特別編 裏札幌毒探偵突撃古本屋(1)

 このように電子空間において俺のような極悪犯罪人(前科なし)の書いた文章を発信できるのであるから、その文章は謙虚にして明快、客観的で合理的な視点によって書かれたものでなければならないことは承知しておるが、一方で俺はもはや存在自体が凶悪犯罪的(前科なし)とまで言われ、身なりのいい同世代の男たちを見れば「この合コンまみれの糞阿呆が」と思い、道行くカップルを見れば「お前らは生ゴミより汚い」と思い、家族連れを見ては「これからお前らはその子供のために金を湯水の如く使って破産するのがオチだ」と思うのであるからそんなことを書いても仕方がないからさてどうしましょうということであり、結局「兵庫県糞田舎で怠惰と惰眠を貪るはずの阿呆が何の手違いか見目麗しい東京にやってきて、その上一人旅に行くのはいいが観光名所など見向きもせずブックオフとか古本市場にしか行かない」最新シリーズ・札幌編が8月22日土曜日より行われたのであった。
 2007年11月新潟より始まったこのシリーズは広島(去年8月)、名古屋(去年11月)、横浜(今年3月)と回を経て今回が五回目であり、車を使わないですむ公共交通網が整備された地方都市に行くのであれば当然次は札幌ということになろう。ちなみにこの時期に行くことは今年3月の横浜遠征の時から決めていたのであって先日取り上げた「雪の断章」に感銘を受けたからではありませんが、どうやら俺のようなキモオタが真面目くさって「雪の断章」を読むことは佐々木丸美ファンにとっては恥辱にも似た行為らしく非常に悪意のあるメールが来て俺は大変満足したものである。まあ俺は真面目な読書青年だから仕方ない。
 と、ダラダラと書いてはまた目的地に着く前から疲れてしまうので当日の動きを書くと「金曜の夜は上司先輩同僚後輩と飲まなければサラリーマンではない」という信念を持つ俺は上司を誘ってコーラを4杯サイダーを3杯飲み、日が変わった0時半頃帰宅し「タモリ倶楽部」を見て風呂に入って寝て起きたのは9時でありそれから布団を干して掃除機をかけてクリーニングへ行って家に帰って干したばかりの布団を戻してそれから自慰を(以下略)。お、久し振りに(以下略)が出ましたね。いやあ「グッバイ風俗」計画のおかげで出費を抑えることができても肉の欲がくすぶる26歳の男の自慰は抑えることができませんからねわっはっはっはっは(以下略)。
 17時40分発の飛行機に乗るため15時半に家を出て、向かうは羽田空港である。俺のような貧乏臭い男は「出来るビジネスマンや旅行慣れした憎らしい若者たち」が使用するイメージのある飛行機を使ってはいかんのであって新幹線やバスやフェリーを使った方がいい事はもちろん承知しているが、スカイマークでは一ヶ月以上前に購入すると1万5千円ですむから仕方がないのです。今や新幹線やフェリーの方が割高なのであって、スカイマークの東京−神戸など9800円でいや全く市場原理主義万歳ということですかな。もっと安くしやがれぬわははははははは。
 飛行機で真ん中の席に座っていると窓側に座るであろう女がやってきたので一旦通路側に出たところ、女は小さく舌打ちをした。ブサイクだったのでどうでもよいと思ったが、たとえ美人であろうとそんな女を許してはならんのだと思い、「俺のように普通では女に相手にされない男が金で女を買うことは論理的に正しいのではないか」という最近作り上げた哲学をめぐって深く熟考しているうちに着きました。おお。もう北の大地か。

 ここから電車で40分で札幌であり、電車内は空いていて席に座って読書に勤しむが、後ろの女子大生らしき女二人が「函館は無理だって」「何でよ、あたし夕張でもやったもん」「ええ、嘘だあ。じゃあ釧路は」などとかしましく喋り、窓の外では我が糞田舎でも東京でも通じる平均的な日本の景色が続いていて今更ながら札幌まで来てしまった自分の阿呆さ加減を身体全身で感じることができた。俺に足らないのは自分を阿呆の糞袋と認識する徹底的に冷たい視点である。その後ウトウトと眠り、あっという間に札幌に到着。

 そして駅を出て、その涼しさには驚いた。周囲の人も東京と何ら変わらぬ半袖の薄着であるが、湿気がほとんど感じられず風も結構強く吹いていてクーラーの効いた部屋にいるようなのだ。ふと見えたビルには大きく「今日の気温:24.5度」の文字が見え、家でいつもクーラーの温度を25度に設定する俺は時に肌寒く感じたものである。東京でも夜は涼しい場合があるが、ここではジメジメとした湿気がほとんどない。
 駅から大通方面へ歩いて5分のところにあるビジネスホテルでチェックインである。特に高級というわけではないが2泊で1万4千円(朝食付)であり、俺のような乞食一歩前の貧乏人が何をしておるかと自己嫌悪に浸っているとフロントの男が急に小声で「お客様」とまるで殺し屋に人殺しを頼む時のような険しい顔つきになったので俺も「何かね」と言い返した。
「実はですね」
「うん」
「当ホテルではですね」
「…」
「2泊以上お泊りのお客様にですね」
「…」
「特典として、ペイチャンネルカードを無料で差し上げているんですよ。今日一日分はこれでして、明日の分は、明日外出からお帰りになったら渡します」
 そんなわけで部屋に荷物を置いて早速札幌の街を歩こう。札幌と言えばすすきの、すすきのと言えば風俗であるが、真面目な読書青年である俺は真面目に明日ブックオフ等を訪問するのであるからおとなしくして(何せ自慰を2回もしておるのだ)、今日はちょいと肩慣らしということで紀伊國屋書店札幌本店へ足を運ぼう。

 ほう。これは東京の丸善のようですね。ところで俺は今回も「A書店ですか。B書店のようですね」「C書店ですか。D書店のようですね」と言いますが、これは「トヨタの自動車ですか。ホンダの自動車のようですね」「ソフトバンクですか。auのようですね」と言っているに等しいので支離滅裂もいいところなのだがまあ腐った性根は死ぬまで治りませんので手遅れですね。ちなみに俺の前を歩いていた20歳代前半くらいの女が急に振り向いて俺に「外より店の中の方が暑いね」と言って俺はもう本当に吃驚仰天したのだが何のことはない俺の後ろにいる男に言っただけであった。お前さっきから何をしとんのや。
 それにしてもですよ、最近の文庫本はどんどん文字が大きくなってきて読みにくいことこの上ないわけです。今日の俺は会社から違法に入手した500円分の図書券カードがあるのだから何でも買えるというのにこの体たらくではどうしようもないではないか。大体「小説?そんなもん読まねーよ」などと阿呆丸出しでチンコとマンコをさらけ出している道行く男女たちが文字を大きくしたところで急に読むわけがないのであって、このままでは一番文字が小さいのは実は電撃文庫でした、という事態になりかねんぞ。そんなわけで買いました。20時46分、459円プラス図書券500円。

スターリン秘録 (扶桑社文庫)

スターリン秘録 (扶桑社文庫)

 というわけでやたらと結婚式帰りの着飾った青年男女(もちろん俺が憎悪と憤怒の視線でもって彼らを焼き殺した)が多い人々の群れを匍匐前進でホテルまで戻り、明日に備えて休んだのである。とは言えホテルではBSが見放題であり、アメリカの「student News」なる番組が公的医療制度改革について解説していて、キャスターがハイテンションで身振り手振りしていても同時通訳の声は淡々と「それでは次のニュース」「では今日はこのへんで。明日お会いしましょう」と言うのが何ともNHK的で良かった。その後、土曜の夜はいつもCDTVを見るはずが陸上オリンピックとやらでないということなのでペイチャンネルカードを使ってアダルト何とかを見るが(チャンネルが3つあった)、二次元エロ漫画への探求のみならず実際に風俗に行って幼児プレイやSM(ソフトなやつね。ハードは無理)まで体験済みの俺にはどうも阿呆らしく、眠くなってきたので0時半にはもう寝たのである。次回、いよいよ裏札幌毒探偵突撃古本屋であります。