特別編 裏名古屋毒探偵突撃古本屋(4)

 眠りについたのは3時前にもかかわらず8時の目覚ましが鳴る前に俺は起きた。11月23日、俺は「名古屋大型古本屋10連続訪問」という前人未到・驚天動地・意味不明・理解不能・精神病院な大イベントを行うのであり、若き血潮がたぎり足の小指をベッドの角にぶつけたのである。そんなことはともかくホテルの醍醐味はやはりNHKBSの海外ニュースと食べ放題の朝食だということでさっそく1Fのロビーに下りていったのだが、恐るべきことにその朝食というのが小さいパンと細長いパンとポテトサラダとよくわからんソープとコーヒー・トマトジュース・オレンジジュースのみという大変貧相なものであった。いやバイキングにしろとは言わんが、せめて広島の時のようにおにぎりとパンどっちか選べるぐらいはしてほしいではないか。特に今日は7〜8時間は歩き回るという大変エネルギッシュな日なのであり、こういう時は軽く食べる感じのパンではなくやはりおにぎりと味噌汁をたらふく食わねばならんのだ。ご飯を持ってこい
 結局小さいパンと細長いパンを二つずつ、バターをベチャベチャつけて食べオレンジジュースで流し込み、別のロビーで新聞を読んで部屋に戻れば9時、いつものように「ゲゲゲの鬼太郎」を見て(しかしだいぶ飽きてきたな。やはりお子様向けだものなあ)NHKBSの海外ニュースを見て(ドイツのニュースでフランスの社会党党首選について放送されていた)あっという間に10時となりサンデープロジェクトを見ながら時々眠りこれまたあっという間に11時45分となったのである。いやに時間が早い感じがするな。これが戦う前の戦士の時間の何とかというやつか。
 ホテルのロビーに鍵を預ける時なかなか美人の受付の女に「いってらっしゃいませ」と言われ何となくいい気分となって向かうは名鉄名古屋駅である。しかしこの人の多さといい建物の風景といい三宮そっくりの印象を受けるなあ。またそんなことを言うとるわ。

 名古屋地下鉄網は東京並みとは言わんが大阪並みの複雑さと緻密さを持っており、早い話が大都市なのである。これならば広島のように「電車でBOOKOFFに行く奴は俺ぐらいだろうなあ」という孤独感と阿呆らしさを感じなくてすむであろう。というわけで名鉄名古屋駅からまずは金山駅へ行く。おおいかん阪神電車に乗っているような気がしてくるがここは名古屋である。電車が来るといきなり「特別車両」の文字が飛び込んできて面食らうが、あれは何ですか。

 名鉄金山駅から地下鉄名城線金山駅に乗り換えるのであるが、切符を買おうとすると「ドニチエコきっぷ」なる一日乗車券のポスターが目に入る。その額何と600円であり、まさに今日一日かけて名古屋のBOOKOFFを回る俺のためにあるようなものではありませんか。そうかそうかそんなに俺が好きか。とりあえずセーラー服を着なさい。文句は言わせないぜ俺は600円払ったんだからなぐへへへへ(以下略)。というわけで名城線左回りで伝馬町駅へ一瞬で着き、2番出口から地上へと出て向かうはBOOKOFF熱田国道1号店・記念すべき第一関門である。

 写真で見てもイマイチわからんだろうがこれがまあごっつ大きいんですわ。いやあびっくりしたね。俺が敬愛してやまない兵庫県糞田舎のブックインザスカイ(仮称)の1.5倍くらいですわ。まあ大型店舗なら品揃えがいいというわけではないのが俺の憎めないところであるが品揃えの方もかなりのものであって、まさに前途は洋々である。というわけで買ったのはこちら。13時27分、250円。

 日本ラブコメ大賞2008の中位は狙える良作である。ちなみに本と一緒に結婚相談所の広告はがきを入れられたのだがこれはこの前の結婚相談所と同じやつやないか。
 伝馬町駅へ戻る途中いかにも「ボクタチ、浪人生」という風なすれっからしの集団が集まって何やら話している中を歩いて伝馬町交差点に出るとおなじみのココイチの看板が見えたのでカニークリームコロッケカレーを大盛りで食べ(だから太るのだ)、次に向かうのは同じく地下鉄名城線(左回り)の新瑞橋駅である。ちなみに今日行く大型古本屋はBOOKOFFのみで古本市場他はない。名古屋地下鉄網の中に古本市場他はないからであって、名古屋はBOOKOFFに牛耳られているのである。というわけですぐ新瑞橋駅に着いて7番出口を出てまさに目の前にあったのがBOOKOFF新瑞橋駅前店である。いきなり出てくるな。びっくりするではないか。

 ふーむ。小型店舗だが3Fまであって品揃えもまあまあというところか。この前行ったBOOKOFF喜多見駅前店を彷彿とさせるが、さっき行った熱田国道1号店から打って変わって人が少な過ぎる気もする。日曜日のまだ14時なのだ。雰囲気が殉職した古本市場AKIBAPLACE店のようで、名古屋の皆さんお気をつけください。しかしそれはそれとして、日曜の昼に大型古本屋をブラつく自分は何と恵まれているのだろうとも思うのである。そして買う。14時40分、350円。
おまもりひまり3 (角川コミックス ドラゴンJr. 101-3)

おまもりひまり3 (角川コミックス ドラゴンJr. 101-3)

 日本ラブコメ大賞2008の下から数えた方が早い作品ではあるが、軽んじてはいけない。やはり巨乳はいいものだ。あの、「きょにゅう」で変換しても「居乳」になってしまうんですが。
 新瑞橋駅へ戻り、またしても名城線(左回り)で八事駅鶴舞線に乗り換えて次に向かうは平針駅である。八事駅ではやたらと高校生が多くまあ特に何も感じなかったが今もその時のことを覚えているということは無意識の俺には何か感じることがあったのでしょう。まあ今の経済状態ならあの頃欲しかったものが買えるからね。しかし今思うとその欲しかったものの大半が糞だったからあれで良かったんで、結局今を楽しむしかないということですかな。
 平針駅にもすぐ着く。結局東京や大阪と同じで、そこかしこに地下鉄網がひかれているということなんでしょうなあ。そしてその駅のすぐ近くにある大型古本屋。俺のためにあるようだ。ん。ちょっと待て俺は兵庫県糞田舎のように自転車を走らせて大型古本屋を訪ね歩く方が好きなのではなかったか。いやまあ東京にいる間は東京の良さがあって糞田舎には糞田舎の良さがあるということにして、BOOKOFF名古屋平針店。国道302号線沿いである。

 今日全体を通じてこの店の品揃えが一番良かった。まさにこの名古屋攻防戦のピークであり、既に疲労の片鱗が見えていた俺の身体だがこの店を出た後から不思議と疲労を感じなくなっていくのである。俺は何をしているのかとかこんなことをして何になるとか考えることの方が非常に阿呆らしい考えだとさえ思えてくる。 こちらは久々の事前マークなし・飛び入り参加・世界のラブコメ王の千里眼によるものである。15時44分、350円。エロ扱いするか一般扱いするか、それが問題だ。
 平針駅から鶴舞線八事駅まで戻ってその次の駅であるいりなか駅へ行き、改札を出ると急に便意を催し下痢気味の大便を心ゆくまで吐いてさてと見回してトイレットペーパーがないことに気付き、畜生めタダでうんこができると思うな金出せというやつかまあいいこんな時のために俺は…こんな時のために…こ、こんな時のために…(以下略)。
 向かうはBOOKOFF名古屋杁中店である。国道153号線を歩くと「がんばれプラトン生!」という看板が目に入り、プラトンという名の学校か塾でもあるのかと周囲を見渡すがそれらしいものはなく、続いて三省堂書店の文字が目に入りおやこんなところにと思ったがよく見ると「三洋堂書店」であった。その三洋堂書店の真向かいにBOOKOFF名古屋杁中店はあった。

 こちらも品揃え的になかなかのものである。それに広い。まあ東京が狭すぎるのだろうが、やはり入る前のドキドキ感が全然違うのであって、同じ女でも髪が短いと長いでは全然違うのと一緒とかそういう風な例えは俺には一生無理だろうがさりとて風俗の女について語るのも品がないしなあ。というわけでこちらを買う。17時10分、105円。 もちろんどんな状況であれラブコメを狩り続ければいいのだがしかしそこは計算高さといやらしさでは右に出る者はいない俺はちゃんと計算してラブコメと非ラブコメのバランスを考えた上で購入しているのである。まあ一生の趣味ですからな。次行く店のこともあるしねえ。
 駅に戻って次なる目的地は上前津駅である。となると名古屋の皆さんご存知の通り今から行くのはまんだらけ名古屋店であります。これはもうあのまんだらけのことであるから何でも揃っているだろうから前の店ではわざと非ラブコメを買いこのまんだらけでの購入に一層のインパクトを与えることができるのである。しかしまんだらけってのは東京でも大阪でもそうだが商店街の中に店舗を持つのが好きだねえ。大阪が阪急東通り商店街、東京が中野ブロードウェイでここ名古屋では大須街天地通りにあるらしい。

 結構長い商店街である。しかしオシャレというよりは姫路とか淡路(大阪)の商店街のような庶民的な親しみやすい感じが醸し出されいて非常によろしい。そして特に番地など確かめなくてもある確信をもってどこにあるのかわかるのが不思議。俺と同じような肥満体質だったり陰気を背負っていたり狂気を内に秘めているような奴がうろついているからだろう。

 いやあ、やっぱりBOOKOFFと違ってまんだらけはこの怪しい感じがいいね。既に17時半をまわってとっぷり暮れている中で異様に輝いて見えますね。BOOKOFFに比べて高い(BOOKOFFで350円のものが367円だったり420円だったりする場合が多々ある)とはいえこの雰囲気を味わえるとあれば安いものである。ああはじめて大阪のまんだらけに行ったことを思い出してしまうなあ。というわけでこちら。17時48分。
僕の小規模な生活(2) (KCデラックス モーニング)

僕の小規模な生活(2) (KCデラックス モーニング)

 おお、ついに来た!日本ラブコメ大賞2008にしてアカデミー賞最有力候補をついに手に入れることができたぞ!630円!高すぎるわボケ!
 で、諸君も薄々わかっているだろうが本日は「名古屋大型古本屋10連続訪問」であるが、18時前現在でまだ5店しか行ってないのであり残り5店を今日中に撃破するのは無理というものである。その上これからとらのあな名古屋店に行くから尚更である。じゃあとらのあなに行かなければいいじゃんという声は無視して(なぜ無視するか俺が聞きたい)上前津駅から再び名城線で九屋大通駅へ向かう。この頃がまさに今日の身体的高揚のピークであって、俺は最強の糞阿呆じゃと叫んだりするのである。あまりに興奮し過ぎて一体どこをどう行ったか思い出せんがとにかくとらのあな名古屋店に着いた。

 うーん、とらのあなに来たというよりはアニメイトに来た感じがして違和感がある。やはり女性向け同人誌売場があるからか。とにかく腐女子とは絶対に結婚したくない(結婚できるできないはこの際考えない)。というわけで秋葉原と同じくサラのエロ本を物色するが、見本を読もうとしたところ広島と同じく途中までしか読めなかった。いや広島の場合は半分まで読めたがここ名古屋では3分の1ぐらいしか読めんではないか。えーとどうするか。名古屋まで来て「ポプリクラブ」を買うのも変やしなあいやここは一発最近使ってなかった「表紙を見ただけでそれが俺好みかそうでないか」を見分ける特殊能力を使ったろやんけということでこれを買う。19時1分、1050万円。

 ちなみに俺はこの表紙だけで自慰ができる。これはむしろ恥ずかしがらず大声で言おう。いや、やめとこう。燦々と輝く名古屋タワー(という名前でいいのか?)は風景嫌いの俺を唸らせるほど美しい。

 で、既に時刻は19時過ぎである。あと行けるのはせいぜい2店であって、もしかしたら20時で閉店という店もあるかもしれないので急がなければならんのだが九屋大通駅に戻ろうとして思わず目に入ったロッテリアに行くことにする。だから太るんだと言われるかもしれんがまあこちとら12時からずっと歩き続けているのだから仕方ないだろう。本屋に行くということと体力を使うということは同義なのだ。特に俺のように頭脳をフル回転させて本を買っている人間には。お。かっこいいな俺(以下略)。
 バニラシェイクとペプシとフライドポテトとチキンを腹に流し込み(だから太るんだ)、次の目的地は大曽根駅のBOOKOFF名古屋大曽根店である。ここが今日の名古屋攻撃で一番見つけるのに苦労した。東大曽根交差点から国道19号線に向かえばいいものを平安通の方向へ向かってしまったからである。すぐに間違いに気付いたが、ふと目に入った交番ではいかにも軽薄な不良ですという高校生らしい少年がうなだれ、その前でこれまた20代前半と思われる若いお巡りが電話をしていた。周りは五階以上はあろうビルばかりであったが真っ暗で、道にも人の姿は全くなかった。パチンコ屋の毒々しいネオンが非常にうら寂しく、それさえも俺には快かった。というわけでBOOKOFF名古屋大曽根店である。

 外観はBOOKOFF葛飾東立石店と似ている。しかしここは名古屋である。だが日曜の夜である。日曜の夜というのは大学生時代、兵庫県糞田舎大型古本屋五連発としてまさに人生の趣味を見つけ狂喜乱舞していた「魔の時」でもある。俺が日曜の夜どこにも外出しないのはかつての大学生時代の日々を思い出してしまって今のサラリーマン生活に嫌気がさすのではないかという本当に阿呆の極みのような理由からなのである。そんなどうでもいいことを考えながらも本を買うのである。19時59分、105円。
大江戸仙花暦 (講談社文庫)

大江戸仙花暦 (講談社文庫)

 この「大江戸」シリーズは集めようともなかなか手に入らなかった(105円では)が、さすが名古屋である。東京のBOOKOFFも少しは見習えと言いたい。しかしあんまり言い過ぎると東京に帰った時しっぺ返しをくらうかもしれないのでここは一つ神保町を攻撃しよう。しかし神保町は神保町でいやそんなこと考えたら何もできんは大体お前は(以下略)。
 いかん、(以下略)を使うということは疲れているか収拾がつかなくなっている時であるからさっさと次の目的地へ行こう。というわけで名城線大曽根駅から本山駅で東山線に乗り換え、向かう本日最後の攻撃地は池下駅のBOOKOFF名古屋池下駅である。これがまた2番出口を出てすぐ、TSUTAYAと共同店舗であった。ビルの一角に居を構えているというのは今は亡きBOOKOFF大井町阪急店を思い出させる。

 時刻は既に20時過ぎであり、体力的にはまだ多少余裕があるもののデブ特有の症状(股ズレ)が出てきたりしてそろそろ死に時、じゃなかった潮時である。閉店時間は21時までかと思ったら24時までであり、ゆっくりと最後の購入作戦を練ることにするが、残念なことに品揃え的には本日撃破したBOOKOFFの中では最低レベルであった。もちろんどんなに厳しい状況にあっても一輪の花という名の希望を見つける俺が買ったのはこちら。21時12分、350円。
恋花温泉 5 (ジェッツコミックス)

恋花温泉 5 (ジェッツコミックス)

 日本ラブコメ大賞2007・12位の作品。
 ああ終わった、あとはホテルに帰るだけだと思った途端にドッと疲れが出てきた。そして池下駅に戻って電車に乗り、このまま名古屋駅まで少し寝るかとウトウトしていると栄駅で恐ろしいほどの人が乗ってきてびっくりした以外は特に何ということもなく俺はホテルへと帰っていった。あいかわらず名古屋駅周辺は大変な混雑であったが、一歩また一歩とホテルへ向かうにつれあれだけ多くいた人の数は潮が引くようにいなくなっていった。それでいい。俺はそんな都会の孤独というやつに深く満足しているのだ。
    
 翌日、俺は7時にはまたしても目覚ましに頼らず起きていた。普段7時半に起きている俺がである。1Fのロビーの朝食は相変わらずパンとポテトサラダとコーヒーだけであり、俺は小さいパンと細長いパンを二つずつ、昨日よりもっとベタベタとバターをはりつけてオレンジジュースと共に腹へ流し込んだ。そして部屋に戻り、NHKBSで海外ニュース(カナダのニュースで初雪の様子を、ロシアのニュースでAPECの様子を放送していた)を見て8時にホテルをチェックアウトした。今日は雨が降るということだったが朝のうちは大丈夫らしく、穏やかな晴れの天気と冷たいが清潔な空気が俺を上機嫌にさせた。これが名古屋なのだ。

 8時にホテルを出て、8時22分にはもう新幹線に乗っていた。とにかく一刻も早く東京の家に帰って、このブログに書くべき文章を書かねばならないのだ。やがてやって来た眠りの中で、このようにして俺は俺の考える日本一周というやつをやっていけばいいのだと思い、自然と微笑が浮かぶのを我慢できなかった。