勝者と敗者、与党と野党

 というわけで皆さん、あけましておめでとうございます。今年も独自の視点と言いますか被害妄想自意識過剰と言いますかとにかく流行や世論や常識に惑わされず自分だけの道を歩んでいけたらと考えておりますので早速いつものように毎月1日に更新する「政局好色」に入っていきましょう。いやもう「俺の人生にとって2009年とは」とか「この糞ブログも5年目に突入しまして抱負としては」とか言っても仕方ないしねえ。俺も今年26歳になるのだからねえ。20代後半というやつか。一体俺はこの先どうなるのでしょうね。
 一般に「既得権益」と言うと何か非常にいやらしい、意地汚いもののようなイメージが我々にはインプットされている。官僚は自らの権限や天下り先といった「既得権益」のために我々国民の税金を云々かんぬんなのであり、全くおいしい思いをしやがってうらやましい、ではなく許せませんというわけである。また議員の既得権益についてもよく言われる。国会が開いてようが閉まってようが給料がもらえて年金はたらふくもらえて都内絶景の格安の宿舎に住むことができるのでこれまたうらやましい、いや腹立たしいというものである。
 これらの既得権益について特に言うべきことはない。けしからんですよ本当にけしからんですねえと言う諸君だがもし自分が官僚や議員だったらこの既得権益をとにかく守ろうとしがみつくのは火を見るより明らかである。「大企業の社員に福利厚生制度があるように俺たち官僚や議員にもうんたらかんたら」と。ものは言いようであって、結局これらの既得権益は善悪で判断されるものではなく官僚や議員の力が弱ければ撤廃されるし強ければ存続するというそれだけの話である。それよりも根深い問題は現在の与党議員が与党であることの既得権益固執しているということであって、そのため現与党である自民党公明党という毒を平気で呑んだし、野党に転落する危機を救うために首相を一年でコロコロ代えることも平気で行ってきた。更に自らが選んだ首相が世論の受けが悪いと見るや率先して批判する始末である。全ては選挙で勝ち、民主党に政権を奪われてなるものかという議員心理によるものである。
 野党に転落すれば一体どうなるのだろう。予算権を失い、官僚はソッポを向き、情報は向こうからやってこない。当然野党議員に陳情するわけがないから選挙民も白い目で見ることになろう。今までふんぞり返って「俺は与党だぜ。公共事業とか補助金とか、とにかく金が欲しけりゃ俺に票を入れろわはははは」と言っていたのに今度は平身低頭して「野党です。ええ、実は票が欲しくてですね、今日はお願いをしに参ったというわけでして」と言わなければならないし、どうして野党の私に票を入れるべきかをレベルが高いとは言えない選挙民に説明しなければならないのである。与党の議員は実にこれが嫌で嫌で怖くて怖くてたまらない。今まで散々うまい汁を吸ってプライドを肥大化させてきたのだ。今さら裸一貫で立ち上がることなどできるわけがない。「勝てば官軍」という言葉があるが、政治の世界はまさしく勝つことがその行動原理の一切なのである。そしてこれこそ日本政治の欠陥の原因とも言える。
 そもそも「勝者」と「敗者」は一度きりの戦いで決まり、それっきりなのだろうか。いずれ勝者が敗者に、敗者が勝者となるのが世の常である。麻生が総選挙を先送りしたのは「負けるかもしれない」というただ一点であった。それ以外に先送りした理由が見つからない。しかし負けたところでそれは一瞬のことである。衆議院民主党過半数を獲得したところで参議院単独過半数ではなく、国民新党社民党を取り込まざるを得ない。その隙をついて野党となった自民党が反転攻勢に出ることは容易であり、どさくさに「寄り集め世帯」の民主党を分断させることだってできるのである。その間に野党の悲哀を味わい尽くせば与党の威光に頼らない本当に強い政治家が出てくるかもしれない。そうすれば組織の建て直しもできる。その方がこの際いいのではないか。与党がいつまでも与党であり野党がいつまでも野党であるわけがないのだ。そんなことは歴史を見ればすぐわかることだ。
 で、実際のところはそんな度胸もない首相と与党が右往左往しているわけである。選挙すれば互いの政策を非難中傷できるのに選挙しないものだから当然政府与党案が狙われ(実現するか可能性がほとんどない野党案に構っている暇はない)、受けが悪いと知るや与党議員が批判し支持率が低下し更に批判するという悪循環。これは間違いなく末期症状である。与党が永遠に与党でいられるわけがないのだ。もう一度言うが、すぐそんなことは歴史を見ればわかることではないか。
 自民党は一旦野党に転落して反転攻勢に出ればいいだけの話である。たかが4年くらい野党でいたって構わないはずだ。安倍の退陣劇でおわかりのように、日本人は「若くして権力を握って好き勝手にやる奴」が大嫌いなのだから、政権を取った途端民主党は嫌われ、何もしなくても政権はまた自民党に転がりこむだろう。勝利と敗北、それは結局同じことなのである。