカの中高生の更正学校の生活が放送されていた)、たまにペイチャンネルも見ながら(「人妻ナンパ中出し何とか」「女子トイレ盗撮何とか」)快適な時間は光よりも早く過ぎて11時45分となり、フロントにキーを預けていざ出陣である。ちなみに横浜時と同じくフロントは女一人だったのでこれまた横浜の時と同じく「天気予報、どないや。何か雨降るって言ってたけど」と言うと30過ぎであろうそれなりの女は艶然と微笑んで「ええ、夕方頃から降るらしいですけど、大雨にはなりませんよ。では、行ってらっしゃいませ」と言ってまたニコっと笑った。俺は恥ずかしくてそそくさとその場を去った。何がしたいんでしょうねこの人は。
 さて前日に「真面目な読書青年」となって紀伊國屋書店に行ったわけであるから、本日は阿呆のごとく阿修羅のごとくブックオフじゃラブコメじゃと騒ぐことにしよう。何でもこの札幌から目と鼻の先にある大通にはまんだらけとらのあなやBOOKOFFが集中しているそうなので、まずはそこから攻めてみよう。
 大通方面へ向かうと時計台やTVタワーや噴水が高く噴き出している公園があり、特に興味はなかったが一応写真を撮ったのでどうぞ。



 ちなみに↑の後方に少さく映っているのは公明党選挙カーであり、公園に大音量が響き渡っていたがあまりに大きくエコーもかかって何を言っているのかさっぱりわからなかった。近くに寄ってみても「コーメートーのーファーンファーンーがーコーメーファーンファーン」と何やら筒井康隆の小説みたいだが本当にそんな感じであった。更に歩くと「明るい選挙推進何とか」のタスキをかけた女が「みんな投票しよう」と呼びかける広告の入ったティッシュを配っていて、俺はティッシュを貰う時「それ公明党にとっちゃ選挙妨害に等しいぜ」と小声で言っておいたが、さて意味がわかるかな。
 というわけで第一歩はまんだらけ札幌店である。コスモビルの5階であるが、このコスモビルの1階から4階というのが駅前のショッピングモールのようなちゃらちゃらとした、要は服や化粧品といった女向けの店が並んでいる空間であり、それが5階に上がったら「まんだらけ」がデーンと陣取っているのだから立派なものである。ただしちと狭いな。三宮の超書店MANYOを半分ぐらいにした感じか。あ、俺今すごい的確な事言ったよ。

 うーん、天下のまんだらけであるから品揃えが申し分ないのは当たり前だがもしかしたらここが札幌で一番良いところなのではないか。やはり最後に行く店こそ一番良質な店でなければならないが、まあそのへんはBOOKOFF探検家世界のラブコメ王政局忍者の腕の見せ所ということで買ったのはこちら。12時36分、367円。

鬼龍院冴子探偵事務所 3 (ビッグコミックス)

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 レジでは俺の前にいる太った女がかご一杯にホモホモ同人誌を入れており、二人の男の店員はそれを見て目を剥いていた。5分近くかかって店員が「33点で、2万8千2百円になります」と言うと、もう一人の店員と俺は思わず目を合わせた。そりゃ「腐女子ビジネス」が新産業だと騒がれるわけだ。俺なんか昨日と今日足しても5千円ぐらいしか使ってないんだからなあ。
 さてコスモビルを出て東へ時計台通を突き抜けると確かメロンブックスがあるんだよなあと歩いてすぐに見つかるが、これがもう驚いた。何と、BOOKOFF札幌南2条店とメロンブックス札幌店は隣り合わせであったのだ。うへえ。ええのかそんなことして。

 更に更に、メロンブックスのすぐ隣りにはとらのあな札幌店があった。大丈夫なのだろうか。食うか食われるかのライバル店同士だろう。それとも何か棲み分けが行われているのだろうか。

 で、まずはBOOKOFF札幌南2条店にします。さすが北海道中心部・札幌の中心にあるだけあってなかなかの品揃えである。店の雰囲気がどことなく自由が丘駅前店を彷彿とさせる上品さであっていやしょうがないだろうそういう比較しかできないんだからさあそれしか考えられないんだからさあ俺はなあんにも悪くない悪くないで買ったのはこちら。13時34分、246円。おお350円でないところが素晴らしい。 さてお次はメロンブックス札幌店である。いつも秋葉原メロンブックスに行っとるくせに札幌に来てまで何しとるんじゃというやつがいつの世もいるので無視するとしても何というか広さと狭さというやつが絶妙なバランスで配置されている店である(何じゃそら)。いや言わんとすることが何となくわかってくれたらいいのだが、とにかく気に入ったということですよ。見本誌が半分までとか3分の1までではなく全部見れるのもいいですね。そして「夏コミ同人誌入荷!」と書いた紙が貼ってあったのでまあ俺はビックサイトまで自転車で行ったんやけどなとこんな時だけ都会人面する我が罪をお赦し下さいマリア様、どうしてあなたはあんなレズどもを殺さないのですか(いや一度言ってみたかっただけです)。14時7分、1050億円。
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 続いてとらのあな札幌店である。とは言うもののさっきメロンブックスでじっくり見ておるのだから別にここに来て新しい発見があるわけでもないのでやりにくいが、場違いな茶髪の男二人組がいて大きな声で喋っていた。「ここオタクの王国だろ」「そうだなあ」「俺はこの漫画家たちに言いたいね」「何を」「萌えに頼るな、と」。うん、ある意味で正解かもしれんがここではお前らに何がわかると言い返しドロップキックをかまして買いました。14時31分、1400億円(は。1400億円。普通980万円とか1050万円とかじゃないの。ははあCD付の初回限定版ですか。いや俺はそういうの嫌いなんやけどなあ。まあ仕方ない)。
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 というわけでまだ地下鉄に乗ってもいないのに気が着けば14時半を過ぎているのであって、果たしてこれで古本市場・BOOKOFFを5店以上訪れることができるのだろうか大いなる不安を抱えながらも「なか卵」で親子丼とミニうどんのセットを食べながら(朝あれだけ食っておいて)次回に続きます。