特別編 裏名古屋毒探偵突撃古本屋(3)

 静岡駅からとりあえず掛川駅まで行くことにする。「次は○○です。お客様、おしたくをお願いします」というアナウンスが聞こえ、窓の外は相変わらず「神戸−明石間のような田舎でもなく都会でもない微妙なバランスの風景」が続いてまさかここが静岡だとは信じられない。そもそも静岡県というのは日本でどういう位置を占めているのか。中部地方ということだが比例代表でいうと東海ブロックである。比較的自民党の地盤が強く静岡3区には柳沢伯夫がおり静岡7区では小泉チルドレンの象徴ともいえる片山さつきがいるなどとこんな時まで政治に心奪われてどうすると思っているうちに掛川駅に着く。時刻は18時過ぎであり、どうするか。また浜松駅まで在来線でどんぶらこと行くか。それともここから新幹線に乗れば名古屋に着くのは19時過ぎであり新幹線に乗っても問題はないので新幹線にするか。もういっちょ頑張ろうと在来線へと心が傾くが、この旅の目的はあくまでも明日の「名古屋大型古本屋10連続訪問」にあるのであり今日の移動の疲れが明日のコンディションに影響を及ぼすことも考えられ、新幹線に乗ることにする。改札を入ってすぐの待合室ではTVのNHKニュースで厚生省事務次官殺害事件について放送していたが、すぐに新幹線が来る時間となった。

 掛川駅のホームはほぼ無人であった。去年の今頃、新潟へ向かう道中の越後湯沢駅もこんな感じだった。ああそうか、あれから一年経ったのか。いや本当にあれから一年か。色々あったんだよなあとしみじみ思い名古屋へと向かうガラガラの新幹線(こだま)の中で自分で自分を褒めてやりたいような甘ったるい感傷に耽るのであった。まあたまにはいいんじゃないですか。
 というわけで19時10分頃無事名古屋に着いた俺はホテルへ向かったのであるがまあ人が多いの何の。しかも非常にエネルギーが満ちている印象であり、疲れきった感じがする東京駅でもただ単にやかましいかしましい大阪駅でもないこれが日本第三の都市というものなのか。しかし広い。人が多い。東京駅にいるようだ、いや大阪駅にいるようだ。それで俺はどこにいるのかというと名古屋である。

 値段としては可もなく不可もないビジネスホテルに着いてでは明日に備えて休むというわけにはいかない。こちとらラブコメと政治とその他(多すぎて書けない)に魂を売った戦う戦士なのである。「修学旅行で一番楽しいのは実は前日」という法則に従い明日のことをあれこれ考えて楽しくなってどこかに寄り道したくなるというわけでジュンク堂書店名古屋店へ行く。途中名古屋駅を通るとビルいっぱいにきらびやかな光り輝く何かが見えたが、まあそういうものに興味を覚える気はない。

 さて買おうさあ買おう名古屋一発目の購入攻撃だとは思うがどうしたものか。確かに興味をそそられるものもあるにはあるが買うべきは「BOOKOFFでは買えないような珍しいもの」であり、では文庫本ではなくハードカバーかといえばそれは「高いは悪だ」という貧乏人の方程式により否定されるのである。結局「文庫本だが古本屋ではまず見られないようなもの」を探すことになるのだがそんな都合のいいものがあるか阿呆というお前の言い分は俺が阿呆であるという部分においてのみ正しい。というわけで一気に今日一日の疲れが出てきて買ったのはこちら。740万円。

 ちなみにジュンク堂書店名古屋店ではコミックは扱ってないのかね。別のところにあるのかと探したが見つからなかった。
 その後、吉野家で大盛り牛丼と味噌汁を食ってホテルに戻り、さあ本を読んでいつものようにCDTVを見て寝ようと番組表を見てびっくりした。CDTVが1時55分からということにではなく、厚生省事務次官殺害事件の犯人という人物が突然自首したということにでもなく、何と、名古屋では土曜深夜1時に「タモリ倶楽部」(6チャンネル)と「ガキの使い」(4チャンネル)をやっているということにである。これは贅沢すぎる。名古屋人の苦悩とは実にこれだったのですね。俺ならガキの使いを録画してタモリ倶楽部を見るだろうが、いやはやびっくりした。ちなみに両方とも東京の2週遅れであり、ああやっぱり俺東京に住んでて良かったと心から思いました。その後BSで松田優作が女をバックで突きながら飯を食っている映画(「蘇える金狼」)をしばし見てCDTVを見て長いような短いような一日を終えたのである。いよいよ次回、「名古屋大型古本屋10連続訪問」であります。