特別編 裏広島毒探偵突撃古本屋(1)

 この週末東京はずっと雨であったそうで、週末はどこかのBOOKOFFに行くお前にとってはさぞかし鬱陶しいことであっただろうざまを見やがれこのアンポンタンボケナススカタンと今日もどこかの誰かに罵倒される俺であるが実はそういうわけにはいかないのである。賢明なるラブコメ政治耳鳴全日記諜報員にはおわかりであろうが、先週土曜日ラブコメメイドキチガイアクション「まぶらほ〜さらにメイドの巻〜」による「脱走と追跡の読書遍歴Resistance」を上梓したのは実に14時50分頃なのであって、これには諸君も怪訝に思ったことであろう。この俺がそんな真っ昼間に健康的に更新するはずがないと。その通り俺はこの日それぐらい早い時間に更新しなければならない理由があったのであり、その理由はと言えば16時には家を出て17時35分羽田発広島行の飛行機に乗らなければならなかったからである。
 話は急に変わって会社についてであるが、俺はこの夏も例年通り夏休みは9月に取るつもりであったので8月は特に休むつもりはなかった。もちろんこれには裏があって8月はどこの企業もそうであろうがそんなに忙しいわけではないのである。むしろ上期の追い込みである9月の方が忙しいのであって、そういう忙しい時にこそ休むのが賢いサラリーマン(=駄目なサラリーマン。ん?)というものじゃと一人薄ら笑いをしていると平沼部長(仮称)に呼ばれたのである。
「夏休み、取らへんの?」
「いや、9月に取りますねん。いつもそうしてます」
「ほう。いや、実はね、人事の方から何か来てやね、自分ほら8月は一日も有給取ってへんやん」
「はあ」
「でもうちの部って自分以外みんな取ってるやんか。8月にな。だからどういうことですかって人事に聞かれてな。俺も9月に取るんちゃいますかって言ったんやけど」
「ええ」
「でもなあ、最近自分残業とか多いやんか。それで人事の方がな、ちょっと特定の人に負荷かけすぎちゃうんかいうてな」
「…」
「どないや、8月も一日ぐらい休んだら」
「はあ。そら構わんのですが、9月に取るはずでしたんで、実家とかにも予定入れてまして…」
「いや、9月は9月で休んだらええねん。8月も追加っちゅうことや」
「そらまあ、俺にしたら嬉しい話ですが」
「うん、後は俺にまかせとけ。若槻課長(仮称)には俺から言うといたる。遊べ遊べ。何や、最近池袋の風俗に行っとるらしいのう」
「おお。よく知ってまんなあ。どないですか、部長もちょっと」
「アホ、わしは愛妻家の恐妻家やぞ」
 というわけで8月25日月曜日は休暇を取ったのであって、これにより23・24・25と三連休を獲得したのである。しかし三連休というのは中途半端でもあって、もし兵庫県糞田舎に帰るならば行きと帰りに一日ずつ取られるからゆっくりできるのが一日しかないことになるのであり、それは早々に却下した。ではいつものようにBOOKOFFを回ったり永田町神保町秋葉原門前仲町に行くかといえばそれは別に土日とあればできることであって、三連休でなければできないことをやろうと思えば自然と考えられるのは去年11月に新潟でやったようなことである。即ち、一人旅、そして大型古本屋撃破。
 去年11月に行ったわけのわからん新潟の旅はそれなりに楽しかったが、何せ地方であるからBOOKOFFに行こうにも車がないとはじまらんわけである。というわけでもしどこかへ行くとしても今度は電車で移動できるところでBOOKOFFや古本市場が潤沢にあるという、東京に負けず劣らず公共交通網が整備された地方都市に行くべきなのである。ということでまず頭に浮かんだのは仙台であった。しかし仙台では地下鉄・JRを使って行けるところは3店しかなかったのであり、では次はというと博多が思い浮かんだが博多は俺の会社の支店があるのであまりいい気はしない。とすると名古屋か札幌だが、俺にとって名古屋とは地方都市というよりは東京・大阪に次ぐ「三大都市」というイメージなのでこれまたあまりいい気はしない。じゃあ札幌かと思うが俺は北海道についてはよくわからんので今夏服で行ったら風邪引くかもしれんし向こうはアレか夏でも雪が降るんちゃうかと小学生のような偏見に頭を悩ますぐらいなのでこちらもあまりいい気はしない。うーむ、困ったなと各地方の路線図をインターネットで検索していたら「広島」の文字が飛び込んできたのである。JR、広島電鉄アストラムライン…。
 というわけで俺は8月23日17時35分の羽田発広島行きの飛行機に乗ったのである。